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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千八百五十四話

 



 朝、目覚めて顔にへばりつくユメを引きはがしながら思う。

 ゆうべ、早まらなくてよかった。

 夜に出かけて、もしも万が一そういう流れになったら? 今ごろ私はどこで目覚めてたのか。

 加えて、そんなの全部まるごと私の妄想に過ぎなかったら?

 生き恥! 恥ずかしすぎる……っ!

 教訓がゼロってわけでもない。

 人は心が参ると判断力が落ちる。脆さのままにひと肌を求めることさえある。だれかやなにかで穴埋めしたくなることさえ、ね。

 そしてゆうべの私は? 落ちてたね。判断力が。他にもいろいろ。たとえば、ガード!

 人にはいろいろ起こりえる。そりゃあ、そう。

 みんなが金色雲に集まっているから、私は久々にベッドで寝たはず。

 なのに漏れなく全員が私の身の回りにみっちり集まってすやすや寝ていて、乗せる相手を失った金色雲が空しくいくつも浮かんでいる。

 なんでやねん……っ!

 なんて思うだけしょうがない。

 ユメを頭の横に寝かせて、目に見える限りの子たちの寝顔をたしかめる。

 うなされている子はいない。けど、たまに眉間に皺を寄せる子が目立つ。

 気にしすぎかな。

 どうだろ。


「ママのそばが一番」


 呟いて、深呼吸をした。

 身体の節々が痛い。腰回りは特に。

 私の休息は今回の事態と関係なく、夏まで続きそうだ。だけど学校の宝島滞在は目処をつけて終わりになるんじゃないかな。遊園地攻略がひとまず済んだのだから。宝島でできるカリキュラムに区切りがつき次第が目安になりそう。

 男の子とわんちゃんたちはどうなるだろう。宝島で彼から事情を尋ね、もしも問題を抱えているのなら? 協力して、解決を目指す流れになるだろう。

 私はっていうと、診察の結果を聞きに行く日がそろそろ近い。

 夏休みに突入したら?

 さほどいまと変わらないかな。現状維持。ぷちたちと過ごしてね。

 仕事はしなきゃ。

 カナタとも、一回しっかり話さないとなあ。そのためには何回かに分けて、根回しするように土台の話もしておかないと。トシさんの話もぽんと言ったら「え!?」ってなるしなあ。ただでさえカナタはトシさんのこと、意識してるんだから。

 ゆうべの一件でわかった私の心のしんどいところも、弱っているところも、別に分けて真っ向から考えておかないと。脆さや弱さをちゃんとケアできなきゃ、どうなることか!

 隙だらけになってるんだろうなあ。

 ふらふらだから、支えがほしい。

 人によって、状況によって、自分じゃどうにもならない環境はざらにある。

 私はどうかな。

 たくさんの人の顔が浮かぶぞ?

 つい一夜の遊びに、なんてするまでもなく。頼るまでもなく!

 冷静に考えて、やまほどあるぞ? 支えが。

 それはいままでずっと、私が大事にしてこなかった縁ばかり。

 まさしく過剰な手段でごまかそうとしていた。

 勘違いしかねない状況と要素がやまほどつまっていたゆうべに!

 私が読んでた漫画じゃ? 待ってました! その手のシーンの到来ですね!? ふっふぅ! と盛りあがる、いわばフリの流れだった。

 それくらいで盛りあがっちゃうんだから。

 どんだけ飢えてるのか。


「――……飢えてるのかな」


 あれ? そういえばなにげないデートさえご無沙汰じゃない?

 箱根に行くみたいなのじゃなく、もっとこう、ふたりで気軽に出かけるとかさ?

 ふたりでなにかをする時間みたいなの。

 なくない?

 おぅ。

 やば、と気づいた瞬間、真横でぷぅと音がした。


「ふおっ」


 くっさ!

 ユメちゃん!? 寝ながら放屁とはやるじゃない!?

 みんながつられておならしないだろうか。

 双子は通じ合うという噂を元にした作品がたくさんあるけど、彼らはおならでさえも通じ合うのだろうか。

 双子イケメン兄弟がいて、ひとりが女の子に囲まれてわーきゃーしているのを見て嫉妬するもうひとりがおならを一発かましたら、連鎖反応おならが発動するのだろうか。

 どうでもいいな! めっちゃおならくさいもの!

 食物繊維すこし多めのメニューにしてみる? トイレはいつも通り、みんなきちんと行ってたけど。そういう話なのかな?

 お母さんに相談してみよう。

 さて! とっとと起きますか!


 ◆


 朝の大騒動からお昼の大騒動までの、ほんのわずかな隙間時間でシオリ先輩から気になる連絡が入った。

 謝肉祭遊園地にまつわる発信がじわじわと増えているそうだ。

 これまでろくに発信されてこなかったのに、今日になって急に。なぜ?

 理由はどう考えても男の子とわんちゃんたちの保護なのでは? 契機として考えられるのは、彼らの実体化なのでは?

 なきゃ困る、なんで行けないの、どうすりゃいいの。

 だいたいこんなお悩みが多い。お怒りの発信も見かける。

 別枠でマドカから来たメッセージによると、カゲくんは胃袋さんの中に飛び込み、その先にある遊園地を目撃したそうだ。麗ちゃんたちが歩いた通路は欲望を食らう暗闇トンネル。その中には数えきれないほどの黒い御珠が並んでいたという。それは調査を担当していた忍びによれば、来訪者たちの欲望を吸い取ってできた、遊園地製の黒い御珠なのだとか。

 危険な物体をやまほど貯蔵できている、ということに驚く。

 だけど無理が祟っていると推測してもいる。男の子もわんちゃんたちも、だいぶ心配になる出で立ちだったもの。

 男の子たちをお風呂に入れて、落ちついた環境で過ごしてもらえたら。もしも彼らの中に、黒い御珠がいまもあるのなら? とつぜん消えてなくなるはずもないから、まああるんだろうけどさ? その処理もしないと。

 いきなり戻したら、現世の来訪者全員に影響を与えることになる。

 さすがにそれはできない。

 邪レベルから、やがては黒い御珠さえも、転化で鎮めることはできないか。

 破壊する、というところまでは来た。討伐はできる。

 だから、その先を模索するぞ?

 いきなり一手で解決する類いの話じゃない。いろんな手段がいる。

 邪を凝縮させた邪を生み出す黒い御珠がいくつも並んでいたとなれば、男の子とわんちゃんたちが危ない。おまけにトンネルを通って吸われた人たちもみんな危険だ。

 アダムのとき、黒い御珠を破壊することで彼は命を失った。私はどこかでそう考えている。

 ユリア先輩が暴走していた入学当初の四月末、大蛇の体内に入って刀を折ったこともある。

 いい手段だなんて、思っていない。

 他にそれしかなかった。このままでいいとは思ってないんだ。

 マドカにはきちんとその意思を伝えた。

 戦闘になったら? たったひとつで都心部の侍隊が総動員! 私たちも協力して、やっとひとつの対処ができるレベル。それが天井知らずと思えるくらいたくさんあったなら?

 まず戦いにならないんじゃないかな。

 待ったなしになってきたね?

 ピザと召喚は有効だった。すくなくとも隔離世にある遊園地という現象を、秘宝の生みだし主と思しき少年と犬たちとして転化することに成功した。

 なんで? それはあとで。

 並び立つ大量の黒い御珠を前に、私たちにできることはないかな。

 身も蓋もないことをいえば、窮地に陥ったら壊すことはできる。ひとつずつ試せるのなら、言うことはない。それがどんなに惨い内容だとしてもね。可能ではある。

 不可能なのは、ひとつでなく大量に出てきた場合だ。

 敵意はきっと、呼び寄せるだろう。

 破滅的な可能性を、いくらでも。

 侍隊や忍びはそうした方向性に対して備えるものだ。ただ、ケアだなんだは仕事じゃない。

 こういうのは、私たち向きだ。

 で、どうやるの? そこは模索中。マドカは「時間をちょうだい」とだけ返してきた。

 宝島に行ってみんなと話したいのはやまやまなんだけど、昨日の今日だからさ。先生たちが口を揃えて「おとなしくしてて」と言ってきてる。

 そんな風に言われても、ぷちたちと一緒に過ごす以上おとなしくもなにもない。

 増援は大歓迎だけど、正直なにかと負担もあるから気楽に受け入れられるわけでもない。

 こりゃ大変だぞ?

 制約が加わるほど、逆にできることが限定されていく。

 その中から始めていくか。

 初心者であることも忘れずに。

 日頃よく歩いている状態で目指す山登りと、学校以外にろくに外に出ないのが一年つづく状態で目指す山登りとだと、同じ初心者でも段階がちがうじゃない?

 料理でも、刀の振るい方でも、そう。

 段階的にやらないとね?

 そして初心者としてやることは?

 簡単なことから。できることの積み重ねで次の段階へと向かっていく。

 穴埋めはなし。

 なかったことにするのも、できたことにするのもなし。

 集中して取り組みたい。

 それがいまは? むり!

 お昼ご飯を用意して、食事を済ませて、後片づけをする。

 そこでもう精魂尽き果てる。世の中の人はどうやって乗りきってるの?

 なぞ。


「ママー、くもだして?」

「金魚がいい!」


 ソファにうつ伏せで突っ伏している私の尻尾や袖をぐいぐいと引っ張ってくる。

 このくらいの催促はかわいいものだ。

 全力疾走のうえで飛びついてくる子もいれば、ソファの背もたれから飛び降りる子もいる。

 だいじょうぶにちがいないと思ってさえいないのかな?

 怪獣じゃないんだぞ? 骨が折れちゃうぞ? めちゃくちゃ痛いんだぞ?

 だれだ。たくさんいたらじゃれ合ううちに力加減を覚えるなんて言ったやつは! なんて苛立つくらい参ってくる。

 空飛ぶ金魚マシンを出したら? 壁に平気でぶつかる。天井を擦ってみたりもする。家具に置かれた置物を倒すこともざらだ。じゃあ庭でやってね、なんて言おうものならどこまでも飛んでいってしまいかねない。

 そしてひとりが乗ると、みんなで乗りたがる。

 そりゃあそう。どうやら金魚マシンで空飛ぶレースをするのは楽しいみたいだ。

 ゴーカートみたいなノリなのかもしれない。

 あれをだすなら? せめて、大きな公園で。

 だけどひと目につく。

 そばによそのこどもがいて「やりたい」って言われたら、どうする?

 私が出す出さないは別として、よその親御さんがどう思うか。

 もー。

 あれだ。どうせマシンを出すなら、レース場があったほうがいい。

 コースがないから、無軌道にあちこち飛んじゃうんだ。

 そう。

 解消する道筋が立てられないのに、解消せずにはいられないから暴れちゃう。

 そういう意味ではフィクションが逃げや許しの機会っていうのも? わかる!

 人生が常に黒や灰色の絵の具で厚塗りしていくような状態だと、悪党をぶっとばす主人公とか、自分の周囲には到底いない理想的な恋愛ものとか、ふわふわ日常が進んでいってほんのささいな問題で悩むけどばっちり解決するハッピーエンドが約束されてるやつとか、だいぶ助かる。

 そういうときほど「こういうのでいいんだよ!」ってなる。

 他にもね。

 刑事や探偵の推理モノは死が付きまとう。海外のものだと、そこに心理が加わる。どれだけ学説に添っているかは私が素人なので知りようもないけどね。

 というかアメリカのドラマとして日本で見られるものって、法廷ものでも刑事ものでもなんでも、心理が絡む。エモさも。制作費の関係か、長寿ならではの現場の態勢のちがいか、ストーリーテリングにも演出にもちがいがあるのかも。いまのところ、アメリカのものが好き。

 日本だけじゃなく韓国のも優勢。イギリスのドラマもすごい。尺が長くて映画みたい。他の国のあらゆるドラマシリーズも、ちょこちょこ世界的な動画配信サービスが流してくれるから、国による違いも見えてくる……かも? タイトルの一本二本じゃ無理かな。

 日本は音楽の演出が大好きな印象があるかな。たまに役者さんの声より圧が強いと感じることさえあるくらい。

 話が逸れてきた。

 ドラマだけじゃなく映画にしても、アニメにしても、そう。小説も、漫画もね。ゲームだって。

 自分の状況によって変わる。人が変わればもっと変わる。

 だから「こういうのでいいんだよ」は、自分の中でも変わっていく。

 現実寄りなのが好きな人もいるし、現実でみるようなしんどさはいっそすべて排除してっていう人もいる。その間も、あるいはそれぞれの先もある。いろんな軸があって、ひと息に語れない。ただ、コンテンツが国境を越えるのが当たり前になっていくほど、マジョリティや空気に影響を受けるところは? あるかもしれないね。

 ビジネスである以上、数字は無視できない。数字を意識して特化していくほど、むしろきっかけ次第でぐっと傾く。

 ビジネスの傾向がマジョリティを意識するのなら?

 逃げや許しの機会としての依存先に影響を与えることに対して、心理的にきついって人もいるかも。依存の度合い次第かな。場合によっては多いかもしれない。

 攻殻機動隊のアニメの第一話のセリフみたいだね。

 世の中に不満があるなら自分を変えろ。それがいやなら耳と目を閉じ口をつぐんで、孤独に暮らせ。それもいやなら、だっけ?

 それでも形を変えて、現実でなし得ない魅力はいつの世にもあるのかも。

 葛飾北斎のタコと海女の春画。春画つながりでいうと、ちっちゃな坊主がいろんな人の営みを目撃するシリーズなんていうのもあるみたい。頭が男の人のアレっていう春画もあるそうだよ?

 こっけいで愉快。

 そういう性質のものだったかな。

 時代劇にある三匹が斬るっていうシリーズだと、落語家さん演じる人が春画売りをして、武士や傭兵たちが集まる屋敷に潜入して撹乱に成功してる。男たちが、まあ大はしゃぎ!

 そういうところもこっけいで愉快。

 他にもいろいろ。

 盛大に流行っていたという、昼に放送していた昔の連続恋愛ドラマだと? ぶっとんだ肉体関係の相関図ができあがるし、そこには血縁さえ絡むこともけっこうあったそう。台詞も尖っていて、話題になったそうだよ?

 年齢制限が加わるゲームだと? 戦争の戦場を再現したフィールドで戦ったり、バトルロワイヤルを疑似体験できたり、ゾンビを相手に銃を乱射したりできるそう。

 恋愛ゲームはもっと近い気がするなあ。

 アダルトな領域だと? VRを絡めて、いろんな試みが進んでない? 体験会みたいなの、なかったっけ。

 そこから逆輸入する形で、冒険をするアクションゲームに体感型のVRが導入されたら? それはそれで愉快なのでは?

 言語学者が言語から作って物語が生まれたんでしょ?

 宇宙絡みの映画は大好き。深海の映画も、もっと増えたらいいなあ。

 いい加減、心の棘を自覚してもいい頃だ。

 逃げや許しという捉え方は、棘がいっぱいある。

 抜いておこう。

 一部にあるけど、すべてじゃない。

 それが悪いだけ、みたいな文脈も変。

 だれかの心を侵略せずにはいられない、私の心に突き刺さる刀の一振り。

 遊んだりさ?

 楽しんだりさ?

 どきどきしたり、びくびくしたり。

 わくわくしたり、はらはらしたり。

 それでいいんだけどな。

 じゃあ、どうやろうって話からでいいんだけどな。

 お母さんもお父さんも、寝る前にいろんな話をしてくれた。そのどれもが私には楽しくて面白かったし、ふたりが私のために話してくれることがめちゃくちゃうれしかった。

 それでいいんだよなあ。


「「 きいてるー!? 」」

「うわお!?」


 肩のそばにやってきて、左右から狐耳に向かって叫ばれる。

 頭がきんきんするぜ……っ!

 きみたち声が高いの知らんね!? きみたちの叫び声の威力を知らんね!?

 すごいんだからもう! 黒板に爪を立てて引っかくのに匹敵する威力なんだからね!?

 やばいやばい。また思考に飛んでた。


「そ、そうだね。えーっと。いま、考えるね?」


 お尻を上げて、足を曲げる。

 膝から上に垂直の位置にくるようにするのが、ヨガでいう猫の背伸びのポーズ。

 でも、膝を抱え込むようにすると?

 眠気と共に身体中の疲れがじわあと溶け出すような感覚に陥る。


「んー」

「「 んー? 」」


 私の腕のうえにのっかって、ふたりのぷちが真似をする。

 なんだこれ。どういう状況?

 ま、まあいいや。

 金魚。遊び、ゲーム、移動できて身体を動かせるもの。

 金魚とゲームだと金魚すくいが連想できるけど、ぷちたちが逃げる金魚マシンを私が捕まえるとか? 鬼ごっこやん。空飛ぶ鬼ごっこか。悪くないけど、私しんじゃわないかな。疲れすぎて。それか、金魚マシン同士で色鬼をやる? それなら見守っていられる。

 うちの敷地の上空、金色で抜け出せないけど、そこそこ広い空間を仕切って、みんなでやってもらえればいいかな。いやでも目立つなあ。撮影されかねないぞ?

 こう考えると、ドラちゃんの不思議道具はよくできてるなあ。

 いろんな遊びが自由自在にできてたもんなあ。

 競技性が加わると、のびのび自由に動けなくなる。

 それが苦手な子もいるよなあ。

 私自身、そういうタイプだった。

 小学校の体育の時間はいつだって逃げたくて仕方なかったものだ。

 だから避けるっていうのは、私のエゴかな。

 ううん。

 レースじゃなく、コースがあって、そこを走れるだけでもいいのでは?

 雲を浮かべてさ。ぽよんぽよんと跳ねるような性質にして。

 性質は他にも用意してさ? 素材をいっぱい並べて、ぷちたちがどうするか見てみる?

 競わせる必要はないんだ。

 どうしたいのかを探るきっかけが得られれば。

 いや。遊びなんだって。いちいち学びに絡めなきゃだめ?


「「 まだー? 」」

「ううん!」

「「 はやくして!? 」」


 その場で上下に弾みだすふたりに腕がソファと身体に挟まれる。

 泣けちゃうほど痛い。心がどんどんばぶちゃんになっちゃうよ。


「きんぎょ、きんぎょ……」


 閃け! 私の脳細胞!


「――……ううん」


 だめだ。

 雲をだして、ぷちたちの金魚マシンが近づいたら食べちゃうみたいなのしか浮かばない!

 三人で揉めてる間もリビングでゲームをしている子たちが、カートでタイムを競ってる。点滅する箱にぶつかると、アイテムをもらえるんだ。一位に近づくほど、ささやかなものに。逆に最後尾になるほど、ド派手で逆転可能なものに。

 このゲームの再現ならできそうだけど。それじゃレースと変わらないし、コース作りになるし、それはけっこうくたびれるし、時間もかかる。

 壁や家具に金色雲をはっつけて、金魚マシンがぶつかっても大丈夫なようにする?

 狭くない? 外に行きたくならない? 私ならなるなあ。

 金色でなんちゃって銃を作って、サバゲーでもしてみる?

 いや、そっちのほうがうちがしっちゃかめっちゃかになるって!

 顔をあげて、ふたりの顔を見た。


「だしてくれる!?」

「あのね? いっぱい飛びたいの!」


 だめだ。

 はしゃぎてえ。あばれてえ!

 そう書いてあるようにしかみえない笑顔がふたつ、並んでる。

 ふたりが暴れ出したら、他の子も一緒にやるってなる!

 目に見えている――……っ!

 希望は叶えたい。うちが壊れない範囲にしたい。

 だめだめじゃ先に進まないから、庭でコースを作ってみる?

 それかカナタに頼んで、隔離世へ行って、もうちょっと大きな規模のコースにする?

 細々とせこせこ作るのが大変なのであって、大ざっぱでいいならやりようがある。隔離世ならもっとずっと楽だ。後始末も含めてね? ここがかなり重要だ。しかも隔離世なら、いちいち野次馬に撮影されずに済むのもでかい!

 ただ走るだけじゃなんだから、アクロバティックなコースも作ってみるかな。

 ぐるんと回転するようなのとか、コースに接地した状態で走ることでジャンプする仕様にするとか。どんな子でもやってみたら、楽しめるような仕掛けが作れたら?

 案外いけるんじゃない? これ。


「うっし! 我に秘策あり!」

「「 ほんとにい? 」」


 まあまあ。ママに任せたまえよ!

 初挑戦だけどね!




 つづく!

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