表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
1851/2984

第千八百五十一話

 



 ぷちたちが泣きやむ頃には、男の子もわんちゃんたちもみな、ニナ先生たちとビルに入っていた。

 侍隊のみなさんも食事を済ませた人たちから順次、現世に戻っていく。

 シュウさんもそのひとり。佐藤さんと、あねらぎさんは残っているけど、基本的には撤退する流れのようだった。料理班の何人かが教えに来てくれたけど、ビルの瓦礫周辺で消えた人は全員もどってきたようだ。敵意のない男の子とわんちゃんたちを相手に、大人が雁首並べて「なにが目的だ!」なんて詰めていく気もないみたい。

 カゲくんや忍びの人たちも無事に戻ったそう。やっぱりシュウさんは二の矢を用意してたんだ。

 だいぶ落ちついてきたぷちたちに、ピザをみんなで食べてもいいか尋ねると許可が出た。でも一番最初にぷちたちと私で食べたいと願う子がいて、話に来てくれた料理班の子たちにお願いした。

 身体にひっついている子はそのままに、そうでない子は抱き上げて、壮大なテーマパークピザのもとへ。それぞれに食べたいところがあるから、ピザのそばで待っている料理班の子たちと協力しながら切りわける。私も私で、みんなが気にする箇所を漏れなくもらうことにしたら? 紙のお皿が三枚分になった。

 わぁお。

 そうこうしているうちに、生徒会の連絡役を終えたカナタが駆けつけてくる。私に話しかけようとする、まさにそのときにカナタの尻尾から、わーっと一気呵成にカナタのぷちたちが飛び出てきた。みんな、ピザに大興奮だ。

 そのうちの何人かが、私のぷちたちに尋ねる。そこから話が始まっていく。

 徐々に、ゆっくりと、賑やかになっていく。

 その様子を見ながら「もしかすると、私よりもカナタのぷちのほうが外に出るまでの時間が短くなるかも」なんて思い浮かぶ。私のぷちたちに触発される可能性があるかも、なんてね?

 キラリも私も、その頃にはすでに食べ始めていた。自分が気に入っている部分を食べてる! って感じている子の中には、どうどう? って尋ねてくる。尋ねてこないでマイペースに食べてる子もいれば、尋ねないけど気になって仕方ない子も。他にもいろいろあるのだろう。

 名前を呼んで声をかけていく。

 きっとそれがベターな手段。

 だけど簡単にはいかない。私が私が! って子がいるのに私はどうすればいいのかわからないし、お話している間に話をしてもらいたがっている子が涙目になっていったりするし。こういう場面に私、まるで経験がない! それはカナタも同じみたい。生徒会で積極的に話の舵を切るのは小楠ちゃん先輩か、ラビ先輩だもんなあ。わかる!

 なのでキラリが積極的に助けてくれる。他にも料理班のみんなや、ミナトくんたちキラリチームのみんなが助けてくれる。それでも、こども時代をふり返るとよくわかるんだけどさ? 話せればいいやってときもあれば、私じゃなきゃってときもあるじゃない?

 もう大変だ。

 大声をだしたもん勝ち競争になると耳がやられるし、音の威力は心を揺さぶる。

 私の心の、なんと刺激に弱いことか! なんて風には思わない。周囲を見たら、だいたいみんな、私と同じように「く! なんて音圧だ!」って顔をしてるから。

 驚くよなあ。十年ちょっと前は、ぷちたちサイドにいたんだよ? 私たちって。

 入れたら幼稚園か保育園。そして義務教育の小学校に中学校。ほとんど義務教育状態に思える高校。そして、その先へ。

 おとなたちと話すと、みんなだいたい十代未満から十代にかけては、節目節目の連続だという。成長と変化を体感しやすい時期。

 それがどんどんなくなっていくから、大人になると時間の流れがはやく感じるのだそう。節目がなくて、溶けあっていくんだろうね。境目がさ。

 そう話していたトシさんたちはどこかな、と思い立って探すと、ピザゾーンの向かい側でピザを摘まんでいた。侍隊が立ち去ったいま、おとなは私がお願いして集まってくれたスタッフ陣と先生たちくらいだ。

 ピザが気になっていた勢に振る舞われて、どんどん減っていく。

 なので、頭の中できちんと勘定して、全員と接する頃にはあらかたなくなっていた。

 身に染みて体感したのだけど、私からどんどん仕切っちゃったほうがいい。まずは。ちゃんと話を聞いてもらえるという実感を、まだだれも得られてないのに、私がただ待ってというんじゃみんなの心に響かない。

 そういう理解なんか吹き飛ぶくらい、一度わっと声があがると後手に回る。

 無理して食べすぎて吐きそうになっちゃう子。トイレに行きたくなる子。ケンカを始める子。なんだか急に食べたくなくなっちゃう子。自分のより、だれかの食べているものが気になっちゃう子もいれば? そもそもピザそんなに得意じゃなかったって思い悩み始める子まで。

 もー。無茶苦茶だ。

 一度この場を離れるだけで、みんながどんなになっちゃうか見当もつかない。

 なのにトイレは放っておけるはずもない。行っておいでで済まない。キラリやコマチちゃんにお願いできる子もいれば、私じゃなきゃだめって子もいる。

 四苦八苦!

 集まるみんなで当たって、ようやくなんとか食事の時間が終わる。

 私のぷちに触発されてカナタのぷちまで元気になるのは、これまでもよくあった。

 きっとこれから、元気になっていくぞう? 男の子たちが!

 カナタはだいじょうぶかな。

 そもそも分かれてことに当たるものなのかな?

 どうだろ。

 正直みんなをだいぶ当てにしてる。ぷちたち向けの幼稚園も保育園もない。いまはまだ。いっそアマテラスさまにきちんとお願いしたら、ようやくひととき面倒を見てもらえるかもしれない。それこそ、保育園のように。

 ミコさんが宝島に作る予定だというけれど、それもいつになるか。

 ぷちたちに戸籍って、用意できるのかなあ。できたら現世の保育園も選択肢に入るんだろうか。もし仮にうまく通える保育園が見つかったとして、どれくらいの出費になるのかな?

 さくっと検索すると認可保育園で二十五万ちょい、認可外保育園で四十八万くらい。ひとりあたりね? ぷちたちは十人を超える。すると一年で二百五十万、だいぶ背伸びして四百八十万。

 いまを仮に三歳とみるのなら、六歳までの三年間でしょ? 三倍するわけでしょ?

 そして小学校に入ると? 国公立中心で一千万。これが私立になると倍近くに。大学まで通うとなると、全身の毛穴から血が吹き出るくらいの金額に。しかも十人越え!

 どどどどどどどどど、どないする!? 一億超えるやん……っ!

 自分の進路もかかってくる。

 私とカナタで変わってくることも多いのが、いまのこの国の実情。

 直視すると気絶しそうな事実がやまほどある。

 心は曇るし、御珠は汚れてしまうわけ!

 現世では、そう。

 なら、宝島や天国なら?

 どういう選択肢があり得るのかな?

 現世と変わらない負担がのしかかってくるのなら?

 正直、思考停止に陥るよ!

 無理だもの!

 現世でやりくりしなきゃいけないとなれば?

 まずは公的補助を全力で探す。制度を熟知していて、海千山千の相手でもきちんと立ち回れる専門家がアドバイスしてくれると涙が出るほど助かる。ところで役所の人たちみんな、同じくらい把握できているのかな? そこのところ、よくわからない。

 女性蔑視が強い人がいる、というのもこの国の事実のひとつでは。

 そう捉えると、やっぱりアドバイザーは欲しいし? そういう話こそ、学校でしてほしいまである。もしもこどもができたときに備えて、現実的にどんなことをすればいいのかわかるといい。非常識なことや誹謗中傷をする人がいるケアの場、なんてものがもしも存在するのなら? 全力で避けたいし、出会ってしまったときの対応を知りたい。

 怖くてたまらないから。

 だいじょうぶだと思いたい。

 こういう可能性を意識するのが無理すぎて、意識を逸らしていた。逃げていた。

 その間に時は流れる。この子たちは育っていく。

 ぷちたちは人じゃないことにして、式神なのだからとふたをして、そのあたり一切かんがえないっていうのは? 私が許せない。それはなしだろ。いくらなんでも。

 したいことを考える。

 この子たちがいろんな選択肢を選べる状態にする。提供できる限りを。この子たちの選択を増やすことはあっても強いることはせずに、決めてしまうこともせずに。

 それには足りないことばかり。

 そもそも集中するのも至難の業だ。

 いま、ひとりひとりがどういう状態かなんて、わからない。

 カナタやキラリがなにを考え、どう感じているのかわからないように。うちの親やトウヤ、お姉ちゃんが相手でも同じ。体調について、アラートを示すこともない。本人が気づかず我慢していて、私が見落としたままだと、そのまま放置されかねない。

 そりゃあ身体検査が必要だ。

 おとなになったら健康診断があるそうだし?

 節目をきちんと設けておきたい。

 常に気を張る要素を限定できるほうがいい。なんでもかんでも気にしなきゃっていうんじゃ身が持たない。それだと結局、見逃してしまいかねない。

 習慣作りに納得する。

 ぷちたちが自発的に楽しめる仕組みにできたら、もっと助かる。ぷちたちをいかにして巻き込むか。みんなが安心して、意欲を育てながら、私に求められるようにするには、どうやったらいいだろう。

 ここで私に問いたい。うまくいかずに混沌とした状況で、どれだけ「まあ元気だし、そこはいっか」と気を抜けるかどうか。そうして抜いた気持ちのぶんだけ、この子たちの心に寄り添えるだろうか。

 そんな理屈が吹き飛ぶくらいの大騒ぎなんて、いまじゃとっくに日常茶飯事だけど、私はどこまでやれるんだろう。ひとりで、じゃなくて。みんなで。そういう体勢に持っていけるだろうか。

 自信ねえなあ。

 ないのにさ? ひとりに戻る気がして途方に暮れる。

 その先が見えないから、やっぱみんながいる。いまの私には特にそう。

 男の子とわんちゃんたちもそう見えた。

 循環していくといいな。

 一方通行じゃなくてさ。


 ◆


 ぷちたちを誘ってみんなで歌ったり、軽くおしゃべりしたり。

 だけど私自身は男の子たちに話に行くことができなかった。みんな、学校側で一時保護することになったそうだ。理由はいくつかあるけれど、男の子もわんちゃんたちも現世に肉体がなく、隔離世から現世に戻せなかったこと、霜月先生の調査によれば霊子構造が人と異なっていたことが大きい。

 恐らく彼らは集団でひとつの秘宝だ。

 それも本来は御珠のように、物の形をしていたはず。

 それがどういうきっかけによるものか、秘宝を生みだした霊子の持ち主そのものとして呼び出されたそう。転化されたのではないか。可能性があるとしたら、ファリンちゃんの術。

 彼女は疲れ果てていて、今日はまともに情報が聞けそうにない。

 だからみんなまとめて、宝島へ連れていく。

 私はカナタと一緒にうちへと帰った。お互いのぷちたちみんな、はしゃぎ疲れて、大勢の人と会った興奮も手伝って、すっかり寝ている。ただしカナタのぷちは尻尾に戻ったけれど、私のぷちはだめ。尻尾や身体にひっついたまま。剥がそうとすると、顔をしわくちゃにしながら「うんん!」と不機嫌そうに払いのけられる。

 重たいことこの上ないので、金色雲をだして、それに乗っかってふよふよ移動しながら帰った。カナタはバイクを押しての徒歩。先に行っていいよって言っても、一緒がいいみたい。


「会社の人たちは、どうしたんだ?」

「思っていたより大ごとになっちゃったから、ナチュさんが音頭を取ってくれてさ? 先生たちによって現世に戻してもらって、すぐに解散になったよ?」

「そっか」


 何人かをカナタが引き取ろうとしても無理。

 離れない。

 私がいいみたいだ。

 できれば気にしないでもらいたいけど、こればかりはね。

 獣憑きになってなくて、御霊を宿すことなく、別の高校に入った私だったら?

 迷わず「おねがい」って言ってた。それくらいには、重たい。

 こういうときには思っているよりもずっと筋力がついているっぽいぞと感じる。だからって疲れないわけじゃないけどね!

 しがみつく力は強く、服は皺ができるし伸びる。

 わかっているんだから、みんなにひっつかれる前提の服を選ぼう。今度から、徹底して。


「佳村たちの新作はどうだった?」

「よかったよ? いろいろな姿になれるしメイクもいけるっぽいから、利便性が高そう」

「いま、宝石は? 佳村と片瀬に返したのか?」

「ううん。ポケットに入れてある。ちょこちょこ使ってみてってさ」

「そっか」


 なにか迷ってるな?

 カナタさん、話したいことがありそうだ。

 だけど無難な質問ばかりしてないかな。

 こういう感覚って、どうやって育つんだろうね?

 ただいるだけじゃ足りないんだ。たぶん。

 忖度してこそ? どうだろ。


「どうしたの?」

「い、いや。べつに、なんでも」

「うそだあ。聞いておいて、そんなに掘り下げもせずにそっかって終わらせて。間があいても別に気にしないじゃん。話したいことがあるんじゃないの?」


 こういうのが面倒になるくらい疲れることもある。

 好きでもね。大事な人が相手でもそう。

 関係ない。

 疲れはいつだって、容赦ない。

 疲れていたら、なにしてもいいってわけじゃないだけ。

 それでも今日の私は、だいぶくたびれてる。

 だからかつい、声に険があった。

 言い終えてから、深呼吸をする。


「きつくなっちゃった。ごめん。今日のこと?」

「今日のことだけど、ごめん。聞きにくくてもったいぶった」


 カナタもカナタで、足音が既に頼りない。


「今日の、あの……金色から出た男が気になって」


 私の敵意が私を殺そうとした。

 願い求めるほど、痛みを感じて、刺激にたまらず暴れ回った。

 あの瞬間に前後して私を貫いた、私自身の敵意の刃は数知れず。

 そりゃあ、気になるよね。

 どこから切り出したものかってなるよなあ。


「フィーリングじゃ、自己嫌悪の塊ってとこ」

「そりゃあ、手強そうだ」

「カナタも銀色の習得を続けていたら、出てくるかもよ? 女版カナタかぁ、シュウさんとか?」

「兄さんに出てこられたら、根を上げちゃうなあ」


 ふたりで笑う。

 深い意味はない。

 ただ、探り合いの時間なだけ。

 緊張に対する緩和というには、あまりに弱い。


「帰ってから、ちゃんと調べてもいいか?」

「一週間くらい勘弁っていうのが本音だけどね。今日の博打は無茶しすぎたから、必要だってわかってる」


 言いながらも疲れがごまかせなくなってきた。

 首回りに抱きついたユメが傾いて、髪の毛がぐいっと引っ張られる。

 たまんないほど痛くて、ふたりのぷちがしがみつく腕を持ちあげて、ユメを後頭部にきちんとあてがう。

 こういうとき、意味もなく泣けてきそうになる。

 無意味やたらに吠えまくりたくもなる。

 気づかず唸ってさえいたかもしれない。


「手早く済ませるよ」

「ありがと」


 めちゃめちゃ気を遣った声をだすカナタは、なんともいえず物足りなさそうな顔をした。

 本当ならぷちたちを私から離した形で寝かせたいのかも。だけど、剥がせない。移動時に試したらひとりがむずがりだした。お互いにくたびれている。私は特にね。

 なるべく触らないでほしい。触ればきっと、目覚めて大泣き。

 それがどうにもお互いの立ち位置の違いを露骨に示している気がして、たまらない。

 あまりいい気分じゃないってこと。

 お互いにそうだ。

 顔色に露骨に出てる。

 カナタに。たぶん、私にも。

 だからいっそ、笑っちゃった。


「ままならないね?」

「――……そう、だな」

「カナタのぷちがすくすく育ったら、カナタも追いつくんだよ?」

「もちろん、そうなるよな」


 わかってるんだと呟いて、バイクを押し続ける。

 持てあましているなあ。私とカナタとの距離感にいま、ちょうどいい場所が見つからない。

 お互い、この距離感のもどかしさを見ない振りしてる。

 私のぷちたちが出てきてからは特にそうかって?

 そうでもない。

 なんとか過ごせるときもあったんだ。

 ずっといるって決めたらさ?

 これから先、谷へと下っていく場面もある。

 どこまでふたりでチームでいられるだろう。

 問われるポイントにきてるだけ。


「富めるときも、貧しいときも。健やかなるときも、病めるときもって、いうよね」

「結婚式の常套句だな」

「どちらも互いを尊重し、貶めることなく、いちばんの味方でいる。私たちの契約」

「――……したな、去年か」


 だいぶ昔のことみたいだって笑うカナタと一緒に微笑む。


「実際に貧しいとき、病めるとき、尊重するのはむずかしい。貶めず、いちばんの味方でいることも。無理して、それが自分か相手か、こどもか。身近な弱いだれかに向かう人も多い」

「そうなのか?」

「私は、この子たち」


 返事をせずに、カナタはうなずいた。

 うつむく。数歩進んで、空を見あげる。

 昔を思い返しているのかもしれない。シュウさんは、カナタに当たったし? カナタはシュウさんに。言葉にすると短い。でも、ふたりの複雑さを語るには、あまりにも足りない。話者として私は相応しくない。当事者じゃないもの。

 これはお互いにそう。

 だから、ますますやりにくい。


「そう、だな」


 むずかしいよなって、しみじみとこぼす。

 カナタはちゃんと知ってる。


「いちばんつらく苦しいときも、前向きに、味方か」

「そ」

「自分だけがいいんじゃなくて、みんなにとっていい、だよな?」

「うんうん!」

「じゃ、自分を省いちゃだめだな?」

「おっと!」


 こいつは鋭い反撃!


「まだまだなんだなあ」


 私への追撃に移るかと思いきや、へこたれている。

 カナタにはカナタの思うところがある。

 そりゃあ、そうなんだよなあ。

 私は私でいっぱいで、カナタにもカナタにとってのなにかでいっぱいなのかも。

 話をしなきゃ、わからない。


「まだまだでも、今夜は家に向かってる。でしょ?」

「うん。でも、心配したんだ」


 すごく怖かったとか細くささやいて、カナタはバイクを押し続ける。

 サイドカーがついているから、めちゃくちゃ重たいはず。

 どうやって押してるんだろ。

 ただ、人数制限に引っかかるんじゃない?

 サイドカーに十人以上のぷちと私が乗るのはさ。

 見つかったら、カナタが違反切符を切られるかも。

 きっと高いんじゃないかな。違反金。

 そもそも危ないからね。やめとく。

 こういう状況も? まだまだって感じだ。


「ままならないね」

「ほんとに」


 ふたりで家路を歩く。

 おっと、訂正!

 カナタは歩き、私は浮かぶ。ふわふわと。

 金色雲に寝そべって、ぷちたちに押しつぶされてるけど。


「カナタ、遠慮しないで低速でゆるーく並走したら?」

「いや、でも。俺だけ楽するのはさ」


 変に遠慮せんでも。


「私なんか、きんとうんに乗っかってる孫悟空状態ぞ?」

「――……遅く運転するのは、それはそれで大変というか」

「先に帰るのは、いやなんだよね?」

「ふたりで話せる時間だぞ?」


 やっと! と言わんばかりの圧が、きりっとした顔に見えた。


「一緒に乗る? バイクも込みで」

「さすがに重たくて無理だろ」

「やってみる価値はあるかも?」

「いやいや。傷ついたらかなりショックだし、いいよ。そんなに距離ないしさ」

「そお?」

「そうなの! あの、じゃあ。ピザの話なんかどうだ?」

「ほんとに話したいのは、ピザのことかな? キラリに先を越された話じゃなく?」

「うーっ! そこを突いてくるのか?」

「さっきのお返しにね」

「ままならないなあ」


 あいつより勢いよく飛び出る移動手段がなくって、なんて言うからさ?

 狐火を使って爆発する燃料があったら、ロケット作れたりしない? なんてあほな提案をした。ふたりであれがいいかも、これはやばそうなんて盛りあがる。

 途中で結局、私の金色雲が楽そうでいいなーなんて言ってくるから、バイクだって魅力的だよって伝えておいた。金色雲に乗って素早く移動できるのか、試したことがないし? 適しているかどうかもわからない。

 実のところ、あまり実現性は大事じゃない。

 盛り上がれればいいんだ。

 そして縛りをなくすと? 案外、いいアイディアが出てきちゃうのも面白い。

 重たいものが多くなるときほど、軽くいこう。

 軽くしたぶんだけ、できる余白を使っていこう。

 ままならないから、一緒にやってくんだよ。

 問題を人に結びつけたがる気持ちをほぐして、断ち切って、わけていくんだよ?

 味方は増やす。敵は増やさない。そして、減らす。

 敵意は邪魔になる。

 なんなら、戦うときでさえね。

 でしょ? 十兵衞。


『刀に振り回される。己にもな』


 なので、きちんと鞘を意識してね。

 というわけで!

 今宵は私ひとりじゃ大敗! みんなでゲットの、納刀!

 なんとか成功ってことで!




 つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ