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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第八十一章 原点回帰!? 室町宝島!
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第九百三十八話

 



 ゲームに夢中な子たちだけかと思いきや、歌のトレーニングにそわそわし始める子たちもいる。

 お姉ちゃんとシャルが気を利かせて「面倒みてるから」と言い出してくれたので、ふたりに任せちゃおう。

 うちのお母さんをついつい例にしちゃうんだけどさ。

 私がちっちゃい頃、結構おばあちゃんやおじいちゃんにお世話になってたの。

 実家のわりと近くに親戚の家もあるしさ。

 私を産んだ頃って、お母さんもお父さんもすっごく若いから、そうとう苦労してたみたいなんだ。

 そうでなくても子育てってひとりでやるとメガ盛りブラック企業状態なんだってさ。

 子供の周囲にいる人に余裕がないと、子供にとってしんどいことになるよね。それはよくない。

 別にぷちは子供ってわけじゃないけど、でも似たようなものだしさ。なにより私の家族みたいなものだから大事にしたいんだけど、これからミコさんたち明坂の人たちと歌のトレーニングって考えるとね。ここに私の分身を残していくほどの余裕はないよね。

 あとさ。これはぷちに対してっていうより、将来を踏まえた話なんだけどさ?

 ひとりになれる時間って、すっごく贅沢な心の栄養補給剤とか休憩になるみたい。

 昭和世代の、それも五十代くらいかな? 上の人からよく聞く「昔はご近所同士、仲がよくてさ」とか。あるいはもっと昔の、大家族時代に子供の面倒は上の子が見る方式だと、親もまわりのサポートを受けて休めたと思うんだけどね。保育所待機問題とか、ベビーシッターさんアメリカよりも充実してないんじゃないか説とか、いやいやそういう問題よりも面倒を見るのどっちかに押しつけ問題あるじゃんとか!

 言い出すときりないし、大変だよね。

 そもそもできるできないの時点で、昔は女性に理由があるという偏見が強かったけど、いまどきは男性に理由がある場合がめっちゃ多かったとわかったとかさ。

 恋愛、育児はコスト高くて贅沢とか。

 とめどないね。

 とめどない。

 自分の面倒を見るのでさえ精一杯なのにね。

 とめどないよ……。

 あ、これ結構気に入ったかも。マドカからもキラリからも「使い方を間違ってる」って怒られそうだけど。今度つかってみよう。とめどない……。

 ぐだぐだ考えながら歩く。

 尻尾にひっついたり、私の肩に乗ったり背中にしがみついているぷちたちは鼻歌混じり。

 ひとりとして自分で歩く子がいないの、ちょっと昔の自分を思いだして笑える。

 みんなはどうなんだろうね?

 私はお父さんの肩車とか、お母さんの抱っこが好きだったけど。しょっちゅうおねだりしてたけど。歩かなくていいっていうんじゃなくてさ。いつもよりも高い視点とか、応えてくれるお父さんやお母さんの愛情を感じるとか。体温が嬉しかったりしてさ。

 しょっちゅうだった。おねだり頻度、めっちゃ高かったよ。

 いざ自分が抱っこしたりしがみつかれる立場になると「地味に重てえなあ」って思うけどね!

 それくらいは許して! 許してつかあさい!

 落ちないように気をつけられる範囲で急ぐ。

 船の構造は学校部分、学生寮部分、巨大な講堂やグラウンドや特別体育館を含めた特殊設備部分、それら両方を繋ぐ中庭部分に大まかに分けられていて、さらに先端と最下層には船の運営に必要な設備が集中しているの。

 それこそ空に出たときに、部隊が待機したり出撃する待機所なんかもあるよ?

 どでかすぎる超弩級の船なんだけど、どうやって維持しているのかは刀鍛冶の人たちじゃないとわからないみたいです。

 いまは中庭部分から特殊設備部分に向かっているの。

 基本は碁盤上に設置された通路を移動して、体育館フロアに続く扉を開けた。

 中を覗くと、ステージ場にゆったりめのTシャツとジャージ下のミユさんがマイクのチェックをしていた。ステージ前にラフな服に着替えた明坂のメンバーが集まっている。レンちゃんと結ちゃんも、美華ちゃんと聖歌ちゃんと理華ちゃんもいた。

 やばい。これは遅刻の予感?

 いや、でもミコさんはいないしなあ。セーフ?


「あ、よかった! 春灯ちゃん、こっちこっち!」


 ステージ方向から呼ばれるのかと思いきや、すぐそばからルミナに呼ばれてびっくりする。

 見るとフブキくんと一緒だ。放送部の面々も集まっているし、三年生と放送部の顧問を担当している先生もいた。なんだろ?


「ご主人、あっちいってていい?」「踊ってたいです!」

「あっ、うん! いいよ。理華ちゃんにご挨拶して、お願いしてみてね?」

「「「 あいっ! 」」」


 私から離れたぷちたちが、それーっと理華ちゃんめがけて駆けていく。

 理華ちゃんなら大丈夫だろうと信じて、ひとまずルミナのそばへ。

 ルミナもフブキくんも制服姿だ。互いに夏服。船内はだいたい二十四度くらいの室温に保たれているからね。

 服といえば私は着替えを用意してないんだけど。葉っぱで化ければいいかな。それもあとでいっか。


「どしたの?」

「フブキのばかが、夜中にアホな番組やりたいって言うんよ?」

「や、それは語弊がある! アホっていうか、ほら。深夜番組のノリってあるじゃん? 青澄さん、知ってる? 昔はテレビもそうとう冒険してたらしくてさ」

「あー」


 熱弁を振るうフブキくんに間の抜けた返事をしながら思い浮かべる。

 いまの――……ううん。ひな壇に立つ芸人さんたちから、たまに聞くかなあ。

 橋本さんからも聞いたことがあるけどさ。

 昔はなにやら、えっちな深夜番組があったみたい。あほな深夜番組もいまより多かったそう。

 二十四時間テレビの深夜に、セクシー動画の企画物かな? みたいなこともしてたようだしさ。

 えっちな深夜番組だと、ミニスカートのキャスター役のお姉さんが椅子に座った状態で開脚して、ぱんつ丸見せのうえ、さらに太ももにくくりつけた垂れ幕みたいなので告知とかしてたみたい?

 トシさんもナチュさんとカックンさんと、たまに高城さんともそのあたりの話題で盛り上がってたし。なんなら飲み会でメイクや衣装のお姉さんたちも馬鹿笑いしながら手を叩いて話してたけどね。

 いまじゃ、水曜日の大御所お笑い芸人さんの攻めた番組以外じゃなかなかお目にかかれないよね。そういうノリ。なんならテレビの悪のりとして、ネットで一番きらわれるやつになりかねなかったりする気がするけど。

 ネット動画サイトでおばかな大失態をやらかす一般人さんと比べたら、正直どっちがマシなのかなあとも思う。

 玉石混合くらいでちょうどいいと思うし、そのうえで人に迷惑をかけちゃいけないよねえとも思うし。かといって、テレビのお笑い芸人さんへの弄りを真似たつもりで、ただいじめてるだけのキッズも大勢いるよなあとも思えるわけで。

 闇が深いぜ……! 飲みこまれちまうな!


「えっちなのやりたいの?」

「「 迷わずそれ聞く!? 」」


 あうち! ふたりに同時に突っ込まれちまったい!


「いや、まあ、そうなんだよな。ぶっちゃけ、ネットがないとフラストレーション溜まる奴もいるだろうし。あほでほどいい下ネタも交えて、くだらない番組やりてえの」

「あほ! 先生おるんやぞ! ダメだしされるわ!」

「だからギリギリを攻めるわけ。苦情を言うモンスタークレーマーもいないしさ?」

「うちが言うわ!」

「そこをなんとか!」


 ぷんぷん怒るルミナに迷わず流れるような土下座を披露するフブキくん、ぶれないなあ!

 いつだったっけ?

 なんかのタイミングで誰かの攻撃を敢えて受けてみんなを庇った彼が「ダイヤマチのついたストッキング越しのパンツが好きだ」とか言ってたよね。

 あれは語りぐさだよ。そんな性癖あるんだって、しみじみ思ったものだよ!

 カナタに「どう?」って聞いたら目をそらされたから、たぶんカナタはフブキくんと同じ性癖を持っている。


「ちなみに、どの程度のえっち度合いなの?」

「掘りさげんでええやろ!」


 ルミナに突っ込まれたけど、地味に気になる! なりません?

 現代と違って、なかなかできないじゃない?

 自主製作番組編成なんてさ! しかも大勢で作れるくらいの余力があるわけだし。最低でも、この時代にいる限りはね。

 だったら、いっそネットに流す短い動画製作とはまた違った楽しみ方を味わい尽くしてもいいのでは? って思うし。

 どうせ作るなら、冒険したものにも興味があるよ? 私、意外とそういうの笑って見られるタイプだよ!


「まずはネット配信されたお笑い芸人さんの番組を下地にした企画番組をやろうかと! 今回は自作自演のやらせでドッキリするのと、浮気かハニトラドッキリ! そして野郎のバイブ企画も!」

「そ、それはまた……」


 最後のが特にインパクト強いなあ!

 うちの学校で、あの伝説の企画を!? 男性芸人さんがお尻にぶるぶるを入れて、いかにばれないかを競うという、あの伝説の企画をやっちゃうの!?

 アウトじゃない!? さすがに!

 あ、知らない人に説明するとさ。

 ある通販サイトが始めた映像サービス向けに制作された番組がありましてね?

 その番組では、地上波ではおよそ放送できないであろう企画を率先してやっているみたいなのね?

 私も結構好きで見てるんだ。お父さんとお母さんから聞く昔のテレビみたいなはっちゃけた企画をたくさんやってるみたいでさ。

 見てみたら、真面目な企画も、おばかな企画も振り切れてるのが多いの。

 狩猟をしている人に付き添って、命をいただく過程を撮影する企画もさ。いまはもう地上波でなかなか見れない人を映す企画もさ? 攻めてて好きだし。

 家庭内下着泥棒選手権とかも、結構刺激的で見ている分には面白いかな。

 カナタにやられたらキレるどころの騒ぎじゃ済まないけどね! なのに宝島で一度やられて、カナタに怒ったことがあるけどね!?

 どうせやるなら、ゾンビオーディションとか? ほら。海外ドラマで超絶ヒットした、ゾンビドラマのオーディションに参加するための事前オーディションみたいなの。

 あとは――……家庭内で痴漢しちゃう奴は揉めるだけのような気がする。痴漢っていう語感がそもそもよくないよね。犯罪だし。リアルに被害を受けてる子もいるし。

 それでいえば浮気もアウトだと思うなあ。思春期に浮気ネタはきついどころの騒ぎじゃ済まないし。刺激的だから、見ている分には、もしかしたら楽しめるのかも? ハニトラのほうがまだましかなあ。

 昔あったんだってね? 芸能人相手に可愛い子を近づけて、ぎりぎりまで本気でアプローチしてるように見せかけるっていう企画。

 それもなあ。テレビでお仕事ならぎりぎり、ほんとぎりぎりだけど。ぎりぎりいまはアウトだと思うけど! 同じ生徒同士でやるのはまずいでしょ。

 ううん……いざ考えてみると、意外と制限あるね?


「さらうのはやらないの? ギンとか綺羅先輩とかをさらうのに挑戦したら、結構盛り上がると思うけど」

「や。ガチの喧嘩になるイメージしかないからちょっと……それは別枠に取られまして」


 取られたんだ!? ルミナにかな!? たしかに盛り上がりそうだし、うちの学校の訓練に近いもんね!?

 土下座ポーズのままで返事をするフブキくん、もしかして土下座になれている?

 ルミナもなにか言えばいいのに。不機嫌そうに見おろしてるだけ。

 ふたりは幼なじみっぽい。とはいえ、いわゆる定番の幼なじみカップルではない。

 だってルルコ先輩の会社で経理や営業を担うユウヤ先輩と付き合ってるからね。ルミナは。

 フブキくんの浮いた噂は聞いたことがないけど。

 彼が興味あるのは女子っぽいし、かといってアプローチしている人がいる気配もなし。

 ミナトくんや泉くんほどオープンえっちじゃないだけで、下ネタ余裕な人だけど、考えてみたらフブキくんのことはあまりよく知らないなあ。


「痴漢もなあ。もめ事回避を踏まえると、日常的にそういうことしてるカップルにしか頼めないだろ? もし頼んで撮影できて流しても、この場合は視聴者にヘイトが溜まるだけかなと」

「そりゃあ、ねえ。同じ学校にいる仲間だもんね……」


 生々しさが尋常じゃないよね。

 この手の企画に乗ってくれそうな人というと、それこそミナトくんとか。あるいはカゲくんあたり?

 日下部さんは乗り気で反応してくれそうだけど、ユニスちゃんは揉める気がするなあ……。

 それはよくないね。よくない。


「それでなくても楽屋ネタというか、身内ネタに走りがちな状況だもんなあ……」


 ルミナとフブキくん、それに放送部の面々は部屋で見れるテレビの番組作りに挑んでいるみたいだけど、改めて考えると企画って結構むずかしいね。


「意外といろいろできなさそう?」

「せやから言うてん」


 鼻息強めにふん! って出すルミナに、フブキくんが「そこをなんとか!」と再び頭を下げる。床におでこを擦り付けるような勢いだ。

 とはいえ、ねえ。


「お色気もさ。肌見せ方向はアウトじゃない? 性別関係なく」


 だって、ねえ?

 未成年だし。

 ごまかしようがないレベルでアウトだよね。


「フェチ方向もアウトだし」

「わかってる! わかってるので、そこはソフトにする!」

「んー、でも」


 私自身は、特に二次元方面は別にいいじゃないと思いつつも。

 なんでもかんでも規制きせいって言うより、実際に困っている子たちを助ける方向にシフトしたら? って思うけども。

 言いたくないんだけども!


「難しいねえ……ドラマでお色気シーンを挟むようにする? それか、おばかな下ネタこみの、あれ。芸人さん同士が笑わせて相手を退場させて最後に残ったひとりが優勝みたいな?」


 それならせいぜい、お調子者の男子の股間にモザイクで済むのでは?


『そういう問題なのかのう……性別に限らずアウトと言ったのはお主じゃろ?』


 うううん! やっぱりアウトかあ!

 そうなると、こりゃあ難しいね! 大人にならないと作れないもの、たくさんあるね?

 たしかにさ? そういう枠組みを設けないと、無法地帯になるかもしれないよ?

 ぴゅあぴゅあな子も、性別や性的嗜好に限定されずにいると思う。

 そういう子たちにしんどい思いをさせていいのか! って言われると「見るな」だけじゃ済まないのかなあって悩んじゃうこともある。

 けど、そういう子ばかりじゃないよ。世の中そればかりでもないと思うよ?

 でもって、そればかりじゃない人に向けた番組を作ろうとすると、途端に制限の壁がのしかかってくるわけですよ。

 別に番組をただつまらなくしたいから、っていうんじゃないと思うんだけどさ。

 どうしたものかなあ。

 ちらっとステージを見たら、理華ちゃんがぷちたちと一緒に軽くストレッチを始めていた。聖歌ちゃんと美華ちゃんも一緒だ。明坂のメンバーさんたちは、おのおのにダンスの振り付けをチェックしている。

 同じ体育館にいながら呼びかけてこないしプレッシャーもかけてこない時点で私待ちってことはないだろうし、ミコさん待ちかな?

 もうちょっとくらいなら、大丈夫そう。


「うちはマドカちゃんと進めてるから問題ないの。けど、ねえ?」

「セクシーかあ」


 難しいなあ。

 刺激的にしようとして、露出を考えたり性的に寄せるから難しいんだもんなあ。

 だとしたら――……。


「高校でありがちなラインならぎりぎりセーフなのでは?」

「「 と、いいますと? 」」


 ふたりしてハモって聞いてくるの、ちょっとツボかもしれない。


「ない? 男子がネクタイを緩めてボタンを開けたときに見える首筋とか鎖骨に見るエロスとか。逆だと、トップスぱたぱたとか、伸びをしたりとか? 髪を結んだときの体のラインみたいな?」

「うちはてっきりブラ透けとかでくるんかと」

「たぶんそれアウトでしょ? 見せたい女子もいないだろうし」

「それな! あーでも男子のフェチ狙い撃ちはいいなあ」


 ルミナが腕組みして考えはじめて、フブキくんが慌てて口を挟むの。


「待て! これ以上、俺が使いたいアイディアをもってかないで! ただでさえ山吹とセットでこられて苦しいのに!」


 えっと、と何度も繰り返しながら体を起こして、膝をばしばしと叩く。

 フブキくんが一生懸命、日常のきゅんを探し始めた模様。


「だいぶマイルドにはなるけど――……やっぱあれかな。ほら、やってなかったっけ。アイドルが。シチュエーション別にお題を出して、女の子がきゅんとくる答えはどれか映像で再現するやつ」

「あー。あったねえ!」


 あったあった。深夜だったよね? あれって。


「男子版と女子版をやってくの、どう!? で、なかにはひとりくらい、ちょい攻めた演出がいるみたいな? それなら俺たちが作れるラインでぎり達成可能なセクシーじゃない!?」

「演出で攻めるだけやなくて、ほら。理想の甘いシチュエーションとかでもええんやない? 理想のお部屋デートの膝枕とはなにか~で、パジャマ姿が出るくらいならありやん?」

「パジャマ姿!」


 上半身をのけぞらせて背中から床に倒れ込むフブキくん、もしかしたら芸風意外と広いかも?


「いい! すごくいい……あり! 尊い!」


 たださ。その姿勢でびくびく震えられると、視覚的にきついかな!


「ダッシュで企画書つくってくる!」


 横に寝返りを打って立ち上がり、体育館から全力ダッシュで離れていく。

 勢いあるなあ。

 中身がまとまるのを楽しみにしてよう。

 誰が出るのかも地味に気になるし!

 彼氏役と彼女役がそれぞれいて、その都度相手役はカメラを持って撮影時は映らないし声をださないイメージかな。そしたら、役に徹する相手を通じて夢を見られるじゃない?

 お。これってかなり楽しそうでは?


「ルミナはそういう方向の番組、つくらないの?」

「やりたいなあ! いまな? 岡島くんの室町クッキング、明坂の壁に金光星チャンネルやろ? で、実録突撃お宅の侍がさっき言うたさらう企画込みのどっきりで~」


 指を曲げて数えるルミナが、ううんと唸る。


「せやなー。やりたいねやんか~。なにがええかな!?」


 今日のルミナはだいぶ訛ってる!

 私は方言に弱いのでめろめろです!


「んー。ミナトくんがやまほどゲーム持ってきてるみたいだから、ゲーム番組もあっていいかも?」

「実況かあ。動画で見る分にはええけど、テレビ通して見ると地味やない?」

「まー! ねー! ううん!」


 地上波でもちょいちょいあるけどね!? 課長とか大好きだし!

 でも人柄が出ちゃうし、スマホゲーのパズルものとかと違ってモロ最近のゲームがどう受けとられるのかって考えると、難しそうだなあって思うのはわかる。

 映画みたいな濃厚な海外のゲームもたくさんあるけども。チャンネルに余裕があったら、やってみてほしい気がするけども。

 そうだなあ。


「ルルコ先輩、フィギュアスケートできるみたいだし。明坂の子にもできそうな人がいるかも? で、素敵な衣装で滑ってもらったり、フィギュアスケート入門みたいに講座を愉快にやるのは? 絵は綺麗で、競技に興味がある子が出てくれば広がる可能性もあるし。水神さま系の御霊を宿してる子が、それでトレーニングするとかしてさ」

「なるほど! スポーツ枠やんな? なるほどなあ! 見栄えするし、ええなあ! 解説ありもええけど、解説なしでも一度みてみたかったしなあ! 男子できれいどころも欲しいところやね!」


 たしかに!

 かっこいい滑りを披露してくれる男の子がいたら、そっちも人気出そう!


「島に行って、先生方で面白い趣味の人がいたら、絡めて面白そうな生徒と一緒に挑戦企画とかもできそうやね?」

「うんうん! ――……あとは」


 二年生以上はルルコ先輩をある程度知っているし、先生方もある程度知っているからいけるけど。一年生視点が足りないのが、ちょっと寂しい。

 去年の私はなにを求めていただろう。

 刀がなんなのかもよくわからず、友達ができるのかどうかもわからなければ、男子だらけの九組で女子にはぶられないかも不安で、一生懸命だったけど視野は狭かったと思うあの頃。

 ただひたすらに、楽しいことはないか探してた気がするなあ。

 理華ちゃんたちにも聞いてみたいな。

 番組を作る挑戦をするならさ。

 それぞれの番組で、いろんな視聴者層に訴えかける実験をしてみていいと思うんだ。


「学年別でも枠があっていいよね」

「それな! それ、うちらもずっと話してたんよー。明坂の人たちにも話を聞きたいし、なんなら練習風景も撮りたくて来てるし? やりたいことしかないの! どないしよ!」


 興奮気味に言われて吹きそうになっちゃった。

 考えてみたら、去年の私もそうだったかも。

 理華ちゃんたちも、そうだったらいいな。

 やりたいことしかないかあ!

 それって、すっごくわくわくするね?


「星蘭ならなー! 新喜劇に挑戦みたいなこともできると思うんやけどなー」

「ああ……ラビ先輩とコントやってた、白狼生徒会長だっけ? 面白そうだったもんね」


 今年も星蘭が来るか、私たちが星蘭に行ったら、向こうでまたコントするのかな?

 関西から来てる子、士道誠心にたくさんいるイメージないなあ。

 東京にだってお笑いに関連する事務所やスクールもあるみたいだけどさ。

 いまのところ、あまり目立った噂を聞いてないからね。逆に探してみてもいいかもしれないね?


「いっそ刀鍛冶のみんなの力を借りて、合戦を再現するとかは?」

「うちらが士道誠心に来てなければ、それもおもろいと思うんやけどな」

「た、たしかに日常って言えば日常かあ」

「一応、実録んところでやってみる予定やねんけど。もっとこう、パンチの効いたのが欲しいわ!」

「……カメラを止めない的な?」

「本は書いてるけど。間に合うかどうかは別やね」


 え、待って!

 準備してるの!? むしろそっちに驚きなんだけど!

 ほんとにやりたいことだらけですね!? 行動力に溢れてるし。すごい。バイタリティみなぎってるね!


「うちは、どうせやるなら昭和の往年の番組とかも挑戦してみたいわけ。大爆笑しちゃうやつ」

「一周回って新鮮かもね?」


 いくつものコントを刀鍛冶のみんなの力を借りたセットで豪勢に、立て続けにやるのは楽しそう。課題は面白いコントを作れる人、やれる人たち。そこさえクリアできれば、挑戦した結果が出やすい。


「クォンくんたちの番組枠も作るしなあ。いそがしなるよ!」


 ばしばし背中を叩かれてたら、扉から足音が聞こえたんだ。

 ミコさんが運動着姿で入ってきて明坂の子たちが一斉に準備運動をやめて整列する。

 びっくりするくらい、体育会系のノリなのでは?

 有楽町にある劇場を中心に活躍する劇団でもこんな感じなのかな?

 人生で一度はお会いに伺いたい劇場のひとつ。気になるなあ。


「もっと話したいところやけど、そろそろ時間やない?」

「だね。またね!」


 ルミナに手を振ってお別れして、ミコさんに歩みよる。

 優雅に歩く吸血鬼の女王さまは、私をちらっと見てから理華ちゃんのまわりに集まるぷちたちを一瞥。


「名付けは済んだみたいね。準備運動はまだのようだけど、一緒にやる?」


 準備運動の指摘で圧力かけて止めたりしないところ、ありがたいです!


「ぜひとも!」


 全力で乗っかるんだ! いいか! 全力でだ!


「心が気張りすぎ」

「あうち……」


 そうでした。

 ミコさんには考えがばれてしまうのでした。

 油断した途端にすぐ怒られちゃったよ。

 いけない、いけない。気をつけないとね。


「歌い始めた頃の気持ちを覚えてる?」


 突然の振り。

 トシさんやナチュさん、カックンさんもだし、小楠ちゃん先輩やマドカもそうだけどさ。

 ああ、この人は私より遥か先へ凄い速度で行けそうだなあって思うタイプの人って、ぎらぎらしてる。

 自分のゆるふわモードじゃ思いつかない、鋭いワードをくれることがある。

 ミコさんの問いかけは、まさにそれ。


「刀を初めて手に入れたときの気持ちは?」


 言葉を探るより、気持ちを探る。


「準備しておいて。ワン・ファリンに指導させたいの。その下準備だから。あと、ぷちたちは好きにさせなさい。見ておきたい」

「了解です!」


 肩で風を切って歩くミコさんに返事をしながら、気持ちを整える。

 ここから先は私のフィールド。

 企画を見つけて張り切って駆け出したフブキくんや、やりたいことだらけでテンション爆揚げのルミナのように、私も気張って尻尾を膨らませていこう。

 それはそれとして、カナタさんはなにしてるのかな?

 変な目にあってなければいいけど、そう考えたときはだいたい酷い目にあってる気がするよ!




 つづく!

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