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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第三十一章 一月のシンクロミタマ

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第三百二十八話

 



 時を少し巻き戻して、元旦の早朝。

 富士山の山頂から見る来光を確認して下山。

 仲間は連れてこない。強いて言えば顔なじみの登山仲間と出くわしたり面倒を見られるくらい。

 北野サユにとって地球全てがフィールドだ。

 できれば映画のように宇宙にだって行ってみたい。

 宇宙開発の速度は緩やかで、地上の監視などに重きが置かれているような印象があって……それこそ映画のように火星に置き去りにされるような目に遭うには、あとどれほどの年月が掛かるかわからない。

 それならそれでいい。どうやら隔離世の先には霊界や天界があるという。あの黒い御珠の先に何かがある。それはもうサユにとって確信を持てる可能性だった。

 あの向こうへ行けるのなら――……案外、宇宙に行くくらいの楽しい何かが待っているかもしれない。


「は、ひい、はひい……先輩、待ってくださいよ」

「ほ、ほんまですよ……」


 ふり返ると、一年生の少年と少女が追い掛けてきていた。

 フブキ、ルミナ。ハルちゃんやルルコと同じ体育祭の組に入り、メイとルルコが所属する部活にいる山吹マドカと同時に刀を抜いた子たちだ。


「なんでいるの」

「「 ひっど 」」


 問い掛けに二人して不満げな声を上げる。


「先輩と同じ部活!」

「フィールドアスレチック部! 部員!」

「……そうだっけ? 私なにか別の部活じゃなかった?」


 首を傾げる。あいにくと物覚えはあまりいい方じゃない。

 二人は揃ってため息を吐くと、そばへとやってきて訴えてきた。


「いやだから、先輩いろんな部活に顔を出しては辞めて」

「この部活に落ち着いたんじゃないですかー。うちらは先輩を追い掛けてここまできたんです」

「……なんで?」


 執着しない方だから、執着されない。

 そんな身の上だと自覚しているから純粋な疑問だった。

 彼らが自分に執着する理由がわからないのだ。


「先輩の自由奔放なところ、そしてどんな困難な場所へもたどり着ける力! 憧れてるんです!」

「何度いったらわかるんですかー!」


 何度言われても、正直理解できそうな気がしない。

 なんだかめんどくさくなってきた。


「下りるから」

「待って! ちょおっ」

「俺らのペース、そこまで早くない……!」


 まったく……。


「富士山から駆け下りる大会もあるのに。君たちはまだまだだね」

「むしろ先輩が体力有り余りすぎなのでは」

「さすが三年最強三人娘の一人……う、うちも負けませんから!」


 フブキはへこたれ気味だが、ルミナは闘志を燃やしている。

 仕方ない。少しペースを落とすか。だとしても。


「昼にはわさび丼定食たべたいから。がんばれ」


 予定を変える気はない。ついてこれないなら二人でどうにかしてほしい。

 メイやルルコなら面倒を見るんだろうけど、正直……そういうのは苦手だ。

 それでも頬に感じた風に息を吐く。

 苦手だけどやらなきゃいけない時もある。

 仲間が涙を流したときだ。

 ルルコが呼んでいる気がする。だからなるべく早く、帰らないと。


 ◆


 元旦、夕方過ぎ。

 ユウヤと顔をつきあわせて会社の書類とにらめっこをする元旦なんて、南ルルコ的には許せない一日だ。口を開けばケンカしちゃうユウヤもさすがにたまった仕事量にうんざりしているのか、口数が少ない。

 二人して捗らない仕事に唸っている状況。

 あんまりよくない。さっきメイとの電話であれこれ言ったの、話の途中で外に出たから聞かれてないとは思うけど。とにかく燃え尽きそうだ。


「真中は?」

「だから先輩とそのご家族とデートだって。さっきの電話、聞こえてたでしょ?」

「随分と駆け足な恋愛だな、家族公認かよ……南は?」

「はえ?」


 まさか振られるとは思わなくて変な声が出た。

 手を止めて周囲を見渡す。私とユウヤ以外誰もいない。

 ここは家の離れにある小屋。南隔離世株式会社を興してからはここが事務所代わり。

 ミツハやジロちゃんも結構顔を出してくれる方だけど、今日はいない。綺羅くんも弟さんというか、妹さんというか、とにかく家族と正月を楽しんでいるので来ない。

 二人きり。まあ意識しないけど。

 ユウヤとはケンカ仲間みたいなところがあるから。


「彼氏は。いんだろ」

「ああ……うん。昨日の年越しまで一緒だったよ。おみくじ引いて帰ってきて、それでいま」

「……順調なのか」


 なんだ。どうした、ユウヤ。

 ルルコのプライベートとか気にする性分じゃなかったのに。

 雑談したいのかな? まあ根を詰めて元旦から働いているわけだし、しょうがない。ここは社長として一肌脱ぐか。冷蔵庫からお茶とケーキを出しつつ答える。


「……微妙かな。なんだかダンスで海外留学したい夢があるみたいで。ハルちゃんがど派手に去年の年末、働いていたのもあって、刺激されて真剣に悩んでるみたい」

「それって……わりい、ケーキさんきゅ」


 チーズケーキを受け取ってお茶を飲んでから、ユウヤが私を心配そうに見つめてきた。


「大丈夫なのか?」

「どうだろね。ダンス得意なの知ってるし。青組で一緒だった子と刺激しあってて、今ではダンスかなり大事らしくて……四月にはアメリカ行っちゃうかも」

「……付き合い続けるのか?」

「一度向こうに行ったら、物になるまで帰りたくないって言われちゃうと悩むよね」


 笑いながら答える。相談された時はすごくショックだったけど、でも相談してくれただけマシだった。決定事項みたいに伝えられてたら、どうなっていたか自分でもわからない。

 でもユウヤにのんびり話せてるくらいは回復してる。

 まあ……メイでもサユでもなく、ユウヤに最初に話しているのはなんだか不思議な感覚だけど。

 床のふわふわクッションに腰を下ろしてケーキをちまちま食べながら、ユウヤを見る。


「人生を賭けた夢と恋愛、ユウヤだったらどっちを取る?」

「……難しい問題だな」


 ケーキを食べる手を止めて、ユウヤが私を見た。思ったよりも真摯な瞳で。少なからずどきっとする。なんで鼓動が跳ねたのか、よくわからない。

 いつもみたいに冗談を言ってからかってくれたらごまかせる。そう期待してユウヤを見たけれど。


「諦めて、その上で別の人生を賭ける何かを見つけ出せるか……まあ、南と付き合ってんなら、すべてを賭けていいだろうって俺は思うけどな」


 予想外に優しい声で甘いことを言うから、どきどきが止まらなかった。


「ま、またまた。内弁慶の腹黒女にはもったいないとか言えばいいとこじゃん」


 必死でごまかす。なんで必死になっているのかもわからないままに。


「会社もつたないながらに頑張って経営して、四月からの体勢に備えて……立派だと思うぞ、俺は……もうお前を馬鹿にしたりしねえよ」


 やめてよ、しみじみ言わないでよ……甘えたく、なるじゃんか。


「迷う時点で中途半端を選んだら不幸になる。好きにさせてやるつもりなんだろ?」

「……ん」


 小さく頷いた。


「愛が深い女だな。帰ってくるまで待ってるとか言う気か?」

「言いたいけど……」


 頭を振った。


「時代じゃないよ。距離が離れたら、自然と離れちゃうものもあるもん。そこまで夢は見れないよ」

「それは……伝えてあんのか?」

「うん……」


 ケーキを食べるような空気にならない。

 失敗した。言わなきゃよかった。そう思って、書類に手を伸ばそうとする。けどユウヤに止められた。手を握られたのだ。


「納得してんのか?」

「――……」


 やめて。揺さぶらないで。そう訴えたい。けど言葉が出てこない。納得なんてできてないから。

 気づかされる。こんなに心の近くに接近してくる男の子、羽村くん以外だとユウヤしかいないって。

 だめだ。いま、そんなことに気づくタイミングじゃない。これは、だめ。

 迷う私の手を引いて、ユウヤが立ち上がって小屋の外に連れ出すの。


「ゆ、ユウヤ?」

「会社を作る、みんなの居場所を作るって豪語して。侍候補生にゃ卒業までに所持許可証を取らせる運びまで作って。そんなお前でも、まだ高校生なんだ。大人みてえに納得しようとすんな」


 背中を押される。戸惑う私に玄関にあるコートを羽織らせて。


「行ってこい。ちゃんと話つけて……お前が本当に欲しいものを掴み取ってこい。あとはやっとくから」

「なんで……そんな風に言ってくれるの?」


 寒くてつらいのが私の世界。だから外に出ると心が剥き出しになっていく。

 縋るような私の声にユウヤは視線を逸らして唇を動かした。


「昔好きだったからだ」

「え――……」


 けれど、大事であろう言葉をユウヤは私に理解させたくないみたいだった。


「そんな目でみんな、大昔の話だ。働いているお前を見てて、見直してんだよ。そんなてめえが福を捨てようとしてるのが見てられねえだけだ」


 それをごまかすようにユウヤは言った。


「いいか? てめえがそんなだと、調子が狂うんだよ。真中に甘えまくってるお前の方が落ち着く……夜には真中がこっちにくるんだろ?」

「うん……」

「だったら思い切りぶつかれるだろ? ほら、行ってこいよ。てめえの福を掴んでこい!」


 背中を押されて走りだす。

 もやもやをずっと抱えている。クリスマスから。

 一線は越えず、二人で小学生や中学生みたいに手を繋いで同じ時間を過ごしただけ。

 羽村くんは待ってくれている。私がどうしたいのか、その答えを……ずっと。

 だけど彼の時間は進んでいる。

 みんなと同じように、等しく進んでいるのだ。

 だから悩む。青春を全力で駆け抜けているハルちゃんの背中が眩しすぎて。夢が彼に近づいたのなら……きっと、待っていられない。私でもそうだ。だから彼を非難はできない。

 わかるの。夢を叶えたい気持ちは。痛いくらいわかる。

 私の夢はみんなの居場所を作ること。みんなで、そりゃあ楽しいばかりじゃないだろうけど、それでも現実に立ち向かっていくこと。それが私の夢なんだ。誰にも譲れないし、ちょっとやそっとのことじゃ曲げられない。

 苦しいよ。羽村くんと秤にかけても……答えは出せない。羽村くんも一緒なら……話しても傷つけ合うだけのような気がして。

 羽村くんは私を、私は彼を傷つけられずにいる。

 それじゃあ……なあなあのままで終わっちゃう。

 大事な恋なら、目をそらしちゃいけない。電車で移動しながらどう話そうか、どうしようか悩むけれど……帰りたいとは思わなかった。

 話したかったんだなあって気づいちゃった。

 ユウヤは私でも気づかないことに気づいてくれたんだろう。

 不器用な貧乏神。彼が訴えてる。福を掴んでこいって。あいつこそ福が来たらいいのに。でも……ありがとう、ユウヤ。私、なんとか立ち向かってみるよ。


 ◆


 おうちを訪ねると、ダンススクールに行っていると言われた。

 教えてもらったスクールを覗く。羽村くんが踊っていた。身体のキレは凄くて、がんがんに鳴ってる音楽に応えるように躍動感溢れるパフォーマンスを見せている。

 一緒に踊っている子がたくさんいるけど、群を抜いていた。何か……恵まれた素質を感じる。素人目に見てもそう思う。一目見てわかるような分野じゃなかったらいいのにって神さまを恨んでしまった。

 悔しいけど、結果は見えてる。羽村くんが輝けるフィールドがそこにある。もっと輝けるフィールドが海外にある。それなら……もう。だって、諦めるしかない。

 泣きそうだ、と思った時だった。


「あれ……南先輩じゃないっすか」


 声を掛けられて飛び上がるほど驚いた。

 見たらタオルで顔を拭いながら木崎くんがトイレから出てきたところだった。一年生の男の子だ。体育祭の時に青組で一緒になった子。ダンスが得意な子だ。


「羽村に会いに来たんですか? なら呼びますけど」

「い、いいよ。邪魔になっちゃうし」

「そんなことないですって。おーい、羽村」


 扉を開けて大声で呼びかけるから、来ちゃうんだ。羽村くんが。

 木崎くんの肩を叩いて「さんきゅ」と言って送り出す。

 二人きりになって……汗を掻いた羽村くんの嬉しそうな笑顔を見ると、胸がたまらなく痛む。


「どうしたんですか? ……寂しくなっちゃいました?」


 その言葉に胸がきゅううって軋むように痛んだ。


「……行っちゃうの?」

「木崎に説得されて戻ったスクールですけど。やるなら極めたいな、と」


 涼しい顔をして言う彼の胸を叩く。力なく。


「ルルコよりも、大事?」


 聞かなきゃいけないこと。ずっと聞けずにいたことを尋ねる。尋ねなきゃいけなかった。


「――……」


 羽村くんは初めていたそうな顔をして、俯いて……そっと笑うの。


「先輩にとっての、真中先輩みたいなもんなんです。ダンスは……俺にとっては、もう」


 ずるい。その言い方は……最高に、ずるい。

 わかっちゃったのだ。捨てられないんだって。もう心や体の一部になっているんだって。

 羽村くんが大事。メイが大事。みんなとの絆である会社が大事。どれもルルコにとって身体の一部で切り離せないように。


「冬休み中に日本に来たダンサーさんに気に入られて、向こうで本格的な修行ができそうなんです」

「……刀は? 侍は……諦めちゃうの?」

「いえ。士道誠心並みの授業はさすがに無理でしょうけどね。刀の所持許可証ももらったんで、向こうで草の根活動でもする予定です」


 もうほとんど……決まってるんだ。向こうでの生活スタイル、ぜんぶ。準備さえしてた。

 その中に、私はどうやら……いないみたい。

 だから、もう……ここから先は確認でしかない。


「ルルコは……?」

「先輩の会社の支部ってことで向こうに窓口作って任せてくれたら……繋がれないかなって思ってます。でもきっと、今までのようには過ごせない」


 拒絶のような言葉に心がひび割れそうになる。


「……ついてこいとは言ってくれないんだね」

「大学があるでしょ。会社もある。真中先輩も、三年生の仲間たちもいる……それを捨てちゃだめですよ」


 うんざりするような理屈よりも、その先に。


「あなたがきっと初めて心の底からわがままになって、やっと掴んだものだから」


 彼の願いがあった。私の願いが、あったのだ。

 知っているでしょう、と囁かれる。頭を撫でられるけれど、いつもみたいに嬉しくなったりしなかった。初めて……悲しくてたまらなくなった。

 涙が浮かぶ。けれど、みじめでだらしのない顔はさらせなくて……微笑みながら尋ねる。


「……私を振るの?」

「夢を追い掛けながら……きっと一生後悔して、生きていくんです。それとも……遠距離でも許してくれますか?」

「――……」


 いいって言いたかった。

 けど言えないくらいには、現実を思い知っていて。

 それは羽村くんも一緒なんだ。


「待たせたくないんです。先輩は綺麗で、強くて、だけど繊細で……俺を待つより、どんどん未来へ進んでいって欲しい」

「なんで」

「耐えたり待ってたりしちゃ……もったいないですよ。先輩の美しさは永遠で、けど……今はまだ儚いから。俺を待ったらきっと、壊れてしまう」


 否定できなかった。実際、壊れそうだ。遠く離れた場所から毎日だいじょうぶか心配し続ける日々を、彼が戻ってくるまで過ごせる自信が私にはない。

 私の情けない弱さを、私も……誰より彼も知っている。


「儚さも先輩の一部だと思っちゃう俺は……先輩を汚せなかった。どうしても、無理だった」

「――……いいのに」


 今なら、今だからこそ、いいのに。そう思う私に羽村くんは頭を振るの。


「何か、あればいいんですけどね。そばで触れ合うことを躊躇った俺たちが心を繋ぐ方法が」


 私の涙を拭わずに、穏やかに笑う。

 思考が巡る。山ほど手段は浮かぶ。言葉も。

 遠距離恋愛。それも太平洋を隔てた先。それは高校生の私たちにとってはあまりに絶望的な距離すぎる。たとえ私があと三ヶ月で高校を卒業するのだとしても。

 儚いといってくれる彼との距離そのものが儚いものだった。

 乗り越えるためには……強い繋がりが必要で。心だけじゃ足りないんだ。それは。

 彼の欲を知らない。彼の衝動も。そのすべてはダンスに出ているのかもしれない。そしてそんな彼の夢は……刀に詰まっているんだ。

 瞬時に思い浮かんだの。コナちゃんがラビくんの刀を受け止めた瞬間を。あの……光景を。

 私にはできるだろうか。刀鍛冶でもない私に、羽村くんのすべてを受け止めることは。

 できるならきっと……距離なんて関係なくなる。

 離れたくない。お互いに夢を追い掛けて距離ができるなら、せめて心は繋がっていたい。

 それが私の願いだ。彼も願ってる。

 なら、もう、やるしかないじゃないか。私はわがままになると決めたのだから。


「刀、ある?」

「そりゃあ、まあ。家にありますけど」

「ここが終わってからでもいいから、行こう? まだできること、あるはずだから」


 戸惑うように私を見たけれど、決意の表情を見たからすぐに頷いてくれた。

 夢に邁進。刀鍛冶より侍候補生の姿勢は露骨。刀を抜いたら……立ち向かわずにはいられない。

 ああ――……その刀を、下ろしてくれたら。

 私も彼も、普通の幸せを手に入れていただろう。

 けど……私も彼も捨てられないんだ。夢を。自分の願いを。

 悲しいね。夢を見ても……すべてが手に入るわけじゃないんだから。

 そんな当たり前の現実が――……悲しくて、仕方ない。

 だけどね? ハルちゃんはきっと言うよ。

 それがなんだ? って。私たちなら乗り越えられるよ! って。

 あの子らしい、愚直なくらいまっすぐな心根を金色に輝かせて、見つけ出すに違いない。

 私たちにしかできない何かを。

 普通の恋愛ものなら終わっちゃうような運命さえ塗りかえちゃう方法を、見つけ出すに違いないんだ。

 ハルちゃんだけじゃない。コナちゃんも実践してみせた。メイだって、先輩の失われた心を引き抜いたんだ。今度は、私の番。

 部屋に入れてくれた彼は刀を手に、私に問い掛ける。


「先輩、どうする気ですか?」


 まさか……こんな形で、お兄ちゃんが大好きなシミュレーションゲームのヒロインみたいなことをいう日がくるとは思わなかったけど。


「その刀で私の心臓を貫いて」

「え――……」

「私を傷つけられないのなら……すべてを諦めて。だけど私と夢を掴みたいなら、迷わず貫いて」


 受け止める。あなたの心、夢をすべて。

 どれほど痛くてもいい。

 綺麗で素敵なところばかり見せるあなたの影や欲望さえもすべて、飲み込んでみせるから。


「その刀で、私の心を貫いてみせて」


 繋がりたいの。私の前にあらわれた王子さま。

 偽りでなく、間違いでもなく、あなたとの出会いが運命だと証明するために。

 一人きりじゃない。夫婦にはなれてない。恋人だけど、まだ越えられない壁がある。

 だからこそ今、私は二人を超えていくんだ――……。




 つづく!

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