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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!

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第二千八百六話

 



 放課後にヒヨリが来た。

 バイトが休みになったというので、ノノカを引き連れて遊びに来てくれたのだ。

 ヒヨリは吹奏楽部を定期的にお休みして、バイトを続けているという。いつでも自分のお金で気兼ねなく旅立てるようにしておきたいのだそう。ノノカはそれがピンとこないようだ。バイト経験もなし。最近の私は休みがちとはいえ仕事をしてたから、ヒヨリの気持ちがわからなくもない。

 高校生でインフルエンサー目指して活動してる子もいるし、動画配信をがんばってる子もいる。バイト以外にも「受けるかどうか」は別にして「受けたら稼げる」手段が増えた。そういうのはどうかとノノカが提案するけど、ヒヨリは「とにかく男が無理」だからやらないそうだ。SNSのアカウントを作ったら、アカウントも写真も猫とか動物しか使ってないのに、ダイレクトメッセージで性器の画像を送ってきた自称大学生のおじさんがいたらしくて、それ以来トラウマになってやっていないという。

 そんなものに慣れたくはないもんだ。通報したりなんだりしたけど、送ってきた相手を特定して裁くみたいなのはお金がかかりすぎるし、うまくいくかどうかわからないからオススメしないと言われてしまったという。ヒヨリの親御さんも終始困惑。

 ヒヨリは前に告白してきた男子が、まだまだ意識しまくっているようで、それがヒヨリにはうっとうしくて怖くてたまらないのだそう。

 まあ。大概、一方的だし、どうしてくるのか読めない大きくて強い感情は怖いよね。

 求めてないし。求めてないって伝えたことを受けとめられずにいるようなら、やっぱり怖い。

 だからなのか、ノノカやイチゴたちがついているそうだ。

 感情というのはいつでも厄介だ。

 自分のものがどういう形をしていて、どのように制御できるのか、制御できないならどうしてなのか、制御できないものとどう付き合っていけばいいのか。とにかく、むずかしい。望まなきゃやらないのが人だしさ。

 私はあなたの思いどおりにはならない。

 それを受け入れるのは、あなたの役目。

 人付き合いなら、こんなのしょっちゅうあるけど、だからこそできない相手とは続けられない。

 そもそも付き合いたくないっていう、そういうメッセージを受け入れられないのは問題。

 もちろんヒヨリに告白してだめだった彼にとっても、つらい結果だけど、どうしようもないことを受け入れなきゃならないのは問題かもしれない。

 むずかしいけど、そういうことの連続だよね。


「あいつとバイト先がまあまあかぶるのが気持ち悪くてさ」

「お、おぅ」

「なかなかだね」


 耳をすませばのアウトだったパターンだ。

 図書館で本を借りて読む雫にアピールしたくて、雫が読みそうな本を探って、片っ端からまだ借りてない本を借りてたやつぅ!

 うまく関われたらよかったんだろうけど、だめだったらもう、ひたすら気持ち悪いやつ……。


「素朴な疑問なんだけど、どうして人はつがいたがるの?」

「つ、つがいって、すごいこと言うな」


 ノノカが引いてる。

 そういえばノノカから浮いた話を聞いたことがない。

 まあ、でも、そういうのって人それぞれだからね。

 ただ、そうなると、いまこの場で視線が集まるのは私だけになるわけで。参ったぞ。


「思春期のホルモンの暴走ってやつ?」

「ホルモンなら定期的に私たちを振り回してるけどね」


 成長に伴い十代は激変の最中にある。

 身体の成長だけじゃないし、体内物質に翻弄されるだけでもない。

 多種多様な生育環境、体験のなかで集まる私たちは、みんながあまりにも違いすぎるわりに、みんなをあまりにも同じように扱いたい場所に通うものだからさ?

 それぞれにいろんな反発や安心を抱いて、より求めている。

 それにメディアをはじめ、とにかくいろんな物語があふれているからさ?

 そのひとつの恋愛に憧れる人も出てくる。私みたいに。もちろん惹かれない人もいる。ヒヨリみたいに。


「友達同士じゃだめ? とか、触れあいは必要か、そこにセックスは含めるのか、とか。いろんな議題はあるけど。そうだなあ。ヒヨリ、手を握ってもいい?」

「別にいいよ」


 よかった。ここでダメならもうちょっと考える必要があったところだ。

 まあ、だったらノノカに手伝ってもらうだけだけども。


「ありがと。いやになったら、すぐに言ってね?」


 手を差し伸べてくれたヒヨリに目礼してから、両手でそっと包む。

 ヒヨリを見ると、すこし面映ゆい顔で視線をあちらこちらにさまよわせていた。


「離す?」

「う、ううん。なんかこう、くすぐったくて。気恥ずかしい感じ。ノノカたちと手を繋ぐなんて、よくやってるのにな」

「おい。どういうこった」


 ノノカが不満を漏らすけど、ヒヨリは「わからない」と肩をすくめた。

 それからすこしして、たははと気まずさをごまかすように笑う。


「なんか照れるね」

「どういうこった?」


 今度はノノカが信じられないって顔で私を見てきた。

 だけど困る。しらんがな。あと顔芸つきの発言繰り返しで笑いを取りにこようとしないでほしい。

 ちょっと吹きそうになったってば。


「もちろん何気なくしていて、当たり前になっているのもすごいけど。ヒヨリがいま、私のお願いを受けて手を繋いでくれたのって、ヒヨリがいいよって伝えてくれたこと、繋いでくれていることで成り立ってるじゃない?」


 もちろん、それだけじゃない。


「私がお願いして、繋いでる。ヒヨリと私がお互いに、お互いをいいよって許して、認めて、受け入れて成り立ってる。それって、改めて確認すると気恥ずかしくて照れちゃうけど、なんか安心したり、いいなって思えたりしない?」

「よく、わかんないけど」


 ありゃ。


「まあ、悪くはないかも」

「手を離さないもんね」

「べ、べつに変な理由はないですけどねっ」


 ふたりの会話がなんだかちぐはぐなのがおかしいけど、笑うのは我慢。


「こうできるくらいには、私たちはお互いにだいじょうぶって思えてる。そうじゃないケースもあるけどヒヨリ、ノノカと私は、シンプルに、だいじょぶな感じ」


 ちなみにそうじゃないっていうのは、一方的に私だけ、ヒヨリだけが思ってる、みたいなパターンだと説明を補足する。


「本当は離したいけど言いにくい、とか。離すべきかどうかわからない、とか。離したいって言うとひどい目に遭いそうで言えない、とかね。いろんな懸念があるからさ? 本当は、お互いにこうして安心できるって、すごい珍しいこと」

「まあ、それならわかるかも。重たいって言ってもノノカがのしかかってくることあるし」

「部活動は疲れるから、寄りかかることもあるじゃないっすか」


 ノノカの抗弁が早い。

 ふたりとも仲良くやってるんだろうなあ。

 いいなあ、部活動。


「あ。手、汗だいじょうぶ?」

「私は気にならないけど。ヒヨリは? 私の手、だいじょうぶそう?」

「う、うん」


 妙に口ごもってから、再び視線がうろちょろと。

 半目で睨むノノカがぼそっと呟く。


「なんかえっちじゃない?」

「どういう感想」


 なに言ってるんだと言い返すものの、ヒヨリも「そうかも」と言う。

 ヒヨリさん!?

 でも手は離そうとしない。


「つまり、春灯は、私を手を繋ぐくらいには受け入れてるっていう、そういうこと?」

「そうそう」

「そう改めて思うと、なんか、落ち着く、かも?」


 ノノカが「顔あか」と茶々を入れる。

 拗ねているのか。それとも混ざりたいのか。よくわかんないな。


「私はこういうのが、気持ちいいしさ? うれしいし、ほっとするんだ」


 愛にはエロスとアガペーがあるという。

 その定義をエロスでいえば「自分に欠けたものを得たいと求める衝動」であり「理想的なものへの愛」であり「営みで育まれる愛」、アガペーを「打算のないもの」であり「キリスト教における神の愛」のように「まず存在する愛」として捉えるとして。

 これじゃまだよくわかりにくいので、もうちょっとかみ砕いて言うならば?

 エロスを「自分にないもの」「触れる・行うことで育むもの」、アガペーを「まず内にあるもの」として捉えたらどうかな?


「こういう触れあいは私にはないもの。ヒヨリがいないと成立しないもの。ヒヨリがいいよって、許してくれたり、触れてくれたりすることで成立するもの。それが、いろんなうれしい気持ちや、あったかい気持ちをくれるんだ」

「な、なる、ほど?」

「エロスっていうと、えっちなやつかと思ってたけど。そういう捉え方ができるんだね?」

「そ」


 どぎまぎしてるヒヨリとちがい、ノノカが感心したように話してくれた。

 音楽でも、人数の多い吹部で挑む楽曲によってはテーマに扱うものだ。

 愛とはなにか。エロスとアガペー。

 とりわけエロスには性愛を含めることが多い。

 そして性がついた途端に、連想するものがポルノで一色になる人がいる。

 だけど、まあ、まあ、落ち着いて。


「はい、ありがとう」


 包んでいた手を離して、ヒヨリの手を受けとめている手はそのままに。

 ヒヨリが離すのに任せる。まだ乗っているなら、それはそれでよしとして。


「たとえば大浴場があるけど、使える子ばかりじゃないでしょ?」

「まあ、無理な子はけっこういるね」

「でさ。大浴場に入れるからって、身体に触られてもだいじょうぶか、そもそも触ってもいいって思えるほど信じられるか、安心できるかって話はあるじゃない? お医者さん相手にするんじゃなし」


 ヒヨリはじっと私の手を見ている。もっと正確に言うと、私たちふたりの手を。

 もちろんノノカはヒヨリの様子に気づいていて彼女をジト目で見ているが、話を続けることを選んだようだ。


「まあ、ね。美容師さんに髪の毛や頭に触られるのが無理な人もいるし」

「でしょ? だれもがっていうわけじゃないけど、小さい頃に抱っこしてもらったり、抱き締めてもらえたときの安心感ってやっぱりあってさ? 肌に触れてもらうとか、お互いに触れあうとかも、その延長線上にある。まあ、興奮もするけど」

「しれっと付け足した」

「ま、ね。でも、繰り返しになるけど、ポルノのような文脈じゃないんだ。セックスさえもね。極論すれば、保健体育の授業で教わる接合だって、なくていいし。するにしたって、ひたすらに腰を振るとか、その必要性はない」


 男性の射精や女性の膣内の刺激を目指すなら擦るみたいな話にはなるけど、それより以前に重要なのは、お互いに素肌になって、とびきり無防備になってもだいじょうぶだし? 安心できるし。落ち着くし? マッサージだってできるし。触れること、触れてもらうことで、お互いに感情をやりとりできるところにある。


「そういうのが必要ない人もいる。そうじゃなくて、体験できる相手と巡りあえたらと思うけどひとまず相手がいないときだって、焦ることもなくて。だって、いまみたいな触れあいは友達同士でもできるわけじゃない? お互いによるけどさ」

「まあ、ねえ」


 ノノカがまだヒヨリを見てる。

 いまだに固まるヒヨリさん。どした。


「ポルノみたいなことしたいってやつは? いないの?」

「それはいると思うよ? 男子のなんか露骨だもん。胸が大きい子とやりたい、とか。とにかくパンツは見たいとか」


 言いだすときりがない。

 その手のポルノな文脈は男性向けの娯楽にあふれているけど、女性向けにだってもちろんある。

 ポルノから裾野を広げたら? 恋愛すべし、とか。家族かくあるべし、とか。もうごまんとある。

 広告には当たり前にスリムであれ、をはじめとするメッセージがやまほどあるし?

 私たちは無自覚に、無意識に、それらを内面化して、規範にまで取り入れてしまっていることも多い。

 漫画、アニメは批判されることが増えたけど、実は他にもやまほど批判したほうがいいようなものがありふれているし? 実際に批判している人も増えている。

 いまの話でいくなら、そうだなあ。

 胸で挟みたい。潮を吹かせてみたい。イかせたい。口でさせたい。喉までツッコみたい。お尻でやってみたい。ナマでやりたい。中で出したい。顔にかけたい。痴漢もしたいし、外でやってもみたい。旅行先の温泉でやってみたい。オモチャも使ってみたい。あれや、これや。

 ポルノの文脈だ。どれも、これも。ぜんぶファンタジーだって訴える人が増えても、こうしたことをやりたい、だから彼女が欲しいとか、あの子を落としたいとか、そういうことを考える人も増えつづける。

 えげつないものもたくさんあるね?

 まだまだこんなものじゃないよね。

 彼らの頭のなかに、いまヒヨリと手を繋いで説明してみせたような安らぎや気持ちよさが入り込む余地はない。

 もしも相手がその手のポルノやりたい野郎だったら?

 演技であんあん言いながら「まだかなー」って待つだけになる。

 「だれと」したいのか。

 大事なのは「行為」なのか、それとも「相手」なのか。

 「行為」で感じたいのか。「相手」を感じたいのか。

 それだけで、大きく内訳が異なる。

 興奮したいだけならポルノで十分かもしれないけど、それじゃ届かないし超えられないラインがある。

 それは本当に特別な相手と、特別な夜に、育んできた特別をもって挑むものでさ?

 ポルノはそれを閉ざす。いっそ邪魔になる。

 まずポルノ、だと無理。

 ちゃんと特別を味わえるふたりがお互いに「相手」を、そして「自分」を堪能できる状態のなかで、遊べる手段として活用するなら、ありかもしれないけど。

 それってけっこう、むずかしいよ?

 自分のしたいことが頭から離れないと、もうそれだけで「相手」なんてそっちのけになる。というかいかにして自分の思いどおりにするために「相手」をどうこうするかばかりになっていく。

 ずれにずれてる。

 ちなみに最近のカナタさんがこれである。

 ただし私も去年はずれにずれまくっていたので、人のことは言えない。


「あの。おかわりできる?」

「ヒヨリ?」


 ノノカがこいつマジかよって顔でヒヨリを見るのが面白くて噴き出しそうになった。

 もちろんいいので「いいよ」と答えて、手を再び包む。


「こういうのは、好き」

「え。え。なんかずるい。なに。春灯の手は魔法か? ノノカも体験したいんですけど」

「私のあとでね」

「お前おかわりしたてだろ! とうぶん譲る気ないだろ!」

「なんかいいんだよね。なんでだろ」


 言葉にできないなら、それはそれでいいんじゃない? と伝えながら、三人で雑談に移っていく。

 ノノカと交代したり、ハグで試してみたりもする。

 さんざん堪能したヒヨリは「ノノカはちょっとなあ」なんて文句を言って、ノノカをたいそう刺激していた。ふたりがさんざん盛りあがりながら去っていくのを見送ったのちに、ふと思った。

 私と魂たちはもはや分けられない状態にあるほど混ざっている。

 混ざったなかでも八尾の成分が濃そうなところを抽出したり、出してみようと試みることはできるけど、それは術の後にダメージになるのかもしれない。

 私と彼らがどう混ざっているのか。混ざっていながら、いまも昔の私のままでいられるのはなぜか。

 御珠だ。ミコさんの術だ。でも、それってわかったようで、なにもわからない。

 結局どういうことなのか、さっぱりわからない。

 私という川に、彼らという生物や微生物、石やコケなどがどう存在しているのかがわからない。


「川、水、成分、生態系」


 呟きながら、うちに戻る。

 階段を登ってお父さんの書斎に行く。

 並べた刀が目当てじゃない。川釣りや川の環境についての本を探り、ぺらぺらと眺める。

 それからふと思い立ち、今度はお母さんの書斎へ。私の昔の教科書なんかも保管してくれているのだ。理科の教科書をひととおりぺらぺらとめくってから、今度は金色本を出して大辞林や広辞苑を探る。

 私とヒヨリ、ヒヨリとノノカ。

 仮に三者を並べたとき、みっつの川がある。

 あるいはみっつの異なる合成液体が存在すると捉える。

 二者が関わるとき、それぞれの流れ、それぞれの液体、それぞれの成分が混ざりあう。

 それこそ汽水域のように。

 汽水とは海水と淡水とが混じり合っている塩分濃度の低い水を意味する。湖や河口などの水である。

 そして汽水域とは河口などの海水と淡水とが混じり合っている水域を指し示す。

 都内の川でいえば荒川、多摩川に隅田川、目黒側に神田川、江戸川といろいろある。海に繋がる部分に汽水域が存在する。

 汽水域ならではの生態系があって、汽水域だからこその釣りができるみたいだ。

 これを人と人との交流に例えるのなら?

 私たちは常に汽水域が存在する。

 私とヒヨリ、ヒヨリとノノカ、ノノカと私。

 完全に混ざりあうことはない。

 それぞれの汽水域が居心地がいいほど、お互いに安心できるけどね?

 一方的なことも決して少なくない。

 だから「いやなら無理をしない」し「強要もしない」し? 「相手がいやだと言えない可能性さえ視野にいれる」し。侵襲しない。犯さない。

 馴染み深いとむしろなあなあになっちゃうところがある。

 トモやキラリ、マドカやノンちゃんたち相手にいまさら仕切り直すようにできるかっていうと、私も自信がない。それはカナタが相手でも同じ。むしろハードルが高くなる。

 でもね?

 ヒヨリが落ち着けたような、手を繋いだときのような安らぐ落ち着いた関わりって、別に触れあいにかぎらず、あらゆる場面でできることだろうしさ?

 それってやろうとすればするほど、たぶん、すんごくむずかしい。

 二人三脚なところもあるから、自分ひとりじゃだめ。

 リードしてもらえればそれでおっけーといかなくなることもあるから、困りもの。

 大変だね! ほんとにさ!

 人と過ごすのって。

 ポルノにさえ負けることもある。

 「私」ってなんなん? あなたにとってそんなもんなん? とめげたり、うんざりすることもある。

 相手は私の思うとおりにはならない。だから、結局、付き合っていくほかにないし? もう無理だと思うこともあるんだろう。

 ぷちたちと過ごしていてもしょっちゅうだ。

 関係っていうのはほんと、不思議なものだよ。

 なので、それはひとまずおいといて。

 私にはたくさんの魂が注がれているとしたら、みんなよりも霊子の干渉や影響が濃いっていうことはないだろうか。

 汽水としてみると、海水と淡水になるけれど。人の心として、それを液体に例えたときには、私には自分だけじゃなくて、八尾にされた魂たちのぶんも存在するわけで。

 私自身が既に汽水域のような状態にあるし? みんなと関わるとき、神通力や術を使うとき、私だけじゃなくて、みんなの力を借りることができるのかもしれない。

 私と彼らは厳密には分けられる状態にないしさ?

 濃度も探るには相当、骨が折れる状態な気がする。

 たとえば多摩川のすべての情報を知りたい! みたいな問いだよね。時間によっても、季節によっても変わることが盛りだくさんだし? 人による開発だなんだの影響だって出るけど、それがどれくらいのものかを調べるのだって手間と時間と費用がかかるっていうのに!

 そもそも私はみんなに対して、だいじょうぶと伝えられるんだろうか。

 安心してもらえるのだろうか。

 みんなはどうだろう。どう思っているのかな?

 幸いにして、私はそれを考えることができる。

 だけど怖がりで、問題も多い私には、みんなにそれを尋ねる度胸も勇気もない。

 それに、もしだめだったときの備えがなんにもないからさ?

 問いかけるのが命がけになってしまう。

 みんなにとっても、それが命がけになってしまう可能性があるから、そこを考えなしにはできない。

 まあ、こんなの、だれが相手でも一緒なんだけどさ。

 そんなことをつらつらと考えていたら呼び鈴が鳴って、鍵を開ける音がした。カナタかな。鍵は渡してあるんだよね。


「はあい」


 声をあげながら書斎を出て、一階に降りるとカナタが神妙な面持ちで立っていた。

 右手にケーキ箱。左手に荷物。見上げる瞳は揺らいでる。


「どしたの」

「俺、自信なくなっちゃった」

「はい?」


 なに。藪から棒にどうした。


「話してもいいでしょうか」


 すごい他人行儀じゃん!

 どうした!?

 異変は突然にやってくるね!?




 つづく!

お読みくださり誠にありがとうございます。

もしよろしければブックマーク、高評価のほど、よろしくお願いいたします。

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