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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!

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第二千七百五話

 



 回り道をしたけれど、一度もどってみんなに伝えたときに推測を裏づけるような話が出た。

 というのも小鬼が狙うのが男性だけじゃなくて、女性も含めるようになっていったのだ。そして、その女性は男性を、とりわけ近親者などを狙っていたという。

 犠牲者が加速度的に増していき、二十三区は地獄絵図。

 とりわけタワーマンションなどの高層ビルは逃げ場がないなか、肉腫爆弾が大量に発生しているから悲惨だ。大勢の小鬼が発生しているのに逃げ場はエレベーターだけ。つくづく思う。高層ビルなんかに住むものじゃあないと。

 でも、そんな軽口も叩けなかった。ノンちゃんと一緒にいた刀鍛冶から見せてもらった動画じゃ、数十階の高さから窓を割り、飛び降りた人が複数名いたから。

 連想したのはアメリカの同時多発テロ。飛行機が突っ込んだ貿易センタービルで起きた火災から逃げようとした人のなかにいたという。逃げ場が必要なとき、道がどれだけあるか。これが命綱になる。補給をする必要があるときだってそうだ。技術を挟まず、必要な依存を可能なかぎり減らした状態で、どれだけ通いやすいのか。

 火災も発生していたけれど、火は上に向かうからね。消防車も活動しようにも、道が肉腫爆弾や小鬼だらけ、時折怪物までいるから移動できない。被害がビルに集中していく。

 なにせ高層ビルは上層階にいくほど必要な依存が増す。

 なので被害は高層ビルにどんどん集中していくものの、移動経路が制限されているがゆえに警察も対応が遅れるし? そもそもそこら中で爆弾も小鬼も増殖しているのだから、手が回らない。後回しになっていく。道の確保でさえ大変なのだから、しょうがない。

 それくらい混沌とした状況下で、結界の庇護下に入る地域を拡大できる中心地は警察署から病院、消防署にかけての道、近隣の駅や学校などが主となる。避難地域が優先される。なので役所も含まれる。

 東京都の各市町村はビル群が少ないほど結界の対象範囲の拡大が迅速に行われていく。爆弾や小鬼の排除をする必要があるみたいで、対応できるほど早い。火災が起きていなければ、もっと早い。

 ミコさんには悪いけど、もしも、うなるほど稼げたら海外セレブみたいに、でっかい土地に二階建てくらいの豪邸暮らしがベターだと思うの。セキュリティばっちり、豪邸だらけの住宅街。そういうのが無難に思えるの。

 そうでなければ一軒家でいいじゃない? と痛感した。アクセスの良さは大事だ。機材だなんだがいらないほど、いざっていうとき困らない。経路はだって、依存する対象だからね。働くにしたってそうだ。

 こういう限界状況に陥るとね。身に染みる。

 話を戻そう。

 二項対立に導く物語が広まるよう利用されて、さらにビルが悲惨な状況に陥ったことでSNSは阿鼻叫喚とデマの渦と化しているそうだ。既存メディアも踏み込んだ報道ができないでいる。そんな実状を指してSNSは既存メディアを攻撃する物語を利用している人が増えているそうで、ますます肉腫爆弾の発生が増えているという。

 男女差別にまつわるものだけじゃない。魔方陣が利用しているのは、それだけじゃない。

 たぶん、増えている。

 利用する物語が。あるいは表に出すと差別になる先入観や偏見が。

 でもね。それらがない人なんて、いやしない。地球上にひとりもいないと言っていい。

 だからどこであろうと、魔方陣の干渉を防ぐ結界を張れないかぎり、だれもが魔方陣の影響を受ける。

 ううん。

 唸るな、これは。

 実によくできた仕組みに思えるし、発動させてしまった時点で私たちは敗戦から始めざるを得ない状況に追い込まれている。結界があり、徐々にではあるけれど保護範囲が拡大できている時点でよくやれているほうだけど、被害だって既に無視できないレベルに拡大している。

 でもね?


「これだけ巨大な仕組みとなると、魔方陣の中核となる部分や、作動するために必要な仕組みは移動させられないんじゃないかな」

「高層建築物に被害が集中しているため、必然的に東京とりわけ二十三区の被害が甚大だとしても、関東中に広まってきていることは事実ですし。動かせたとして、ハルさんのいう魔方陣の効果範囲も移動しそうです。拡大する恐れだってあります」


 ノンちゃんが乗っかってきた。

 実際に彼女の言うとおり、魔方陣の範囲が拡大する恐れはある。

 だけど魔方陣ごと移動する懸念を私は抱いていない。その点においてはファリンちゃんも同様だった。

 ふたりで見た、私の術によって再現された光景を思い返すなら? あれだけのものが移動するとは思えない。あり得るとしたら、パーツがさらに増えて、日本中に広がっていく可能性ではないか。

 あのパーツが増えるだなんて、考えるだけでもぞっとする。

 自己増殖までされたら、さすがに手に負えない。

 結界の効果時間だって無限じゃないかもしれない。

 迅速に魔方陣を止めるか、もしくは破壊するかしたい。

 だけど破壊は現状、私もファリンちゃんも気が進まない。なにせ、パーツひとつでかなりの威力の爆発を引き起こすんだから。

 魔方陣が作動する前のように、沈静化できるのが望ましい。

 ひとまずはね。


「それに、その魔方陣の中ではハルさんやうちの学校のような注目を集めていた場所や、醜聞が取り沙汰されていた場所を中心に爆弾が発生していました」

「それも時間の経過に伴い、一定の文脈を価値観に取り入れていたり、感情を刺激されてしまう人ほど、小鬼に狙われる。そして文脈の中で悪とされる人が狙われる、ね」


 よくもこれほど悪辣な仕組みを考えつくものだ。

 ふたりの話を受けて唸る。


「魔方陣って、ノンはよくわかりませんけど、大概は中心に作動させるための仕組みがあるのでは?」

「敵の構築の仕方によるとしか言えない」


 ファリンちゃんはすげなく返す。

 なにかフォローできたらと思うのだけど、いい言葉が浮かばなかった。

 ふたりで見た東京の景色を思い返すと、ただ中心地に行けばなにかがあるという感じじゃなかった。

 残念ながらね。

 これだけ悪辣なものをつくり出す人は、魔方陣のどこに陣地を敷くのだろうか。

 気になることがまだあるぞ?


「空にあるパーツはなにを示すんだろう」

「旅客機を狙うんじゃない?」

「ノンちゃん」

「飛行機が落ちる、みたいな報告はまだありません、けど」


 あったらもう、終わっている。

 尋常じゃない被害が出る。

 手の鳥の群れが旅客機に攻撃を、だなんて。

 ぴんとこないまでも、すぐさまうちの作戦司令部に連絡を取りつけてもらうし?

 羽田、成田をはじめ、関東の航空を担う場所への警備を呼びかける。

 シュウさんがすでに手配してくれているならいいのだけど。そして実際、そうなっているような気がするのだけど。関東中を襲う規模なんだから。それでも念のため、お知らせしといて損はない。


「旅客機狙いだけじゃなかったら、どう?」

「地上に比べて数が少なかったから、私はあまり気に留めていなかった。地上の観察用のドローンみたいな?」

「ううん」


 空に浮かぶ城塞があるんだ。

 空から見下ろしている、なんて手を選んでいたとしても不思議じゃないと思ったのだけど。

 だとしたら、防衛にするには手薄すぎ? いや、どうだろう。わからない。

 ドローンのように地上を観察しているという可能性はあるけれど、だとしたら、いまこの空に、あの鳥に類するなにかが浮遊していなきゃおかしい。私の術はあくまでも霊子をもとに現象を読み取り、そこから私とファリンちゃんとで陣があると推測したのであって、ね?


「関東中から、特定の相手を見つけるって。無茶苦茶な難易度のかくれんぼですね」

「おまけに隠れている連中は、これだけのことをしでかすばかりか、爆弾魔でもあるみたいだし」


 ファリンちゃんが口にした言葉の重みに私もノンちゃんも、まわりにいた刀鍛冶のみんなも言葉を失う。そう。陣を構成するパーツは爆発した。敵がその気になれば、関東中を爆発させられるのかもしれない。あるいは、もっとすさまじい勢いで肉腫爆弾を大量に出せるのかもしれない。

 言うまでもなく窮地で、朝を待つなんて悠長な事態じゃない。

 いやでもそう感じる。

 だとしたら、いちいちひとつひとつのパーツを調べている場合じゃない。

 もっととんでもない規模のパーツをまるごと使って、あめ玉にするくらいしないと間に合わない。

 そんなことをして大丈夫なのか。

 わからないけど、やらないと。

 最初はインセプションを土台にしたけど、どうやらあれよりもっと大胆にやらなきゃ対処できないみたいだ。


「じゃあ、急がないとね」


 もう一度、あめ玉を作る。

 鍵を当てて時を止めておく。

 舐めたあとの干渉で、再び時が動き出す。

 だから、あめ玉を作るための金色貫通時にパーツは漏れなく爆発する。

 それでも、それこそぜんぶのパーツを金色で貫いて調べるくらい、したほうがいい。

 そのためには、まずひとつ試して実証しておかないと。

 ちゃんとやれるって確認したら、次は全部だ。

 無茶はするけど手堅くやりたい。

 ひとつと大量の違いがわかるようにもしておきたい。

 なにが見えるのかはわからない。

 それでも、やろう。




 つづく!

お読みくださり誠にありがとうございます。

もしよろしければブックマーク、高評価のほど、よろしくお願いいたします。

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