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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!

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第二千八百三十四話

 



 術の研究をさんざんして、ゲームも遊び、よく眠って現世に戻る。

 今朝はちゃんと起きることができた。ハロウィンパーティーのことを忘れてないか、ぷちたちの訴えに胸を張りつつ、ご飯を用意して、幼稚園に送り出す。忘れてはいない! だが忙しくて限界ではある! でも、こういうイベントは楽しんでおきたい。トウヤとコバトちゃんはとうに巻き込まれているので、相談を持ちかけるし? お姉ちゃんにも是非とも参加してもらおう。なんなら、ぷちたちのお世話をしてくれる聖歌ちゃんたちも招いてしまうのはどうか。岡島くんたち料理部の面々も誘って、久しぶりに景気づけの食事もしたい。

 こういうこと考えてるときが楽しいんだから! 具体的にやることで、おまけに好きなことを考えるのが、よし! ただし、それがなにかを傷つけるようならアウト。

 パーティーでわくわくできるタイプな自分に気づくと、ちょっと元気が出てくる。おう、そうか。私よ、そうだったのか。そんな感覚。思い返すと、どんなに忙しいときでも、うちの親はイベントを欠かさないタイプだった。そういうことも、改めて振り返らないと忘れたり、掴めなくなったりするんだなあ。

 言葉にしていかないと見失ってしまう。だけど言葉にするとき露わになるのは、膨大な情報の一部に過ぎない。おまけにね? それで済ませてしまうと、一部以外を見落としてしまう。言葉にするという表現は常に限界が伴う。私たちの表現する力は、そこまで万能でも完璧でもない。だから表現を尽くすし、改める。

 感情の表現もそうだ。表現をどう読み取るのかだってそう。それは一度で済むようなものじゃない。そんなに万能でも完璧でもない。

 だからまあ、一見して「ふわっと」生きてるように見えてる人たちだって、自分に都合のいいように使ってみたり、改めてみたり、いったん置いといたりするんだろう。ボッシュとか、ホワイトカラーのニールやピーターやモジーとか。みんなそれぞれにね。

 地道に表現していくほかにないとして。

 みんなが学校に出かけていく間に、私は荷物をまとめた。尻尾や獣耳は目立つ。金髪もね。なので人に戻った状態でいることにする。刀は持ち出したい。だけどサスペンダーに装着して制服姿で出かけると、あまりに目立つ。ここは刀袋をふたつ用意して運ぼう。ノンちゃんの卵銃。シャルのキューブ。薄めのバックパックにしまって出発する。

 うちを経由することにした。和室の鳥居からリビングを覗く。お母さんたちが見当たらない。病院に出かけているのかもしれない。呼びかけてみたけど返事もなかったし、愛用のカバンや靴もなかった。

 それならそれでと割りきって外出。うちの最寄り駅から電車に乗る。そして国会議事堂前駅まで向かう。私たちが把握しているかぎり、ヤツを最後に見かけた場所だから。だけど、来てみて後悔。当たり前な話なんだけどさ。気軽に入れる場所じゃないよね! 国会!

 どうしたものかと考えていたとき、ふと思いだした。見学ツアーがあるじゃない!? いやでも待て。スマホで調べてみると、手荷物検査があるという。予約なしに利用できるっぽいけど、必要なことがあるぞ? 刀を持ち込めるはずもないし。化かすしかない。だからって、国会議事堂のそばでやることじゃないよなあ。

 いったん駅に戻る。それからコンビニを探してトイレを借りる。急いで刀袋ごと狸のぬいぐるみに化かした。頭だけのデフォルメかっちり、まんまる頭の狸さんだ。十兵衛の刀はおでこに葉っぱを、タマちゃんの刀には片目でウインクを。そう心がけるのだけど、絵心がないので、ちょっといびつ、かな? ま、まあいいや!

 ぬいぐるみにはチェーンをつけて、バックパックに装着して垂らしておく。トイレを出たついでにお買い物。別に素性がバレてもなんてことはない。悪いことしに行くわけじゃないのだし! お水のペットボトルと、あとはヨーグルト味のプロテインスナックひとつ。小腹が空いちゃったのだ。コンビニ前でさくっと食べてから、再び国会前に戻り、手続きを済ませて見学ツアーに参加する。

 どこかにあいつの痕跡がないか、霊子は漂っていないか。気になりすぎて順路を回りながらも話が頭に入ってこない。カゲくんに連れてきてもらって潜入したときよりも余裕を持って回れているはずなのに集中できない。

 時折、当たり前のように議員さんを見かける。いろいろあっても、ここは普通に運用されている。

 あとさ? 当たり前っちゃあ、当たり前なのだけど、実際に会うと「画面の中の人」でも「ニュースで聞く醜聞まみれのおじさんたち」でもなく、まず、見知らぬ人だった。私は氷山の一角でさえない、ごくごくわずかなもので、彼らを決定づけていた。

 自分中心の世界のなにかとしてしか見れてなかったんだ。なんにも知らないくらいなのに、わかった気になってた。浅はか! とてもね。

 いちいち見学ツアーの人たちに話しかけてくるおじさんはいない。ひとりもいない。賑やかさというよりは、どこか張りつめた緊迫感のようなものと、疲れ果てた倦怠感のようなものを最高濃度にして、ぐちゃぐちゃに混ぜたような、そんな空気と匂いが充満していた。正直、いい感じではなかったよ。

 大っぴらに金色を出せるはずもないので、立ち止まっているときに足裏から出しては足裏に留めることで収集に励む。時折、壁に触れてみたり、柱に触れてみたりしては、同じ原理で霊子を収集する。

 勇み足!

 計画性もなし!

 それでもできる精いっぱいがこれ。

 報告したらマドカがどんな顔をするのか、いまから怖いね!

 目新しいものはない。ただ人の認識の不十分さを噛みしめながら見て回る。襲撃なんて、まるでなかったかのように。あまりにも通常営業って感じだ。いや、そう示す必要性があるのかもしれない。場所が場所だけに。

 私の思うとおりに機能している場所、ではない。ここは、そういう場所じゃない。いやちがう。どこにもそんな場所はないんだ。わかりきっていたことじゃないか。

 人が地道に活動して、あらゆる営みによっていまがある。だけど、その具体的なものは見えない。わからない。知らない。気づかない。他者たちのことだから、というだけじゃない。実際にやってみないとわからないことが多すぎる。あまりにも、あまりにも。

 そりゃあ、だから、歴史に学ぶよなあ。やったら問題ってわかりきっていることを繰り返さないようにするために。


「置いていかれてしまいますよ」


 不意に声を掛けられた。振り返ると見覚えのない同世代くらいの女の子が私を見ていた。学生服だ。見覚えがある。品川あたりでよく見かける制服だ。そばに小さな女の子がいて、足元を見下ろしながら口をもごもごさせていた。あめ玉でも舐めているのだろうか。ぷんと甘い匂いがする。

 ふたりとも目鼻立ちがとてもよく似ていた。二重まぶたにぱっちりとした瞳が私を捉えている。光の反射からか、それとも虹彩の関係からなのか。吸いこまれそうな引力を感じる。小さくて細い顔立ちで羨ましくなる。お仕事で会った女優さんたちに決して引けを取らない、抜群のビジュアル。

 よくよく見ると彼女の手荷物は巾着だけ。乳白色に近い色合いの布地に金糸を混ぜながら花びらや手鞠を縫い込んだ、いかにもお高そうだけど、妙に古風な和柄だった。着物の布地にそっくりだ。

 彼女は小さな子と手を繋いでいる。ほかに彼女たちを気にする人はいない。ふたりでいるのか。姉妹で国会見学? 私が言うのもなんだけど、猛烈な違和感がある。


「あなたも学校を休んできたのでしょう?」

「え」

「メディアと髪色や特徴的な象徴が見当たらないけれど。あなた、青澄春灯さんでしょう?」


 はっ! はじめて見抜かれた!

 動揺もあったけど、同じくらい「うおおおお! 同世代の子に気づいてもらえたぁ!」という妙な感動があった。きゃっほぅ! ぞくぶつぅ!


「え、あ、え、ど、あ、あの」

「挙動不審にならずとも。ほかのどなたも気づいていませんので、ご安心を」

「あっ、はい」


 動揺した私を気遣っての言葉なのだろう。彼女に悪意はない。

 わかっちゃいるけど、舞い上がった喜びが一瞬で粉々に粉砕された。一気に奈落へ落ちた気分。すんとなるよね。さすがにね。

 彼女に誘われるように、ツアーの人たちとの間にできた距離を埋める。その間、簡単にご挨拶をした。

 花泉真衣さんというらしい。妹さんは? と尋ねると、女の子はむすっとしながら「めえ」と呟いた。真衣さんが「ごめんなさい」と詫びてくるけど、ぜんぜん気にしない。むしろ私が気にしている。なにか機嫌を損ねてしまったのだろうか。

 気にする私に真衣さんはただちに質問をしてきた。それから色々と話しこむ。

 彼女はここに知人がいて、呼ばれてきたのだそう。だけど先方が忙しい人だということで、手隙の時間に見学に参加することにしたそうだ。めえちゃんは退屈でしょうがないのか、ずっと機嫌がよくないそう。そりゃあ、まあ、ぱっと見て、ぷちたちよりも年上の、だいたい小学生くらいの子が来て楽しい場所じゃないだろう。国会議事堂は渋すぎる!

 知人ということは、議員さん? なんて冗談まじりに聞いたら「ふふ」と笑顔で流された。上品なお嬢さま、底知れない人って印象を抱く。


「あなたは事件の捜査?」

「えっ」

「お噂はかねがね」


 どんな噂なんだ。


「怪異と戦い、異変を食い止めたとか。今日はその追加捜査なのでは? 国会が乗っ取られたなんて、すさまじい事件ですからね」

「う、ううん」


 なんにも言えない! それに言う必要もない! ぜんぶ彼女の言うとおりなのだから。


「なにかあればとは思ったんです。犯人は事件現場に戻る、なんて言いますし。でも連日の警備の手厚さを思うと、犯罪者が気軽に来たい場所ではありませんよね」


 半ば投げやりに返事をすると、彼女は首を傾げた。


「気軽に来ることのできない場所でしたことを考えると、紛れて入り込む術を心得ているのかと考えていましたが。あなたがたの不思議な力では可能ではないのですか?」

「あ、え、と」

「そうしたことは警察が調査しており、かつ、警戒しているとか?」

「そっ、そうですね! はい、たぶん?」


 嘘ではなかった。

 議事堂周辺も、ツアーの道中においても、侍隊と思しき警官をしばしば見かけた。厳戒態勢は維持されていると見ても過言ではないはずだ。


「なるほど」


 彼女は深く追求することはせずにうなずいた。巾着を持つ手をおとがいに当てて、しばし黙る。細めた瞳で中空を睨む。ちなみにいまも歩いている。意識が歩行から外れていくのか、壁にぶつかりそうになる。その前にめえちゃんが手を引いた。彼女が「ありがとう」と言っても、めえちゃんの機嫌は悪いままのようだが。

 ふたりはいったいどんな姉妹なんだろう。

 あれこれ考えたり、時折おもいだしたように質問してくる真衣さんに答えたりしているうちに、あっさりとツアーが終了してしまう。一応、移動中も霊子の収集は欠かさなかったけれど、正直、肩すかしだった。

 解散になり入り口で「さあどうするか」といったところで真衣さんが私に尋ねる。


「そもそもあなたの想定する相手は、いったいここで、なにを、なぜ、なんのために関わったんでしょうか」

「え」

「いえね? すこし気になったんです。通常、ここを押さえるということは王手に等しい。そうでしょう? けれど、それは私たちが思い描くことであって、あなたの想定する相手にとってはどうなんでしょうか」

「あ」


 考えてもなかった。なんて間抜け!


「私とちがって、あなたなら、この疑問に対するなにかしらの情報をお持ちなのではないかと、そう思ったんです」

「真衣!」


 遠くでパリッとした品のいいスーツ姿の男性が呼びかけてきた。その途端にめえちゃんが真衣さんの背に隠れる。おまけに真衣さんが舌を口蓋に当てた状態で薄開きにした。彼から顔を背けるようにして、喉を鳴らす。唸っている?

 私たちが出てきた場所に立つ彼はそんな真衣さんに気づかず、手招きをしている。よくよく見ると、襟にバッジがついていた。議事堂で必然的によく目にするバッジが。


「早く来たまえ!」


 来たまえって。きょうび聞いたことがないが。顎を逸らして目を下げて見下すという、尊大でいやらしい態度の人だった。

 真衣さんが舌を外したのだろう。音が微かに鳴った。


「ごめんなさい。今日はこのへんで。もしよかったらお店に来てくださいね?」


 彼女は巾着から名刺ケースを出して、一枚を抜き取り私に握らせた。そして渋々と彼の元へ歩いていった。めえちゃんが私に振り返り、小さく手を振ってくれる。私も手を振り返してあいさつに応じながらも、なんだか奇妙な光景に怯んでしまった。

 彼の元にたどり着いた真衣さんは、私に向けていたものとは明らかに異なる表情を見せた。強ばっているというのとも、またちがう。無表情とも異なる。嫌悪や憎悪は見て取れるけど、それだけでもない。私がカナタに、カナタが私に会った瞬間に解ける緊張、あるいはふたりだからこその緊張が芽生えるような、そういうものも見て取れた。

 肘を差し出す彼に「こんな場所でなにを考えているんですか」「大声で名前を呼ぶなんて」と文句を言いながら、彼女は再び議事堂のなかへと入っていく。めえちゃんとともに。「俺たちが他人行儀はおかしいだろう」と彼は不満を露わに追いかけていった。


「なんだろ、あれ」


 ひどく不健全な匂いがする!

 追いかけてみたい衝動に駆られたけど、ぐっと我慢。私はただでさえ、良くも悪くも繊細な立場にあるんだ。おばあちゃんちで聞いた昔の魔法少女もののアニメじゃあるまいし、変装して追いかけてみる、なんてことは。


「ちょ、ちょっと、してみたい」


 いやいや。ゲスの勘ぐりだって。事件とは関係ないじゃないか。落ち着け。


「店とは?」


 もらった名刺を見ると彼女のものじゃなくて、喫茶店のものだった。


「燈火、ね」


 彼女がやっているお店なのだろうか? まさかね。いやでも、さっき真衣さんを呼んだ人、明らかに議員だった。ぱっと見て二十代か三十代。どちらにしたって私や真衣さんからしたらおじさんそのものだけど、議員からしたら若手も若手、超がつくほどの新米だ。議員の平均年齢って、たぶんシニアだもの。

 敷地の外に出ながら、スマホを出す。それから思いつくかぎりの検索ワードを使って調べてみた。

 思いのほか、すぐにわかった。男は四世議員の大泉孝太朗。いわゆる世襲の男である。短い髪をくねっと整えた甘いマスクの好青年という触れ込み。父親はかつての総理大臣でありながら、病で早くに亡くなっている。東京を拠点に長らく活動していた一族で、祖父も総理を経験している。彼はいまも存命で、与党の巨大な派閥の頂点にいる人物だそう。

 きな臭いにもほどがあるけど、さすがに今回の一件と直接関係があるとは思えない。

 というのもね? 大泉孝太朗の評判は「顔はいい」「言ってることがこどもみたい」「すぐバレる嘘をつく」「なんか妙に愛きょうがある」、おまけに発言がへんてこすぎてミーム扱いされている。

 正直、議員としての成果はなにもない。おまけに実際、検索結果から紹介される記事のことごとくが彼の、まるで気楽な遊び人めいた発言をおかしくまとめたものだけだった。

 若手議員が女子高生と小学生くらいの女の子を、議事堂前で大声で呼びかけるのはなぜ? 彼がおばかだから! 本当にそれでいいんだろうか。よくはない。ないんだけど、ひとまず「問題なさそう」だ。

 真衣さんに繋がる情報はないか。すこし期待したが、さすがになかった。なくてよかった。ないとわかっていても、フルネームで検索したらヒットした。彼女の名前の扱いは小さい。SNSのページはヒットなし。あったのは、両親の死去を伝えるニュース。都内の自宅で亡くなっているのが見つかった、と記されている。

 気になったのは、真衣さんのお父さんが考古学者で、お母さんが女優さんだということ。それも昭和から平成にかけて、子役時代から名の売れた人だった。とっても綺麗な生前の写真が載っている。真衣さんはお母さん似だ。あんまり美人なのは、遺伝かあ。すごいなあ。

 いや、話がずれてる。

 真衣さんのお父さんの専門は隔離世絡みの考古学。秘宝だなんだを探す、いわゆる「おかしな人」として扱われている。UFOだなんだ、オカルトの番組に何度か呼ばれては、ろくにしゃべらず、むしろ信じる人たちを面前と舌鋒するどく批判するのですこしだけ名の知れた人だった。そんな人が時代の美人女優と結婚したのだから、けっこうなニュースになったようだ。

 じゃあ喫茶店は? 検索してみたけど、ホームページがヒットするくらい。特別な内容は見当たらなかった。真衣さんのお父さんの秘宝にまつわる研究内容についても、特段、見つからない。

 そりゃそうか。私たちはいわゆるオカルトで、マイノリティで、ありもしないもの。厄介者や、見ないもの。語らないものなんだから。むしろ真衣さんのお父さんは、なんで秘宝にたどりついて、調べるようになったんだろう? 不思議。


「いやいや」


 切りかえなきゃ。

 真衣さんの問いかけはかなり示唆的な内容だった。

 たしかに彼の言うとおり、国会を押さえるだなんて王手も王手じゃない? あいつがやったにせよ、製造開発者たちがやったにせよ。本人不在、操り人形たちが紛れ込んだうえでの国会運営。幸か不幸か、そもそも現政権というより、いまの与党は長らくろくでもなくて、まともでもなかったから、操り人形たちによるものだとバレるような形で支障をきたすほどじゃなかった。

 もっとも運用そのものがどうかは、また別の話になるのだが。

 どうとでも利用できるし、手中に収めることだって王手になる。潰してみせただけじゃ足りない気がするけど、それはそれで王手に近しい手に思える。けど、王手と言い切れない気もする。

 なら、なぜそれを選んだんだろう。

 あいつの目的って、いったいなんなんだろう?

 一過程だとしても。製造開発者たちへの反旗にしても。警察や法を選ばない理由は、なんだろう。議事堂を乗っ取れるくらいなら、司法も? メディアも?

 なんて陳腐な陰謀論。別にそこまで激烈に手を広げる必要はない。与党を押さえれば一定の干渉を得られるはずだ。儲かるぞぉ! 影響力も持てるぞぉ! それだけじゃ済まないけど、済まないぶんをどうにかできるだけの手だってあるんだ。既に。製造開発者たちには、もう。

 それらを潰して終わりじゃない。だよね?


「王手、じゃない?」


 普通は王手じゃない? 製造開発者たちにとっての王手。それを崩して、さらなる王手をあいつは指した。これが将棋なら、だけど。

 でもちがう。あいつにとっては製造開発者たちを見つけて対処しないかぎり、王手になり得ない。実は既に製造開発者たちとやり合っている最中? それはあり得る。けど、待って。


「おかしい」


 連中を脅さないか? 追いつめるために手札に使わないか?

 八尾を作った、利用したのが製造開発者たちへの反撃のためだったとしたら、それにはかなりの時間と労力を割いたはずだ。そんなに計画性のある人物が挑んだのなら、もうちょっと賢く立ち回らないか?

 なのにあいつは、操り人形たちを一掃することを選んだ。

 それはいったい、なぜ?

 その指し手はいったい、なにを意味するのだろう。

 たんなる復讐? やっつけたいからっていう、ただそれだけのため?

 まさか。

 いや、絶対にないとは言い切れないけどさ。どうにもぴんとこないのだ。

 あの晩、議事堂前で顔をあわせたあいつには、なにか激しい感情が渦巻いていた。思いどおりになった、みたいな感じはなかった。晴れ晴れとした姿にも見えなかった。

 十分な指し手になってなかったんじゃないか。やむなく人形たちを一掃したというのなら、それはいったい、どうして? なんで? さっぱりわからない。

 あの夜いったい、なにが起きたんだ。


「あああああ」


 なんてこった。いま!? やっとここ!?

 私ほんとに参ってたな! よっしゃ、元気だしてこ!




 つづく!

お読みくださり誠にありがとうございます。

もしよろしければブックマーク、高評価のほど、よろしくお願いいたします。

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