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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!

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第二千七百三十二話

 



 振動を伝える。

 弦楽器は弦を弾く。弦は振動する。

 実はここに高校で学ぶ知識が関わってくる。

 振動数。ヘルツ。ラジオで聞くよね。

 グラスのお水をたっぷり注いだ状態で叩くと、お水のない面積は減るよね? だから振動する面積も減る。

 波の速さ=振動数かける波長だ。

 かつんと叩いて振動する数が増えるほど、音は高くなる。

 ギターやヴァイオリンなどの弦楽器なら? 弦を押さえる。弦を弾くときに振動する幅が減る。そのぶん振動数が大きくなる。なので? 音は高くなる。

 弦は一弦から六弦にかけて太さが変わる。弦の作りもちがう。なので音の高さも変わる。特に一弦と二弦は鉄そのまま剥き出しって感じで、長く押さえていたら指をさっくり切られそう。実際かなり痛い。三弦から六弦は弦にぐるぐると巻きつけてある。六弦なんか一番太くて、触った感触がまろやかで心地がよい。

 太くなればそれだけ弾いたときの抵抗も増すし、振動する速度も変わる。なので六弦から一弦にかけて、音は高くなっていく。

 さらに弦楽器はチューニング時に弦の張り具合を調整するのだけど、きつく張れば音が高くなっていく。

 これが吹奏楽で扱う管楽器になると、また話が変わってくる。

 管楽器は息を吹きかけて音を出すので、弦楽器よりも楽器があったまりやすい。

 管楽器には木管と金管とあり、ノノカに教えてもらった簡単な覚え方だと? 口を当てるマウスピースで振動させるものが金属か、はたまた木製かで見分けるのが、わかりやすいのだそう。

 クラリネットはボディが木製、サクソフォン通称サックスのボディは金属だけど、どちらもマウスピースに木製のリードをはめて、リードを振動させる。

 でもね? ノノカたちと一緒に吹奏楽部で活動しているアヤネやイチゴたちいわく「唇の振動で音を出すかどうか」らしい。実際に金管楽器のマウスピースを見ると、唇を当てて、唇を振動させている。

 実際に金管楽器を吹いているみんなに見せてもらった。

 指が一本挟まる程度のピースサインをして唇に当てて、唇を振動させるところを。

 ぶぶぶぶぶぶって、すごい音を出すの! 驚いたよ。あんなのできないもんね。

 もちろん、それぞれに得意不得意があって、音の出方もちがってたけど。

 ちなみに金管楽器のマウスピースも、唇に当てる部分のサイズが楽器によって異なる。とりわけカップと呼ばれる円錐形の空洞のサイズがちがうね。ユーフォやチューバなどのマウスピースはカップが大きくて、トランペットになるとちっちゃい。

 もちろんトランペットはトランペットのマウスピースだけで、いろいろある。カップの形状も変わる。

 金管楽器のマウスピースはカップ、スロートと呼ばれるカップから先端にかけた空洞、そしてスロートから先端にかけた空洞の広がりを指すバックボアって呼ばれるところがあるそうだ。それぞれの構造がすこしでも変わると、また吹き心地も変わるんじゃないかな?

 ここまでの流れで想像できるんじゃないかと思うんだけど、金管楽器は唇の振動で調節する幅が大きい。それに対してクラリネットやサクソフォンはマウスピースにリードを装着して吹き込むし、リードを舌で触れて息の流れを止めて音を止めるタンギングと呼ばれる技術がある。俗に「タ行」を発音するときの舌の動きをイメージしてもらえばわかりやすいのでは。咥内に舌を当てて離すことで発音するでしょ? それで音が途切れるの。たーた、とね。それをしないと、音をドーレと変えてもスラー”のような”音の出方になる。これはクラリネットでも同じらしい。

 ちなみに一定技量を得たプレイヤーだとタンギングを素早くする仕組みを心得ているのだそう。言われてみたら、タ行を素早く繰り返すのってむずかしい。コツがいる。タをどれだけ早く言える? タタタタタってさ。マーチングのスネアの連打にはとてもじゃないけど追いつかない。そういうとき、タタタタじゃなくてタカタカだったら? もうちょっと早く言えそうじゃない? この咥内と舌の使い方がいいそうだ。

 リードを二枚組み合わせたオーボエとか、息の出し方でリードを再現するフルートとか。

 もうむちゃくちゃすごい。

 リードを固定するリガチャーと呼ばれるものも、音に影響を与える。

 振動を伝える部分の構造や作りがすこしでも変われば、音も変わるってことだ。

 なので消耗品のリードを扱う楽器の演奏者は、それが中学生であっても? 買い集めなきゃならない。使えばへたる。それに一日ずっと使っていたら息や唾液で湿っていく。それはもちろん振動に影響を与える。万が一、歯にでも当てたら? 先端の細い箇所はたやすく欠ける。で、このリードが地味に高いそうだ。お母さんの本棚にある漫画、のだめカンタービレでリードを自作している演奏者がいたけど、材料費のほうが安く仕上がるのなら? 自分で削れたほうが助かるのかもしれない。ちなみにメーカーもいろいろ、同じメーカー同じ商品のリードもそれぞれにまちまち。やばいですね!

 管楽器は楽器の形状もちがうから、振動の伝わり具合も変わるのかな?

 振動もひとつとは限らない。

 前に世界の建造物崩壊事故を集めたドキュメンタリーを見たことがある。

 自壊するような崩壊事故っていろいろあってさ?

 ロープだなんだでつるしたものは、それが例えば橋なら、橋を通る車、橋に吹く風などが振動を与えていく。振動に耐える強度を持たせた構造をしていない、強度計算が誤り、予測よりも大きな振動が生じたら? ロープは振動に耐えられなくなる。

 このときのロープの動きがすさまじい。

 波打つんだ。

 できる波はひとつじゃない。複数だ。

 大縄飛びの大縄で、男子が遊んでるのを見たことがある。中学生のときに。持ち手を大きく上下に振るうと、ヘビのように波をいくつか作りながら先端に向かっていくでしょ?

 あの波が、左右の構造物を繋ぎ止めるためのロープに生じたら、どうなる? 構造物、たとえば道路は支えに揺さぶられて波を打つ。道路が、大縄のヘビみたいにくねってしまう。とんでもなく危ないし、そもそもそんな動きに耐えられるように作られてる道路なんて、そうそうない。

 もちろん、崩壊する。

 音にかぎらず、この世には振動が数多く存在している。

 高速道路の崩壊事故では、ネジが命運を分けた。整備されるべきネジが見落とされて、高速道路を支える柱のネジが外れていくこと、支えとなっているプレートが錆びたり朽ちてヒビが入っていたりすることが見落とされてしまった。振動はネジを緩ませる。他にも緩ませる要素はたくさんあるんだ。

 音で始めておいてなんだけど、振動は多くのことに関わっている。

 場合によっては音さえ立てているかもしれない。

 だれも気づかないうちに、僅かでささやかながらに。

 ちなみにネジが金属なら? さっきの楽器の話と同様に、熱によって変化する。これによってもネジは緩む。

 あらゆるものにネジは使われていて、緩み対策が、あまりにもありふれたものに活用されている。

 なので実際のところ、ネジと侮るなかれ。

 同じサイズだから使えるだろう、みたいに考えていたら?

 ネジに宿ったあらゆる技術を見落としている。

 そして技術を過信してはならない。新技術のネジでもうだいじょうぶと思っていたら、それで事故が起きた、みたいなケースがある。そこで、丁寧な検査が必要になってくるし? 叩いて音を聞くっていう検査もあるそうだ。

 ここでも、音!


「決してこれは現実逃避ではない!」


 そう自分に言い聞かせて思案する。

 ノノカたち吹奏楽部では、部が所有する楽器を利用している生徒もいるそうだ。

 なにせ楽器は高いからね!

 軽音楽は入門楽器セットみたいなのがけっこう出回っていて、比較的安価で買えるものがある。

 だけど管楽器はそうもいかない。

 とりわけ大きな管楽器は目を剥く値段がする。

 なので部の楽器を使う生徒は多いそう。

 そりゃそうだ。数十万もぽんと出せないよ。なかなかさ。

 でもって、そうした楽器が丁寧にメンテナンスされているとはかぎらない。

 長年所蔵されている楽器はガタがきているものもある。

 それで音に影響が出ていることもあるらしい。

 弦楽器だって、ちょいちょいメンテナンスがいる。弦の交換だけじゃだめ。

 ピアノ、パイプオルガンなどの鍵盤楽器もそうだ。

 振動って、それくらいささやかな変化に影響を受けるんだ。

 音って、それくらい繊細なんだ。


「私も繊細だが!?」


 ひとりでなにを吠えているんだ。


「ううん」


 振動。振動なんだ。

 振動の波はひとつとはかぎらない。

 ひとつの弦で波がいくつもできることがある。

 このとき、整数倍の波打つ振動を倍振動と呼ぶ。

 二倍振動。三倍振動。それがどんな感じに出るのかって、そうそうわからない。

 でもって楽器の音は、この倍振動さえ含めるんだ。

 どう?

 これ「きく」だけでわかりそう?

 わからないよね。

 つくづく「きく」ってむずかしい!

 どれだけの要素が絡むんだ。どれだけの知識や経験が影響するんだ?

 さっぱりわからないや。


「ガタガタだもんなあ」


 私の心は振動している。

 激しく揺れている。

 こう問いかけてみるんだ。

 キラリを遊びに誘える? って。

 それだけで「うっ!」と胸が苦しくなる。

 どきどきしているのを自覚する。これだけのことでぇ!? と我ながら情けない。

 でもどきどきしちゃう!

 なにせ!

 誘ったことがない!

 胸を張って言えたことじゃあないけれど、人生で、ともだちに、遊ぼうって誘ったことがない!

 それも、ほんとのほんとに、逃げないつもりで、ほんとに遊ぶつもりで誘ったことが! 一度もない!


「が、ガタガタだ!」


 なんなら中学時代のトラブルなんてないから、高校で初めて友達になったトモを誘うほうがハードルが低い。きっと笑顔で受け入れてくれるってわかりきっている。

 なのに、言えない!

 めちゃくちゃどきどきしちゃう!

 さっき誘えばよかったじゃんって思いはする。

 するけど、でも無理!

 え。

 どう誘えばいいの?

 知らないんだけど!


「お、おおおお、おおおおおお」


 高校二年生になって久しいこのとき、いまさらながらに震えている。

 あれ!?

 高校デビューとは!?

 ぜんぜんできてないが!

 誘ってもらうばかりで、それに甘えるばかりだったよね。

 え。うそじゃん。

 誘ったことなくない?

 いやだから、ないんだってば!


「え。と。こ、これを表現すると!?」


 パニック!

 この動揺を、どんなしょうせつにする?

 この衝撃を、どんな音にする?


「んんん!?」


 激しいドラム? 息つく間もないリズム?

 圧の強烈なハーモニー? 不協和音?

 絶叫するようなメロディー?

 どれもぴんとこない。

 そういう曲なら聞いたことがいっぱいあるのにな。

 それこそデスボイスしか浮かばないんだけどぉ!?

 ちがくない!?

 ねえ。

 音色が変わりすぎちゃうんじゃない?

 ねえ!


「おおおおぅおぅおぅおぅ!」


 動揺が思わず声に出た。

 こんなの記録してどうするんだと思いながらも、青色霊子に記録してもらう。

 私の一部を楽器のように捉えたとして、いや、人ひとりの心を楽器のように捉えたとして、きっとひとつの楽器じゃないんだろうなあ。もっとわかりにくくて、よく振動していて、音を立てているのに気づけないものなんだろう。

 きくのはむずかしいから。

 自分のことさえ、よくわからないのだから。


「ともだちを誘って、私はなにするの? 遊ぶって具体的にどうするの?」


 さっぱりわからないんだけど!

 それを音に表現したら、どんな振動になるんだろ?

 すこしも頭が働かないんだけど!?


「えええ」


 ふたりでなにしたらいいのかな。

 いやいや。普通に、カナタと過ごすみたいにさ? 映画みたり買い物いったりすればいいのでは?

 私のプランがあればいいってものでもないよね。

 でもじゃあ、具体的にどんな感じがいいんだろ。

 ともだちと楽しく過ごすみたいなの、あんまり見てきてないしなあ!

 恋愛物ばかり見てきたから? いや。そういうのにも友情シーンはあったし。

 でも、メインじゃないよね。

 ええ?

 混乱してる間に今日もカナタがお見舞いに来てくれたから説明したら、眉間にすごい皺が寄っていた。

 口なんかへの字に開けてさ? どうやってるんだろ、その変顔。


「どしたの」

「いや。大概の場合、友情のほうが恋愛よりも簡単な感じで捉えないか? それとも俺と付き合ってるから、そういう感覚に?」

「ちがうよ。恋愛はもっとこう、しっかりした土台があるってイメージあるけど、友情はもっと繊細で壊れやすいじゃない?」

「いや恋愛も十分、繊細で壊れやすいと思うぞ?」

「そりゃあそうだけど! 恋愛のほうが情が強いのが自然で、そのぶん離れがたいじゃない? だけど友情はもっと、冷めやすい気がするの。ほら。簡単な印象があるほど、簡単に壊れてもおかしくなさそうでしょ?」

「わからなく、も、ない、けどなあ」


 いや、やっぱりわからんとカナタは首をひねる。


「む! じゃあカナタは友達と遊びに行けるわけ?」

「行くだろ。普通に。ラビやユウリ、カズマと服を買いに行ったりするし。ひとりが楽器できるってわかったら、じゃあ俺たちもって続くし。ライブとか行ったことあるし」

「うそだ! カナタがそんなフレンドリーライフを送ってきただなんて!」

「お前は俺をどういう目で見てるんだ」

「え!? ラビ先輩とふたりきりで遊んだりしたこともあるの!?」

「あるよ。暇つぶしにトランプを延々やったこともある」

「ずるい! 私、そんな遊びに誘ったこと、一度もないのに!」

「じゃあ、誘ってみればよくないか? 天使が部屋に泊まりに来て追い出されたとき、トランプで遊んだってうれしそうに言ってたじゃないか」

「うっ」


 カナタの指摘が心のボディを的確に抉った。


「い、いやがられたらどうするの?」

「天使たちがそれくらいでお前から離れるわけないって」

「そんなことわからないでしょ!」

「えええ。そんな怒るくらい怖いのか?」

「だって、私じっくりしっかり、自分の領域までどうぞってやって付き合えてる人、少ないもん。カナタ、ぷちたち含めたうちの家族くらいだよ?」

「いやいやいや! そこは天使たちも入れてくれよ! 入ってないの!?」

「きらわれたくないもん。なんならカナタにもぷちたちにも、お姉ちゃんたちにも、ここまでは無理ってとこあるし」

「おおお」


 カナタが口をぽかんと開けて固まった。

 ゆっくりと両手をあげていく。

 ばんざい侍?

 そのまま両手を後頭部に当てて、またしても固まった。


「カナタさん? だいじょうぶ?」

「いやあ。あのお。なんでも話せる仲だと、過信してた」

「はあ」


 それはたしかに過信だね!

 なんでもは無理だよ。物理的にも時間が足りないし。

 なにせ、ほら。私ってやまほど考えたいからさ?

 それ全部、いちいち話してたら、たいへん!

 それだけで毎日がお話だけで終わっちゃうよ。

 言いにくいこと、この関係だからこそ言えないことって、いっぱいあるものだしさ?


「それは日々の具体的な行動を支えに、ようやくぎりぎり成り立つかどうかであって、なにもなしになんでも話せるとはいかないよ」

「そういうとこ、すごく現実的でシビアだよな」

「そうかなあ」

「ああでも、だから、ともだちって壊れやすく思えるみたいなことか?」

「それはあるよ。恋人でも親子でも、なんでもそうじゃない?」

「う、うん」


 あれ。引いちゃった。


「どしたの」

「いや。最近、いろいろ自信がね」

「なにかあった?」

「春灯が入院してるくらいかな」

「なに言ってんの? 真面目に相談してるんだけど」

「でしょうね!」


 変なの。


「怒ってる?」

「怒ってません」

「なんか様子おかしくない?」

「おかしくないです」

「ええ?」


 ぴんとこない。どうもおかしい。

 タマちゃんや十兵衛の声が聞こえるくらい元気だったなら、いますぐ相談していた。

 でも、入院中はますます聞こえなくなっているから、自分でどうにかしないとね。


「私は関係に甘えてばかりで、カナタに甘えられてない? 素直に言ったり聞いたりできてないのかな」

「それがもしも質問なら、答えるどころじゃないな。俺もそれ、できてないし」

「んんん」


 お互いに歯の隙間という隙間に食べ物が漏れなく挟まったみたいな、気持ち悪い顔をして口をもごもごしあう。


「ふたりでいても、そばにいても、なにかが遠くなることってあるだろ?」

「あるねえ」

「そもそも近づくのが怖くて、距離を詰められないみたいなこともあるし」


 それも、たしかにある。


「春灯がともだちを遊びに誘ったことがないっていうのは、もう、初めて聞いたけど。それって、春灯からしたら、俺に対しても共通して抱えてることなのかも、と」

「んんん」

「そんなこと言っといてなんだけど、俺もよくわからないというか、ぜんぜんできてないというか。なにがどうできてないのかも、ことばにできないというか、な」

「うううん」


 表現したくてもできないものがあるんだ。

 たしかに、存在している。なのに、どうしたらいいのかわからないんだ。

 世の中にはそういうものが多すぎません? ねえ!

 ふたりでうんうん唸っているうちに面会時間が終わっちゃって、そっとハグしてお見送り。

 前の面会のとき、しなかった。

 だから今回したら、なんだろう。喜んでくれるんじゃないかって。私もうれしいはずだって期待していた。

 けど、そうはならなかった。

 すごくつらそうな顔を一瞬みせて、だけどすぐさま笑顔で隠して「また明日」って帰っていった。

 パジャマの裾をめくってみる。あばら骨が浮き出ている。お腹はすっかりくぼんじゃって、見るも無残な状態だ。手足も細い。一撃を受けとめることさえ、満足にできないだろう。折れちゃうかもしれない。

 いまはむしろ、よっぽど太りたい。筋肉もつけたい。

 なのに許される食事はおかゆだけ。

 トイレをするのも、毎度のように苦労する。

 つらいことを、私はとことん考えないようにするし?

 そのぶん、別のことをやまほど考えるようにする。

 そうやって透明にしてることがやまほどあるけど、隠しきれない。

 ともだちを遊びに誘ったことがないみたいに。

 本気で、ちゃんと遊ぶつもりで声をかけたことがないみたいにさ。


「あああああ」


 「きく」だけじゃない。

 透明にしないのも、とてもむずかしいよ。

 でもね? 透明にしてかないと、自分が壊れそうになるんだ。

 枯れ枝みたいなこの腕と足を直視していたら、たまらない気持ちになるんだよ。

 だから私には音楽がいるの。




 つづく!

お読みくださり誠にありがとうございます。

もしよろしければブックマーク、高評価のほど、よろしくお願いいたします。

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