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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
2012/2984

第二千十二話

 



 よく熱したフライパンに卵ひとパック、十個もの生卵を投入する。

 これだと「え。割って入れていくの?」と考える。ことばが足りない。

 ぶっちゃけ、割ったはしから入れていくのもいい。

 ただ、最後の一個を割り入れる頃にはもう、最初の一個にだいぶ火が入ってしまう。ムラができるのだ。それをきらうのなら? 今回のように、あらかじめボウルにいれたものを投入する。

 いまもまた、ことばを端折った。わかりにくい。

 そもそもフライパンの状態は? よく熱するとは、具体的にはどうすれば?

 これじゃわからない。

 整理してみよう。

 生卵が十個ひとパックをひとつ用意します。

 ここで、ちょおっと待ったぁ!

 問いがあるの。

 生卵の卵は、どの生き物の卵?

 基本は鶏卵。だいたいどのスーパーでも手に入るのが、鶏卵だから。

 世の中の卵生の生き物の卵なら、どれでもOK? そこまでは知らないし、保証もできない!

 基本的には鶏卵で、どうぞ。

 でもね? まだまだ問いがあるぞ?

 スーパーに行くと、地域と店舗によるだろうけど、いろんな鶏卵が売ってるよ? 消費期限もバラバラ。どうすればいいの? 選び方は?

 だいたい、十個ひとパックって、なに。

 他にいろんな構成があるとでも?

 買い物したことがあるのなら、みんな知ってる! と、言いたいところだけど、ことばが足りないね。生卵のパックが並んだ商品コーナーで、十個ひとパック以外の構成のものがなかったら? 買い物をしたことがあって、生卵を買ったことのある人でも「知らない」。だから「疑問を抱かない」可能性がある。

 念のためいうと日本は取引要綱に規格があって、箱詰めの鶏卵は十個か六個でひとパックになっているそうだ。なので「卵ひとパック買ってきて」と言うと? 十個をイメージしていても、頼んだ相手が六個入りを買ってくる可能性がある。

 ちょっと割高、六個入り。パッケージが綺麗で「十個入りよりおいしそう」な六個入り。だけど三人以上の家族で卵料理を作るとあっという間になくなる六個入り。

 今回は? うちは人数がめちゃくちゃ多いので、十個入り。

 でもね? 待って!

 卵売り場を見ると、白い卵と赤茶色い卵の二種類があるよ?

 どっちがいいの!?

 自分ひとりで卵を食べたくて買うのなら、どちらでもどうぞ。

 家族のお使いなら? 基本的に作っている人の指定に合わせる、ないし普段買いで決まったパッケージがあるのなら普段買いのパッケージにする、というのが無難。出かけた先で連絡するのは、お互いにストレスが溜まりやすいので、出かける前に確認を。

 普段買ってるので、というときはあらかじめ、パッケージが残っているのならスマホで画像を撮影しておくと、スーパーで頼りになるのでおすすめ。

 パッケージがないのなら? あらゆるもの、ないし普段買いするお店の通販サイトで商品情報を確認するのがいい。

 そのまま通販しちゃえるのなら、それでもいいし?

 配送料など、もろもろ乗っかることをきらって「店頭で買って」というのなら、商品情報を表示したページをスクリーンショットで保存しておくといい。

 これで解決したかに思えるけど、ちがう。

 自分に卵を選択する裁量権が委任されているのなら?

 結局、卵の色はどちらがいいの? と、なるよね。問いが置き去りのままだ。

 極論をいえば「どちらでもどうぞ」。

 調べると「鶏によって色が決まる」という。割って出てきた黄身の色も「食べたごはんによって色が決まる」。じゃあ白身の張りは? 生卵の匂いは?

 問いはやまほどあるけれど、スーパーで販売されているレベルの商品なら赤か白かで、よほどの違いがあるかっていうと微妙そうだ。

 それでも、うちは赤い卵を買う。

 理由はあるよ?

 うちが利用するお店の白い卵、殻がすっごく薄くて脆い。殻の厚みは鶏の体調、摂取したカルシウムに影響を受けるのだそう。殻の厚みで品質にいい悪いがある、ということではないと聞いたことがある。

 それでも殻の厚みを感じる赤い卵を選ぶのは?

 気を抜くと割っちゃうんだよね。

 繊細なんだ。通い慣れたお店の白い卵。

 イライラしていたり、くたびれたりしているとき、儚すぎて無理なんだ。白い子は。

 握力、ついちゃったなあ。

 使おうと思って当てにしていた生卵をぎゅっと握りつぶしたときの徒労感、ひどい。パックから取ろうとして潰したときは「ああああ……」と崩れ落ちそうになった。しかもね? 汚れたパックや卵トレイの後片づけがセットでついてくるんだよ?

 無理だよ。

 ふとした事故を防げる赤い卵を買うよ。

 そんな視点もあるからさ?

 料理をするのが自分なら調整できるし、失敗しても自分が面倒。だれかが料理で使うのなら? その人にとって使いやすい卵だといいね。気にしないなら、それでもいいのだけど。その答えは自分の中にはないから、聞かなきゃはじまらないや。

 味は? 匂いは?

 これはもう、実際に買って食べてみなきゃわからない。

 その選択と蓄積は、買って、料理して、味わってこそ得られるもの。

 実践の領域。

 料理をして食べるのが自分なら? 実践は自分で得られる。

 けど、だれかが料理をしているのなら? だれかの中に実践がある。食べているという点では同じように思えるけれど、並んでいる商品を見て、選んで、調理しているという実践が自分にないからね。外で料理する習慣があるとしても、家で料理しないとさ。買って料理しているのは自分じゃないならね。やっぱり、家での実践はないんだ。もし自分が仕事で料理をするのだとしても、そう。

 わお。

 卵ひとパックで、やまほど引っかかる部分が出るね?

 流せる人もいるだろうし、もっと引っかかる部分がある人もいるのかも。

 消費期限は守らなきゃだめ? とか。

 そもそも卵って、どう保存するの? とか。

 ちっとも興味がなかったら? 調べないで「これでいいや」としちゃうかも。

 逆に引っかかりまくって、その都度しらべて「ど、どれが本当なん!?」となっちゃうかも。

 たいへん。

 当たり前はすごく内向きなものだからなー。

 ねー。

 意外とハードルあるね。

 でも、あんまり並べても先に進まないからさ?

 話を戻しちゃおっか。

 えー、そのいち!

 生卵が十個ひとパックをひとつ用意します。

 ようやく次にいくよ? そのに!

 ボウルを用意して、生卵を割り入れます。

 はい待ったぁ!

 ボウルのサイズは? 割り入れるって!? 片手で卵を割る、あれ?

 長くなるから、ひとまず保留して進めちゃう?

 じゃあ、そのさん!

 コンロにフライパンをセットします。

 ストーップ!

 ええ、また!? ってなるけどね。

 コンロもいろいろあるし、フライパンもいろいろある。

 コンロならガスか電気か。フライパンにはサイズはいっぱいあるけど、どのサイズ?

 これまた保留で、そのよん!

 フライパンを熱して、油を大さじ一杯ほど投入します。

 さらにここで、ちょおっと待ったぁ!

 フライパンを熱する!? どれくらい!? 強火で真っ赤になるくらい? それとも、弱火でちょろちょろ? どうなったらいいの?

 それに油って、どれ!?

 サラダ油にごま油、オリーブオイルもあるし? ダイエットで話題のえごま油なんていうのもあるし。バターにマーガリンも。もっといえば牛脂だってあるわけだし?

 どれがいいの? むしろ、なんでもいいの?

 なんてね。


「気にするしないは、あなた次第」


 鼻歌混じりにお尻を左右に振って、お腹と背中を伸ばす。

 ぐぎ、ぐぎ、と背骨が悲鳴をあげる。

 いたきもちいい。


「せいやっ」


 強火から中火に調整。

 お砂糖ちょっちょ、お塩を摘まんでぱらぱらー、牛乳ちょびっと。

 あとは菜箸を当てて、ぐしゃぐしゃーっとかき混ぜる。

 スクランブルエッグじゃい!

 え。え。ボウルでかき混ぜなくていいのぉ!?

 いいんです!

 と、いう私もいれば? 事前にかき混ぜたい私もいる。

 どっちでもええねん。

 どっちでもええんやけどぉ。

 どっちかがええっちゅうやつがおるだけやねん。

 なんちゃって。

 じゅくじゅく泡立ち、瞬く間に固まっていく。

 つやつやしたとろみのある卵液が原色に染まっていく手前、ややとろみのあるところで火を止める。カナタがさっと置いてくれた大皿にさっとのせる間にも火が通っていくよう。

 ボウルで先に混ぜておいたら黄身と白身がよく混ざる。フライパンでだと、黄身と白身がばらける。めいっぱいかき混ぜて空気を含ませるのがいいという人もいるし? フライパンでやって、白身を味わえるのがいいっていう人もいる。

 私だ!

 隣でお父さんがせっせとベーコンを炒める。カリカリめ。やわらかめ。その二種類。

 カナタはせっせとお皿を出したり、レタスをちぎったり、トマトを切ったり、うちのお母さんレシピのドレッシングを作ったり。みんなして忙しない。

 三人だと、さすがに窮屈。

 それでもやるのは、人数が多くて朝食の用意は激やばだからだ。

 いくらでも手がほしい。

 お鍋がぐつぐつ言っている。カットしてためておいたお野菜とコンソメのブロックで煮込んである。おまけに、トーストも準備中。早めに起きて煮込むかっていったら? まさか! 種類別にレンチンして火を入れてから煮込んでる。

 ぷちたちにはハードルが高い。

 お野菜はねー。

 私自身も、トウヤも、こども時代にすぐに食べられたかっていったら、ちがうからなー。

 にんじん? セロリ? ピーマン?

 生のトマトも人による。レタス無理な人も、どこかにいるかもしれない。

 なので、ベーコンを。

 それだけじゃなくて、魚肉ソーセージを出してみる? 食べられるお野菜ばかり出す? そもそも全部むりならどうする?

 引っかかることは、やまほどある。

 その都度、私たちはどうすればいいのかな?

 不感症になって、わーってやっちゃえばいいのかな? フライパンに投入した生卵をわーっと混ぜちゃうみたいに。

 いやいや、これは私の好みなんだってば。考えなしじゃないんだよ?

 いちおう自己弁護するけれど。でも、ね。

 事前に答えを見つけてやっていきたいし、そうもいかない。

 ユメたちぷちの中にしか答えがない。みんなの中にしか、それぞれの意欲は存在しない。

 じゃあ「みんなの意欲は私にはどうもできないから、無視!」って? 「私の食べたいものしか出さないし、食べられなくても知らない!」って?

 いやいや。極端か?

 お腹いっぱい食べられるといいな。成長期、栄養を。どうしたらいいかな。

 そんな思いで試行錯誤しなさいって自分を押しつぶせばいいのかな。

 無理じゃないかな?

 疲れるし、参るし、心も体も波がある。

 いらいらすること、うんざりすることもある。

 なのに自分を押しつぶしていたら? やがて、本当に潰れてしまう。

 こんなはずじゃなかったーとか、こうなるべきだったーとか。考え始めちゃう。

 るさんてぃめーん!

 反感が育っていく。なのに日常は毎日、待ったなし。

 自分の意欲の道を、自分のペースで進んでいく。だれかのペースだともどかしくなったり、息苦しくなって参ってしまうから。

 反感を育てる選択よりも、自分を育てる選択をしたいから。

 その第一歩として育てるなら? 意欲じゃないかなー。

 足りるかなー?

 一本槍、支柱ただの一本じゃ無理かな。

 いまここに、この場所に、環境にある要素を数え上げられなかったら?

 話としては土台がすかすかで、すこしの揺れで倒壊してしまう話になっちゃうなー。

 卵かってきて、くらいの曖昧さだもの。

 むしろね?

 ふわっとしたオーダーで進めるのって、土台がしっかりしてこそなのかもしれないね?

 環境、縁、いろんなものの支えがあって、やっと成立するものなのかもしれない――……いやあ? ちょっと待ったぁ!

 それはそれで雑だな。

 もっと引っかかる要素があるはずだ。


「バター出すか?」

「にんにくバター液を作っちゃうよ」

「いっそトマトを炒めたソースは?」

「冷凍庫に合い挽き肉があるよ。ミートトマトの具で朝のトースト、どうかな」


 カナタの提案に答えていたら、お父さんが胃袋を攻めるアイディアを出す。

 ただバターを塗るより、フライパンで熱して塗っちゃうのも手。でもね? いっそ、うえにのせる具材を作っちゃうのも手。


「甘めにしたほうがいいかな」

「そうだね」


 隣で炒め物をしているお父さんに尋ねつつ、冷蔵庫に向かう。


「それって、どうやれば?」


 きょとーんとしたカナタの問いに「クリームチーズを使うんだよ」と返した。

 ひとくちチーズは、ユメたちの大事なおやつ。

 乳脂肪系は基本、まろやかさのもとになる。トマトとチーズは相性ばっちりだし、クリームチーズは甘め。べすとまーっち!

 こんな具合に朝の手間を重ねて準備していく。

 起きてきたぷちたちに前掛けをつけないと、と思い描く。絶対に汚す。汚れないことなどない。残す。食べきることはハードル高い。食べられることが大事。そういう当たり前が、残ったお皿の料理として突如、私に牙を剥くことも? よくある。

 フライパンに十玉もの卵を入れたと思ったら、フライパンが振動して九玉を弾き飛ばして、ひとつになったりさ? あわてて柄を両手で握りしめたら、今度はフライパンが変形して、犬になっちゃった。卵は食べちゃうの。だけど、リビングからユメたちが「お腹すいたぁ!」ってきちゃう。冷蔵庫をふり返ると、ツキノワグマになってお腹をさすってる。はあ、くったぁ! と言わんばかりに。時計を確認したら、すごい速度で時間が進んでいく。

 ああああああああああああああ!

 みたいな。

 そんな感じなんだ。

 卵はほんとに卵なのか。十玉はほんとに十玉なのか。使おうと思っても、うまくいかずにぜんぶだめになるかも。コンロが使えなくなるかもしれない!

 それくらい予測がつかない。

 ぷちたちとの時間は、概ねそんな感じ。

 カナタとの時間だってそうだしなー。トモたちやキラリに対しても。仕事でも。

 反復して「だいじょうぶ」なことって、そうそうない。

 そんな実感の中を過ごしている。

 料理は私に伝えてくれる。反復して「まあまあ、だいじょうぶ」ってことを。

 うちも。カナタとの時間においても。

 キラリたちとの時間だってそうだ。ゆうべの結ちゃんとの時間はぁ、まぁだ、ちょっと微妙! でも「まあまあ、だいじょうぶ」。

 これらは十分、私の支柱であり、土台である。

 脅かされることなどない、とか。脅かされてもへっちゃら、とか。そういう過剰な結論は? ない!

 卵が卵のままでも。フライパンがフライパンのままでも?

 へたこくことはある。

 消費期限が切れたり。保存の仕方が悪くて腐らせてしまったり。

 テフロン加工が剥げたフライパンで調理して、こげついちゃったり、貼りついちゃったり、剥がそうとしてぐちゃぐちゃになっちゃったりする。

 すごーく! 簡単そうなスクランブルエッグで、これよ。

 岡島くんが作ってくれたり、レストランで食べたりするスクランブルエッグは? もっとコツがいるよ?

 果てしないよー。人生。


「ローリエあったっけ」

「あー! 切らした!」


 お父さんに尋ねて、即座に悲鳴があがる。

 親子の会話になると、カナタさんがちょっぴり居心地なさそうにする。

 そりゃね。恋人の親って、結局のところ他人だからね。

 だけど恋人の、がつくだけで「他人で済ませていいのかな」という問いがわき出るからね?

 距離感を感じるものはないよね。

 ずーっとお世話になってる弱り目もあるんだろうけど。

 お父さんもお母さんも、いまやなーんにも言わないし。

 私はカナタが手伝ってくれないと困るし?

 カナタはいたいんだろうし。

 四人の、いま並べた気持ちだけブロックにして並べてさ? うえに板をのせたら、どうなるだろう。傾いていて、つるんとすべってしまうかも。

 それじゃ土台にはならないもんなー。

 ぐらぐらしている不安定さの中にいることを、カナタはたびたび痛感しているのだろう。

 お母さんが私だけにこっそり「ぷちたちのお世話してくれて助かるけど、言わなきゃいつまでもいるのかな」って言ってた。それをカナタに言ったらカナタさん、どうにかなっちゃいそうだから言わない。言わないけど、カナタも感じてる。

 緋迎さんちに泊まったら? と提案するかー。通ってくれていいのよ、と。

 サクラさんに叱られる可能性があるけどね。

 一回、連絡とっておこうかなー。

 それはそれで私にとってハードルたかし。

 カナタと話すかあ。

 むしろ和室の鳥居を使って寮から来てくれてもいいくらいなんだけどな。


『粉々になるな』


 タマちゃんがぼそっと指摘する。

 あ、あはは。


『そばにいることに頼らずにいられぬ。若さよな』


 それを言ったら、私にだってあるよ?

 うちに居づらいなら、他にも手があるよーって話をしているだけだもの。


『巣立ちはせずか』


 う。私をも刺すじゃん。

 まあねえ。

 頼れるなら? そりゃあ、全力で頼るまで!

 なんだけど。

 カナタとふたり、ユメたちの命を抱えて決死の巣立ち!

 やあ。

 踏み切れねえ!

 ありがてえ補助を手放す理由がねえ!


『ほうら』


 そこがまさに、カナタの不安の種だと指摘するかのよう。

 いまの環境と、カナタが自分の不安をケアして折り合いをつける成長と、秤に掛けると?

 そりゃあ、私は私とユメたちを選ぶ。まずは。

 ふわっとしたオーダーで乗り切れるほど、私自身ちっとも安定していないんだもの。

 それはカナタにしてみてもそうだろうからさ?

 この状況で、お互いなんとかやりくりしていく。

 となると、ね。

 自分のケアは相手がすべき! なんて発想じゃ共倒れになるだけだ。

 正直むりだよなあ。

 さりとて自分で抱え込まれても、それもまた別の話。

 これほど「ふわっと」した話もない。

 卵ひとつとっても、ぶわーっと長い話になるくらい? 引っかかりまくる。

 事件もそう。

 あの、蜂の巣。

 引っかかりまくっている。

 なのに、まだ掴めている引っかかりが少なすぎる。

 シュウさんの見立て通りなら、犯人の一連の犯行もそう。

 ビルの連続爆破に、連続殺人事件。その一部に蜂の巣が加わるというのなら、クリミナル・マインドのチームが分析しそうな犯人の嗜癖はなんだ。これも、引っかかり。

 なんとか準備できた朝食を振る舞う。

 パンにのせたり、半分に折るか二枚で挟んでサンドイッチにしてみせたりするたびに、おーと反応する。ユメたちはそれぞれにいまに反応する。つくれるんだ、と。そこに驚く子がいるの。コンビニで、あるいは食卓で、サンドイッチとして出てくることはあっても、自分たちでサンドしてもいいんだってことまでは知らなくて。

 みんなに比べると、私たちは鈍感だ。

 感じなくなることが、経験に生じる作用のひとつなのかもしれない。

 なんにつけても敏感でいたら?

 たのしいことばかりじゃないから、鈍感さが欲しい場面があることも学ぶ私たちは、常なる敏感さに怯む。

 ぷちたちを見ていると、敏感に思える。期待する。けれど幼い子にとってさえ、ひとりひとりによって常ではないことがあるという現実を知ると、私たちはがっかりするのだろうか。

 歳を重ねると、どんどん体感速度が増すと聞く。一年がどんどん、あっという間に過ぎるようになる、と。

 それは、と語る言説はいろいろあるけれど、私たちは鈍感になっていくからとも感じる。環境の変化、未知に触れて気づくきっかけの低下。

 でもなー。

 ここにだって、私は引っかかりを感じるんだ。

 ほんとにぃ?

 疑問を抱くから、自分に言わずにいられない。

 ちょっと待ったぁ!

 自分の見たい枠組みの中で、うんうん引きこもっちゃってるだけかもよ?

 さあさ。引っかかりを感じるほど、自分のペースで試してみません?

 卵だと思ったものが、パンドラの箱みたいに絶望の入り口になることさえあり得る。

 今回の犯人は、もはや必然的にそうなるだろうと私たちは予期している。

 外にあるのは、いいことばかりじゃない。

 だけど、やっぱり、わるいことばかりじゃない。




 つづく!

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