第千八百三十二話
鞘。さや。
ぱっと思いつく言葉といったら?
元の鞘に収まる。
ケンカをしたり、別れたりした恋人や夫婦が復縁したり。
離職したものの、結局は元の職場に復帰したり。
トラブルが起きて音信不通になるくらい疎遠だったふたりが再会して、仲直りしたり。
そういうときに使いがち。
収まるところに収まったなあと体感するときに言う。
じゃあ、そもそも鞘ってなんだろうね?
カナタに辞書の引用をするようにしたっていったら「俺の持ってる広辞苑とかも使ってよ」と言われたっけ。実際、並べてみると微妙にちがう。
いつもの新明解からいってみよう。
『刀身や筆・鉛筆の先を保護するために、その形に合わせて作った、筒型の入れ物』
ちなみに。
『けんか別れをしていた夫婦がもと通り同居する』
これが元の鞘に収まるの意味。
もひとつおまけに。
『値段や利率の差額』
ほら。利ざやとか逆ざやとか言うでしょ?
それじゃあお次は大辞林にいってみよー。
『刀剣の刀身の部分を入れる筒』
『物を保護するためにかぶせる筒。サック。キャップ』
『売り値と買い値の差。また、ある銘柄の市場による相場の差。差合い』
こんなことばも紹介している。
『鞘を取る』
『売買の仲介をして、そのとき生じた値段の差の一部を利益として取る。さやをかせぐ』
さて、ここで私的ニューフェイス!
広辞苑からいこう。
『刃物の刀身の部分を納める筒。材は厚朴の木を最良とし、布で包み、漆を塗ることが多い。刀室』
『筆・鉛筆などのキャップ』
『〔取引用語〕値段や利率の差。㋐売値と買値の差。㋑ある銘柄についての異なる市場間あるいは現在と将来の価格差』
『牢屋・堂・蔵の外囲い』
四つ目の記述が新鮮。
他にも言葉の紹介がふたつ。
『――がある 本心を包み隠して、わざと違ったようにい』
言う、かな?
『――を取る 売買の仲介や転売などをしてその価格差の一部を利益としてとる』
これは大辞林にも紹介されていることばだ。
最後に三省堂国語辞典にいってみよー。
『刀身を入れる筒』
『筆の穂を入れる筒』
『《経》価格や利率の〈ちがい/差額〉』
こちらにも言葉の紹介が、ひとつ。
『さやを払う 刀などをさやからぬく』
以上!
ところで不思議なことに新明解も、大辞林も、いずれも三省堂なんだよね。
しかも三省堂国語辞典だって、やっぱり三省堂。すごいなあ。
だけど広辞苑は別の会社から出ている。
舟を編むっていう作品では辞書を作っていたけれど、モチーフになっているのかな?
なってそうだね? 辞書や辞典の世界って、引用を心がけるようになってから味わい深いと感じるようになってきた。
三省堂国語辞典、略して三国って呼ばれてるみたいだね?
その三国だと、説明はとても端的だ。とびきり簡潔。
辞書のサイズからして同じくらいの新明解だと? 刀身と毛筆をひとつの項目で説明しきっている。値段や利率については、三国も新明解もシンプルだけど、私はもうちょっと調べないと書いてあることの意味がぼやけちゃう。どうやって生じるのだろうか、どういうときに使うのか。このあたりが気になるから、調べることになりそうだ。
そこを、広辞苑も大辞林もカバーしている。大きな辞書は、それだけ情報量が入るのかもしれない。どちらもお値段だって、すごいけど! 舟を編むの映画で、紙にこだわるシーンがあったけどさ? そういうところも値段に反映されていそう。
言うまでもなく、大事なポイントだ。
いや、ほんとに。使用頻度があがるほど、めくる機会が増える。
お父さんが買って帰る漫画雑誌は、わりとやっすい印象がある。それが単行本になると? ぐっとよくなる。体感でね。
それが絵本や専門誌、写真集や専門書になると? もっと手触りがよかったり、発色がよかったりして、品質があがってそうだ。白黒じゃなくてカラーになると? コピーするにもお金に差があるのだから、そりゃあ印刷でも費用面で差がある。
漫画、それもおっきなやつだと、ごくたまーに不思議な装丁の本があるけれど、あれもお金かかってそうだ。週刊誌の単行本では、なかなか見ない。そもそもないのかもしれない。かなりの大ヒットを飛ばして、一定の年月を経て愛蔵版が出るときになってようやく、凝った表紙になってたりして。そういう印象のほうが強い。独特な装丁はむしろ、独特な作風だったり、時代の流行に直結せず、ゆるく売れ続けるような本にされてるイメージがある。
予算がかかりそうだから、たいへんそう。
新書になると、もうこれでもかーっていうくらい表紙は画一的だよね。文庫本もそう。最低でも背表紙は統一されてるよね。出版社によってちがうから、書店で見分けやすい。そのデザインも変える変えない、変えたら変えたで揉めそうなくらい、統一感って大事なような。
老舗の出版社が多い。大手ほど、書店で棚を埋める。漫画も小説も、そこは同じイメージ。新参者は肩身が狭そうな戦場のよう。
パッケージはビジネスの領域で決まりそうだ。するとユニーク装丁はしけてるときほど挑みにくそう。私は好きなんだけどなあ。穴が空いていて、めくると面白い仕掛けがあるのとか。漫画の単行本でもそう。最初に見つけたときは、せっせとめくっていたっけ。
そこいくと、新明解も三国も背表紙がよく似てる。
あくまでもそれは見た目の話。
開いてみると、微妙なちがいが面白い。
私たちは日本語を語りながら、読み書きしながら、実のところ微妙なちがいを抱えている。
概念的な話になると捉えどころがないから納めどころもない。
ある意味では鞘のない話になるね?
意味が通らないかな。
んー。なんだろ。筆にせよ、刀にせよ、それを比喩として捉え、その枠組みに収まる概念を当てはめるの。
筆なら、記す。
その内容は自分のメッセージ。他にもあるよね? 交渉かもしれなければ、嘘かもしれない。恋心かもしれなければ、ただの時候のあいさつかもしれないし? さらにそれぞれに深読みができるけれど、いずれにせよ記すのは能動的な行いだ。
刀なら?
抜くのはまず示威行為。脅しだよね。拳銃や鉄砲が普及して刀などの武器が廃れた理由はいろいろあるだろうけど、第一線で利用されていた時代には? 状況を支配し、ことを収めるか。あるいは荒立てるのか。いずれにせよ、戦闘も辞さない構えであり、そのための予備動作でもある。振るうときにはもう、命のやりとりだ。
筆も刀も、相手を想定する振る舞いだ。
ただし筆はひとりで行えるけれど、刀は筆よりも一対多ないし多対多の状況に置かれやすい。
鞘というのなら?
だれかに伝えようとしている思いだったり、あるいは特定の、もしくは大勢の相手にことを収めるか、ないし荒立てなければならない状況だったり。そうした筆や刀で示す思いがぴたりとはまる、そういう筒がいい。
筒もねー。杓子定規に筒状のもの、と囚われることもない。思いにぴたりとはまるものであればいい。と同時に忘れちゃいけないのが、牢獄や、幽閉するような蔵の外囲いになってはならないということだ。
ブラックジャックに鉄腕アトム、きりひと讃歌やベートーヴェン。それよりも火の鳥とか、ブッダとか? そのあたりが有名な漫画家さんは、わりとエロやグロも描いてなかったっけ。
ここで思い浮かべるのは?
奇子。あやこと読む。
離れの蔵に置かれた娘が成長していく。男性は彼女を見ると、我慢できない。昂ぶるままに行為に及ぼうとする。そういう彼女のいる蔵、そして彼女を蔵に押し込めながらも処分できない家族たち。なにが起きるかって、ね?
だいぶ前に読んだきりで、うろ覚え。艶めかしい曲線で描かれた奇子の人生って、かなりきつくて「う、うわあ」と怯みながらも、ついついページをめくって読んじゃった。
第二次大戦の終戦後を描いた作品でも、蔵に元軍人を匿ったり、あるいは閉じ込めたりしている描写がなかったかな。
国内でアメリカに恨み節のある人の理由に、日本に対して行なった民間への爆撃や核の投下がある。それは中国、サイパンやフィリピンで旧軍がどういうことをしたのか、現地の人たちにとってはどうかという話も別に、けれど戦争当時の話として必要な文脈だと思うけど。
そう言うのは一旦、おいといて。
勝利を収めたアメリカでも、大戦を経験した軍人のだれもが歓迎されたかというと、そうでもないそうだ。
まして日本は悲惨な敗戦を経験した。だから、どういう受け入れ方がなされたのか、いろんな作品が描いている。その中に、あるんだ。疎まれたり、厄介者や腫れ物扱いを受ける元軍人の姿が。
当時の人たちの話や資料が恣意的な介入の一切を排除して残っていればいるほど、実情がわかる。私にとっては、そうした資料が一次資料になるのかなーって感じだ。
アメリカはそういう資料をこれでもかーって作るし残している印象が強いし? 日本はむしろ捨てろ焼いちゃえ黒塗りだっていう印象が強い。これもやっぱり私の印象でしかなくて、根拠となるのは? 統計だったり、その元となる資料になるんだろうね?
ただ、蔵や離れに住まわせる、みたいなこと自体はあったんじゃないかなーって思うわけ。
DNA検査がある時代でも、するしないで大いに揉めそうだ。それがないんだから、昔はもっと人間関係がドロドロしやすい側面があったんじゃないのかなってさ。
そうした触れがたいものを閉じ込める鞘を、私は求めたくない。たぶん、必要に迫られて、それしか思い浮かばなかった人たちさえ、彼らが加害者であるとして、それでも積極的に作りたくはなかったんじゃないかな。まあ、それでも身近に置くっていうところが本人よりも、周囲にとって残酷な気がするけどね。
神話に人間関係のいさかいが見て取れる理由は推して知るべし、なのかな?
民俗学者になって研究するフィールドなのかなー。
気になるところだね。
いずれにせよ印象は鞘になり得ない。せいぜい思考停止も含めた外壁止まりかな。私の求める鞘じゃない。外壁で止めるんじゃなくて、先へ進める材料にしたいんだよなー。
むしろ外囲いは、ひとまず場を収める、みたいな鞘だね? 揉めて暴れて仕方ない、みたいなときに利用するのがよさそうだ。そういう状況はないほうがいいんだけど。
「やっぱり肉は欲しいよなー」
「炭火焼き肉なんて最高じゃん!」
「テールスープなんか出るとよくね?」
「「「 それだ! 」」」
みんなは盛りあがっている。
精のつく料理の献立を練り、岡島くんたちがみんなに割り振る仕事を用意している。
料理班は結成して、それなりの時間を経ている。けど、たとえばお店のキッチンとちがって、役割分担がきちんとできているとはいえない。そこまで洗練されていない。
ヒヨリの提案した調理器具の開発と導入も検討しながらなので、ちょっと時間がかかっている。空飛ぶキッチンはひとまず土台の完成を見たけどね。私ができることは、いまはもうない。
シェフの決断を待つばかり。
そこで私は考え中。
待っている間にカナタから連絡が来たんだ。
『もしも春灯の入った空間が胃袋なのだとしたら、だぞ? ユリアの腹ぺこ加減を、今回の胃袋と結びつけるのは安易かな?』
なに言ってんのかちょっとよくわからなかったけど。
『だから! 八岐大蛇みたいな、そういう存在がいるんじゃないか?』
知らんけどってつくやつね?
過程として話してくれた。私ももちろん、推測なのだと承知のうえで聞く。
巨大な胃袋空間の持ち主。私の考えはどれもが印象、すべてが推測に過ぎない。
なにせ相手は地面の底にいる。あるいは見えない形で存在しているまである。
八岐大蛇かー。
私は正直、因縁があるぞ? 入学当初、タマちゃんと十兵衞を御霊に宿して、私すごく強いのでは!? なんて浮かれまくっていた頃に、ユリア先輩にボコボコにやられて、霊子まで吸われたし? 初めての邪討伐でユリア先輩が出してみせた大蛇の体内めがけて、ラビ先輩に投げ込まれたし。
ゆううつ。
二年生にもなって、最初のしくじり再到来って気分。
御霊としての大蛇を考えると、厄介な可能性が浮かぶ。
太古の昔にさかのぼれちゃうくらい、長い時を経た存在だと? ユリア先輩が御霊として繋がる以前に、別のだれかが御霊として宿していた可能性がある。そりゃあもう。十兵衞にせよタマちゃんにせよ、そう。愛生先輩とアマテラスさまだって、そう。
そうした昔の、恐らくは他界しただれかが秘宝を残した可能性は?
学校にあったり、私の中にある御珠のように。
こないだ見送った幽霊さんたちみたいに、なにかが残っていたら?
それが胃袋って。
えええ。
きつい……。
いかにもな気もする。
謝肉祭遊園地と絡めて妄想するのなら?
お腹を満たして、楽しい時間を過ごしたいとか?
それが大勢を連れ込んで、邪さえ吸いこんで。霊子を活力にしてるとか?
『存外、悪くない』
十兵衞は賛成?
『見当をつける。そのうえで、ひとつの仮説にはなる』
『知るには潜るしかないがな? それとも再び釣り上げるか?』
タマちゃん、だいじょぶ。
ちゃんとわかってるよ?
推測、仮定。どちらも偏見を積み重ねて、点を打つ。
実際に試し、行い、座標のずれを観測して、誤差を修正するために。
あえて意識して点を打つのだ。
釣り上げるのは実態にまつわる情報であって、物理的な釣りはやめとく。
たぶん、無理。引っかかるところがない。それにワイヤーが千切れてフックが落ちるだけだ。仮に胃袋だとして、壁にフックを引っかけたら?
おおごとになる。
ユリア先輩が出す大蛇よりも巨大なサイズ感だった。そんなのが地面から突如として出現して大暴れしたら? 黒い御珠とは別次元でたいへんな戦闘になる。絶対に避けたい。
ご飯で穏便になんとかならんか……っ!
『あれほど巨大な胃袋を満たす食物の準備は穏便に済むのか?』
あ。
「あっ」
十兵衞の指摘に頭が真っ白になる。
た、たっ、たしかに……っ!?
「青澄さん!」
間の悪いことに、岡島くんに大声で呼ばれてしまった。
歩くたびに汗がにじむ。
あかん。あかんで? こりゃあ! やばいでえ!?
どどどどどどど、どうしよう! なんかおおごとじゃん。既に。
大勢がここまで来て、料理を作ろうとしてるじゃん。井之頭くんたちが食材の調達から戻ってきたけど、業者のトレーラーごと来たよ? 取り返しがつかない状況なんよ。
「聞き忘れていたけど、キミの言う胃袋って、どれほどの大きさなのかな」
「それによって、用意する量が変わってくるじゃない?」
はあああああああああん!
いま一番つっこまれたくない質問をピンポイントで聞かれちゃった!
「あ、ど、え、ん、うんんんんん」
「どうしたの」
「やけに汗だくだけど」
「まだ調子が悪い? 胃袋の中でダメージを受けてた?」
岡島くん、姫宮さん、そしてヒヨリが次々と尋ねてくる。
三人に留まらない。料理班には知り合いやともだちばかり。
浴びたくないときほど、注目を浴びちゃうことってありません?
いまがまさにそれだよ!
逃げられないよ! 言うしかないよ? こうなったら!
「――……と」
「「「 と? 」」」
言いよどむ。けど、言わなきゃ。
「東京ドーム」
「「「 でっか! 」」」
「まままま、待って?」
「「「 えっ? 」」」
「ひ、ひとつじゃなくて。最低でも、たぶん、縦にふたつぶん?」
「「「 最低でも!? 」」」
「「「 縦にふたつぶん!? 」」」
お前まじかよって顔でみんなが私を見てくる。
いっそ! いっそ殺せ……っ!
「よし。煮込み料理にしよう」
「「「 えっ 」」」
間髪入れずに決断をくだすシェフに、みんなと一緒に私もビビる。
「大きな鍋を用意して、そこにありったけの具材を突っ込んで煮込もう。野菜と肉のスープがいいな。お米を投入して雑炊にするのもいいね。ダメでも、みんなにシメで提供することにしよう」
しかし彼はむしろ「助かる」と言って、刀鍛冶が用意した即席のホワイトボードに黒いペンで忙しなく書き込んでいく。腹が決まったみたいだ。
「別に胃袋が大きくても、すべてを満たす量が必要なわけじゃない。霊子を吸うなら、肝心なのは霊子の量と密度じゃないかな。これならいけると思うんだ」
よどみなく語る。彼はペンを置いて、なんの気負いも緊張もなく、やる気をみなぎらせるいつもの顔で「それじゃあ、準備にかかろう」と切り出す。
バレンタインデーのチョコ作りのときも、みんなのご飯を用意しなきゃいけなくなったときも、みんなが不安で不安でたまらないとき、彼はいつもこうだった。
鞘の実例のひとつを、彼は教えてくれる。
「すぐに説明の準備を済ませるから、エプロンを着て待っていて?」
「「「 うぃーっ! しぇふ! 」」」
みんなで喝采をあげた。
料理班の刀鍛冶の子たちがせっせとエプロンを用意し始めるし?
井之頭くんたちが「ヘアゴムもらってきたから、必要な人は取りにきて」と呼びかけていく。
私ももらっておこう。
問題も解決する術が見つかれば? 先へ進む。
握手する先があればいい。なくて握りしめて、ぷんぷんぷんと振りかざしたら? 握手どころじゃない。けど怖くてビビるほどに、差し伸べられる手はなくなっていく。そう感じてしまう。
元の鞘に収まるにしたって、一度は離れている。
そのことばを使う機会がないまま、ずっと離れたままの人たちだってたくさんいる。
なら、鞘に収めるのは運や奇跡に頼るの? できる人に頼るしかないの?
そこに技術はないのかな? スキルでカバーできないのかな?
いや。そんなことない。
気持ちが互いに向いているのなら?
相手の求める方向を、願望の根をたどってついに観測できたのなら。
鞘の形が見えてくると思うんだ。ぴたりと重なる、安心できる形が。
自信はないけどね!
なんてったって! さっきのビビった気持ちを収める鞘なんか、思いつかないもの!
あははははー!
ほんとごめんなさい!
岡島くん、助かったよ……っ!
もっと慎重かつ綿密にいこう。
秘宝としつつ、相手が怪物の姿をしていたら?
あれだけ巨大な胃袋があって、人を招き寄せ、邪さえも吸い込む怪物って、どんなのだろ?
謝肉祭遊園地と関わりがあるとしたら、どういう存在なんだろうね?
お腹を空かせているのは、どうしてなのかな。
人を招き寄せ、邪を吸いこんでいながらなお、ぷちたちが捉えた訴えの前提を、私はすこしも気にしていなかった。
霊子を吸いこみ、それがお腹を満たすのなら霊子が足りないってことになる。
だけど、ぷちたちは「お腹すいてるって!」と私に教えてくれる。霊子じゃ足りないんだ。だから私はご飯をと考えた。ぷちたちの様子を見ると、そんなに危ない存在にも思えない。もちろん額面通りに受けとって、そうでない可能性を想像しないようじゃ危ないけどさ。
どうしてお腹がすいているのかな。
尋ねたいことがやまほどあるのに、話ができないなんて。
お話できるって、めっちゃ便利だったんだなあ。
したほうが得だな。当たり前すぎて忘れていたけど、大事なツールなんだ。利用してこ。
だれかに相談できないかな。
一緒に話せば、なにかが見えてくるかもしれない。
姫宮さんとヒヨリは岡島くんとがっつり組んでいる。ならばとコトネたちを探した。
つづく!




