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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千八百五十五話

 



 和室でぷちたちの見守り係のカナタを覗く。

 リビング組よりも元気な子が多い。あくまでも、今日はだけど。

 そのせいか、畳にうつ伏せに倒れていた。尻尾や背中にぷちたちが四人も乗っかっている。

 みんなしてべちべちとカナタの身体を叩いて「もっとー」とか「根性ねえなあ」とか「お馬さん、だいじょうぶ?」などと声をかけている。他のぷちはというと、迷惑そうに狐耳をテレビに向けて、アニメを見ていた。トトロの猫バスに乗るシーンなのが、また妙に哀愁を誘う。

 よくよく耳を澄ませると、カナタは息を切らしていた。かひゅう、かひゅう、と。明らかに危うい呼吸なんだけど、やっていることといえば単純にぷちたち相手に、あの手この手で遊びを持ちかけて漏れなく振り回されて撃沈したくらいだろう。

 わかる。

 私もリビングでおんなじ状態だった!


「カナタ、生きてる?」

「――……かろうじて」

「じゃあ手伝ってほしいんだけど」


 鬼か。たしかにそう、呼吸でカナタはささやいた。

 でもね? 仕方ないのさ。

 ぷちたちの元気は有り余っているんだから。


「ほらほら、起きて」


 手を叩いて軽く音を立てて促す。

 ぷちたちが乗っかったままで重たいのか、あるいは落ちないように気にしているのか、あるいは察して降りてもらいたいのか。とにかくカナタはゆっくりと、お尻をあげた。そして私とおんなじ、猫の背伸びのポーズを崩したごめん寝ポーズを取る。ちなみに、ぷちはだれひとりとして降りませんでした。残念!


「なあにかなあ?」


 ゆるいなあ。声が。

 なるべく明るい声をだそうとしている無理が、露骨に出てるよ。声色に。

 そういうノリでぷちたちと話していたのかな。

 だけど私やお母さん、お父さんと話すカナタをぷちたちは全員みている。知っているから、カナタがぷちたちを前に、お兄さんっぽくしようとしている姿勢はバレてるよ? あんまり意味ないんじゃないかなあ。そういうの。

 それするくらいなら、もっと楽しいことすればいいのに。

 なんて、いけないなあ。

 傍目八目。ついつい身近なカナタを鏡やたたき台にして、私の不満や欲を投げつけちゃう。

 堪えたくても、地味に時間をかけて、なかなか立たないカナタにイラッときてさ?

 ほんともう。

 無茶苦茶やで。

 こどもができたら、こどもと一緒に親年齢を重ねていくみたいな話を聞く。

 私はまだぜろちゃい。ばぶちゃんだ。カナタも加わろうとすると? 私とおんなじ、ぜろちゃいだ。ふたりしてばぶちゃんやってる。だけど高校生の自分ももちろんいるから、いちいち比べては疲れるし?

 この未熟まみれの時間を持てあまし続けている。

 ほんというとね?

 呟きアプリにさ。ぷちたちと生放送で出演してから、もうやまのようにリプが飛んできてる。あれはこうしたほうがいい、これはどうしてますか? そういうところダメですよ、みたいなの。なのでもはや見てない。

 頭がいっぱいで悩みと考えがつきなくてしんどさの極値にあったとき、最初に浮かんだのは「うっせ」で、自制して読んではみたものの「やっぱりうっせ」となった。遠すぎる距離感で画面越しにダメ出しと指示なんかされても。

 それは学校のグループメッセージや、みんなと会っているときにも起こりがち。生徒会メンバーやクラスメイトにもなると距離感が近いのと、近親者に子育て中の人がいるのとで、いちいちあれこれ言わずにいてくれる。でもね。だれもかれもがそういうわけにはいかない。

 そりゃあそう。

 こどもがいても、みんなそれぞれに特性がある。ぷちにだって!

 だから千差万別。

 子育てって単語はひとくくりにするには便利すぎるけど、くくられる側の事情はお構いなしに使えてしまう。だから便利さっていうのは、あくまでも単語を使う人にとってだけのもの。子育てを便利に使いたい人って、どういう人だろうね?

 おっと。これは棘。

 たださ? おなじことばがあっても、使いようじゃない? さらにいえば、だれがどういう感覚でとらえているか、統一されているものでもないでしょ?

 だから実のところ、特定のことばが一部の人を強く攻撃してしまうとしても、それを世界中の人がみんな承知しているかっていったら? もちろんちがう。そもそも言語がやまほどあるのだし。国ひとつとっても、生活環境はみんなちがうし? かなり無理がある。

 それでも「なにをしゃべれるかが知性で、なにをしゃべらないかが品性」っていう姿勢はあるじゃない? お笑い芸人さんの発言だそうだ。

 生きて交流し、行動して、先人に真似び、学んで知識を得ていく。話す引き出しがどんどん増えていく。そうやってしゃべれることが増えていくから、知性。でもじゃあ、知っていくことをなんでもしゃべるかっていったら、それじゃ品がない。交流していくなかで、人の話や打ち明け話に愚痴なんかも聞くことになるけれど、それを当人がいない場所でべらべら話すのなんかは特に品性がない。相手がいやがること、聞きたくないことを「自分は話すべきだ」として、べらべらしゃべっていたら? やっぱりそれも、品がない。

 知性と品性を兼ね揃えたとき、教養のある人になっていく――……みたいな話だった。

 テレビ雑誌の映画のコラムかなにかだったと思う。検索したら見つかるはずだよ?

 そういうところに立ち返るかどうかも、結局は人によるんだけど。

 いまの考え方に対する態度も選択も、もちろん、人の数だけあるのだし。時と場合によって、同じ人でも変わる可能性は大いにあるのだし?

 私は学びたいと思うけど、別のだれかが「は? 知らんし」って言われても「それはそやな」ってだけの話だ。共有できる人のほうが話しやすいかっていったら、また話も別だしさ。

 自分はどうかな。相手はどうかな。

 等しく保たれた均衡のなかで、一緒に考えられるのがいいね。

 だけど指示にはないんだ。ダメ出しにもさ。一緒に考える姿勢は別にある。だから指示やダメ出しで終わるリプライ欄は地獄。それにだれと一緒に考えたいかは本人が決めるよなあ、とも思うので。

 だれかが困っているとき、声かけに困るんだよね。

 いいかな。自分でって。不安になるんだ。

 ややこしいね?

 こんな感じで言えないことが積み重なっていくとき、自分が相談したいことも含まれて、しかもフラストレーションがたまっていくと?

 いらいらしちゃう。

 無意識に八つ当たりモードになっていく。

 気持ちが参ると、ますますひどくなる。

 そんな自分を抑えようとすると? どんどん疲れていく。

 棘まみれになるし、身体が自分への敵意で串刺しにもなるよ。

 それじゃ生きていけないし、大好きな人たちと居ることができないからね?

 ゆっくり引っこ抜く。

 とげとげしいときに、気持ちを刺激される人を相手に定義の確認は地雷になりかねない。

 なんでこういう風に思ってくれないの? とか、どうしてもっと私に歩みよってくれないのかなあ! とか、苛立ち地雷がそこら中に隠れてる。しかも怒るほど、疲れるほど、自分のことが意識から遠ざかって、目の前の対象にぶつけたくなる。夢中になってしまう。

 ふとした瞬間にギターを渡されたら、私は思いきり床にたたきつけていたにちがいない。

 仮にそうなるまでの猶予が一ヵ月、いまの状態が続いたら? だとしても、関係ないな。

 そうなる秒読みが始まっている時点で「助けて!」ってサインがびかびか光り輝いてるからさ。

 無理するなって話!

 さてと。いい加減、提案に移ろう。


「実はさ」


 庭にコースを作ろうと考えていることを説明する。

 懸念も。挑戦も。

 続々とぷちたちが集まってきて「なになに?」って興味を持ち始めるから、私は金色でうちの模型をざっくりと作って、うちの敷地に赤く染めた金色でコースをいくつか建ててみせた。青く染めた金色を金魚マシンに見立てて、コースを走らせてみると「おー!」と、ぷちたちから歓声があがる。

 ただ、全員じゃない。


「ママ、もっと広くならない?」

「もっとカーブ多めがいい! 限界を攻めたい!」

「このぐるぐる、増やせない?」


 案の定、注文が入る。

 他にもね?


「あの。道、きまってないのがいい」

「好きなとこ、走りたい」

「むしろコースいじってみたい」


 次々と注文が入る。

 ちょっと前の私なら、さて自分はどうしようかと悩んだところだろう。

 焦るな焦るな。どうどうどう。


「じゃあ、みんな、もっと教えて? どういう風にしたい?」


 釣り糸を垂らす。感覚的にはね。

 私がやるんじゃない。コースを作りたい子にぜんぶ任せちゃうわけでもない。

 ただ、みんなの意欲の芽がにょきにょき育つのを焦らず待つ。

 意見が増えるほど、そしてどういうのがいいのかひとりひとりの望みが見えてくるほど、いい。

 ひととおりまとまってきたり「そろそろやりたい!」って子が増えてきたら?

 カナタに隔離世に飛ばしてもらって、ぷちたちのコース作りを見守るのだ。


『そんな風にうまくいくかあ?』


 カナタからお姉ちゃんの声がする。

 彼に宿る御霊の声として、語りかけてくるんだ。

 私の心の声はどうやって拾っているのかな!?

 野暮は言わないけどさ。

 まあまあ。いいんだよ。別に、今日うまくいかなくても。

 私が焦って完成させなきゃってことじゃない。

 ぷちたちが遊びたい環境の話だからさ?

 一緒にやっていけばいい。なんならお任せして補助に回れたら最高かな。苦手な子や控えめな子を見れるから。

 ついでにいえば、失敗していいんだ。いくらでも作れるし、作り直しができるんだから。

 お姉ちゃんの遊ぶサンドボックスゲームだって、最初の頃ほど、よく破壊されがちなんでしょ?


『――……まあ、なあ』


 いいのいいの。

 それくらいで。

 雑にしていいとか、壊れてもみすぼらしくてもいいっていう意味じゃなくてね?

 隔離世なら、場所の制限なんてないに等しいんだもの。

 広げていけばいいんだよ。いくらでも。

 さすがに侍隊の人に見つかって叱られるようじゃ困るけど!

 そうなったら、また次の手を考えるだけさ。

 世界中にたくさんのレースのコースがあるでしょ? しかもレースひとつとっても、いろんな乗り物のいろんな指定があるじゃない?

 だったら限定して執着するなんてもったいないでしょ!

 いろいろあるんだからさ!


「ねえママ、ふしぎ雲みたいなの、他にもつくれる?」

「もちろん! どういうのがほしい?」


 質問には気前よく答えよう。

 ぷちたちが化け術で作れそうだと思えるのなら、任せてみるのもいい。

 みんなが持てる球までひったくって、私が抱え込んでいたら? そりゃあ、大変になるばかりだ。理屈ではわかるのに、なかなかうまくやれない。やってもいいのかどうか悩むこともしばしばある。

 焦るな。急ぐな。

 自分をなだめていこう。

 あーる・いーず・うぇーる!

 遊びから始めよう。

 だいじょぶだいじょぶー!


 ◆


 ちっともだいじょうぶじゃない!

 隔離世に移動して、カナタと私とふたりでせっせとコースを作る間も、ぷちたちは全員で議論の真っ最中。さっき区切りがついたんとちがうんか? ねえ!

 お試しのコースの素材をいっぱい用意して、走り心地を試したいというし? ぷちたちがやるより、私とカナタが作ったほうがいいものできるでしょってキレられました。

 あれ?

 こんなはずじゃあなかったんだけどな!?


『いざマシンで走るとなると、いろいろ欲がでてきたんだろ』


 そうなのかも。

 私は庭でって言ったけど、隔離世ならおうちの中も自由に走りたくない? と言いだす子が出てきてさ? 金魚マシンごとちっちゃくなる装置、できたら楽しそうじゃない? とか。動画でみた模型のジェットコースターのカメラで庭や家を走るやつが面白かったから、シャワーやお風呂を使ってなにか仕掛けはできないかな、とか。

 アイディアが隔離世に来て、どんどん沸いてきたようだ。

 それはいい。

 それはいいんだけど。

 ずっと話していたら、すぐに夕方になっちゃうぞ?

 試さないとわからないことがたくさんあるんじゃないかな?

 充実させるのは、ちょっとずつでいいんじゃない?

 ほら。あんまり考えると、そこで元気を使い切って満足しちゃうよ?


『いやあ。反面教師だな! あっはっは!』


 お姉ちゃんめ!

 そのとおりだよ!


「俺たち、なにやってるのかなあ」


 私のだした金魚マシンを、ふたりで用意したコースのうえで滑らせている。タイヤを装着させていて、コースの路面を転がるたびにごろごろ音がする。

 それを虚無顔でやってるカナタはまるで、受験勉強で頭が沸騰して闇落ちしたあまり、おもちゃのくるまで遊ぶ人のよう。

 どんなだよ。

 悲惨だよ?

 そういうことじゃないんだよ。


「ま、まあまあ」


 助けを求められるまで、なるべく口だししたくない。

 舵取りを私がしちゃうの、なんだかすっごくもったいない。

 私なら、と。思い浮かぶことは、私の選択。ぷちたちに割って入ることじゃないぞ?

 どうどうどう。

 夢中になっているんだから、それでいいじゃん。

 飽きそうになっていたり、どうしていいのかわからなくなったらでいい。


『カナタは辛抱が足りないな?』


 あ、あはは。

 お姉ちゃんの声はいま、カナタには聞こえていないようだ。

 私にだけ通じている。


『ようやく感覚が戻ってきた兆しだろ。カナタには強引に届けないと繋がらないがな。お前はそもそも聞こえるヤツなんだ』


 うれしいような、慢心するなと戒めておかなきゃいけないような。

 複雑だなあ。御霊の声が聞こえる力。

 仮にいままで失っていて、ようやく戻ってきたというのなら?

 心に突き刺しまくっていた自己嫌悪の刀が原因として浮かぶ。

 じゃあ、その刀が生まれる原因は?

 私の日頃の心構え。

 ささやかなものの、やまのような積み重ねでできている捉え方次第。

 あとはストレスとか、フラストレーションかな。

 それよりも!

 辛抱が足りないとは思うけど、まだまだカナタには遠いんだろうね?

 ぷちたちのこと。


『こいつの中でいまも成長中なのに。尻尾から出てきて、お前に頼るようなら典型的なダメ男決定だな』


 どうなるかなあ。

 学んでいくこと。一緒に考えていくこと。

 自分には知らないことがあるって忘れないこと。できないことがあるって思い出せること。

 なんでも完璧にやる必要はないし、できないって覚えていること。

 心構えがいくつも浮かぶ。

 ただし、どれもまるで宣伝か選挙のキャッチコピーみたいで、具体的じゃない。

 必要な変化を、みたいなコピーを思い浮かべる。きっとめちゃくちゃ悪いコピーだ。だれにとって必要なのかが見えないし、変化が具体的に何を指すのかが明示されていないのに変化と書かれても意味がわからないもの。

 すべての人に最良を、みたいなのもそう。品質ひとつとっても、基準は明確じゃないし、すべての人にとって統一されているわけじゃない。業界にとっての基準を、外部の人はまるで知らないなんてこともざらにある。知っている必要があるかどうかの話もあるし?

 きりがない!

 誠実に全体像を理解しようと情報を記述すると、どうしたって一定の量になる。

 だけどキャッチコピーは長いものじゃない、むしろ簡潔にずばっと斬る短いものだというイメージだ。心構えに浮かべたことばたちも、私の実感と結びついていたとして、そのままカナタに話して伝わるかっていうと別。時と場合による状況に適するかっていうと、無理だよね。コピーみたいな伝え方じゃあさ。

 現代じゃむしろ、お金稼ぎや客寄せに利用される道具の筆頭格じゃないかな?

 だれかに対する評価や判断も似てる。

 解決したい目的があって、手段がずれているか、足りないか、逆にやりすぎているのなら?

 ひとつずつ調整していくまで。

 できることには限りがあるし、自分に余裕があるとも限らないから、対話ができる相手がいいし、おんぶにだっこな相手だと負担に心が潰れてしまいかねない。

 お姉ちゃんの指摘するだめな人タイプは後者。女性に依存労働をまるごと押しつけて、自分はたまに申し訳程度のことをするか、あるいはろくにしない。自分の親もそうだったから、自分が親になってもそうだった! みたいなパターンもあるそうだし? だれもかれもがそうなるというのは暴論だとも思う。

 教育と教えること、居ること、育てることについてろくに教わってない人のほうが割合として多いまま放置されるなら? だめな人タイプの割合はなかなか減らないと思うし? それは地味に恋愛でも結婚でも、出産と育児にも関わってくるんだろうね?

 そういうのを教えるのが性教育っていうけどね。

 私はろくに教わってない。

 性行為と避妊についてだけじゃないんだよね。人の権利、こどもの権利など、生きるうえで必要な知識の中に、一部として存在するもの。順序が逆だ。本来なら、そういうもの。

 ましてカナタはシュウさんにつらく当たられながら生活してたし、ソウイチさんがカバーできる範囲には限界がある。なので正直、申し訳ないけど、不安はある。


『とても強い懸念がある、だろ?』


 私にもあるんだけどね。


『庇っているが、実際いま、そんな余裕があるのか?』


 お姉ちゃんは鋭い。

 私を貫く刀の何振りかは、お姉ちゃんの指摘に繋がるものだ。

 だからカナタの振る舞いに不安を覚えると、私の心は棘まみれになる。

 ほしいのは相棒であり、仲間であって、お客さまじゃない。

 お互いにそうでありたい。

 三つ指ついて尽くすなんて、ないない! そんな都合のいい話!

 低予算冒険バラエティーで勇者が天女に「いいから脱げ」って言って平手を食らい、仲間たちからバッシングを受けるシーンがあった。そのとき、ホクロが目立つ魔法使いが「それ言ってどうにかなるの、殿様くらいのもんだぜ」みたいなことを言ってなかったっけ?

 まさに、そのノリ。

 働いてるからうんぬん。男が稼ぐほうが結局、いまの日本だと生涯賃金が高いからうんぬん。

 どうでもいいんだよ。そんなのさ。

 なんなら山のように反撃のことばが浮かぶんじゃないかな? 私よりも、当事者の人たちのほうが。現代で四十から五十代の男女の収入分布に露骨に出る格差は堂なのか、とかね。さも女性に問題があるかのように語る文脈を無邪気に振りかざす時点で、どうかしてるよ。

 そういう憤りさえ、心に刺さる刀の一振り。

 依存労働の話は完全に別。だけど、そこに気づけるか。そもそも疲れて参っているときでも、きちんと相棒と肩を並べて行動できるか。現状ではかなり厳しいようだ。離婚する女性とこどもにとっての、父親がどういう存在か。統計をとったら、かなり悲惨な内容になるかもしれない。

 そんな話を少女漫画で読んでもなあ、という気はする。

 恋愛ドラマに見てもなあ、という気もね。

 ただ、あまりに乖離したこの状況に心が悲鳴をあげているのも事実だ。

 ぷちたちがすくすくと元気に、現世で活動するほど。

 それが当たり前になっていくほど、隠しきれなくなる。

 私の心を貫く刀の数は。

 なのに刀を手にした帯刀男子さまは、迷わず私を刺すのだろう。

 どうか下ろしてと願う。

 いまはまだ、それで精いっぱい。

 私自身が帯刀男子さまとなって、彼の振るう刀の切っ先をカナタに向けかねないから。

 いまはまだ、これが精いっぱい。

 折れる折れないの二択だと、心はどんどん摩耗するばかりだ。

 折れないなら手入れする。折れたら直すし、どうにかなる。

 どっちだろうと問題ないようにしてかなきゃ、とてもじゃないけど身も心ももたない。

 それじゃぷちたちと遊ぶなんて、到底できやしないからね?

 居るのがつらいばかりになっちゃうからさ。

 どうか、刀を下ろして。帯刀男子さま。

 ゆくゆくは鞘に収めて。穏やかな私になるのだ。




 つづく!

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