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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千八百七十二話

 



 世界のどこかで悲劇が起きている。

 夏海聖歌も体験した、その一端は端っこでも鋭い切れ味を持っていた。

 だけど端っこすぎて全部は見えない。

 悲劇とみる私もいれば、自分の都合で利用したい人もいる。

 私にとっての悲劇は、だれかにとっての利益。

 夏海家は四人から、三人になった。お姉ちゃんがあの世に旅立ってしまったから。

 本当は戦地でお医者さんとして働いて、現地に住んでいる人たちの生活を守ろうとしていたら空爆によって殺されてしまった。

 四分の一が三分の一になった。

 そんな私が学校に行くと、三十とすこし分の一になる。学年でみたら? 高等部だと三十かける九組で二百七十分の一。それが三学年になると? 八百十分の一。

 東京にはどれほど学校があるだろう。東京の高校生を分母にすると、もっとちっぽけになって、関東に広げて、日本全国に広げるともっともっとささやかになって、世界中にすると砂粒くらいの小ささになるみたい。

 そう感じるだけの話に過ぎなくて、ひとりはひとりのままなのに。

 端っこすぎるから全部は見えないままだ。

 そのまま放っておくと、火の粉がだれかに降り注ぐ。それが許せないから理華は止めようとしている。分数であらわすからちっぽけに感じるだけで、ほんとは整数。

 七十七億くらいだっけ?

 だからひとりかける、だ。人を大事にするって、そういうこと。

 夏海家は四人から、三人になった。

 ひとりが抜ける。失われてしまう。それはとんでもなくでかいことだ。

 でかすぎて、たくさんいすぎて、ひとりでも端っこすぎるから?

 やっぱり全部は見えないままだ。

 そのすべてを理華なら見通せるのかな。わからない。

 春灯ちゃんの一番最初で最強のファンことツバキとふたりで過ごす時間も増えてきた。最近の理華ときたら、なにかに夢中で上の空。気がついたらいなくなっている。美華は美華で仕事に忙しいし、詩保はワトソンに稽古をつけてもらっている。岡田はあいかわらずへんてこでばかだし、スバルとキサブロウはふたりしてなにか悪だくみをしているみたい。

 絡めるのはツバキか岡田くらい。

 今日だってそう。放課後になって、気がつくと理華はいなくなっている。


「相談するって決めたのに」

「八葉先輩たちと話すって言ってたよー」

「夜には絶対、会えるよ」


 岡田とツバキが構ってくれる。

 宝島に行っている間にすこし埃っぽくなった教室は、どこも窓を開けて風通しをよくしていた。夏場に蒸されるクラスで、汗ばむのが気持ち悪い。ブラウスを摘まんで前後に振る。

 涼しくてからっとした風が必要だ。


「春灯ちゃんちにいくとき、ふたりは手伝ってくれる?」

「僕の新技マジックをめいっぱい見せなきゃいけないからねっ!」

「もちろん」


 岡田のハイテンションを流してツバキがうなずく。

 そんなの一切気にせずに、最近おぼえたという周囲をきらきら輝かせる意味不明な術を使いながら岡田はマッスルポーズを決めていた。筋肉はない。叩いたら折れちゃいそうな柔さだ。


「じゃあ、さ。理華が、なんか、ひどいことを止めるみたいな話は?」

「そういうのは、あんまり、かな」

「楽しいことしかしたくないな!」


 ポージングをせっせと変えながら輝き五割増しにする岡田はさておき、ツバキは首を捻る。机に両腕を置いて、ぐにゃぐにゃしながら足を上下にぱたぱたと振った。


「そうだね。学校の討伐は参加するけど、やっぱり、楽しいことしてたいよね」

「あれしろこれやめろって言って済むことなんかないからね!」


 岡田の背中から小さな小さな花火があがって、弾ける。

 それもまた岡田の覚えた妙な術だった。

 ひとりだけいつでもお祭り騒ぎ。それが岡田なのだ。


「岡田くんの言うこと、わかる。結局、揉めごとで被害を止めるってことは、矢面に立つってことだから。止めるのが精いっぱい。理華ちゃんは、先を見てる」


 暴走しがちに思える岡田のことばさえちゃんと受けて、ツバキはよどみなく返す。

 慣れてくればくるほど、ツバキは流暢にいろいろと教えてくれる子なんだとわかってくる。


「だけどその先って、すごくすごくむずかしいこと。長生きの吸血鬼さんがいるのに、達成できていないこと」

「お姉さまのこと?」

「そう、明坂ミコさん。吸血鬼っていいながら、そういう能力を得た人っていうのが正確な表現なんだろうけど。獣憑きのように」


 アイドル活動していて、江戸時代では遊郭を仕切ってもいた。

 理華の説明を聞くと、儲けてなんぼの奴隷業みたいだ。

 生まれ、血縁からお金に切りかわっただけ。持つ者が持たざる者を言いように使い、有利な立場をより頑強にする。それが資本主義の現実、みたいなことなのかな? と、理華の話を聞いていると思う。言ったら授業が始まりそうだから、理華に尋ねる勇気は出ない。

 ただでさえ、いつも授業で頭がパンクしそうなのに。困る。


「すごくたくさんのことを積み重ねて、どこまでできるかなってことだから。もし理華ちゃんの願いが先へ先へって向かうようなら、ついていけないかな」

「距離感も大事さ!」


 ぼん、と。岡田から煙があがる。

 ツバキとふたりで咳き込みながら煙を払うと、岡田が黒板の真ん前に移動していた。

 できれば煙の距離感も大事にしてほしい。


「みんなが楽にいられる距離感を保たないと、楽しく生きるどころじゃないからね!」


 ぴょんと飛んで、一文字で大きいの形を作る。

 そんな岡田の脇から水蒸気がぶわっと出た。

 こどもを笑わせるのなら、そこはおならがいいと思うの。

 言わないけど。クラスでやるようになるから。目に見えているから。言わずとも絶対に習得してくるに違いないから。


「自分がつらくないよう、自分を守れる立ち位置を大事にしないと。被害を止めるどころか、被害を広げちゃう」

「うわっ!?」


 水蒸気が止まらなくて、脇の下を叩いていた岡田の半袖から毛がもじゃっと伸びた。

 不覚にも吹いてしまった。ツバキも一緒。

 あわてて脇の下を叩くと、岡田の脇毛が一瞬で引っ込んだ。


「危なかった。全身が脇毛で毛むくじゃらになるところだった」


 青ざめた顔してシャツのボタンを開けて、脇を確認している岡田をツバキとふたりで眺めながら、ささやきあう。


「いつも思うんだけど、あれはどういう術なの? 魔法かなにかなの?」

「手品ともちがうよね」

「奇術的な?」

「いや手品と同じ。マジック。でもあれは魔法に近いと思うの」

「魔法だとして、なんの意味が?」

「岡田くんが楽しい、とか?」

「ああ……」


 真面目な話をしていたはずなのに、岡田の術のたゆまぬ努力を眺めていると、いつでも気が抜ける。

 むしろ助かる。

 なにせ、うちのクラスときたら。

 ふたりでいちゃつく姫と七原、いつでも向上心の美華。そして最近は犯罪かなにかをどうにかしようとしている理華。

 気がつくと顔がぴしっと引き締まってしまう。

 昼休みになる頃には顔が筋肉痛になってしまうんだ。あまりにも緊張感がありすぎて。

 本音をいえば。

 岡田くらい、自分はこれが楽しいを突きつめるのでいいと思うのだ。

 隔離世の力って、心の力なんでしょ? だったら、心がこれでわくわくするとか、元気でるとか。こういうの楽しいって示せるようになっていってさ。響き合う人と出会ったら、一緒に楽しめばいいし、それが無理なら距離を取ればいいだけじゃないかな。

 みんな、そんなにだれかやなにかを変えたいのかな。

 そこまでじゃないけど、こんなのクソって言わずにはいられないのかな。

 つらいなあ。


「おならしたとき、お尻から毛がもわって出たらどうしよう!」


 ツバキとふたりで「きもい」と露骨に顔に出してしまった。

 それはもう、キッズ向け漫画かなにかなのよ。モザイクかけても黒の主張が強すぎて見えちゃうのよ。余計に卑猥に見えちゃうのよ。いや、卑猥じゃなくてばっちい? どっちでも大差ない。やめてほしい。なにを想像させるんだ。


「ぷちちゃんたちと一緒になにするか、考えてみよっか」

「あ、それで思い出した」


 ツバキの提案にさっそく、春灯ちゃんから教えてもらったことを伝える。

 ぷちたちが最近熱中している遊び。

 理華が教えてくれたとおり、ぷちたちが楽しむのが第一だ。

 たしか、そんなふうにいっていた。

 だったら、いろいろ教えてもらうのはどうだろう。

 温めていたアイディアをツバキと話しあう。こういう遊びになると岡田の閃きは留まるところを知らなすぎて、ますます手に負えなくなるけれど、ちょうどいい。

 そういう話し合いを私はしていたい。

 理華はきっと、ちがう。

 困っている人を見かけたら、絶対に関わろうとする。気づけばとんでもない人脈を築いている。素直にすごいと思う、けど。そこまでせずにはいられない理華の衝動の正体を、私は知らない。

 すごく近しいものを春灯ちゃんは持っている。

 理華は春灯ちゃんの近しさに惹かれているようにみえる。

 だから心配なんだ。

 出会った頃から、ふとしたときに春灯ちゃんにつらさを見た。

 それはとうとう無視できないくらい膨れ上がって、休みが必要だったことがわかった。

 理華も、そうなるんじゃないか。

 既にかなりの無茶をしているんじゃないか。

 ヒーローなんかいらない。

 いなくていい。

 大勢で、ヒーローがいなくてもいい世の中に向かっていけたらいい。

 お姉ちゃんみたいにいなくなってしまったら、つらいよ。

 七十七億ものたくさんいすぎる人の中で、せっかく出会って、ともだちになれたひとりとひとりがさ? たったひとりになるなんて、そんなの悲しすぎるよ。

 春灯ちゃんだってもう、無理しなくていいと願っているくらいなんだ。

 なのに、止められない。

 岡田の言うとおりだ。

 やめて。変わって。それで済むことなんて、ないんだ。

 そのしわ寄せは、いつだって弱い人たちへと向かっていくんだ。

 そこを止めることができたらと願って、お姉ちゃんは精いっぱいのことをした。

 でも利用する人がいる。事故だろうと故意だろうと、お姉ちゃんは死んでしまった。お姉ちゃんが守ろうとした人たちと一緒に。殺されてしまった。

 うんざりなんだ。そういうの。

 戦いたい人たちだけごそっと集めて、よそへやれたらいいのに。命令する人たち集めて、ハンガーゲームか、エイリアンVSプレデターみたいな場所に送っちゃえたらいいのに。

 そんな風にはならない。なるべきでもない。

 同じ穴の狢になってちゃ、そういうのは延々と終わらないんだ。

 八葉先輩たちは、ぶん殴りにいくという。

 殴り込みだ。

 スバルはそういうノリが大好きすぎるから、キサブロウと一緒に一年生で海外に行けて、暴れられそうなメンバーを集めにかかっている。

 詩保はそもそも、そういう世界で生きているワトソンにくっついていくつもりで熱心にトレーニングを受けている。

 きっと戦いになる。

 いやだな。

 お姉ちゃんが支えてくれた、私の癒やしの力はなんのために使えるんだろう。

 わからない。

 正直、考えたくもない。

 だれも傷つかずに済めばいい。使わずに済む。遊んでいたら転んだ膝を手当てするくらいでいい。

 理華が春灯ちゃんの好きな映画の台詞を引用して、こんなことを言ってくる。

 大いなる力には大いなる責任が伴う。

 そんなの重たすぎて、無理だよ。

 じゃあ得た力のぶんだけ、なんでもかんでも背負い込まなきゃいけないの?

 春灯ちゃんみたいに潰れてしまったらどうするの?

 どれほど休んでも、春灯ちゃんのつらさはなかったことにはならない。

 他の人でも一緒だ。

 なのに傷つきあう場所へ力を携えた人たちが集まって、さらに傷を増やされたら?

 たまったものじゃない。

 例えは悪いだろうけど、掃除なんてしらないおとなたちがよってたかってゴミを増やしていっては、私に向かって「じゃ、後片づけよろしく」って言ってくるような感じ。おとなたちは漏れなく、ゴミの匂いがついたり、ゴミの中に入っている危険物で怪我をしたり、トラウマを抱えたりしているんだ。

 やめて? ってなる。

 しかも実際にはよりひどくてむごいやり方で過ごしているんだ。

 行かずに済ませたい。

 なのにきっと、理華は行っちゃうんだ。

 お姉ちゃんのように、私を置いてでも。

 ちっぽけなひとりなんていない。

 理華が旅立つなら、私はどうしたいのか。

 確かめるまでもないから、いやなんだ。

 ヒーローなんか、いらない。

 お姉ちゃんを、そしてお姉ちゃんが守りたい人を守れる力がほしい?

 それだけじゃ、ぜんぜん足りない。

 チームがいる。ぜったいに。

 警察だって、消防隊だって、救急隊だってそう。病院にはたくさんの人が勤めているもの。

 ひとりじゃだめだ。ひとりとひとりのままじゃ、だめなんだ。ぜったいに。


 ◆


 八葉先輩たちなら絶対に放課後も話しあうに決まっていると踏んで、首を突っ込んだ。

 さて、立沢理華の感想は?

 行かなくてよかったなー。

 ビルの爆破に殺人事件絡み。私たちのカバーできる範囲を大幅に超えている。仮に教団のサポートを受けられるとしても、すべきでないこと、安全確保に必要なことさえ打ち出せない。

 先輩の言うとおり、待っていればよかった。

 これもいい経験だ。

 なにかと無茶をしたし、いろんな体験をしてきた先輩たちだ。けれど、だれひとりとして今回の集団ほど危険な連中を相手に対応する訓練なんか受けてない。

 当然だ。かなり専門性の高い分野だ。プロが集まっても被害者が出かねない。

 隔離世の力を得て、どれほど気が大きくなろうとも?

 私たちはとどのつまり、高校生だ。未成年の。

 戦えても邪まで。隔離世まで。

 現世で人を相手に力を振るう、なんてところまで踏みこんだトレーニングはないし?

 あったらあったで、揉めそうだ。それもう警察学校みたいになってない?

 結局なにをどこまでやるか。

 私たちに実現可能なラインはどこか。

 私たちはどこまでできるのか。

 このみっつの問いの答えが、人によっててんでちがうから、議論にならないのだ。

 先輩は殴るし技術だなんだを盗むという。けれど別の先輩は警察に差し出せるくらいするべきだと訴え、さらに別の先輩は抵抗されるだろうから反撃できないくらいボコボコにすることも視野に入れるべきだという。

 血の気が多い。

 実のところ、浮き足立っているだけとも言える。

 悲しいかな、恥ずかしいくらい舞い上がっているし、恐れてもいる。

 だけど、当たり前だ。

 高校生なんだもの。

 これは心身が万全な状態にあり、尚且つ極めて高いレベルの訓練を受け、実践的経験が豊富な大人たちチームで挑む仕事だ。

 比較して私たちができるレベルはなにか。きちんと設定するべきだ。被害の度合いもなにもかも、自分たちで引き受けられる範囲を決めるべきだ。

 こどもだから、ではない。

 人が目的を達成しようとするのなら、そこまで詰めて行動するというだけの話。

 そして計画を練るべく、度合いを定めると?

 大きくなった気では受け入れがたい事実と向きあうことになる。

 こっそり盗むまではいい。むしろ、徹底して盗むことだけに集中するべきだ。

 ビルを連続で爆破して、鮮やかに国外逃亡を決める連中が相手だ。おまけに大勢を殺し、事件現場を演出する奴らが集団にいる。となれば、現実でやり合う時点で被害が出る可能性が非常に高いため、既に失敗しているといえる。

 気づかれずに盗む。

 注力するのは、ただそれだけ。

 殴るのはなし。顔を見るのも、相手に気づかれずにこっそりと。

 現状における私の結論は、そこまで。

 逮捕だなんだは教団に丸投げする。実戦部隊がいるのだから。そもそも現地の警察に協力を仰げるのなら、それが一番いいまである。

 推測が正しいのなら? 相手は悪党だ。しかも極めて悪質で残忍な連中だ。

 危ういからこそ、きちんと枠組みを決めて行動を徹底できなければ? 危うい。

 行動を制限し、洗練させ、余白を増やす。でなければ対応できる余力がない。

 想定外の事態を想定しぬいて備える? いや。知らないよりは知っていたほうがいいけれど、それだとあまりに情報量が多すぎる。専門家が集まっているのならいいけれど、私たちのような学生集団には正直きつい。無理だ。経験がない。経験のない知識は、実感を伴わないから誤りを生む。

 そのため、むしろ相手の選択肢を狭めるよう誘導したほうがいい。

 ではどうするか。

 八葉先輩がエース。彼の盗みが成功するためのチームが必要だ。

 逆にいえば全員で海外にわざわざ行く必要性はない。


『理華が因果応報の術を使いたいのでなければ?』


 ええ、そう。

 私さえ、行かずに済む。

 その点では八葉先輩さえ、気が大きくなっていたのだろう。

 意欲はある。けれど、見た目には相手が相手の行いの報いを受けるだけだが、その術を使うのはやはり、どこまでいっても私なのだ。

 聖歌の願いに寄り添える自分ではいられなくなる。

 欺瞞はなしだ。

 そうなれば?

 盗みに徹底したチーム結成が目的となる。

 ますますもって、私が関わる? って気持ちになる。

 そこまでわかっただけでも収穫があったと言えなくもない。

 おかげさまでせっせと調べた情報と、その労力の矛先を見失って最悪の気分だ。

 私は知りたい。

 どんなヤツが、どんな顔で、いまを過ごしているのか。

 そいつはいったい、夜に、どんな気持ちで寝るのか。

 一日の食卓で、口にする食べ物の味を感じるのかどうか。

 罪悪感はないのか。

 どんな人生を過ごしてきたのか。

 どんな目的があって行動しているのか。


『それは――……』


 いい。言わなくて。

 商材を思い浮かべれば、ある程度の見当がついてしまう。

 最も気にくわない、くそったれな背景を連想する。パターンはあるけど、似たり寄ったり。

 めずらしい話じゃない。

 夫が妻に「夫婦だから」とセックスを迫る。合意が得られないのに無理矢理行為に及べばレイプだ。金銭や立場、ほかにもある権力勾配も含めて、妻は意思表示しがたいことが多い。

 そのようにして、搾取される。

 上司が部下に。先輩が後輩に。親は子に。男は女に。

 持つ者が持たざる者を搾取する。

 めずらしい話じゃない。

 いまに始まったことじゃない。

 それが、死ぬほど、最っ高に、気に入らない。

 血が通わない、自分の都合を満たさせるために利用するもの扱い。

 ああ、ほんと。くそったれだ。


『なら、シャワーで流して友に会え。約束していただろう?』


 最近では最高の救いかな。

 このままでは済ませることなどできるはずがない。

 そう息巻く自分を抑えきれないのだから。




 つづく!

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