第九百三十五話
問題は現状の人材配置におけるプランがないことだと吸血鬼は語る。
南隔離世株式会社の面々と興味のある生徒が集まった講堂で、大学部の講義に使う講堂と同じレイアウトの壇上に立った明坂ミコは、巨大スクリーンに投射された資料をレーザーポインターで示しながら、片手に持ったマイクでリラックスして講義を行なっていた。
「わかりやすく例えるなら、入学したばかりの一年生がひとりで対処できる邪に一年生のクラスひとつを丸まる向かわせるのは、課題に対する投資が過剰です。そう言い切れるのはなぜか。答えは簡単。ひとりで対処できるとわかりきっている課題に、ひとりよりも多い人数を割いているから」
先日と引き続き、ルルコは隣でせっせとメモしながら話を聞いていた。
その向こう隣にいるユウヤも同じである。
私、真中愛生はいちいち膝枕して寝ているアリスの頭に足が痺れてきて、どうやって足を崩すか思案中。もちろん話は聞いているけどね。
「じゃあ次の問題。先日のガシャドクロに対し、どの程度の人材配置を行なうのが適切でしょうか。条件を加えます」
語りに対応して、シオリが端末を操作して資料が次のページへ。
事前に打ち合わせ済みなのだろう。台本もあるのかもしれない。
実は資料をつぶさに見る必要はない。語りで補完されるから。
「南隔離世株式会社が行なうとし、想定される事後処理のコストも加味して、どのように判断するのか考えてみてください。次に」
声も語り口も長命を無為にではなく余すことなく活かして、穏やかに。
張りがあるけれど、甲高くはなく、耳に心地いい。あまり心地いい声だと眠気を誘われることもあるけれど、そこはさすがの吸血鬼。人を惹きつける魔力でも込められているのか、もっと聞いていたいと思わせてくれる響き。
「南社長、次に株主で会社運営に条件付けをする私、最後に社員。以上みっつの立場で考えてみましょう」
問題をまとめた画面がぱっと切りかわり、マスコミが撮影したガシャドクロと士道誠心学院の対決映像が動画で再生される。音声はなし。
「実務を担う現場担当レベルからいきますね。社員の立場として――……真中愛生さん。あなたが想定する適切さとはなんですか?」
えええ。振ってくるの? 聞いてないんだけど。
明坂の女の子が助手として、マイクを手に私に近づいてきた。
マイクを受けとり、膝上を見おろす。アリスはまだ寝ている。
「座ったままで結構です」
「どうも」
お見通し? なんで?
いや、答えを考えてしまえ。思いつかないなら、浮かぶまま語ろう。
「実務者レベルで率直に言えば、確実に対象を倒せる戦力が不透明なことが想定される今回の状況では、出来る限りの戦力を投入したいと考えます」
倒せませんでしたっていうのが一番困るから。
「次に、負傷者が出ないように投入する人材は対象に匹敵する力の持ち主を選抜しますし、バックアップにつく人材ももちろん万が一に備えて十二分に配置したいところです」
仲間に欠員は出さない。絶対に。そこはマストじゃなくて大前提。
「もっと欲を言えば警察と連携し、対象が周囲に被害を及ばさないようにコントロールできる人材も欲しいところです」
率直に述べるのならば。
「実務を確実に遂行できる人材を可能なだけすべて投入したいというのが、どの業種でも等しくあり得るであろう現場の声ではないでしょうか」
「ありがとうございます」
想定済みの答えの中では及第点とでも言いたそうに上から目線で笑われたらかちんときてそうだけど、そうでもない。
彼女は長命ゆえに毒を孕んだ側面も持ち合わせているが、それにしちゃひねくれていないので憎めない。
「では次に、南社長。あなたの答えは?」
隣のルルコにマイクを渡すと、ルルコは私と違って立ち上がった。
どうでもいいけど今日はメガネを掛けていて、ブラウスに膝丈スカート姿でオフィスで働いているのかな感が出ている。まだ高校を卒業してちょっとしか経っていないのに、コスプレ感がないのは、いいのかわるいのか。
「目標に対処し、ダメージコントロールを行なうのはもちろん当然のことです。被害は出さないし、こうむらないのが一番です――……ただ」
すこしだけ言いよどんだ。
「私の立場で述べるなら、社内の人材で達成できそうになければ弊社で無理に解決しようとはせず、外部に協力を求めるべきだと考えます」
すこしだけ、びっくりした。
ルルコはここのところずっと、壇上の講師役に徹する吸血鬼にあれこれ叩き込まれている。
なんなら、ルルコはこの場で社員をしんどい目に遭わせるか、ちょっと距離を取る発言でもするのかと思った。
経営者としての立場で見たときに、実務者レベルで考えてちゃやりきれないこともたくさんあるだろうと思っていたから。
「弊社で達成するのがマストで外せない条件だとしたら、次は弊社に損害のないようにどこで手を打つか、落としどころを考えます」
わかっているよ。
言い方を変えているだけ。
「弊社の商材はサービスです。倒す必要性があり、それで契約をしてしまった前提だと踏まえるのならば、ですが」
「もちろん」
「ならば今回提示された件のときの手段を用いて対応します。要するに現世におけるマシンロボの運用ですね。仮にそれが実現性のある手段になったのなら、配備する人材は大きくカットし、さらには現場担当者の安全を確保することができるのではないかと考えます」
よどみないということは、それだけ事前に考えていたのだろう。
現代に戻ったとき、警察の侍隊にいまだマシンロボ運用のハードルは高そうだから。
ならばと南隔離世株式会社で請け合うと言う。それも巨大なマシンロボではなく、小型の。
思えば初めてマシンロボを作りだしたハルちゃんたちの巨大さと、真逆の方向性を光葉はずっと模索していた。
小楠ちゃんや佳村ちゃんあたりに叩き込ませている装着型のハイテク霊子スーツは、そのプロトタイプなのだろう。
「人材ひとりひとりの底上げを図ることで運用するコストを省き、効果的かつ効率的な人材配置を行なうことが私のプランであり、理想です。そして現状考えうる適切な解答になると思います」
「なるほど。わかりました」
結構ですよと告げる吸血鬼の顔は珍しく紅潮していた。
嬉しそうな顔をしている。ルルコは成果を示すことが出来たのかもしれない。
息を吐いたりせずに、明坂の子にマイクを渡してルルコは座った。すぐにペンを取る。
頼もしいし、強くなりすぎて不安。私はルルコほどやれているか自信がない。
「最後に私の立場から。株主としては配当金を多く得るために、あれこれ口出しするものです。仮に南隔離世株式会社の株式を私が五十パーセント所有したら? 私は取締役を会社に派遣して、会社の舵取りが危うい場合には実質的に経営を牛耳る手を打てるとします」
吸血鬼えげつない。
「実際、自動車産業なんかでもありますね。会社の株主総会での議決権が問題となってきますが、たとえば私が会社になんの思い入れもなければ社長の退陣、社員のリストラなどを要求することもできるわけです」
脚色交じりの例ならいいけれど。
「私が会社に望むもの。ないし、株主が会社に望むもの。シンプルに言えば配当ですよね。なので儲かってもらいたいし、世間の評判はよくなきゃ困ります。今回の例でいえば――……」
スライドが切りかわる。
「ガシャドクロを用いて、いかに業績をあげられるのかが私のような立場の関心事になるわけです。議決権――……会社にとっては株券を買ってもらえばそれだけ資金調達が行えるわけです。銀行などから借り入れるわけではないので、返済義務はありません。が!」
が、の先にくる内容が問題。
「利益を分配する必要があります。利益がなければ配当する必要はないけれど、議決権を握られてしまうとどうなるか」
吸血鬼は間を置くが、答えは簡単だ。
それくらいは私でもわかる。
「経営サイドが自社の支配権を失ってしまうんです。たとえば士道誠心の卒業生ふがいなしとみて、私が社員を一新。現在ある士道誠心、星蘭、山都、そして我らが北斗の四校すべての卒業生で優秀な人材にすげ替える、なんて手も打ててしまう。いや、もっとひどい形になるかもしれない」
起業したルルコの思惑はどこへやら。
ないがしろにされて、別人の手によって別物にされてしまう可能性もある。
「故に株をどの程度、誰が持っているかが重要になってきます。すごく簡単に説明するならね?」
そのうえで、と吸血鬼が語るのに合わせてページが次に切りかわった。
語りとページの内容はシンクロしている。なんなら彼女は語りながら、ポイントを資料の文字に合わせてもいた。
「そうなると会社は筆頭株主に抗えませんね。不安そうな顔をしている社員がちらほらいるので、現時点でその心配はないとだけ伝えておきます。さて」
切りかえるように声のトーンを僅かにあげる。
息継ぎポイントかな。私はよくやる。
「抗えない立場に過剰な要求がなされることがままあるのが社会の多くの人が経験している現実ですね。南隔離世株式会社の社員のみなさんは先日、私と一緒に労働基準法について読みあげて覚える授業をしましたが」
悪夢のような時間だったし、これ使わなきゃやばいなあと焦る内容だった。
「みなさん自身、どうでしょうか。これまでをふり返ってみて、必ずしも自分が活躍できた現場ばかりでしたか?」
全員が微妙な顔をする。
しょうがない。死の星となった地球を救うために宇宙を旅する戦艦に乗った船員たちほど、自分たちはまだ組織として成熟していない。
そこが吸血鬼と語った現状の私たちの弱点であり、改善点である。
情けない話だが、これは学生時代に本格的に取り組んでいない課題でもあった。
「真中さんの立場でも、南さんの立場でも、それぞれに私が想定する解答をいただきました。十分です。そしてふたりも当然、みなさんと同じように感じていることでしょう」
もちろんだとも。
「そこで話は最初に戻ります。問題はこうでした。つまり、適切な人材配置とはなにか?」
ページは次に進むけど内容は問題表示に戻る。
「実務者は問題の対処を被害を出さずに行ないたいし、社長はコストを抑え、社員を適切に配置してより実務のレベルと数をこなしたい。そして株主は業績をあげてもらって配当金が欲しい」
おいしい思いをしたいっていう欲望こみなら、私は働きに見合った給料が欲しいし、ルルコだって儲かりたいはず。
後輩たちも聴講に来てるこの場で言うことじゃないから我慢。
「あと、これを忘れちゃいけませんね。みんな、がっつり儲けたい!」
いや、あんたが言うんかい!
お茶目か、吸血鬼。恐るべし……。
「儲けるためにはどうするか。商材を認知してもらい、取引件数を増やす。コストをカットしてマイナスを減らすのは、わかりやすい手ですが奨励はしません」
いや。しれっと言うけど、世の中コストカットの嵐ではないだろうか。
「現状、商品価値は決して高いとは言えません。ただし、話題性は増しています。良くも悪くもとついてしまう微妙な状況ですが、うまく転がればでかい商機が訪れるかもしれません」
け、れ、ど、とアイドル時の営業ボイスで急にどきっとさせるのやめてほしい。
「基本的にひとつの商材に依存するのは好ましくはありません。なぜならば業績が商材の状況に左右されてしまい、悪化したときに立て直しを図るのが難しくなるからです」
アイドルボイスのあとで語る内容がこれって、どうなんだろう。
ハルちゃんが来てたら、早々に思考放棄してそうだな。あの子、難しい話は聞き流すところがあるからなあ。マドカちゃんとキラリちゃんがついているし、最近はしっかりしてきたけれど。
入学したばかりの後輩を思い浮かべておばあちゃん気分で心配してどうする。
老け込むばかりじゃないか。
やめたいのに、アリスが膝の上で気持ちよさそうに寝ていて切ない。
私だってルルコと同じでまだ高校を卒業したばかりなのに。
「なにも商材に限った話ではありません。邪との戦闘でも、自分の担当する侍の刀の直し方でも、あるいは日常の些細な悩みを相談する相手でも同じ。成功体験に満足してひとつに依存すると、それがダメになったときの立て直しが図れません――……が!」
突然つよめの、が!
「仕事においては分業を徹底して、やるべきことを可能な限り限定したほうが望ましいです」
さっきと真逆の話のように続けるなあ。
「職務におけるストレスを減少させ、かつ業務を特化して継続して行なうことで技術レベルを高めることができるからです。逆にひとりでなんでもかんでもやろうとし、俺が俺がと前に出ると抱えきれない業務量になってパンクするか――……または」
講堂のどこかを彼女はちらっと見たが、しかし誰に呼びかけもせずに続けた。
「ひとりにあらゆるノウハウが集積されすぎて、そのひとりに依存する体勢となります。このとき、さきほどのひとつに依存するのは危険だという話に戻ってきます。リスクはシンプル。そのひとりが辞めたら、その職場はどうなるのでしょうか?」
ああ……容易に修羅場が想像できるなあ。
「基本的には業務を分担し、誰がどれを担うのかを徹底することが望ましいですね。たとえばスケジュールのみを管理する立場も企業によっては存在します」
意外っちゃ意外かな。
たとえば――……そうだなあ。ゲーム会社だとディレクターさんやチームリーダーあたりが兼業でやってそうだし、ちゃんとしたIT企業ならひとりで担当している人がSEあたりにいそう。タクシー会社の電話応対している人や、配送をお願いしている人あたりも把握してそうかな。漁協の人とか、どの船が出てるか知っているイメージあるし。
でも、のみっていうとどうかと考えたら、微妙。
それだけをする人って、あまりいそうなイメージがない。
「情報は共有することに価値があるし、ノウハウは蓄積して共有することに価値があります。社内に残る経験値は、実は業務をこなすだけでは曖昧なままです。なので分析して具体化する作業を経て、経験値に変える作業を行なう必要があります」
これはいままで何度か話題に出したことがあるし、ハルちゃんあたりも承知していることだ。
大事なことだと改めて認識する。
「どの業務でもそうだと考えているため、体力がある企業は社員教育を行なっています」
もっとも、と彼女は声を潜めた。マイクを通しているので、ばっちり聞こえているけれど。
「優越的立場にたつとろくなことをしないのが人っていうものです。たとえば就活。セクハラやパワハラを行なっているところも残念ながら存在するようなので、おかしな教育だと思ったら関わらないほうが吉です」
ルルコの会社で働いているとはいえ、ひとごとに思えない。
なにせ邪討伐でたまに出くわすんだ。恨みを晴らしたいという欲望から生まれた、えげつない邪と。
「話を戻します。適切な配置が必要という話題でしたね」
横道に逸れたのは意図的に違いない。
時計を確認したら、あとすこしで予定時間が終了しそうだった。
「それぞれの仕事を専門に応じて部門ごとに分け、さらに内部でチームを結成しましょう。全体を構成する個人個人の力を整理してわかりやすくしたほうが、みなさんも大勢でひとつの巨大な事件に対処するときに、どう動けばいいのかイメージがつくようになるのではないでしょうか」
ひとまずここまで、と言ってすぐにチャイムが鳴った。
時間ピッタリ。ここまで計算尽くで話していたのだとしたら、あの吸血鬼なれすぎじゃないか?
企業向けの講師という仕事も世の中にはあるそうだ。
セミナーと聞くとうさんくさいものも含まれるけど、もちろんまっとうなものも含まれる。
明坂ミコ本人から言われたことだが、言われたことを鵜呑みにするのではなく、現存する資料と話と自分の感覚を突き合わせて咀嚼するターンが必要だ。
「みんなの能力をもっと具体化しなきゃダメかー。愛生、どうしよう」
「綺羅とかジロちゃんあたりに相談しよ」
侍に関しては綺羅が、刀鍛冶に関してはジロちゃんが一番把握している。
顔が広いんだ。ふたりして。
「部門かあ……部門ねえ……なに部門かなあ」
ルルコの向こう側でユウヤがため息交じりに立ち上がる。
「そりゃあまあ、総務とか販売とかだろ。でもたぶん、ミコさんの要求は事業部化だろうなあ」
「遊園地とかのエンタメ事業部と、芸能活動の芸能事業部。で、邪討伐や調査を担う警備事業部と、邪に苦しんでいる人たちのカウンセリングを担うカウンセリング事業部とか?」
前の座席に座っていたサユが隣の光葉と立ち上がって提案してきた。
不意の発言だったけど、結構考えられている気がする。
「エンタメ太くしたいなあ……」
力尽きてふにゃふにゃに倒れてくるルルコに寄っかかられながら呟いた。
「採算が取れればね。いっそ宝島のテーマパーク化ができればなあ」
ルルコとふたりでぐだるだけの理由はある。
討伐は派手だし目立つけど、ずっとそれ一本で食べていくならぶっちゃけ警察の侍隊に入ったほうが安定していると思う。
依頼する人が現代で出てくるってことは、現代で邪の影響が出るほどの事態になっていることを示す。なぜならば、隔離世の邪がよっぽど放置されない限り影響は出ないのだから。
それほど育った邪の相手をしなければならないとなると、戦闘自体がハードになる。
そうなる前に手を打つのが各都道府県の侍隊の任務でもある。
そもそもの依頼件数自体、社員みんなの口座を潤すほど存在しないのである。
警察の侍隊、ほんとよく仕事してるよ。尊敬する。おかげで私たちの給料は正直いまはすかすかです。
みんなしてじりじり貧乏になってる感覚に恐れおののいているところなので、正直あの吸血鬼の株を握られたらやばいぞジョークは脅し文句のように、私たちにかなりきいている。
「プロジェクションマッピングよりど派手なパフォーマンスができるから、実は羽村たちダンス部と相談中。バズりそうな動画が撮れたら見せるよ」
「おねがいい……」
くたくたのルルコにもたれられて、膝ではアリスがまだ爆睡中で、今日の講義はまだあるのに私はどうしたら。
「宝島に行きたいなあ……」
わりと本気でいますぐ行きたい。
でも、まだたどり着けていない。理由はある。
順調に滞りなく移動中なのだが、島にみんなで行くための手続きがあるそうだ。
私たちが現代で行った宝島は最初、死んでいたといっていい状態だった。
けれどこの時代では違う。
かつての栄華のまま、島は浮かんでいるそうだ。
神々が来る島ともなれば当然、土足で気軽に行けるわけもなく。
「パスポートとかいるのかなあ」
「それが必要ならさーあ? ルルコたちこんなに待たされてないんじゃない?」
「明日になるかもしれないって」
ルルコだけじゃなく光葉までうんざりした声をだしてきた。
まさか何百年も昔に来て、海外旅行で問題発生! みたいな目に遭わされるとは思わなかったよ。
橋渡し役を担う明坂ミコがここで講義をしている時点で、長期戦の構えも覚悟しなければいけないかもしれない。
いっそ、現代の宝島に行けたら便利なんだけどね。
さすがにそれはまずいかな。
時空の歪みが広がる――……! みたいなことになりそうなので、無理を言うのはやめておこう。時任姫ちゃんの負担が増えるだけだと思うし。
「チームだよ、チーム! トリオとか、コンビとか、そういうの! どうするの!」
「机をべちべち叩かないの」
荒ぶるルルコに指摘しながら考える。
高等部にいた頃はどうしたって、クラス編成とか運用に適して組まされていた。
侍隊にみんなでなったとして、所属が高等部と一緒になることは稀だ。
結局その場限りの即席チームになりがちなんだよね。期間限定、三年間の仲間とかね。
でもルルコが会社を作ってくれたおかげで、私たちはもっと一緒にいられるようになった。
「前向きに、みんなでどう組みたいか相談するタイミングかもね」
「ミコさんに言わせりゃ、俺らはそのへんできてなさすぎなんだろうけどな」
「だから教えてくれてるんでしょ? 相談して、決めてこう。別に決めてもそれが最終形ってことにはならないしさ」
「だな……やるか、仕事」
「楽しく前向きにね」
もっとルルコとサユの三人で連携できるなら、試してみたいことがある。
他のメンバーもそれぞれに、自分はこうしたいとか、誰かと何かをやってみたいとかあると思うし、ここからは積極的にアイディアを出し合ってみるターンかな。
私の膝で寝ている子を見た。
それにしてもこの子、この時代に来てからしょっちゅう寝っぱなしなんだけど。
だいじょうぶか?
「アリス?」
そっと名前を呼んで肩を揺さぶるけれど、ベタな寝言も吐かずに寝息を立てるだけ。
なんでかな。
私はそれがひどく気になったのだ。
つづく!




