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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第三十一章 一月のシンクロミタマ

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第三百二十九話

 



 どういうことですか? と聞かれるのは想定の範囲内だった。

 だから刀を手にする羽村くんを見つめながら説明する。


「刀は心、そして侍の夢そのもの。だからね? それを……愛する二人の刀でお互いを貫きあう、という儀式があるの。恋人や夫婦、あるいはそうなれない侍たちがしてきた……危険な儀式」


 彼の手を取り、刀を抜かせる。刃に触れる。現世の物は斬れない刀。霊子を切り裂く力。


「相手を拒む、あるいは……受け止めきれなければ、その刃は相手の霊子を傷つける。命がけの儀式になる」

「――それは」

「成功したという話をルルコはまともに聞いたことがない。ルルコが受け入れられるって確信があるのは……メイの刀くらい。だけどね」


 刀の切っ先を胸の谷間に持ち上げて、あてがう。あとはもう、貫くだけの位置へ。


「羽村くんの心を、夢を受け入れたい。飲み込みたい。もしそれができたら、きっと現実の距離なんて関係なく二人で生きていけるから」

「――……すごい賭けにでるんですね」

「きみへの思いも、ルルコの夢も……どっちも諦める気はないの」


 どっちかじゃなきゃいけない理由なんてない。どっちも取れるなら、迷わずその手を伸ばす。自分の願う夢に一途に。それが侍の資質。こんなところで曇らせたりさび付かせるつもりはないの。だから。


「お願い。諦める気がないのなら……ルルコにきみの刀をちょうだい」

「……俺は、先輩が思ってるより綺麗でもないし、優しいだけじゃない」

「いいよ。ルルコもそうだもん」

「じゃあ……ひとつだけ、いいですか?」


 強い意志の籠もった瞳で見つめられて、ここへきて戸惑う私に彼は言うの。


「刀が一本足りない。俺の部屋で、俺の刀で……そんなの男の夢すぎる。だめですよ、先輩。先輩の刀も必要です……やりましょう、儀式。ただし、先輩と俺の二人でやるんです」


 覚悟は決まっていたのだ。彼もまた望んでくれている。なら……もう、あとはやるだけ。


「いこっか……うちへ」


 駆けだしてきたけど、こんなことになるとは思わなかった。

 やっぱり……羽村くんが好きだ。私の思いを越えていくんだから。

 かっこいいなあ――……大好き。


 ◆


 家に着いた。メイが家についてるみたいだ。サユもいるらしい。小屋の賑わいはかなりのもの。ひょっとしたらミツハたちも来ているのかもしれない。

 だからってこれからするのは秘め事。羽村くんをお部屋に連れて行く。

 会社の話を進める段階で手続きを済ませて、所持許可証ならある。だから私の刀が置いてある。それを抜き放つ。

 シオリの刀の御霊はクラオカミ。

 私の刀は――……クシナダ。

 自分の心を貫いて、引き抜く真打ち。櫛のついた刀。巫女であり姫であり、身を捧げる御霊。

 タカオの真打ちの嫁っていうのが解せない。むしろメイのアマテラスとの関係が遠いのがげせない。関係ないと今では思ってるけどね。


「受け止められる?」

「その気がなくちゃ、来てませんから」

「だよね」


 見つめ合う。やるべきことは見えている。だけどいざその時がくるとなると……怖いし、どきどきする。

 互いの刀を重ねて、互いの胸にあてがう。

 まさに自殺行為。相手のすべてを飲み込めなければ傷つくしかない行い。

 だけどこれこそ私たちらしい。侍候補生同士らしい挑戦に違いない。

 見つめ合う。躊躇いはある。もし傷つけたら。もし傷ついたら。すべてを失うかもしれない。

 妥協した方が楽。諦めた方がきっと楽。ささやかな傷で済ませた方が、絶対に楽。

 それでも――……選べない。選べないよ。

 君を諦められない。刀を捨てられない。夢を忘れられない。

 だから……ここから先へいこう。生死を超えて、二人を超えて――……ひとりを超えていこう。


「いくよ」

「はい――……」


 互いに胸に押し当てる。通常ならそれで終わり。だけど、ずぶ、と入り込んでくる。

 受け入れようと思う気持ちの分だけ、羽村くんの刀が……私の中に入ってくる。

 同じように、私の刀もまた、羽村くんの中に入っていく。

 互いに浮かぶ表情は、笑顔。歪みはある。けれど笑っている。

 流れ込んでくるの。


『――……先輩をいっちゃん綺麗に見せようと』『ちょっと、おかしなこと言ってもいいですか?』『俺と付き合ってください』


 これまで聞いた宝石みたいな言葉たち。その奥の気持ちも染み込んでくる。


『みんなを見つめて、どこか距離を置いてる顔も』『青澄に甘えられてどぎまぎしながら応えてる顔も』『真中先輩を見つめてきらきら輝く顔も――』

『あんまり一途で、儚くて……思わずにはいられない』『そんな顔を力強く輝かせてみたい』『太陽に惚れて憧れる彼女が自分らしい強さを手にしたら……きっと、最高に輝く』『俺は先輩を愛してる、けど――……輝かせられない。迷う俺じゃ、無理だ』


 頭を振って否定したくなった瞬間、身体中がひび割れるように痛んだ。だから受け入れる。

 彼の弱さも受け入れなきゃ、先へは進めないから。


『それでもどこかで思う――』

『もし先輩を変えることができるなら――』

『本当の意味で先輩の望みを叶えられたら――』

『先輩にとって、本物の王子になれる――』

『なれない。そのための方法が……先輩を抱きたいなんて浮かぶ俺には、無理だ』


 否定したい。肯定したい。衝動が湧くたびに痛みが広がっていく。

 ただ受け入れるだけ。その難しさに喘ぐように彼を見た。

 玉のような汗を浮かべて、歯を食いしばって、それでも私に笑いかけてくれる。


『踊りたい。すべてを忘れて。すべてを投げ出して』

『踊っている間は気持ちが一つになる――……救われる』

『救われたい――……救いたいのに、それよりもっと救われたい』


 痛む。子供みたいな願い。当然だ。私より二つも年下の……高校一年生なんだから。


『そんなの先輩には言えない――』

『先輩にはかっこつけていたいんだ』

『……頼れる男になりたい。胸を張れる何かが欲しい』

『先輩よりきっと弱い俺でも、先輩に胸を張れる何かが――……』


 いいのに。泣きそうだ。ううん、泣いてる。

 頑張ってくれてたんだ。背伸びしてくれてた。私のために。

 でももういい。等身大のきみをもっと教えて。私にもっと……素直な気持ちを教えて。

 刀に手を掛けて、一歩進む。広がっていく。

 染み込んでいく――……彼の思い出、願い、欲望すべて。

 男の子の願いすぎて言えないものも、すべて露わ。

 ずっと嫌いだった。そういうの。素直に認める。そのうえで……受け入れる。

 だって。だってね?


『好きだ』


 私への気持ちがまず最初にあるの。欲望が先にあるならきっと、身体は切り裂かれて私は死んでいた。けれど……羽村くんは違う。

 好きだから。私と一緒にいたいし、私といろんなことをしたい。

 ずうっとずうっと我慢してくれていた。

 気づいたらもう、迷いは晴れていた。もうあと半歩の距離感。構うもんか。


「私はいける。あなたの全部、受け入れられるよ……羽村くんは?」

「――……どんとこいです」


 きっとつらいと思う。

 男の子の欲望が嫌いで、そういう目で見られまくってうんざりしている私の気持ちも。メイのことが好きすぎて何が起きてもいいと思っちゃってる私の欲望も。やっと人生はじめて打ち解けた同じ学年のみんなが大事すぎて離れたくないとわがままをいう私の願いも。

 重たくて、つらすぎると思う。

 だけど、彼は笑って飲み込んでいく。私の夢、私の心を。

 お互いに心臓に刀を突き刺した。柄の内にある刀が溶けて、柄が落ちた。

 どちらからともなく抱き締め合う。

 見つめあって笑う。


「……痛い?」

「はじめては痛いのが定番らしいです」

「羽村くんもそういう冗談いうんだ?」

「クラスはほぼ男子だらけなんで……まあ。先輩は嫌いですよね、こういうの」

「ん……ついさっきまでは、嫌いだった。でも今は違うよ」


 心の中に入り込んできた彼の気持ちすべて。身体中に広がって染み込んでいく。

 昂揚するし、熱が入っていく。広がっていく。凍てついた私を溶かして――……柔らかな水へと変えていく。


「教えて……アメリカに行っちゃう前に。きみのしたいこと、きみのいいたいこと、ぜんぶ」

「……きっと伝わってますよね。週末、デートで……これまでの俺たちを越えたいです」

「……わかった」


 見つめ合い、笑い合う。

 私の願う通りにしか付き合ってこなかった。羽村くんは後輩の、年下の彼氏として必死に背伸びしながら私の願いを叶え続けてくれた。

 でもそれじゃあ苦しいよね。

 彼は先へはいけないし、進めないのは私も同じだった。


「恋愛一年生同士、よろしくね?」


 抱き締めてくれる腕に力がこもる。引き寄せられる。痛いくらいの力。彼がずっと我慢してくれていた分だけためこんでいた気持ちのまま。


「ちょっと、染みるね……」

「すみません……」


 ぎこちない。ずっとごまかして、見ないように取り繕っていた未熟さ飲み込んで、一緒に進んでいきたい。

 どんなに距離が離れようと、もう心は溶け合い繋がっているから。


「……ここでしてもいいよ?」

「だめです。先輩の仲間がすぐそこにいる。今は……頑張らせてください。俺だって、先輩とのこと……もっとわがままになりたいんです。だから、頑張らせてください」

「ん……楽しみにしてる」


 二人で額を重ねて笑って……キスをして。

 離れる。互いの心臓に手を当てて、引き抜く。

 互いの刀が吐き出されていくんだ。

 寂しい。熱が出ていくのは。ずっと溶け合っていたい。

 これを体験したら――……もうきっと、なにが来ても大丈夫。


 ◆


 電線に腰掛けながら、お手玉をする少女が二人で顔を見合わせる。


『ういみたま』『あらみたま』『変われず変わらず』


 黒い御珠が悲鳴をあげる。

 けど二人は構わない。笑いながら見つめている。南ルルコとその恋人の睦言を。

 身体の繋がりの前に心の繋がりを選択して、見事乗り越えてみせた。


「くくく。さすが士道誠心……我の半身が通うに相応しい学舎」

「いい加減そのしゃべり方なんとかならないの? 双子の姉として恥ずかしいんだけど」


 もし仮に二人の声を聞ける者がいたのなら、そして士道誠心の春灯と閻魔姫を知っていたのなら、驚いただろう。


「仕方あるまい。我のこの身が遂に半身の輝きに応じてこの世に顕現せしめん!」

「やっぱりばかっぽい。やめてよ春灯」

「冬音お姉ちゃんだって好きなくせに!」


 二人の声も姿も彼女たちそっくりなのだから。

 二人の少女は黒いドレスに身を包んで、互いを呼び合う。

 本来ならその名の持ち主の一人は未だアメリカに、もう一人は地獄で閻魔の仕事をしているはず。

 にも関わらず、本人にしか見えない少女たちは飛び上がり、電線の上を走り始める。


「あーあ。新しい珠が手に入るかと思ったけど乗り越えちゃったなー」

「我の先輩ならば当然!」

「だめだろ! 乗り越えたら新しいの手に入らないだろ!」

「あっ。そうだった」


 やっと我に返った少女を怒らず、冬音と呼ばれた少女は微笑む。


「次の宴のためには黒いのたくさんいるけど。なかなか素質のある子の暗闇はみつからないね」

「刀を抜くか刀鍛冶の力を手に入れちゃったら、堕天するのは無理!」

「……やっぱりバカっぽい。いい? 力を手にする前に吐き出した邪を育てるの。育てた邪は欠片になる。欠片を集めたら――」

「欲望の欠片はこの世を飲み込む災害の御珠へと姿を変える。わかっているとも、姉上!」

「やれやれ」


 二人が飛び降りて、地面に着地――せずにそのまま飲み込まれる。

 そうして自らの力で隔離世へと移動した。

 欲望は転じて邪となり、育ちすぎると吐き出した主を食らい、化け物へと変える。

 侍たちが討伐する邪を探すのが彼女たちの狙い。

 しかし侍がいるおかげで目的はなかなか達成できない。力ある者の影を渡って探し求めているのだが――……見つからない。

 だからこそ、彼女たちは顔を見合わせて笑いあう。


「こうなればいっそ」

「私たちの半身を狙う?」

「それがいいかも」

「「 或いは力ある者を堕天させる? 」」


 黒い御珠が浮くのに任せて、己の胸に拳を当てる。

 少女は引き抜いた。


「この世を混沌に――」


 春灯と呼ばれた少女は漆黒の刀を二振り。


「私たちの生きられる世界に――」


 冬音と呼ばれた少女は黒炎をまき散らす刀を一振り。


「「 革命の瞬間を 」」


 重ねて笑い合う。

 人知れず、その時は近づいてきている――……。


 ◆


 姫、と呼ばれて書類から視線をあげた。

 シガラキがいる。隣にいるべきクウキはいない。閻魔王たる父はとうに出張先から戻ってきていて、彼は父に報告に行っているのだ。おかげで少しばかり仕事が滞り気味である。なにより退屈だった。

 深呼吸をして椅子に身体を預けて、尋ねる。


「なんだ」

「地獄の沙汰もなんとやら。地獄耳には既に届いているかもしれませんが……地上で面白いことが起きているようですよ?」

「……なんのこと?」


 とぼけるように言うと、シガラキは口元を歪めた。


「とぼけるならそれで構いませんが……さて、姫。生きたい……と。死の間際に願う赤ん坊の邪がいたとして、その邪が宿主が神となったがゆえに育ち、地上に災厄をもたらすならば、いかがなさいます?」


 彼の問いかけはほぼ答えそのものだった。姫は肩を竦める。


「カナタがいる。地上には侍がいるんだろう? なら、そいつらが対処するさ」

「そのための……縁だと?」

「持って回った言い方をするな。我は仕事で忙しい」

「いいえ。ただ……姫の思惑が知りたいのですよ。楽しい何かが起きるなら、次あたりは顔を出したいもので」


 手を止めて、シガラキを睨む。


「何が言いたい」

「もし……もし、現世と隔離世の境界を曖昧にするほど力を持った人間がいたとします。天界から霊体を連れ出し、現世に顕現させるほどの力の持ち主です」


 頭痛がした。現世にその条件に該当する人間はただ一人。

 青澄春灯である。


「その人間と……その人間の縁が特別深い強者の邪がいたとして」


 こちらを見つめて邪悪に笑うシガラキの意図は明白。縁が深い人間というのは、カナタのことではない。自分のことだ。その邪がいる、という前提に目を細める。


「次の騒乱は、人間のいる世界のありようを変えかねない。対処はなされないので?」

「……しなければ我に責が及ぶと?」

「お父上は悲しむのでは?」

「……我を顎で使いたいか? それとも、現世に行きたいから許しが欲しいか?」


 指先に黒焔を出す。シガラキは自分よりよほどの年長者で鬼の中でも指折りの強者だ。

 とはいえ閻魔姫の自分の方が序列も強さも上。舐められては沽券に関わる。何より許せない。


「二十時間近に舐めた口を利く鬼をどうしてくれようか。夜更かししてもいいが」

「やだなあ。もちろん出張のお願いですよ。遊びに行きがてら、お父上にばれないように対処します」


 楽しそうに弾むような歩調で歩いてくるなり、書類を出された。

 出張の嘆願書。書式に問題はない。だが脅しをかけてきた上にハンコを押すのは今後の上下関係にひどい影響を与える。脅せば現世に出張可能などという悪しき前例は作ってはならない。

 手元にある書類をさっと引き出して、睨む。


「ならば……これを片付けてこい」


 差し出した書類を意外そうに受け取って、すぐにシガラキの顔が強ばった。


「……これですか?」

「ああ、それだ」


 彼の手にした書類をにこにこ見つめながら断言する。


「いいな、シガラキ。地獄の縁者を強化してこい。具体的にはカナタをもっと強くしてこい」

「えーやだーめんどくさいです。姫が力を貸していらっしゃるんだから、それでいいじゃないですか」

「地獄の使者として恥ずかしくないくらい強くしたいんだ。黄泉と地獄への門を塞ぐ力を与えてこい。他の鬼には難しくても、初代閻魔王を知るお前ならできるだろう?」

「……そこまで力を与えてしまってもよろしいので?」

「いいといってるんだ」

「もしや……現世の妹君が強くなっているのが気に入らないとか?」

「なんのことだ?」


 じろりと睨む。


「そもそも我は地獄において一人っ子だ。現世に妹など……知らん」

「はいはい。そういうことにしておきます。じゃあハンコください」

「……おやつは三百円までだぞ」

「わかってます」

「おみやげ、我へのそれは特別高くてうまいのじゃなきゃ許さないからな」

「わかっておりますとも」

「……よし」


 シガラキの書類にハンコを押す。

 カナタを託す書類を手にしてうんうん唸るシガラキを見送って、机に置いてある水晶玉に指先を当てる。瞬時に浮かび上がってきた。

 春灯。青澄春灯――……。


「妹なんて、いないし……いらない」


 現世で死して現在の閻魔王の妻から生まれた姫。それが自分だ。現世の縁など既に断ち切れている。そう思ってきた。ずっと。

 だけど自分の元を訪れた緋迎の男は春灯の恋人だった。

 縁は切れない。どう足掻いても。

 現世と隔離世で起きつつある事態なら当然把握している。

 試されるだろう。縁を。春灯と自分の縁を。

 そうならなければ――……それでいい。

 けれど逃れようのない事態が待ち受けているに違いない。

 悩む。春灯は現世の自分の存在さえ知るまい。

 水晶玉を通して、何度もみてきた。

 現世で自分を生もうとした女性は春灯にすべてを告げていない。

 気持ちはわかるから、なじる気も起きない。

 元気に産み落とせなかった事実は罪のように心に刻印を残す。それでも明るく健やかに過ごすほどに立ち直った現世の母親の幸せを望みこそすれ、後ろを振り向いて欲しくはない。

 自分のことはもう、十年以上前に終わったことなのだから。

 掘り起こすまでもない現世の絆。それでいいとずっと思っていた。けれどどうやら……。


「そうもいかなくなりそうだな」


 呟いて、目を伏せる。


「……青澄春灯。さすがに今度ばかりは、お前だけじゃどうにもならないぞ」


 脅威を前にどうするか。

 彼女だけじゃない。閻魔姫である自分もどうやら、素質を問われることになりそうだ――……。




 つづく!

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