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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千八百七十三話

 



 メッセージアプリで流れてきた情報量、ここ最近だと一番多いかも。

 カゲくんたちの盛りあがりはかなりのもの。

 内容が際どくて、扱いに困る。

 私とカナタが夜に最初に話したのは、聖歌ちゃんの話題。

 盛りあがりの熱と勢いが強い。

 お手伝いがてら、会いに来てくれるそうだ。

 縁に助けてもらっているなあ。

 お世話になります!

 拒否? しないしない! まさか!


「しかし、夏海はどうしたんだろうな? 急に」

「さみしいんだってさ」

「直球!」

「ねー」


 聖歌ちゃんを相手に、がっつり照れちゃった。

 そっくりそのまま言われたんだ。急にどうしたの? って聞いたら「さみしい」って。

 弱いなあ。そんな風に言われちゃったらさ。

 カナタに尻尾をお手入れしてもらいながら、和室でくつろぐ真夜中。

 何度だって反芻しては「かわいいなあ」と顔がほころぶ。


「カナタはさ?」

「んー?」

「もしも、聖歌ちゃんかカゲくんか、どっちの誘いしか選べないとしたら、カナタはどうする?」

「またえらく極端な二択だなあ」

「どう?」

「俺が春灯ならって?」

「それか、カナタのぷちたちが、うちのぷちたちくらい元気に生活しているとして」

「じゃあ、ぷちたちと話すなあ。ぷちたちがどうしたいか聞いて、一緒に考える」

「おう……」

「どっちの日常に向かいたいか選んで、というのなら?」


 う。いじわる!

 それ、ほんとはしたかった質問だ。


「どっちがいいんだろうな。すごく悩むよ」

「悩んじゃうの?」

「侍隊の仕事はさ? やっぱり、向き不向きがあると思う。けど、御霊の縁も、これまで鍛えてきた技術も、侍隊に向いてる。仮にそれを、春灯の語るスパイディーのセリフに例えるなら?」

「大いなる力には大いなる責任が伴う?」

「に、なる。格闘家は自分の力が凶器になるし? 権力もまた、濫用を防ぎ、正しいことのためにのみ。そういうものだろ?」

「理想としては、かな」

「たしかに。理想どおりにいかないし、なにかと揉める。だから侍隊の仕事がたとえどれほど再生する邪の退治だとしても、やりがいがあるし? 必要だよ。邪は放っておいたら育つし、放置したら黒い御珠になるんだ」


 どんなに無力感を抱く人がいようと、それとは別にはたらき続ける人たちがいる。

 意義も、栄光も、自分の内側にあるものじゃない。

 だれかと過ごすことで自然に生じるものだ。


「アメスパの話、してたろ? アメスパの一作目、二作目を通して多くを失うし、なにかと傷つきながら過ごしていたけど、でもトラブルが起きる街でなにかは起きる」

「ラストの話?」

「そう」


 友人に憎まれ、恋人を失う。救うことのできなかった恋人の父親に「約束してくれ、娘を巻き込むな」って言われて約束したのにだ。だめだった。

 不幸がいくつも重なるドミノ倒しは止めがたい。

 エンタメは、それを食い止める筋か、すべてが倒れて悲惨な状態の人が主役か、はたまた悪役になりがち。

 アメリカドラマで私が連想する三本柱は?

 犯罪、裁判、医療。

 もちろんすべてじゃない。むしろ省いているものがある。ビッグバンセオリーのようなコメディでしょ? それに恋愛もの。

 他にもまだまだある。おとな恋愛や、思春期の性、LGBT。SFにホラー。

 なので私の三本柱は、私の好きな、と表現を正したほうが適切。

 だけどこの三本柱に私の好みがもろにでている。

 不幸のドミノ倒しを食い止める人たち。食い止めることを大勢が放棄してきた人の傷と、それが癒やされる瞬間。他にも、そりゃあ魅力を感じる瞬間はやまほどあるけどさ? 私の好みは結局、救われることにある。あるいは、とうとう救われなかったからこそ主人公が初めて共感する、そのやるせなさ。

 でも、もうちょっと大衆的な姿といえば?

 立ち上がれること。

 なにも知らない頃には古典扱いしちゃいそうで、でも古く遡れば人類史に、そして伝承に読み取れそうな普遍的な王道的瞬間。

 映画で古くはロッキーかな。

 何度ころされても立ち上がる英雄とかね。日本だと弁慶の仁王立ちとか、すさまじい。

 どでかい巨大な男の奮闘というのなら、お相撲なんかもそう。わりと早めに勝敗が決するお相撲の大一番で、競り合うと? おおおお、となる。いや、おばあちゃんちに行くと見るんだよ。好きな親戚がいてさ。

 アメスパ2はこどもがスパイディーの格好をして、警察を圧倒するヴィランの前に立ちはだかる。銃が通用しない、ライフルもだめ。身体もかなり傷ついたけど、さらにもっとずっと精神的にズタボロだったスパイディーが、その場に駆けつける。

 立ち上がれることを示す。

 一見すると、その象徴みたいだね?

 実際には失った恋人のことばと信念に触れた過去や、守らずにはいられない、行動せずにはいられない恋人と、そのパパさんとか。大勢の隣人を助け、交流したりしてきたし? おじさんとおばさんのもとで育ってきた過程があるからさ。

 そういう土台で、踏んばって、押し留まる慣性に抗って立ち上がった。

 ひとりぼっちじゃなし得なかった。

 一見するとベッドで傷心ふて寝の彼が起き上がったようであり、実際には語り尽くせない人生で大勢と出会い、交流を深めてきた彼が、とうとう再び立ち上がったのだ。

 ピーター・パーカーがこどもの決意に現われた瞬間、彼が大勢の人たちとの繋がりと、大事な人たちと過ごした時間を消化してエネルギーに変えていた。その有様がとびきりかっこよくて尊くてたまらないから、思うんだ。

 ひとりぼっちじゃ、なし得なかった。


「止めるだろ。止めずにはいられないだろ。こどもが、化け物の前に突っ込んでいくんだ」

「……そりゃあ、ね」


 放っておけるはずがない。

 規模や形は違えど悲劇は起きる。終わりはない。邪の発生くらい、ずっと続く。

 だけどひとつひとつを止めることに意味がなくなるわけじゃない。


「それとは別に、だれかといたい、幸せを増やしたい。人を大事にするし、つながるっていうのも大事だし? 両立は、むずかしい」

「ううん」


 そこに行き当たるよなあ。どうしても。

 大勢の人たちがほんのすこしの優しさと誠実さを向けないことの積み重ねで、悲惨な人生になり得ることは? ざらにある。

 ちょいちょい私がアメリカのドラマを見ちゃうのは、日本とちがってたくさんの人種と文化に接するからなのかな? あ。下げ発言をしたいわけじゃなく、ちがいとしてさ? 配慮する範囲が広そうな印象があるぞ?

 あとは犯罪件数とか。たとえば大統領が変わってからの移民に関する悲惨な状況は、いずれドキュメンタリーでやまほど流れてきそうだし? 向こうじゃ現在進行形なんじゃないかな。

 どの国も、社会制度や司法に警察、その他諸々、理想的! なんてことはないだろう。それぞれにそれぞれの問題を抱えているんじゃないかな。自分に合う合わない、どちらであろうと移動しがたいなど。事情もさまざま。

 フィクションであるべきで、現実であっては困るのが生活保護の窓口が追い返すマニュアルに従っている状況。実数を明らかにして、制度を運用したうえで改善が必要な社会になっていると明らかになり、そのための予算と対策をどんどん増やしていくこと。問題点を明らかにし続けることは大事だ。

 アメリカのドラマだと? アマテラスさまのお屋敷でみた、FBIがそう。最近のアメリカドラマはクロスオーバー多めで、FBI指名手配特捜班っていうのがあってさ?

 依頼多め、目の前の依頼人の話をろくに聞かず「済ませる」ために流した結果、国選弁護人となった依頼人の少年が懲役二十年に。シングルマザーを放置した結果、彼女が激昂。銃を片手に襲撃することに。彼女は少年だけでなく、少女を生んだ二児の母親。父親は? ヤク中で、母親の友人とデキて捨てた。その友人に捨てられて、絵の仕事かなにかで財を成し、結婚。家族がいる状況。

 少年が懲役刑になっているのなら、その姉である少女は? 赤ん坊の頃、父親が薬物ほしさに外出。泣き声を聞いたご近所が通報して児童保護局に保護された。母親は必死に訴えるも「金銭能力、養育に関して安定した家庭環境」がないあたりを理由に退けられたみたいだ。そもそも父親はヤク中で、薬物ほしさに赤ん坊を置いて外出しちゃう無責任さだし? その無責任さは変わらないままだ。

 シングルマザーの女性は息子の幸せのためになにもかもなげうって生活していたし? 高い買い物をしては、息子が不自由しないようにしていた。父のいない罪悪感からでは、と捜査官が感想を言う場面もあった。

 少女は家庭を転々として、とうとう家出。最後の養育家庭は長くいられたものの、である。そこのご家庭は探偵を雇って探すが見つからず。じゃあ保護局は動いたかって? 十七歳になったら保護局の対象外だし、予算がつかなかったから放置。

 ドミノ倒しが、事件を起こす。

 アメリカの事件ものは本当に、そういう展開が多いし?

 極めて現実的。実際、追いつめられて過剰な行動に出る、というケースはある。

 あ。

 追いつめられたらなにをしてもいいって話じゃない。

 肯定はしないし、するべきじゃないんだ。もちろん。

 悲しいかな、現状においても追いつめられている人はかなりいるんじゃないかな。

 じゃあ、だれもが途端に暴力に出るかっていったら、別なんだ。

 ただ、暴力は殴る蹴るだけじゃない。

 精神的な痛みを与える行為やハラスメントもそう。金銭的に不自由をさせる、というのもね?

 なので裁判沙汰になったり、事件として扱われたりするかどうかは別とするのなら?

 いらいらしたから、つい言い過ぎたとしてもね? あるいは、仕事や部活で面倒だから「はっきりいうわ」としてもね。暴言を吐くのをカウントしたら?

 呟きアプリでたびたび話題になる、女性とみるやすれ違いざまにぶつかってくる人とか。家庭で当たり前に女性に家事を押しつけるのみならず、病気や怪我で参っているときさえ「それでご飯は?」なんていっちゃう人とか。「病気?」とか「育児休暇?」とか「ペットが亡くなったから?」とかで「甘えてんじゃねえ」となるのもやっぱり、ねえ?

 赤信号。

 倒れる痛みのドミノが追加される。

 瞬間ごとにだ。

 なのでドラマのシングルマザーのドミノはこれでもかっていうくらい並んでいた。息子の裁判で最悪の弁護士が雑に流した結果、懲役二十年となって、とうとうドミノが倒れた。不幸のドミノはやまほどありすぎた。

 特捜班のリーダーは例え取り扱い案件として、彼女を逮捕できたとしても? 明言した。絶対に彼女の娘を見つけだすと。

 遅すぎた。ドミノを増やさず取り除くのが。だから事件が起きた。

 特捜班の話は、こういう構図が多い。クロスオーバー元のドラマはというと? アラブ系でイスラム教徒のアメリカ人捜査官とタフでマッチョな精神力の持ち主である捜査官のコンビがドラマの顔。そしてチームのトップで特別捜査官は、プロファイラーで、かつ女性。政治的に女性がリーダーとなる、という文脈をあえて利用している。念のため補足すると、リーダーは有能だから選ばれた。とても優れたプロファイラーだ。

 ちなみにアジア系っぽい人がひとりいるんだけど、出番はそこそこ。

 いわゆる「9.11」からの話が主軸だからかな。

 アメリカのニュース番組でアジア系のトピックスをやっていた回を配信アプリで見たけど、政治に興味ないっていう切り口で苦笑いしか出なかった。ぽえぽえしながら見る日本のニュースだと、白人か黒人か、男性か女性かが、ここ最近の大統領選の重要トピックスに見えたしなあ。ぴんとこないのかも。そういうところも含めての存在感、なのかな。

 さておき、クロスオーバー元はコーランの引用が出てたり、アッラーの教えが出てたりして新鮮だ。しかも過激派と表現されがちだけど実質テロリストや、あるいは知ろうとせず雑に標的にしては銃撃するネオナチの犯人と対峙する場面があるし。移民絡みで防げない悲劇を描いたりもするし。かなり興味度たかめの作品なんだよね。

 移民局絡みの動きは本当に悲惨。

 だけど大統領が率先して設けたわけで、予算が配分され、雇用が生まれている。「仕事だから」「仕方なく」という態度もある。貧困もまた、存在するし? 求人があるかないか、だれもが就職できているかどうか、就職先が満足かつ安全に働ける環境が整っているかどうか、暴力が振るわれたり満足でない給与で働かされやしないかどうか、いずれも別々に存在する問題だ。

 職があればいいか。それだけで語れるはずがないのだ。

 人は「仕事」だから「仕方なく」だれかをガス室に送ることさえできるし「相手は軍」で「なにをされるかわからない」し「仕方ない」から、収容所で大量殺人が起きていても「なにもしない」を選ぶことだってできる。それが第二次大戦で残った人類のトラウマであり、いまもなお繰り返されている暴力でもある。いじめは見て見ぬ振りも加担したことになるのも、決して大げさなんかじゃない。延長線上に、歴史上屈指の虐殺への文脈が存在するからだ。

 いずれにせよ、倒れたドミノは起こせない。大きなドミノに繋がるささやかなドミノの一押しを、ドラマに利用するにはあまりにもささやかでくだらないきっかけで、なんてこともあるし。

 警察は起きた事件の捜査をするだけ、なんて開き直って予防をなにもしない国や地域では? ドミノ倒しと悲劇は起き続ける。かといって、警察だけでどうにかしろっていうのは無茶な話だ。いろんなところがドミノを止める力や、増やさない力を持つほどいい。そこで利益をあげようとするほど、お金が貴族と奴隷を生み出しかねない。水道やガスのようなライフラインと同じで、とんとんでお願いしたい。となれば? 国ががっつり手を貸すことに。言い換えれば、お金を出すってことになる。消防隊なんかもそうじゃない?

 火事だってなって通報したら「消火活動に一件、百万ほどかかりますが払えます? 払えるならカード番号を。え? カード持ってない?」がちゃって切れたら、あまりに惨すぎる。

 病気だと? 病院の高額医療費に関して高額療養費制度を利用する。厚生労働省に案内あり。

 あるんだよね。ちゃんと。生活保護を受給する状況だとしたら、たしか医療費免除じゃなかったっけ。

 国が違えば制度も変わる。国が同じでも窓口が変われば状況も変わる。

 シングルマザーの件でいえば、まず弁護士が最悪。長女の情報を管理し、対応していた福祉士も好ましくない。人がわるいよ、人が! と、言いたくなるけれど。

 どんな過ごし方、どんな学び方をしてきたか。どんな人と出会い、どんな経験をしてきたかは人によって大きく異なるし? 人は失敗を犯すし、忘れ物だってする。同じ職業で一万人の人を集めたとき、一万人全員がミスを犯してもカバーできるような制度や環境になっているか。利用者の不利益に繋がらないように整えられているかといったら?

 それはない。

 ないよ。

 ないけど、でも、求め、働き、向かっていく人たちがいる。それでも働いている人もいれば、諦めずに探し続ける人もいる。

 アメスパ2のこどもが、まさにそれ。

 圧倒的に不利だったけど、絶望的すぎる戦力差だったけど、それでも立ち向かっていた警官たちだってそうだよ?

 特捜班のリーダーも同じ。

 侍隊の人たちもそう。他のあらゆる仕事でも一緒。

 居るのも生きるのも理想どおりとはいかない。

 だって自分が作り出す環境で生きてるわけじゃないもの。神さまじゃあるまいし!

 自分の願いどおりの環境にだけ、自分の願いどおりに全力で、なんて。

 そんな風に願ったら?

 そりゃ、両立できないよなあ。

 なにひとつうまくいかないでしょ。ままならないよ?

 自分の外側に向かう願いほど、遠ざかるほど、いま満たされていないことを感じるよ。


「自分は世界と、だれかと、他のいきものとちがうから。わからなさに触れることができるから。自分のいいように済まないから、だから縁も、繋がりも大事なんだ」

「お。先回りしてきたな?」

「先回りってことは、カナタも同じこと考えてたの?」

「だって、ほら。春灯と俺はちがうだろ? 俺と兄さんもちがう。人は同じにはなれない」


 うわ。なんか最後のことばにぞっとする。

 真理なのになあ。どうしてなんだろう。


「ぷちたちもそう。一緒にいるのなら? さてさて、どうしようかと話しあうし? そもそもちがうのだから、それで差し障りのないよう、うまくすれば楽しめるようにしたいし。それで、ユーモアって言うんじゃないか? ほら、ファッション雑誌の動画の」

「長続きする秘訣?」

「それそれ。でも、人によってユーモアって、ちがうだろ? ユーモアのところを変えたほうがうまくいくふたりもたくさんいるだろ? じゃあ、春灯はなんだろうなって尋ねたいし、尋ねてくれたらうれしいなあ」

「おお……」

「ふたりで話すし、いろいろ試すし? そしてまた話して、試して。そうして育っていくんじゃないかな。ぷちたちともそう。八葉と夏海、どちらかというときも?」

「ふたりそれぞれと話して試してってこと?」

「そういうこと。ぷちたちが輪に入るときは、ぷちたちを。一緒に過ごしている相手がいるのなら、その人を忘れずに。具体的には、ご家族とか、俺とか。それにほっとけない人も忘れずに」

「おおお」


 す、すごい! なんかすごく久しぶりにカナタさんがいいこと言ってる!


「感嘆が失礼」

「ごめん! ああでも、そうだねえ。たしかにそうだね」


 そっかあ。

 話してなんぼじゃんね?

 ことの輪郭、ようやくわかってきた。

 聖歌ちゃんがさみしいっていう理由も。レンちゃんにちょいちょい尋ねられたり、触れられたり。最近、そうやって思考を止められる機会が増えてきたのも?

 結局わたし、自分の答えに夢中すぎた。

 実感したわー。

 そっかそっか。

 私の答えは私の内側で留まって、出て行けないんだ。

 御珠にたくさんついていた垢は、私の答えでもあるのか。

 なーんだ。

 めちゃくちゃ匂ってるじゃんか……っ!

 おぅ。こいつは恥ずかしいぜ!


「前置きが長くなっちゃったけど、春灯はどうしたいんだ? 八葉と夏海の誘い」


 どっちに、という話にあえて限定せずに尋ねられて、腕を組む。

 特別な使命感なんて、いまのくたびれ参りまくりな私にはない。青澄春灯はただいましばらくがんばれない状態です。


「カナタの言うように話して、落ち着きがほしいことばっかりだよ。聖歌ちゃんが理華ちゃんたちと来てくれるなら、一緒に家で過ごしたい」

「八葉の誘いは?」

「どれほど問題がある相手だとしても、私でなきゃっていうんじゃなきゃ、休みたい」

「そっか」


 短く答えて、カナタは尻尾に櫛を通し続ける。

 九尾の手入れは時間があっという間に流れていく。

 これでいいんだ。いまはこれが必要だ。

 無理をしがち。がんばらずにいられない。そういうとこ、ある。

 だけど、焦りは禁物。休みが必要なんです。


「櫛のお加減はいかがですか?」

「じょうじょうでぇす」

「それはなにより。かゆいところは?」

「尻尾の付け根あたりかな」

「色っぽい声ださない?」

「なんで?」

「元気になっちゃう」


 しらんがな!




 つづく!

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