第二千十一話
ソーセージって、どうやって食べる?
あ。下ネタ連想したら、疲れているから休んだほうがいいよ。
かくいう私も連想した派ですけどね。問いかけておきながら!
とにもかくにもソーセージ。
焼く? 茹でる?
生のままでもお召し上がりいただけますなソーセージなら、生のまま食べる?
切り目を入れる? 入れない?
たこさんにする? しない?
包丁を入れて創作するなら、いろんなやり方、いろんな形にできるけど、する? しない?
他にもありえるよね。
天ぷらにしたり。おでんにしたり。
カットしてつなぎを使ってまとめて、ハンバーグっぽく加工することもできるし?
そもそもソーセージ単体じゃなくて、他のものと組み合わせるのなら? バリエーションはますます増える。
チーズやポテトとの相性は抜群にいい。コンソメスープとも。ポトフに使うと、鳥肉とかの代わりに満足感のある具材になる。グラタンにだってできるよね。
これらはみんな、塩味を感じる料理だ。
クリームシチューは甘さと塩味のバランスか、塩味か甘さのどちらかに寄せる味を私は体感したけれど、どちらにもソーセージは合う。
火を入れると「パリッと」するので、食感の統一を図りたいのなら? 柔らかく茹でまくったお野菜とセットだと、噛んだときに主張を感じる。中から溢れ出てくる肉汁の温度も大事。
基本的には味つけがされた状態のものだから、もっともっとと求めない限りは基本、そのままで利用できる。けど、周囲の味つけなしの野菜までカバーできるほどの濃さかというと? そこは人によるだろう。野菜の量にもよる。
ソーセージひとつ考えても、これだけ幅がある。
各地域のスーパーによるだろうけど、ソーセージはいくつかのメーカーの商品が並ぶ。レモンや胡椒、ハーブの風味を利かせた商品もある。そもそもソーセージといったら、お肉を包む腸の部分の「固さ」、「厚み」があるし? 腸詰めにされたお肉の「内訳」、「品質」、「風味」がある。おまけに販売されている商品は流通に耐えうる「保存」、商品展開に耐えうる「味つけ」がされているから、棚に並んでいるものぜんぶ同じに見えても、ぜんぜん異なるものだ。
でもね?
まるっっっっきり!
興味のない人にしてみれば、どうかな?
ソーセージなんて、どれも同じに見えるんじゃないかな?
どんな味なのか。その味は、どうやって作られているのか。なにを素材にしているのか。素材のひとつひとつはどうやって加工されているのか。どれだけの人が関わっていて、どれだけのお金が動く、どれくらいのビジネスなのか。年間にどれほどの食肉を必要としていて、それらの動物が育つのに必要な場所は? 環境は。動物たちを育てている人たちは。お塩なら、どこの塩田で?
限りない。
問いはあまりにも限りなくて、それこそ、その領域に興味をもっていなきゃ知り続けていくのがむずかしいくらい膨大だ。
まるっっっっきり!
興味のない人が聞いたら「あ、けっこうでーす」と離れるかもね。
一ヵ月、ソーセージだけで生活してねとジグソウみたいなサイコパス監禁殺人鬼に捕まって命じられて、ソーセージしか食べられなくなって、うんざりしたら? ようやくはじめて考えるかな? いや。食べたいものをやまほど思い浮かべて、ソーセージとサイコパス監禁殺人鬼を罵倒するんじゃないかな。もういやだ! って。
それくらい、掘り下げる思索って、日常から遠い。興味がないときほど、すぐに疲れる。
学校行事で美術館に行ったときの、興味がない人たちの「早くここから出せ!」という空気!
あんな感じになる可能性、たかし!
でもまあ、そんなもんかなーとも思う。
世の中の大概のことは、そんな具合にさ?
まるっっっっきり!
興味のないか、興味がないところに落ちついているものばかりだ。
いや! 自分は興味がある! けど、それどころではないので調べていないだけだ! って?
たとえばソーセージに対する知識量においては、どんなスタンスであろうと、たいして違いはないかな。どうやってソーセージを食べるかにおいても、違いはないだろうなあ。個人の枠組みにおいて、スタンスによる変化は見られないかな。あるとすれば親が、外食でお店が作るものに依存するかどうかで。自炊しているにしても、それほど大きな変化は出ないんじゃないかな。
ユメたちが食べるからと、おこさま用のソーセージの詰め合わせを買う。胡椒がぴりりと利いたのは買わない。魚肉ソーセージにはたびたびお世話になる。お腹が空いたとき、ポテチやチョコみたいなお菓子よりも、ちょこっとつまめる小さな魚肉ソーセージなんかが、いい一手になる。
そんな具合に環境が変わると、ソーセージとの付き合いも変わる。
さっき述べた依存のふたつ。だれかが作ってくれるもの、ないし、お店のメニュー次第で、新しい出会いに恵まれることもある。ただしお店の場合は、そもそも選ばないか、メニューになければ? 出会いの幅が制限されちゃうね。
こういうのも?
まるっっっっきり!
興味がないと、わりとどうでもいい。
知らないまま、気づかないままなら?
ちっっっっとも!
関わりない自分のまま、これまでのソーセージとの付き合いのまま。
これについてだれかに「これじゃだめ!」だと話すことほど「余計なお世話なんだけど」って内容もない。
お好きにどうぞ。
っていうか、ソーセージひとつとっても膨大すぎるからさ?
人生なんか、途方もないな?
砂粒サイズで砂漠を旅するようなものじゃないかな? 風が吹いたら埋もれちゃうし、自分とおんなじに見えるものばかりだし、だけど自分とちがうものに囲まれているし、読み取れやしない、わかりきることなんか到底あり得ないの。
なのに、だれかの「これじゃだめ!」「こうなの!」のとおりに生きる余裕はないな。
あなたには私が同じに見えているかもしれないけど、ちがうことしかないの。それを確認するだけでもとてつもない時間がかかるの。きっとソーセージの趣味さえちがうのよ。なんちゃって。そんな会話が夜のバーでされていたらと思うと、お腹が空いてきちゃう。
ただ、ね?
ソーセージは焼くの! そういうものなの! なんで煮ちゃうの!? なんで茹でちゃうの! っていう人は多いなあ。焼く以外あり得ないでしょって言う声が大きな人もいるし、焼かない奴はばかみたいに言う人もいる。
ばかにされたくないので「ソーセージ」「食べ方」で検索したり、バズってる「絶対に失敗しないソーセージの食べ方」動画を見たり、インフルエンサーの名前とセットでソーセージについて調べてから「ああ。こう言えばいいんだ」とミームを覚えて、それを外で話すの。
このとき、実際のソーセージは置き去り。
実食? しないしない。
ばかにされない側にいることができれば、ひとまずよし。
そこから先に、ばかにする側に回るか、ばかにしている人を冷笑するか、黙りながらも「自分はわかっている」と考えるか、いろんな選択肢があるけど、たぶん実食はしない。その手の場合に試すことはない。
バズりたくて試す時点で、どうしたいかの目的に意図的に寄せる形になっちゃう。
おお! ソーセージよ!
企業は概ね万人向けするように企業努力でおいしく作っているだろうから、だいたいおいしいのに! どんな風に食べてもだいじょうぶなのに!
案外、試行錯誤ってしないよね。
いまある結論ありき。調べるにしても、実践するにしても、いまある結論だけを求めて、ソーセージを利用しちゃう。
そんな癖があることに気づいて!
私は、いま!
もうれつに!
こまっている!
どうしよ。
一事が万事、いまある結論で止まっている。
それこそ目に貼りついたうろこのよう。
剥がしたいし落としたいんだけど、なかなかむずかしい。
「そういうわけなんだよー」
「――……わふっ」
珍しくアマテラスさまのお屋敷にマドカがいてくれたから、なんとか捕まえて話しかけた。
いまかよって露骨にいやそうな顔をされたけど、なんだかんだ話を聞いてくれるところがマドカの優しさ。私いま、全力で! 甘えている! すまない! そして! ありがとう!
「ぷちたちと過ごしていてたいへんじゃないかって言ってたでしょー? たいへんだよー? でも、なんで? どうして? って疑問を抱くたびに、私のうろこに気づけるのよ」
その手の話、まじで何度目なんだよとばかりに退屈そうに顔を背けられた。
お屋敷の和室、座布団に足を崩している私の前で、マドカは寝そべっている。
お腹を見せてはくれないものの、あくびをして鋭い牙なら見せてくれた。
噛まれたら一発でやられちゃいそうだ。すごいよ、マドカさん。
狼状態だとしゃべれないみたい。しゃべれたとしたら、きつめの返事をしそうだ。
「うっわ。もろ退屈そう」
じろ、と横目で睨まれる。
でも引かない。
「でもさあ? 大事なの。あらゆる角度から読み解いてみて、こう思えたことが」
ごろんと横になって、私にお腹を向けた。
はふはふはふと息をして、くぴいと鼻が鳴る。
もこもこの毛に覆われたお腹を眺めてふと「いまのマドカは狼と同じ数だけ乳首があるのでは?」と思いつく。調べはしない。それはさすがにラインを越えた行いだもの。
めちゃめちゃ気になるけど、やめよう。
私が狐に化けたときに仕返しをされる恐れがある!
マドカが強めに鼻息を出した。ふんっ。
「ご、ごめんて。もう私のお話はおしまい! ね?」
許しておくれようと、ふかふかのお腹に手を伸ばしたのがよくなかった。
マドカが歯を剥いて、私の手に頭を向けたのだ。
そ、そんなにキレられるレベル!?
「す、すみません」
私の謝罪には答えずに身体を起こして、のっそのっそと歩く。そのまま私の後ろに回って、問答無用とばかりに首裏の服の布地を丁寧に噛んだ。ぐい、と持ちあげられる。
わお! 怪力!
「あ、あの? マドカさん?」
口を閉じているから鳴き声のだしようがない。
そのままマドカは歩いて、お屋敷の外へ。
ただただ連れ出されるほかない私。なにせここじゃ、私の身体はあまりにも頼りない小さな身体だもの。おとなの狼姿のマドカが相手じゃ太刀打ちしようがない。
あと、これだとそのまま子供扱いだ。
やや不満。
でもビビる。
本気で怒っていらっしゃるのでは? と。
「話ながかった? キラリにもトモにも言われるの。トウヤにも、ねえちゃんはほんと面倒なスイッチが入るとなっがいんだよってキレられたことが――……マドカさん? 聞いてる?」
返事はあるわけないのだけど、ついつい求めてしまう。
お屋敷の前にある階段に辿りつくと、マドカは口の先を下げた。
下ろしてくれるのかな? と期待する。それは即座に裏切られた。
「わ」
くんっ、と。
宙へ放られた。
ぽーんと、軽く飛んじゃう私の身体を、マドカは背中で受けとめる。
わふっと短く吠えて、勢いよく駆け出した。
落ちないように、あわててしがみつく。
マドカは迷わず疾走した。気分はもののけ姫だ。私の場合、九本も尻尾を生やしているので「いや、お前も化けて一緒に走ればええやん」と脳内で突っ込んじゃう。
あ。そっか。それでいいじゃん。
「待って! 待って待って、私も化けて一緒に走るから待って!」
マドカは止まらない。
どうせ無駄だと言わんばかりだ。
むしろ速度をあげる。振動が増して、必死にひっついた。
毛を掴んだら痛そうだから、素肌にがしっと。
「なんでぇ!?」
疾走し、飛び、駆け抜けて、マドカは狸街までくると?
きのこの病院の入り口で急制動をかける。ひどい。耐えきれずに私はぽーんと宙を飛んだ。
待ってましたとばかりにだれかが受けとめてくれた。
「わふっ」
と短く吠えて、マドカはとっとと行ってしまった。
置き去りだ。ひどいっ。
「なんか知らせが来て待ってたら、意外な急患だね?」
「あっ」
私を受けとめてくれた結ちゃんが、私の脇の下に手を置いて抱き直してくれる。
下ろしてくれていいのに、なぜだか上げられた。
たかいたかいだ。
こどもかな?
「あ、あの、恥ずかしいので下ろしていただけると」
「なんだかすっごく髪の毛ぼさぼさだね? といたげよっか!」
「ゆ、結ちゃん? そういうのよりも、いまはあの、下ろしていただけると」
「休憩はいりまーす!」
聞いてよ! 人の話!
そう思うのに、結ちゃんは止まらない。
スイッチが入ると結ちゃんは私の思考ばりに果てしなくマイペースになる。
話はするし、成立もする。中学時代よりもずっと。すくなくとも私が話そうとするようになったぶん、変化する。
そうして知る。
結ちゃんはとにかく知りたがる。
なんで? どうして? どういうこと? それは春灯にとって、なあに?
なんとか結ちゃんに話してもらおうと話を振ったら、簡潔にばしっと答えてすぐさまマイクを私に戻してくる。これはこれで困るぅ!
あれかい?
マドカさん。
そんなに何度も話したいなら、ちょうどいい人がいるぞってことかい?
ちっがうんだよなあ!
髪の毛から尻尾まで。神使の服を脱がせて洗濯して、その間に私の着せ替えを楽しみだしかねない鬼の干渉力を発揮する結ちゃんが相手だと! 負担が大きすぎるんだよなあ!
興味スイッチがひとつ入るだけで、結ちゃんは私じゃ太刀打ちできない相手になる。
いまの私じゃ狼マドカとサイズも力も差がある。それと同じくらい、ひとつだけスイッチが入った結ちゃんが相手になると敵わない。
なのに事件で見聞きしたこと。私たちがどうやって解決しようとしているのか。それに、どのような策を練っているか、などなど。話せば話すほど、結ちゃんの「知りたい!」という興味スイッチがひとつ、またひとつ入っていく。
「んんん! 耐えきれない! ねえ、いまやってみせて?」
「え、ええと。まだ考えている最中で」
「やってみようよ!」
「う、うまくいかないかもだし。設計中というか」
「失敗した春灯もめっちゃかわいいと思うの! ね!? みせて!?」
このように、押しが強い。
そして私は大概、押しに弱い。
「わ、わかった」
中学の三年間で、いやというほど「結ちゃんには話した時点で敵わない」体験をしたので早めに受け入れちゃうのだ。これもある意味、ソーセージ概念。他にいろいろあるだろう。
なのに、早めに済ませちゃう。
そういう癖があるんです。困ったことに!
「ドローンにするのかな? 新しい式神でも作るのかな? どうするのか考えてるの?」
おまけに隙間時間が許されない!
猛烈な押しの一手。興味がなくなると途端に黙る。
そんな捉え方を、私はずーっと結ちゃんに対して、ついついしてしまう。
これはこれで偏見と差別。
めっちゃ期待の眼差しで見てくれている。
なんで結ちゃんは、いまみたいなんだろ。
「やってみる前に、聞いてもいい?」
「なになに? どういう風に撮影するか?」
撮影する気だったの!?
しなくていいからね!?
「そ、そうじゃなくて。撮影もいらなくて」
「一眼レフ出すよ?」
どこからぁ!?
一眼レフである意味とは!?
「衣装も作る?」
そういう漫画がありますけども!
そうじゃなくて!
「もっ、目的はなに?」
あっ、ちがう! これじゃない!
くそっ! 衣装もとかいうから、引きずられてしまった!
「えー。目的って言われてもなあ。一緒にいたいし、遊びたいし、知りたいから、そのまま過ごしてるだけだよ? なに? あ! 圧が強かった?」
「え、と、わ、わりと?」
「レンによく注意されるんだよねー! ごめんごめん!」
軽く笑い飛ばされても困る。
きらいなわけじゃない。仲良くしたいなって思うし、ギャップはちょこちょこ調整していけばいいと思うし。それが間に合わないくらい、たまに結ちゃんは加速してしまうというか、私がブレーキを踏んでしまうというか、とにかく速度差が生じる。
このあたりの調整が、私も結ちゃんもまだ、なかなかね。
「テンションあがっちゃうの。ぐいぐいいきすぎるし、不安になるほど押しの一手になりがちなんだ」
それはよく知ってる!
あとね? たぶん、はにかんで言うことではない!
「春灯が私に話してくれるのがねー。うれしいんだ」
「わりとゆるめというか、今日はむしろ結ちゃんのリードだったけど?」
「そばに来てくれたら喜んじゃうの。残ってるんだなー。まだ消化しきれていないのか。ああでも、それは私の都合なんだけどさ」
中学の三年間のことだ。
残っているんだよね。結ちゃんの中で。
なかったことにはならないもんね。
前の三年間に直結した残り方だけじゃない。
あの頃の過ごし方を経て、いまがある。
そういう残り方だってある。
見えないソーセージ概念だ。
「重たいんだ。私は」
少女漫画のかわいいヒロインみたいな笑顔で、背景黒塗りみたいなこと言うじゃん。
「そ、そっかぁ」
「春灯には恨みもあるしなあ? 三年間、人見知りと無視してさ」
虹彩に光が灯っていなそうなことまで言うじゃん?
「そっ、それはさあ」
前に話したし、謝ったし!
足りないですか! 足りないですね!?
背筋がぞわぞわして脂汗が全身に滲む。
あ、あれ? 一気に真冬になりました? 寒気が止まらないんですけど。
「なんてね。本気にした?」
目を閉じて、にこにこと問われる。
いや。あの。え?
「ま、まあまあ?」
「あっはっは」
いやいやいやいや。
笑っていますけど。
うそなの!? ほんとなの!? どっちなの!?
「いじめるのはこのへんにしておいて」
やっぱり怖いぃ!
結ちゃん、おっかないぃ!
「見せてよ。その、ソーセージ概念? 理論? 名前はさておき」
さておかれた。ネーミングセンスがだめ? ソーセージなのがだめ?
ソーセージはいいよね。おいしいし。例えに使ったものがだめだった?
「いいなって思ったり、いいなってことにしないとダメージが増えることに対して、私たちは思っているよりもずっと、これでいいでしょってしがち」
「それって、あの」
いまソーセージを食べることができているからいいでしょ、とか。
これで満足しているんだからほっといて、とかってこと?
「ううん。他にもあるよ?」
ソーセージ、いいよねと意見を同じくする人がいたら、意見が異なる人には警戒する心がかなり無防備に近づくこと。
ソーセージはおいしい。この食べ方、この商品、この作り方がいい。さらにもっとよくなる、そういう意見の集まりに入ること。
それらはますます、ソーセージそのものの味を確かめたり、可能性を探ったりすることから遠ざかる。
ソーセージが個々の、あるいは集団の手段に貶められてしまう。
それこそソーセージ概念について話すことはあっても、ただの一本も食べない。作らない。
そんなナンセンスな状況に陥る。
実食、実作ソーセージはもはや増えないまま、何年、何十年も概念だけ語れちゃう。
「ソーセージはさ。食べてなんぼ。作ってなんぼ! それをやりたいんでしょ?」
「そう、なんだけど」
「朝まで時間が限られているから、私にも協力させて。春灯さえよければね?」
断る理由はない。
「よかった。レンにも声をかけてみるよ。忙しいからタイミングが合えばになっちゃうけどね」
「神使の修行もあるのに、いいの?」
「もちろん! 春灯のこと好きだし応援したいしさ? 実利として私たちにも北斗にも、共有できるほうがずっと得だもの」
納得。
ここで終わるのなら、とてもほっとする。
けど、そこは如何せん、曲者の結ちゃんだ。そうはいかない。
「撮影するのも、記録を残せれば便利じゃない?」
「現世に持ち帰れるかはわからないのでは?」
「でも、ここで私がくたびれたときに春灯の姿を見れるでしょ?」
なんで笑顔のままで当たり前みたいに言うの?
見るの? 私の姿を?
「な、なんで?」
「変な子ではあったけど、明らかにいろいろ慣れないことだらけの人が私を助けようと勇気を振り絞ってくれたから。あの瞬間を、特別にしていたいの」
告白なのでは?
「えー。言わせるー?」
返事に困る!
それだけでもわりと揺れちゃうのにな。
「そっ、それで、撮影して、見返すの?」
「グラビアがのってる雑誌も買ったし。動画も見てるよ」
おおぅ。
「あっ、愛が、重たい、かな」
「三年間でこじらせちゃった!」
後頭部に手をおいて、表情筋めいっぱいつかって微笑むじゃん。
すごい圧じゃん?
「だめだよ? 自制しようと北海道にまで来たのに。耐えきれなくてキラリをダシに文化祭に押しかけて、なんとか我慢してるのに」
こうやって頻繁に会いに来たらさ、なんて。
や、や、や。
「やっ、ヤンデレかなにかなの、かな」
「どんな返事が欲しいのかな?」
おぅ。
心臓がきゅってなるような返しするじゃん。
「すっ、好きすぎじゃないかな」
「キラリを見てるときの顔なんか、いまでもはっきりと思い出せるよ」
こじらせすぎてるじゃん。
そこまでぇ!? 意地が過ぎるって!
なんとか空気を変えようと試みるも「運動音痴でどじで変で、わりと抜けてて気になる春灯に絡み続けた私が春灯に負けじと変じゃないとでも?」と返してくるから、なにも言えなくなりました。
改めて思ったよね。
結ちゃんに話で押し切れたことなど、ただの一度もなかったって。
そんなだめで変な私が出した勇気にいろいろ触発されて、記憶に残っていて、同時に残そうともしている。そんな結ちゃんのこじらせが一体なんなのか、よくわからない。
愛が重たいと名のつくソーセージを雑に持ってきて、私たちはそれをネタに話したけれど、わからないことばかりだ。
話せたと思っていたけど、ちっとも掘り下げることができていないことがあるんだ。
それって、どう味わったらいいのかな。
調べるといいのかな。
食べておっけーでいいのかな。
さっぱりわからないぞ?
「そんな話はいつでもできる! ほら。せっかくだし、やってみない?」
いや。結ちゃんのことでいろいろ悩んでるんだけどな!
言いたい気持ちは堪える。ぜったい! 長くなる!
それにきっと、私は翻弄されて終わっちゃうのだ。
試して学ぶにしても、いまは他にやりたいことがあるから、そっちを優先!
避けるぜ、地雷原!
つづく!




