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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第八十一章 原点回帰!? 室町宝島!
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第九百三十四話

 



 足を投げ出す奴もいれば、組んだり片膝を立てたり。

 女子風呂がどうかは知らないが、男子風呂では一年生も一ヵ月もすればくつろぎ始める。

 どちらかといえば体育会系だが、あまり厳しい上下関係はない。

 それでも暗黙のルールがないわけではない。

 みんな、自分の同級生以外の生徒が多い風呂には入らない。ゆるいって? そんなもんだ。

 なのにここ最近、俺はそのルールの外に追い出された気がしている。


「やっべ……すごいっすね、先輩」

「姉さんの昔の好きな人って噂は聞きましたが、青澄先輩の彼氏ってハードそうですね」


 日高と天王寺がふたりして、しみじみと俺の背中を眺めていた。

 岡田や藤堂、ワトソンら一年九組の男子だけでなく、八葉たち二年生もいる。

 集まってる。群がってる。野郎の背中を見てなにが楽しいのか。


「「「 ぶっちゃけ、エロい…… 」」」

「やめろ! 人の背中を見て怖いこと言うな! あと妙な妄想をするなよ!?」

「「「 いやあ…… 」」」


 なんだよ、いやあって!


「やっぱ日常の関係性の違いなんすかねー。先輩、聞いてもらいます!」

「そこは聞いてもらえます? って言えよ……なんだよ、鷲頭」


 面倒くさいのに早々に絡まれた。


「ユニスが冷たいんです!」

「えええ……平常運転じゃないか?」


 知らないよ、そんなの。

 それでばっさり斬るのも無体なので話を聞くことにした。

 背中の話題から逃れられるのがポイント高いな。


「なんか最近、手を繋ごうと指先が当たるだけでファイティングポーズとるんですよ! 殴られるのかなあ、俺!」


 知らないよ?

 聞かれても答えは俺の中にはないよ?


「やっと! やっとの思いでハグとかできるようになったと思ったら! こないだなんか、それ以上近づいたら物理的に死ぬっていわれたんです! 物理的にですよ!? これがなにを意味してるかわかります!?」

「わからないよ」

「なんでわからないんすか!」

「俺がスチュワートじゃないからかな……」

「ユニスの気持ちになってくださいよ!」

「お前がなれ。なあ。お前がなれ。俺がスチュワートの気持ちになってお前に言うの、一歩引いてみるとけっこう気持ち悪い絵面になるよ? いいの?」

「つうか先輩、もういっそこで化けてみせてくださいよ! 裸じゃなくて水着くらいで!」

「先生に怒られるわ! っていうか彼氏なら野郎だらけの風呂で彼女の艶姿を晒そうとするんじゃないよ!」

「偽物でもいいからはぐしないと、俺っ、この場で死んじゃう病気にかかっているんです! 俺がここで犬神家のスケキヨみたいになってもいいんですか!」

「近い近い近い近い! 寄ってくるな! お前には休みが必要なだけだ! 落ち着け!」


 そのへんにしとけと相馬が鷲頭の頭を小突いて、やっと鷲頭が落ちついた。

 まったく。妙なハイテンションで迫ってくるとは。

 昨夜つれなく袖にされて悲しんでるとかか?


「ちぇっ……まあ、そっちはてめえでなんとかするんで冗談ですけど」

「そのわりには必死だったぞ!?」

「いいからいいから。ぶっちゃけ、先輩は化けられるんすか? ほら、忍者の漫画で主人公がエロい女に化けてましたけど。あれやれます?」

「えええ……?」


 鷲頭の問いかけにすこしだけ考えてから答えた。


「一応、修行しているからできるとは思うが」

「「「 ほんとに!? 」」」

「圧が……圧が怖い」


 前のめりになって聞いてくるほどのことか?


「いや、でも先輩はその必要すらねえよな」

「言えてる……背中の傷が物語ってるよな……」

「なんか格好いいな」


 後輩たち、待て。

 その認識はおかしい。


「やめてくれ。なんだよ、背中の傷が物語るとか。格好よくはないだろ。戦いの傷みたいに言うなよ。だいたい戦いの傷なら背中は恥だろ」


 さっきの漫画理論で言うなら、三本の刀で戦う奴が言ってなかったか?


「やっぱ青澄となんでもやってるんすか? それとも、案外夜は捻ったプレイはなし?」


 聞いてはくれないわけね。

 鷲頭のドストレートな質問に答える気はないぞ? ない。だって、やだろ。

 春灯と約束したし。赤裸々なことは言わないって。だから言わないけども。


「お前はなにかしたいことでもあるのか?」

「あ、それ聞いちゃいます?」


 面倒な返しが来たよ。またしても。

 面倒くさがる俺の顔を見て、ずっと横で見てた八葉がにやけながらも割って入ってきた。


「ユニスちゃん、綺麗な金髪美人じゃないっすか。で、ミナトの野郎は着せたい服があるそうなんですよ」

「あー。コスプレ?」


 ルルコ先輩がやるのとは別の。大人が行くお水な店とか、ハロウィンとか、学園祭とかでやるようなノリの。


「や! それも視野には入れてますけど! ひとまず、ほら。ないですか? ベビードールとか、そういうの! 先輩はないんすか! あるなら言えよ、このやろー!」


 鷲頭がうっとうしいよ! なんだよ。朝から元気すぎか。持てあましてるのか。あましてなきゃこんなテンションにはならないか。そうか……。


「あるから彼女に言ってるよ。春灯も俺に言ってくるし」


 服は仕事への外出時とかデートのときが多いけどなあ。


「だめだ。先輩は充実しすぎていて、俺の苦労がわからない!」

「なんだその反応は。俺が悪いみたいに言うなあ、おい!」

「服もアクセも、ユニスのハードルめっちゃ高いんですから!」

「お前の好みがハードルを越えられていないだけじゃないの? 彼女の趣味にまず歩みよらないと、向こうも気に入らないって気持ちが先にきちゃうとかあるんじゃないか?」

「そういう正論いま求めてない!」


 ええええ。

 清々しいくらい自分に正直かよ。

 鷲頭のハイに一年生たちも八葉もあきれ顔だぞ?

 あと、みんなして俺にちゃっかり鷲頭を押しつけてるの、気づいているからな!?


「先輩はどうなんすか! たとえば青澄に、ライブ衣装でえっちしたいって言ったらうまくいきますか!?」

「なんだよそのチャレンジ!」

「無理でしょ!? 無理なんです! いくら土下座し倒したって、ユニスが俺の格ゲーキャラのコスプレしてくれないようにね!?」

「視野に入れてるどころかがっつり前向きに検討中じゃないか! お前のその圧に引いてるだけだと思うぞ!?」

「でも見たい! 写真撮りたい! そしてあわよくば動画も! そのあとも! ユニスの違う一面を見てどきどきしたいんです!」

「引いてるな! ぜったい引いてる! それだけのことだと思うぞ!? 落ち着け!」


 拳を掲げて吠える鷲頭はちょっとどうかしてる。

 欲求不満がたまりすぎて、圧が増して彼女がさらに引く。

 悪循環に陥っていそうだなあ。


「自家発電でもしろよ。な? それか別のことでスッキリするなりして煩悩を解消してから、彼女のことを考えろ」

「先輩……わかりました。最後に俺の決意を聞いてもらってもいいですか?」


 なんだよ、もう。ここまできたら聞くよ。


「なんだ?」

「俺、今回の旅で着せる技を開発できないかなって」

「いい加減にしろ!」


 思わず小楠の真似して湯船の水をハリセンに変えて叩いてしまった。

 まったく!

 相手の合意は条件にすら入らない。当たり前になければならないものだ。

 それを勝手に着せるなどと。

 ――……だが、もし合意があるのなら、どうか。

 春灯と事前にデザインを詰めて、霊衣の進化や装備の追加に活かせないか?

 ぷちたちも俺より先にすくすく成長中のようだし、ぷちたちと一緒に春灯らしく戦えるような装備を考えてもいい頃合いだ。

 正直、春灯の侍としての資質は未知数な部分も多いが、それでも天国で修行するほどの資質と可能性と実績を積み重ねている。身の丈にあった装備をと考えるべきだ。

 俺自身の装備にまで気が向くかというと、なかなか難しい。

 三足の草鞋で歩く方法をまだ身につけてもいなければ、模索する余裕もない。

 現代にいたら、さらに演技という仕事が乗っかってくるわけで。

 そう考えたら、この時代に飛ばされたのは逆にポジティブに活用できる気がしてきた。

 時間を区切ってひとつひとつ集中してみよう。

 春灯の装備を。ぷちたちの装備を。俺なりにというだけじゃなく、春灯とふたりで探してみよう。

 となるとだ。

 そろそろ観念して、小楠の誘いを受けて俺自身の装備について相談に乗ってもらったほうがいいかもしれない。

 進路決定も間近。むしろ高三なら、いい加減決めとけって時期だな。

 でも、その先もずっとずっと意志決定のタイミングはやってくるんだ。続いていく人生で、ゴールはなし。どしっと身構えていこう。

 勝手にテンパってひとりで抱え込まなきゃいけない理由なんてないからな。


「鷲頭」


 八葉たちと盛り上がっている鷲頭に呼びかけると、朗らかな顔で俺を見てきた。


「なんすか? 心配してくれたとか?」

「スチュワートとの話、うまく進むといいな」

「ども!」


 気負いなく笑える鷲頭は俺よりしっかりしてると思う瞬間がちらほらあるんだよな。

 去年度、春灯がアメリカに行ったときに出くわしたけど、同じ飛行機に乗り込む手配をしたのは鷲頭だったと聞いた気がする。

 ワトソンも鷲頭を主のように敬愛している節があるしな。

 さっきのコントじみたやりとりをするときのばかさ加減も、いい気の抜き方と思えばありだ。

 それにしちゃ必死すぎたけど。

 それも、まあ。それだけスチュワートに本気だと思えばいいか。

 湯船からあがって、軽く体を流しながら考える。

 コスプレね。

 春灯が好きなドラマじゃ主人公が友達の妹と不正確なプレイをしてたけど。

 あいつが喜ぶ、したいことってなんだろうな?

 体に絵の具でシーツにダイブしてペイントごっことか?

 わからないなあ。

 俺自身はどうだろう。現状に心の底から満足しているし、もっと遊んでみるのも悪くないとも思う。

 一歳差なんて社会に出たら些細な誤差になりそうな気がするけどな。

 俺もあいつもまだ高校生だし。学生にとっては年がひとつ違うって結構でかいもんなあ。

 先輩と後輩プレイとか?

 あいつにいまさら先輩って言われたら笑っちゃいそうだけど。

 ちょっと楽しそうだと思ってしまうの、もしかしてやばい?


 ◆


 やばいなあ。

 やばいですよ?


「理華、ずっと本よんでる……もうちょっと見てくれてもいいのに」

「ちょっと。聖歌、いちいち理華を見ないの。いまは私のターン」


 ふたりの仲間を部屋に入れて朝ご飯もほどほどに、昨日の授業で手に入れた本を広げてぱらぱらと眺めていました。

 どうも! 立沢理華です!

 春灯ちゃんがくれた指輪がくれる力の形は刀ひとつに限らない?

 ううん、たぶんその解釈は間違い。

 ベースは刀なんですよね。けど、それはあくまでも御霊が宿ったものの象徴なんです。

 じゃあ、ここで問題。

 人の心の力が霊力で、霊力から霊子が生まれます。そして御霊は霊力の固まりとします。御霊が具現化したものが刀だとしたとき、御霊を宿した人の霊力が具現化したものはなんになるのでしょう?

 そう。そうなんです。

 私の推測では、指輪から出せるこの本はまさしく私の霊力の固まりだと思うんです。

 現世に生きる人の霊力の具現化したものって、私の知る限りじゃ御珠くらいのものなんですけど。


『天使と悪魔の羽根や尻尾、あるいは角。人狼や獣憑きたちの獣部分なども、中にはその者の霊力の具現化と言えなくもないが』


 お、正解したら別の例もくれちゃう奴? 解説編ですか?


『まあな。だが、これは愉快な可能性だ。閻魔姫のメモ帳で思いついたか?』


 ぶっちゃけね。

 因果応報をより使いやすくするために、相手の天使と悪魔の要素や因果がまとまった本が欲しいなあって思っていたんです。

 願えばファイルに変わるし、何度もタブレットにすることも考えたんですけどね。こういうのってレトロなほうが雰囲気でるんですよね。鮫塚さんに言わせれば、たぶん浪漫って単語になるんでしょうが。


「今日の朝ご飯、炭水化物多めでしたよね-。聖歌はもりもり食べてましたけど。美華、お腹周りだいじょうぶそうですか? どうせ用意した服ってすっごくタイトなやつでしょ?」

「ええ、そうですよ。ちょっとぱんぱんに見えちゃうかな。サイズを調整する」


 きびきびとメジャーを手に動く美華は、ブティックの店員さんみたいだ。

 持ち込んだアタッシュケースの中身を広げて、聖歌を着飾っている。あとで私もお任せする予定。

 学校から今日は服装もゆるめでいいと言われたので、どんな服を着ようかと話題になったんですよね。そのとき美華が、実は私たちの服も込みでいろいろ持ってきたと恥ずかしそうに打ち明けてくれたんです。なので全力で頼っちゃいました。

 可愛く拗ねる聖歌には申し訳ないんですが、刺激的なんですよね。この本の中身。


「理華、炭水化物多めな理由と本の中身なにか教えて?」


 ふたつの質問が全然結びついてないの笑える。


「その国の基本的な食料の値段はそのまま命の値段に直結していると考えるんですけど、それってエネルギーになる、言い換えるとカロリーになる食品になりがちじゃないかなって思ってて」


 以前も話したテーマでもあるんです。肥満と貧富の関係性。


「逆に言えば最低限、これ食べておけば問題ないとか。あるいは刺激的なものほど大衆に浸透しやすいし、値上げに慎重な食品が増えていくかなあって思うんですよね。小麦とか、米とか、油とか」


 このあたりの知識は私にはまだまだ足りないので、いまの私の考えでしかないですよ? あしからず。


「ヘルシー志向という一種、嗜好がわかりやすく反映される食品は金になるし高くなる傾向があります。日本だと例えばダイエット用のこんにゃくライスとか、肥満対策になる油とかね」


 たぶん、美華なら知っているんじゃないかな。

 明坂の人たちはひととおり試していそう。


「野菜や肉や魚はね、よほど品薄で価値が必然的に高まるものならまだしも……果物あたりは結構お高いですよねー」


 ページを探してめくりながらも口は動かす。


「生活に直結した食品はなかなか値段があがらないようになってますけど。いったいどれほどのお菓子が実質値上げになってすっかすかになったかって話でもあるんですけど」


 だいぶ横道に逸れてきたな。

 目当てのページが見つからないのがいけない。このあたりの開きやすさには改善の余地あり。

 ファイル形状にしたほうがいいか。いや、まずページ構成を考えないとだめだ。

 中身が充実していればいるほど、扱いやすさは大事だ。


「話を戻すと、安くないと困るんですよね。炭水化物。過剰に摂取せずバランス良く食べるなら健康被害に繋がらないと思うし、なにより大事ですから。炭水化物」


 ダイエットで真っ先に敵視されるものでもありますけどね。炭水化物。

 そもそも最近のダイエット論はどこもかしこも宗教じみてきているので、あまり深掘りしたくないんですけどね。マルチとかも横行しているようなので。実際それで中学時代に何度かひどいことになってる人と接して、鮫塚さんに助けてもらったことがありましたっけ……。

 やだやだ。こわいこわい。


「で、大事になってくるのは、よく噛んで食べること。これもちゃんとした理由があるんですけどね。隔離世だけじゃなく、現世でも強くなるって目標で修行中のいまの理華たち士道誠心学院の生徒には、炭水化物がけっこう大事なんですよね」


 何度繰り返すねん。いっぱい言ったほうが頭にこびりつくねん?


「だからって三回もご飯大盛りでおかわりされると、純アイドル路線から外れるとしてもきつい体型に近づくの。なのに何度も止めても食べるから! 持ってきた服がきつい!」

「美華がぷりぷり怒ってますけど、おかずもしっかり食べてるから大丈夫じゃないです?」


 野菜めっちゃ食べるんですよね、最近の聖歌って。


「消化して出すもの出したらすっきりしますって」

「たくさんだすよ!」

「おふたりさん!?」


 悲鳴をあげる美華に私は聖歌と一緒に笑う。

 だいじょうぶですよ。外では大丈夫なとき以外、言いませんし。


「快食快便、大事ですよ? 腸内環境を整えて、長くおいしく食べられるように日々の食事をしっかりしましょう。それが今日明日の理華たちの生活を太くします」


 で。


「話を戻すと、炭水化物が多いのは現状抱えた食品類の中で安くて他の食品よりも貯蔵に余裕があるし、補給の目処が立ったから。そして、体作りのためになるからかな」

「本は?」


 休憩なしでくるなあ。


「昨日、みんなを圧倒してた。なにが書いてあるの? 魔法?」

「魔法もあるんですけどね」


 これは嘘でも誇張でもなくね。

 ユニス先輩みたいな魔法もあるっちゃあるんです。

 御霊繋がりで、指輪の知る魔法の記載があります。

 でもいま探しているのは、魔法じゃないんだなあ。


「理華の会った人たちの因果を、理華が探った範囲でまとめてありまして」


 聖歌と美華を信頼して言っているだけじゃない。

 いろんな布石のために明かす真実。


「見つけた。瑠衣のページ!」

「なにが書いてあるの!?」


 背中にのしかかってきたの、聖歌かと思いきや美華でした。

 男子には興味ありませんってはっきり言っちゃう子なのに、意外。


「みたいみたい」


 聖歌のほうが大人しいかよ。

 ベッドの上で座っている私の向かい側に聖歌が、背中に美華が。

 挟まれてるなあ。隠す気もないんですけどね。だから探していたわけで。


「瑠衣には内緒ですよ?」

「「 もちろん! 」」


 ふたりの笑顔たるや。

 こういう内緒話、好きですよねえ。

 ふたりはそういうタイプだと思ってましたけど。

 予想よりずっと美華の食いつきがいいのが予想外かな。


「日高瑠衣。忍びの者。隔離世で諜報活動と邪討伐を担う忍者一族の子孫。理華に惚れてます」

「「 もっと面白いこと! 」」


 欲しがりますね!


「年上に苦手意識と憧れあり。故郷で年上に厳しく躾けられたため。そのため勝てないと思う手強い女子や年上の女性に弱い。ただしそれらの女性に優しくされると脆い」


 覚えがありますねえ。

 春灯ちゃんに優しく話してもらうだけで、瑠衣は骨抜きですからね。

 キラリちゃんにからかわれて赤面する場面も見たことがありますし。

 マドカちゃんに頭を撫でられてでれでれしてました。

 むしろ年上に弱いだけじゃね? という勢いで、瑠衣はちょろいんですよ。

 里での環境がきいているっていうの、しみじみしちゃうなあ。

 理想像の形成って、育った環境に起因しているケースが多い気がしますよ。

 それがすべてとも思いませんけどね?


「で」


 反応がないふたりを見たら、そろって私を黙って見つめてました。

 ふたりがもっと欲しがってそうなので、読みあげます。

 いや、そばにいるんだから自分で読めばいいじゃんって話なんですが、これには理由がありまして。

 実はいまは私にしか読めない文字で表示しているんです。

 紙なのにね? タブレットのように私の思い通りに表示できちゃうわけなんです。

 中身まで整理してないし、どこになにがあるのか把握できないところが未熟なポイントなんです。このへんは改善しなきゃですね。

 ちなみに一種の防犯機能としては便利ですし、なにより雰囲気でるでしょ?


「瑠衣が――……」

「「 瑠衣が? 」」


 おもらしとか初めて告白したのはいつで誰かとか、そういう因果を言うのは人が悪いのでなし。知りたいと思わないし探ってないから、この本には載ってませんし、私の知識にもありません。念のため!


「理華と手を繋ぎたがるのは」

「「 手を繋ぎたがるのは!? 」」


 こういう話題のノリがいいの、私だいすきですよ!

 ふたりとも可愛いなあ。


「お母さんがお父さんとの思い出話で、初めて手を繋いだときの幸せを語ってくれて。それに憧れたからなんだそうです」

「「 意外と可愛い理由! 」」


 ぶはっと吹き出す美華と、にやにやする聖歌。あれ? 私の予想だと人とリアクションは逆の組み合わせだと思っていたんですけど!

 ちなみにこれは私が探ったのではなく、瑠衣が私に教えてくれたことなんですよね。

 あんまり愛しかったので、他の人にも教えていい? って確認済み。

 本人の承諾は得ているので、伝えました。

 それ以外のことは言いませんよ? それはさすがに可哀想だし、ひどいことなんで。


「スバルのこととかわかるの?」

「待って。私たちのことも?」


 次々に声を掛けてくれるのは嬉しいんですけどね。

 先に答えるべきは、美華の問いかけかな。


「基本は因果応報の術を使った人です。で、次に理華が普段付き合って、この人のこういう一面はこういう理由があるからなんだって思ったら、それも記載されます。要するにメモ書きですね」


 足を組んで、指先で紙面を撫でながらルールを整理する。


「次に、理華が目撃した行為なんかも記載されます。基本的には、行為に対する原因の記載形式かな」


 例えば、そうですね。

 シャルロット・アイオライトのページだと、


『シャルはいったいなぜ幼女になったのか。青澄春灯のライブ事件に詳細あり』

『なぜ以前、シャルは教授だったのか。現在調査中』


 こんな感じの記載です。

 なるべく簡易にまとめてあります。

 青澄春灯のライブ事件という箇所に触れれば、ページに春灯ちゃんのライブでなにが起きたのかをシャル絡みでまとめた内容が表示されます。より詳細を見たければ、それも可能ですよ。

 便利なノートなんですけどね。

 記憶と記録のリンクがまだまだ不十分なんですよね。

 整理も不十分ですし。このあたり、私の頭の中身みたいで複雑です。


「だからいま、美華が持ち込んだ洋服を聖歌に着せて楽しんでいるのも記録されてます。スバルも私が知っている限りの記述がありますよ?」

「「 つまり、日記帳? 」」

「だけじゃないですけどね?」


 言い得て妙ですかね。日記帳プラスアルファかな。


「強いて言うなら――……そうだなあ」


 昨日のネーミングがふたりに浸透してないから、もうちょっとわかりやすいほうに寄せてみるとすると。


「理華版、黒の聖書ってところですね」


 あ、これいいかも?

 ちなみに黒の聖書とは春灯ちゃんの中学生時代の、本人曰くこじらせ日記帳。

 一冊じゃないからね。何十冊とあるからね。

 さらにはネットで公開されてますからね……。

 誰か知らないけど、ほどほどにしてあげて。死んじゃうよ。恥ずかしくて。私なら無理ですよ!


「「 おお…… 」」


 え。あれ!? 微妙な反応!?

 おっかしいなあ。私なりに名案だと思ったんですけど!


「理華の黒歴史も書いてあるの?」

「いや……理華の場合、もっと無感情な自分の記録とかじゃない? あと失敗も込みで、分析も書いてありそう」

「理華にとってはそれこそ黒歴史なんじゃないの?」


 ふ、ふたりとも私のことをよくご存じで。


『頼もしい友人がいて結構だな。で? こんなにのんびりしていていいのか?』


 そうだった。

 信頼できるふたりに本の紹介をして、どういう反応をするか知りたかったんですよね。

 それ次第で、今後ほかの人にどう紹介するべきか探れるので。

 言い方も、ふたりがどう伝達するのか意識できるように選びたかったんですよ。

 でも、それももう済んだので!


「じゃ、そろそろ着替えましょっか。ほらほら、立った立った! 聖歌から仕上げちゃいましょ!」

「よしきた」


 なんだかんだ、朝から美華がハイテンション。

 もう終わり? と首を傾げる聖歌の愛らしさに、さっさと本を消して彼女の頭を撫でる。

 授業がありますからね!

 宝島に行くとなったら、島でのカリキュラムに向けて準備ですかね?

 なんなら今日は、朝はゆっくりでいいし服装も自由でいいというから、お休みとか?

 それかレクリエーション?

 なんでもあり得そうですが、目的は現代に戻ったときに揺るがない自分たちに育てること。

 生徒会長の思惑とは?

 こうご期待ってことで、今日はここまで!

 後半のお相手は立沢理華でした。またね?




 つづく!

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