第三百八十二話
いつものように高城さんの車でテレビ局へ行って、会議室に入ったタイミングで私は固まった。
「会議室って言われたけど、差し入れとかないんだね」
「……そろそろ退屈になってきた」
「なんでこんなことに巻き込まれているんだか」
ルルコ先輩と北野先輩、メイ先輩の三年生三人娘がいて、
「社食いきたいのに……」
「お菓子持ってきたんだから、それで我慢しなさい」
ユリア先輩に寄り添うコナちゃん先輩がいて、
「キラリさ。私まで連れてくることないんじゃない? 声を掛けてはもらったけど……資料だけでいいと思うんだけどな」
「うるさい黙れ。先輩たちに囲まれて一人で来るとかあり得ないんだ」
マドカとキラリがいるの。
なんで? ねえ、なんで!?
思わず一緒に来た高城さんを睨んだよね。笑われたけど。
「まあまあ。席に座って……スタッフさんが困っているだろう」
私を案内してくれた局のお兄さんが表情に困っている。
しぶしぶ通された椅子に座る私を、先輩たちと友達ふたりが笑顔で見つめてくる。
その迫力といったらない。
「重役出勤だね、ハルちゃん」
ルルコ先輩の迫力といったら。ゴゴゴゴ……って文字を背負っていそうです。
「いやあの」
「うそうそ。仕事モードでお願いしますね、青澄春灯さん」
「……う」
ルルコ先輩のおすましモードに怯む私です。
けど、まあ、確かにその通りだ。ここは学校じゃなくて、仕事について打ち合わせをしに来た場所なのだから。
雑談をしていた他のみんなも自然と静かになる。
それからすぐに番組のプロデューサーさんたちが入ってきた。
すっと立ち上がるのは三年生の三人とコナちゃん先輩。あわてて私たち一年生が続く中、ユリア先輩はマイペースにゆっくりと立ち上がる。
「すみません、お待たせして。さっそくですが、始めていきましょうか……お座りください」
プロデューサーの城戸さんの言葉にみんなが座った。
「それでは弊社タレントの紹介を簡単にさせていただきます」
高城さんが口を開いて、みんなの紹介をする。
事前に連絡がいっていたのか、誰もうろたえずに話しちゃうのすごい。
ひたすら感心している間に終わっちゃったよね。
そしたら、用意していたかのように城戸さんが口を開いた。
「そちらの山吹マドカさんからいただいた企画書を拝見しました。なかなか面白いと感じています。スライド、だせるか?」
城戸さんが指示してすぐ、若いお兄さんがパソコンを操作した。
奥のスクリーンに映像が映し出された。
でかでかとした文字で書いてあるよね。
「士道誠心……そっくり番組化計画って」
思わず隣にいるマドカを見たよね。マドカはマドカでばつが悪そうな顔をしている。
「あ、あの……もう少し体裁を取り繕ったものをご用意した方がよかったんじゃ」
恐る恐る切り出すマドカに城戸さんは豪快に笑った。
「いいえ。いいんですよ、面白ければね」
その断言、あまりにも力強すぎるよ!
「概要を――」
「じっ、自分で説明しますので」
あのマドカがあわてている。さすがにこんな状況、慣れているわけないよね。私も結構てんぱっています。
マドカはキラリをちらっと睨んだ。けどキラリは涼しい顔でスルー。
いったい二人になにがあったのかわからないまま、マドカは立ち上がって説明を始めた。
「士道誠心学院は……私が言うのもなんですが、一般的な学校とはあまりにも違います。たとえば」
マドカの進行に合わせて、画面の映像が切り替わる。
「学生寮の男女同室。特異な力を手にした生徒たち。そして特別体育館や……刀を手にした状態でいる学校生活」
私たちの日常の風景を画像に収めているスライドショー。
「大人の贅沢な遊びのように描く日常番組があるのなら、普通じゃ体験できない、おかしいけれど贅沢な私たちの学校生活の日常だって番組になるんじゃないかと思いました。たとえば」
映像が切り替わる。明坂29のグループの宣材写真だ。
選挙で一位に選ばれて涙を流して微笑むミコさんの画像もある。
「学校の生徒そのものをタレント化して、選挙……はさすがにそのまますぎるので、応援したり、投票したりする。その結果が生徒たちの生活に反映させられるシステムを構築して」
マドカはよどみなく話す。
慣れ親しんだ私たちのマシンガンは、大人に対して堂々と語るの。
「特別な環境を身近に感じるライブ感も提供します。局が出資している番組アプリなどを使って、低予算でいろんなコーナーを作ってみてはいかがでしょうか? たとえば」
ユリア先輩を指し示す。
「バラエティタレントを起用するよりも安上がりに、かつ迫力のある食の映像なら彼女に」
次いで、メイ先輩たちを。
「卒業する現三年生たちは新しく企業を立ち上げました。その活動は従来の企業には実現できないものです。その応援と活動を追いかける路線は大人に対して……こちらも企業にとっては広報活動になるため全面的に協力することをお約束します」
どこまでもマドカは話し続ける。
「どこまで私たち自身、みなさんと一緒に企画を具体化していけるかという危惧はありますが、しかし従来のアイドルタレントや十代のタレントを起用するのではできない企画を実施できるはずです」
そこまで言ってやっと、マドカは一呼吸おいた。
「もちろん、学生に密着しての撮影にもなれば許可申請やギャラ周りの交渉など、いろいろと苦しい点はあるかと思いますが」
大人達を見渡して、強い視線を向けるの。
「私たちの日常は既にドラマに満ちていると思います。あとは……どう脚色するか。まさにテレビに向いた企画になるのではないでしょうか」
はったりだ。間違いなく、はったり。だって私はもちろん、マドカにも。他のみんなにもわかりようがない。テレビ局のことなんて。
だけどね。城戸さんが真っ先に大声で笑ったの。手を叩いて大喜びだ。
その段階になって気づいたよね。高城さんは私にがんばれって言ったけど、適材適所。こういうことに、マドカは凄く向いているに違いないって。
「いや……いいですね。昨今、少しでも過剰なことをすると叩かれてしまう。我々に抗議がくるならいざ知らず、スポンサーに矛先が向いてしまう。そうなれば戦いにくい、というのが……情けないかな、実情です」
城戸さんがそう言った時にはもう、映像が消えていた。
大人達はみんな、マドカを見つめている。発案者を、まっすぐ。
「住良木は全力で支援するし、戦うと言ってくださっています。侍の理解、隔離世の理解が広まることがなにより今、大事だと考えているからです」
その先頭にいる城戸さんは、精力に満ちあふれた勢いのある大人に違いない。
「だからこそ失敗できないし、だからこそ挑戦したい。これがだめなら……テレビマンは続けられないと、私は考えている。私の気概にこたえられる連中を集めました」
はっきり言いましょう、という前置きの後だった。
「使えるところもあれば、使えないところもある。それは山吹さん、あなた自身が感じているはずだ。けどね……度胸と発案は買います」
城戸さんのターンだし、城戸さんも十分すぎるくらいマシンガン。
「企画に目を通した段階ですぐ、住良木と士道誠心に対して話を進めています。教育施設を対象とする場合、教育委員会への根回しも必要となってくるなど、調整事項は山ほどあります」
大人の本気は、けれど私たちに対して可能な限り、かみ砕いて。
「私立学校として、学校側は前向きに検討してくださっていますが、生徒さんたち、そしてその父兄のみなさんの許諾なども考えると、はっきり言ってしまえば課題しかない状況です」
そこまで、進めていたのか。
「生徒全員タレント化。実に面白いと思いました。ですが生徒のみなさんがタレントになりたいか、と言うと……決してそうではない。総意を取れますか?」
「そ、れは……」
「難しいですよね?」
「……はい」
「でも……だからこそ面白い」
怯むマドカ以上に、城戸さんは本気だった。
「破天荒だ。規制ばかり増えていく現代において、どこまで実現できるかわからない。だからこそ……挑戦する意義がある」
そう断言する城戸さんは、まさしく。
「なんとかしましょう。落としどころを探り、実現させましょう。番組の体裁を取りたいし、その材料が欲しい。これは……生徒さんの人生を借りて撮る、我々の人生を賭けた仕事になる」
戦士だった。
「南ルルコさんが社長の南隔離世株式会社さんの協力はもちろん、生徒会長の並木コナさんにはできる限り協力していただきたいと思いますが……お願いできますか?」
ルルコ先輩とコナちゃん先輩はそろって「もちろんです」と答えた。
まるで事前に打ち合わせをしていたかのような、動揺の欠片もない明るい返事だった。
「よし。それでは月末の討伐に向けて打ち合わせを進めていきましょうか」
城戸さん指揮のもと、打ち合わせが始まって――……先輩たちが参加していく。
マドカはほっとした顔で息を吐いて、それを見てしてやったりという顔をキラリが見せるの。
私の知らないところで集められた私の大事な仲間たちが、もしかしたら……侍の未来を作っている最中なのかもしれない。
そう思ったら胸が熱くならずにはいられなかったし、重ね重ね思ったの。
私だけが主導権を取る場所じゃない。未来を願う私たちみんながそれぞれ、全力を尽くす場所に違いない。
◆
打ち合わせが終わって解散になった頃にはもう、邪討伐にどれだけのスタッフが来て、どう収録して、それをどういう意図で脚色するか話がついていた。
先輩たちもキラリもマドカもスタッフさんに案内されて出て行くし、私は私は高城さんと二人で次の仕事場へ向かわなきゃいけなくなったの。
挨拶さえまともにできなかったけど。
私の仲間がどれほど頼もしいのかという実感しかなかった。
マドカのアイディアはぶっ飛んでいるよね。学生全員タレント化って。いやいや。いくらなんでも視聴者の人も受け止めきれないでしょ。人数多すぎるどころの騒ぎじゃないよ?
だからこそ、垂れ流しにはできない時点で取捨選択や見せ方を考えるなどの脚色をする必要がある。企画だってもっと練っていく必要がある。けど、城戸さんはやる気なんだ。
やっぱりマドカはすごい。そしてそれを実現しようとしちゃう大人たちがやばい。
高城さんにめっちゃまくしたてながら、私は車で都内の鮮魚店に移動した。そこには橋本さんや見覚えのあるテレビクルーがいる。
もしかしなくても、ネット配信の私の冠番組の収録ですよね、これ。
見栄えを整えられて衣装に着替えさせられてから、つけられたピンマイクが拾えるようはっきり言うの。
「あのう。何をするのか聞いてないんですけど」
「さあ! 今日もはじまりました、青澄春灯の挑戦企画!」
「番組名とかいいんですか?」
「テロップで出るんでだいじょぶでーす」
雑! さっきまでのノリと全然ちがうし、この仕事ほんと慣れない!
「今日はね! 中目黒にあります、お魚ちょうやべえさんに来ています」
お店の名前、勢いしかなくてやばすぎる。
「先日、春灯ちゃんは釣りでお魚をさばきましたねー?」
「……ええ、まあ」
「というわけで! 今日のチャレンジはこちら! ででん!」
口で効果音いっちゃうノリかあ。そっかあ。
「マグロの解体チャレンジー!」
「ええ!?」
「お魚ちょうやべえさんご提供による、築地での取引価格百万円のマグロをさばいてもらいます! 安心してください。費用は番組が出しましたよ!」
こじゃれた白い壁の綺麗なお店の中から、しゅっとしたイケメンのお兄さんがカートで運んできたよね。両手で抱えるような見事なマグロを。
「お客さんに提供できるクオリティにさばけたら、チャレンジ成功です!」
「いやいやいやいや! 食べもので遊ぶのほんとよくない! っていうか、無駄にしたくないですけど! ちゃんとさばいたら、ぜったいおいしいやつでしょ、これ!」
「頑張って成功させてくださーい。ちゃんとインストラクターについてもらいますので。売れなければスタッフがみんなでおいしくいただきまーす」
やっぱり雑!
「っていうか、え? インストラクターって?」
「お魚ちょうやべえさんではですね。毎週、お魚の調理教室をやっているんですよね?」
橋本さんがイケメンのお兄さんにマイクを向けると、お兄さんがはにかむように笑った。
「ええ。主婦の方から一人暮らしのサラリーマンの方、ご家族でいらっしゃるお客さまもいらっしゃいます。いきなりの挑戦となればマグロはとてもとても大変ですが、ぜひ挑戦していただければと思います」
いやいやいやいや。いやいやいやいや!
「予算のかけ方がおかしい! スカイダイビング、明らかに安い釣りの次はマグロって! なにこれ!」
「春灯ちゃんのためを思って……きっといけると思って……」
しゅんとするな! もう! わざとらしいノリばかりして! もう!
「だ、だいたい、チケットこれで本当にみなさんの手元に届くんです?」
「もちろんでーす。では、調理場へ移動しましょー」
「くっ……」
雑に流されて、一旦収録が止まった。いそいそとマグロを調理場へ運ぶお兄さん。鮮魚店に集まっているお客さんたちがざわざわしながら私を見守っている。
「じゃあ春灯ちゃん、いこうか」
「はあ……」
どうしよう。不安しかない。
「ちゃんとさばかなきゃだめよ?」
「粗末にしたらばちがあたるわよー?」
中目黒の主婦のみなさんの厳しいご指摘に、愛想笑いさえ浮かばないよ。
とほほ……。
ほんと、この番組無茶ぶりばっかりするんだから。
がんばるけどー。がんばるけどさー。
マグロとか、私……だいじょうぶ?
◆
まるで刀みたいな包丁を使って、手取り足取り教わりながら切ったよ……。
切り身が歪にならないように必死にあれこれ聞いてやったら、スタッフの一人が「真面目すぎるよ、春灯ちゃん。ちょっと失敗するかわいげ」とか言ってきたけどさ。
やだよ! 一本百万でしょ!? プレッシャーしか感じないし、綺麗にさばきたいよ!
なによりお魚さんを粗末にしたくないよね!
私、尻尾とか生えて金髪でふわふわしているように見えるでしょうけど、料理はちゃんと頑張ってるんだからね!
結局、イケメンのお兄さんが感心するレベルでなんとかやり遂げたよね……。
タマちゃんも十兵衞も、この手のことはやらないからさ。歌と一緒で、百パー私のスキルなので不安しかないけど。
刺身にして、お店の前に集まったお客さんたちに振る舞ったよ。意外と好評でしたよ? 辛口の主婦のお姉さまがたに「意外とやるのねえ」なんて言われちゃいましたよ……。
橋本さんが締めて、拍手喝采の内に収録が終わったの。
ほんと、マジで疲れた! 手がめっちゃ魚くさい! 何度も洗って外に出てもまだ残っている人とかいて、握手を求められて応えたよね。気がついたら通りが人で埋まっているし、お店とお店のご近所さんにご迷惑になるといけないから、急いで移動しましたよ……。
その頃には日もとっぷり暮れていました。やれやれです。
会社に戻った頃には疲れ果てていたよ。
だけどね。
「――……よし、だいぶブラッシュアップできたね」
「がんばった……」
スタジオでナチュさんがツバキちゃんを褒めていてさ。
きらきらした顔で、やまほど手直ししてできあがった歌詞の書かれたノートを渡されたらね。
「……歌いますか」
って言っちゃうよね。
「音源あるから流そうか」
柴田さんにお願いしますって言って、ブースの中に入る。
歌詞を読みながら口ずさむ。三曲ある内の、トシさんが英語歌詞に直して生放送で歌った曲だ。タイトルさえ仮だった。っていうかテロップでたのかな、あれ。お母さんが録画していると思うけど、私は確認できてない。ネット配信しないんだもん。
だけどツバキちゃんは名前をつけていた。
『金光星』
なんて読むのかわからないけれど。
ちょっとだけ思った。
私とマドカとキラリみたいだって。
『春灯ちゃん、いける?』
「はあい!」
頷いてすぐ、カウントの後に仮の音が流れる。
ノートを手に口を開いた。
私たちみたいな曲なら……歌う姿勢はただ一つ。全力で。
◆
目まぐるしく過ぎて、やっと学生寮に戻った時にはもう前のめりに倒れたよね。
ソファとかカナタに向けてとかじゃなくて、ベッドに。
「肩でもお揉みしましょうか」
カナタの優しいけど呆れた声に尻尾だけを揺らす。
言葉も何も出てこないよね……。
ベッドが軋んだ。カナタがそばにきてくれたの。そっと腰に手を置いてきた。
いま大丈夫かどうか伺うような手つき。構わないのがいいよの合図。
私の背中を優しくほぐしてくれる。ちっちゃい頃から厳しく鍛えられてきたカナタだから、ストレッチやマッサージの心得があるのか、すごく気持ちいい。
「くふう」
私の声にカナタは笑った。
「疲れているな……少し魚くさいが、今日はどんな仕事してきたんだ?」
「マグロを解体してきたよ」
「……お前の仕事って、歌手じゃないのか?」
「これが私なりの歌手活動なんだよ。丸太だって切るし、いつか崖だってのぼるよ。っていうかそれくらいの無茶ぶりをされてもおかしくないよ。あの番組、だいぶ突撃冒険バラエティー意識してるもん。最近は日曜の何気ないバラエティー制覇したがっているんじゃないかとすら思う」
むすっとしながら尻尾を揺らす。こういう時、カナタは変に助言したりダメだししたりしない。ただ笑って言うの。
「お疲れ様」
「んー」
それだけの距離感がいちばん心地いい。
「マグロはどうしたんだ?」
「綺麗にさばけたから、集まっている人たちに振る舞ったの」
「大盤振る舞いだな。高いだろうに」
「予算だけはあるんじゃない?」
番組がもつんじゃないなら、お魚ちょうやべえさんは太っ腹すぎる。店が傾くよ。そんなことばっかりしてたら。よくないと思います。まあ……私が帰る頃には人がめっちゃ集まっていたから、案外集客効果があったのかもしれないけどさ。それとマグロ代は別だと思うわけ。
「むふー」
「興奮しているな」
「……ツバキちゃんがねー。今日、素敵な歌詞をくれたの」
「そうか……アイツも来年は高等部に入って、どんどん活躍しそうだな」
「カナタ、憂鬱そう」
「俺は芸事がよくわからないからな。羨ましいんだ」
意外。
「カナタがツバキちゃんに嫉妬?」
「……ツバキだけじゃなく、春灯の仕事のそばにいられる人に対してかな」
「んー……」
思考を巡らせた。
もしマドカの企画が通ったら……。
「カナタもすぐに忙しくなると思うよ」
「どういうことだ?」
「ふふー。それはねえ――……」
だいぶ気持ちが落ち着いてきたから、寝返りを打って抱きついて話し始める。
私の身の回りに起きたこと。誰より最初に話すの。私の特別な人に。
話したいことは日に日に増えていく。新しい体験ばかり積み重なっていく。
邪討伐が迫ってくるし、それは私たちの未来を決める切っ掛けになるかもしれない。
その先にはシングルの収録が待っている。
私は社長にだいぶ甘やかしてもらいながら、きっと業界でもちょっとへんてこな編成で歌の仕事を進めているのだろう。
けど、やるからには本気で作る。お客さんが喜んでくれるように、全力で。
そして――……その先にはドーム公演が待っているの。
吸血鬼に襲われながら求愛されたり、雑な無茶ぶり山ほどされたりするけれど。
どんな厳しい壁が立ちはだかろうと、乗り越えていくよ。
これが私のお仕事だからね!
つづく!




