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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第四十七章 大江戸化狐、花咲金色天女帳

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第五百十六話

 



 ルミナに連行されて私はノンちゃんが作った着物を身につけていました。

 カメラを構えているのは放送部のメンバー、女子のみ。いま撮影されているのはノンちゃんたち刀鍛冶特製下着を身につけたキラリです。

 何をしているのかって? スマホの電波がないしネット動画も見れない。テレビすらない! あんまりにも退屈すぎるからこそ、現代っ子の私たちのために番組を作ろうってルミナが言い出したの。

 番組をただ流すよりは宣伝も流しちゃったほうがよくない? それも私たちの生活が楽しくなるような奴! と言うので、ただいま宣伝撮影なう。

 見惚れるプロポーションのキラリが下着姿で撮影を終えて颯爽と歩いてくる。堂々としてる。すごい。惚れ惚れしちゃう。

 監督をやってくれているルミナに呼ばれて私も前へ。

 着物姿の私がやる宣伝は「こんな着物素敵だよね」というものだけではなくて……。


「刀鍛冶、準備は?」

「できています!」「いつでもどうぞ!」


 ノンちゃんと日下部さんが声をあげ、柊さんが拳をぎゅっと握っていた。

 そうなんです。準備がいるんです!

 アクション! と言われて私はくるくる回るように踊っていくの。歩いてきたノンちゃんと手を取った瞬間に色褪せてくたびれた着物が華やかな赤い模様の花魁が着るような豪華な着物に早変わり。

 私はさらに踊る。ノンちゃんと入れ替わりでやってきた日下部さんに抱き留められて、着物が今度はミニ丈のくの一衣装に早変わり。引き起こされて私は足をあげたりしながらミニ丈パンツのアピール。

 日下部さんと入れ替わり、最後にとことこ歩いてきた柊さんが跪いて手を差し伸べてくる。彼女の手を取った瞬間、私の衣装はチュニックとズボンになったの。

 とても動きやすい格好から――……三人の刀鍛冶がやってきて、私に触れた。そうしてラストは修道服を模したロングワンピースに。

 はいオッケー! という声があがって、ほっと息を吐いた。

 テロップで出すんだってさ。

 刀鍛冶プレゼンツ、女子に服装の自由を! って。

 自分の格好を見おろして呟く。

 黒い修道服……なんだか、その。


「身体のラインが……いろいろと見えすぎなのでは?」

「そ、そのへんは今後の改良点かな」


 日下部さんが苦笑いで答えてくれた。ノンちゃんと柊さんが口を開こうとしたら、拍手の音がしたの。


「はいはい、女子のみなさん、移動してもらえますか? 次は男子の番ですよー」


 泉くんだ。後ろにはギンたち元一年零組の四人がいる。

 服とアンダーウェアの宣伝はもちろん、女子だけじゃなくて男子もやるの。

 すでに下着姿で待機してる四人に日下部さんが「おおお」と素直に声をだす。鍛えている四人だから、素直にかっこいいのですよ!


「はいそこ! 男子に見惚れてないで移動してー! 時間ないよー!」


 放送部の女子たちに呼びかけられて、あわてて離れる。

 ギンたちを撮るのは放送部の男子たちみたい。でもルミナは続投。きょろきょろ見てるとさ、ユウヤ先輩が遠くから見守っているのに気づいたんだ。

 柊さんに背中を押されて袖に戻るとね? マドカとキラリが着物を衣装に変えてもらって、台本を読み込んでいるの。

 私が近づくとキラリが「はいこれ」って台本を渡してくれた。

 金光星チャンネル、江戸時代出張版の台本なんです! マドカ脚本なんだよ? プロの仕事と比べちゃうと、私たちらしさが生々しく出ちゃう。

 それでも、やる意義はある。


「わいわい楽しむために……私たちが江戸時代に飲まれないために、やるべきこと」


 呟いたら、マドカが笑ったの。


「気負いすぎないで。ハルがカメラを前に決め顔で固まってたら、それだけで笑う」

「ちょっと! マドカ、どういうことなの! 丸顔には決め顔をする権利もないの!?」

「マドカが言ってるのはそういうことじゃないだろ……ああでも、春灯が固まったら、真っ先にあたしが吹く。せめてどや顔にしろ」

「待ってよキラリ、ハルがどや顔でカメラを見てたら、それこそ私が吹いちゃうよ!」

「ふたりともひどくない?」


 私の着物をノンちゃんが衣装に変えてくれるんだけど、入ってきてくれない。むしろ私を見て苦笑いをするだけ。むーっ!


「まあでも……プログラムは多く用意できないけど、晩ご飯を食べてからの四時間の連続生放送ってのはいいな。ルミナ、考えてんじゃん」

「青組の結束はかたいのだ! 息抜きや放送事故回避のために宣伝の数を用意するっていうのもいいよねー。ユウヤ先輩の案だっけ?」

「そうそう。ギンたちの下着と服の宣伝を撮り終えたら、次は岡島くんの特別献立の宣伝を撮るの。これは食材の仕入れ状況に応じて数を増やすってさ」


 キラリが言い出した話題に三人でだべる。仕事でもこういう時間ばかり増えているから、もはや馴染みの空気です。衣装のチェックを終えたノンちゃんが離れていって、三人で台本を眺めながら口も動かす。


「正直、昼飯は限界を感じたよな……」

「調味料がないのは地味にきついねー。獣の脂を確保しているみたいだけど、数が少ないからあんまり自由に使えないってさ」

「ハルは料理手伝わないの?」

「んー。興味あるけど、それ以外が忙しすぎて。今夜にしたって、歌番組一時間やるっていうし」

「軽音、部活に入っても幽霊状態だもんな。江戸時代にいる間くらいはちゃんと奉公しろよ」

「キラリは痛いところを突いてくるよね……まあ、そのつもり」


 みんなで話しながら考える。


「ルミナが撮る十五分くらいのミニドラマが、私たちの後だっけ?」

「ああ。演劇部の連中と、あとルミナの兄弟のフブキが出るって。ルミナとフブキ、芝居やってるって知ってた?」

「キラリは知らないかー。私は知ってるよ。カナタがやる舞台にルミナも出るみたいなの!」

「フブキくんはあれだな。能ある鷹は爪を隠すってやつとみた」

「……まあうまいのは結構なことだ。で? 企画、なんなの? あたしまだ聞いてない」

「それそれ! ツッコミを我慢できるかどうかだよ!」

「――……なんだか、それって」

「まあ待って! キラリ、わかるけど我慢して! ほら、江戸時代でバラエティー要素あるってなると、元ネタが伝わりやすいほうがやりやすいの!」

「笑っちゃいけない、キス我慢みたいなのが発想元だねー。まあわかりやすいからいいんじゃない? お金とるわけでもないし」


 キラリがなんとも言えない顔をして台本から顔をあげた。

 ギンたちがはけていって、岡島くんが調理済みの料理をカートで押して運んでいく。

 調理された料理と果物のなんとも食欲をそそる匂いがするの。

 マドカとキラリも私と一緒で、じーっと料理を見てた。入れ替わりに出てきた四人が離れていくけれど、


「お前ら、そんなに飯に飢えてんのか? 獣丸だしすぎるぞ」


 ギンの呆れた声に三人してはっとしちゃったよね。やばいやばい。涎でちゃった。


「え、えっと。それで、なんだっけ?」

「ドラマでしょ? バラエティー」

「現状、機械に詳しい柊さんのおかげでテープを作れたけど、今日一日がかりでやっと一本。それだとせいぜいCM数本くらいしかためておけないっていうから、ほとんど生放送でやるしかない……というわけで、即興劇でやれるとなると、見てる人にとってわかりやすくて楽しめるルールがいるの。その結果だってさ」

「……なるほどね」


 マドカのマシンガンにその気のなさそうな声で肩を竦めるキラリ。絶対流しているとみた。

 別にいまさらマドカも気にしない。


「生放送四時間の長丁場。現代でもかなりの挑戦だよ。そのトップバッターだからとっても大事。準備は?」

「問題なし」

「いつもどおり」

「そうこなくちゃ。きんぴかぼし一時間やったら、十五分番組四本。突っ込んだら負けドラマ、岡島シェフの今日の献立、ルミナの部屋、ルミナんちでサイコロ振ってけ!、それから生徒会による今日のニュース一時間、最後にハルの歌番組一時間……やるよ!」

「「 おうっ! 」」


 ルミナも私もかなりのハードスケジュール。構うもんかって顔して、ルミナはカメラマンに寄り添って笑いながら見守っている。

 強いなあ、と思う。そういう一面しか見られてないだけかもしれないけど、でも……いつもの自分たちらしさを大事にしようと番組放送を生徒会に提案して実現させるだけじゃなく、主導権を持ってがんばっているルミナはとても強いと思うの。

 続いていくよ。

 岡島くんが説明を終えた。いつか出す予定の豪華な食事のご案内。楽しみでしかない。カートを押していく彼の料理を、入れ替わりで歩いていく私たちは三人そろってまじまじと見ちゃった。そのせいかな。


「明日だすから。楽しみにしててね」


 岡島くんにそう囁かれたの。三人で思わずはしゃいじゃったのは、言うまでもありません!

 スタジオのセットが刀鍛冶によって組まれていく。私たちは記憶を頼りに、刀鍛冶のみんなにあれこれと注文して、再現してもらう。その最中だった。


『館内放送。いつもの声でなくて失礼いたしますわ。二年九組、姫宮ランより、みなさまに予定到達地点に到着、マシンロボはだいだらぼっちモードから水上船モードに移行することをお伝えします。ちょっとばかり、揺れますわよ?』


 ごごん、と足下が揺れた。すぐに壁が取り払われて光が入ってくる。集まっている撮影スタッフが急いで襖を閉じる、その間際に見えたよ。夕日が照らす海が。黄金色に輝く水面が。


『生徒会長の並木コナです。これより広島は厳島神社をモチーフに、海上にそびえる竜宮城モードとして、現金獲得のための準備に移行します。本格始動は明日から、今日はゆっくり休んでくださいね?』


 おー! 竜宮城! 人を集めてお金稼ぎっていうのは理華ちゃんが言っていたことだ。となると、言い得て妙なのでは! 海の上で人を招いてごちそうを振る舞うんだもんね! まあ、玉手箱はないけども。

 眩い夕日に「刀鍛冶は壁に変えろ」って誰かが言った、まさにその瞬間だった。


「待って、照明を用意しつつ海が入るような感じにしよう。開放感があるほうが、絵を見てて楽しいはず」


 ルミナの制止にみんなでなるほどってなって動いちゃうの、すごい。

 迷わずマドカが変更案を提示していく。

 キラリは腕を組んで考え込んでいた。


「き、キラリ、どうすればいいかな」

「できる奴に任せておけ。それよりも、あんたにできることを考えろ」

「……私にできること?」

「明るい笑顔を見せることだ」

「えええ……私、顔だけ?」

「そうじゃなくて。あんたが笑うだけで誰かが笑顔になれる。それはすごいことなんだよ。それにな?」

「それに、なに?」


 キラリは茶化すように悪戯っぽく微笑むの。


「春灯のどや顔、面白いから」

「むっ!?」

「冗談だ。ほんとのところは可愛いよ。でもな、春灯はもっと自分の感覚を大事にしろ。あんたはどうしたいんだ?」


 キラリの問いかけに、まわりを見渡した。

 みんなばたばた動いているけど、楽しそう。

 授業に料理に洗濯に、それだけじゃなくて生存戦略まで。

 そういうすべてが充実していて、楽しくて仕方ないっていう顔してる。


「――……みんなと一緒に、楽しみたい?」

「なら、座布団に座ってどや顔してろ。そしたら、なんか面白くなってくるから」


 適当なんだから、もう!

 でも他にやれることもなさそうなので、キラリの言うとおりにしていたらさ。

 私に気づいた人が端から端まで笑うの。なにゆえ? そんなに私のどや顔はおかしいのですか? ……丸顔が極まっているのかなあ。

 しゅってしたいなあ。しゅって。もう無理かなあ?


 ◆


 仮設保健室から出た理華たちは、互いの顔を見た。

 それぞれに手を伸ばしてみる。指輪がある。理華と聖歌、詩保にひとつずつ。姫ちゃんにみっつ。中にいた生徒会長と強そうな楠ミツハお姉さんは私たちの指輪を調べて、ひとつの結論を出していた。


「解読不能って言われてもね」


 正直なにをどうしたらいいのかわからない。途中で生徒会長がマイクを通じて話した竜宮城のほうが気になってしょうがないくらいだった。


「春灯ちゃんからのプレゼント、かな」


 聖歌の明るい解釈に詩保が笑う。


「それは悪くないかも。でも刀でもないし、刀鍛冶だっけ? でもないんだよね」

「案外……理華と同じで、胸から出せるのかも」


 なにげなく呟いた聖歌の言葉に、姫ちゃんが恐る恐る自分の胸に指輪を嵌めた手を置いた。けれど、


「――……なにも感じない」

「どれどれ?」


 詩保が笑って自分も試してみるが、結果は同じだったみたいだ。


「残念。指輪だけじゃ足りないのかな?」

「まあ、いざってときには何かが手に入るかもって思っておくか。指輪も刀もなしで、美華はすごい強いんでしょ? ねえ」


 詩保に肩を抱かれて苦笑いを浮かべた。


「美華はなんか、人外って感じだった。ツバキちゃんから聞いた話じゃ、翼を生やして空を飛んだってさ」


 私の言葉に姫ちゃんがため息交じりにこぼす。


「やっぱり士道誠心ってすごいね……」

「うん!」


 元気よく答える聖歌はいつだって楽しそうだ。あんたが楽しいなら私も幸せだよ。よしよし。


「部屋に戻りましょう。ご飯を食べて、ゆっくり休んで。一年生会議をして、明日に備えるんです」


 三人の背中を押して進みながら、考える。

 姫ちゃんと詩保は言っていた。指輪を手にしたとき、春灯ちゃんの尻尾は弾けて九本から三本になったって。思い返してみると、私が指輪を手にしたときも同じ現象が起きていたんじゃないか? 先生を撃退して、そして春灯ちゃんに飛びついたとき……春灯ちゃんの尻尾は何本だった? 一本だった――……触って確かめた。あのとき、春灯ちゃんの尻尾は一本だけだった。

 聖歌が指輪を得て春灯ちゃんを撫でて――……そして、たしかに一本増えた。

 指輪の数、というよりも、指輪を与えられた人数と尻尾の数はリンクしている? なんで?


『――……さて』


 どうせ知ってるんだろ? 教えてみ?


『いまの理華に説明しても、理解できるとは――……待って! 海に投げ捨てようとしないで!』


 ほらほら。白状しろよ。


『あの狐娘は御珠、つまり世界の境界と絆を繋げた。いわば擬似的な御珠といっていい存在になっている』


 ふうん……じゃあ九人が限界なの?


『さてな。我も日本の御珠と深い繋がりができた状態で生きている娘と会うのは、これが初めてだからわからん!』


 役に立たねえなあ。


『おい! いちおうは知恵を授けたんだ! 礼を言うならまだしも!』


 へーへー。ありがとな!


『……軽いんだよなあ、いちいち』


 はいはい。


「理華さー。なにひとりでにやにやしてんの?」

「あーうん、まあ、ちょっと考え事」

「……あっそ」


 詩保がやや引いてる。やべえ。いっそなー。指輪の声がみんなに聞こえたらいいのにな。


『そういうのはサポート対象外です』


 いちいち現代っぽく言うなっつうの! 腹立つ!


『理華が喜んでくれるかと思って言ったのに』


 ああああああああああああ!

 はいっ、苛ついた。流していくよ。


「今日の晩飯なにかなー。魚っつってたけど、海に来たってんなら塩くらいは振っててくれよう」


 大根下ろしがあればいうことなし! 醤油があればもう天国!

 そう意気込んで九組女子の部屋の襖を開けた。九組男子も座布団に座って、みんなして待ちかねた顔をしている。離れた部屋で歓声があがった。


「一組からかよ……組分け差別じゃね?」


 スバルがさっそく文句を言う横で、七原くんは笑った。


「空腹は最高の調味料。楽しみにしようではないか」


 これが余裕の差ってやつだな。姫ちゃんが「楽しみだね」って言いながらちゃっかり七原くんの隣をキープしてる。やるなあ。

 詩保はマイペースにキサブロウとスバルの間へ。ワトソンくんは岡田くんと美華と並んで座っていて、三人で意外と気さくに話しあっていた。聖歌は美華の隣へ、私の手を引いて歩いて行く。となると自然、私はルイの隣に腰掛けることになる。

 二組、三組と続いて歓声があがっていくから、九組の部屋はどんどん焦れていく。

 待ちに待ったよね。襖が開いたとき、みんなして深いため息を吐いた。やっときたのかって勢いです。

 運ばれてきたよ。カートに乗って、いくつもの小机が。

 並べられていく小机が自分の前に来て、思わず「おおおおおおおおお!」と声をあげてしまいました。やっべ、超はしたねえ。けどしょうがねえ。いくつも乗っている皿や丼の料理を見てくれ。

 いつの間に取ったのか、見事なアジの塩焼きだった。しかも醤油の垂らした大根下ろしと柚を添えて!

 ご飯はアジの切り身と醤油とごまのタレが乗った、いかにもな漁師飯。

 潮汁に入っているのはハマグリかな?

 サザエの壺焼きに、ぷりっぷりの透き通ったイカの刺身! それだけじゃない。みかんの身が飾られたお皿まである!

 昼飯があまりに寂しかったのと比べると、やばいくらい豪華!

 みんなで涎をこらえていたときだった。


『生徒会長の並木コナです。全員に料理が回ったわね? それじゃあ手を合わせて――……せえのっ!』


 いただきますって声があがる。

 それからはもうみんながっついて食べちゃうの。

 がつがつご飯を食べるみんな。あちこちでおかわりって声が上がる。男も女も関係なし。

 お醤油がなじみ深い大豆のそれとは風味が違う。けど臭くない。だからなのか、サザエにもアジにもよく合う!

 みんながひとしきり食べて、それでも食いしん坊たちがおかわりし続ける、そんな緩い空気になったときだった。

 部屋の壁が開いて、おおきな液晶モニターが出てきたの。ふっと映像が浮かぶと同時に、


『きん!』『ぴか?』『ぼし!』

『『『 チャンネル! 大江戸出張版! 』』』


 わーって拍手と一緒に、春灯ちゃんたち三人が映し出された。音楽つきだ!

 思わず前のめりになる私と聖歌にルイが笑って料理ののった机をよけてくれた。

 やばい。やばい! なんだこれ! 今日の夜は御褒美満載すぎじゃね!? 尻尾を出してぶんぶん振り回したいくらいテンションあがってるんですけど!


『今日の晩ご飯を作ってくれた岡島くんと料理部のみんなに、まずはみんなで拍手!』

『いやハル、待ってよ。いきなりそれ? 番組やることに対する説明が最初でしょ』

『あっ、そっか』

『いやでもうまいご飯だった。料理部隊に拍手』

『キラリまで!? と、とにかく……ごちそうさまでした!』

『念のために言っておくと、マドカが一番おかわりしてたからな』

『ちょっ、キラリ! 言わなかったらわからないでしょ! えーっと。この番組は――……』


 マドカちゃんが説明を始めた頃には、ご飯を食べ終えた子がテレビの前に集まっていた。

 スマホが充電できなくて自由に使えないいま、娯楽ってまじでほんとなにもないから、テレビ見るしかねえって人も多いけど。

 私は純粋に楽しみでしょうがなかった。現代に戻る前に見られるなんて!




 つづく!

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