表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
1791/2984

第千七百九十一話

 



 橋本さんとは連絡が取れた。

 忍びの側でも私の家のそばは哨戒の経路に入っているそうだ。

 哨戒とは? 具体的なツッコミはかわされた。あと橋本さんによると「場所単位じゃなくて、霊子を頼りに捕まえているかもしれない」とのこと。チケット配布についても事前に調査をして配り回るんじゃなくて、曖昧に検索している感じ? それから私に関しては、もしも黒いのの組織が収拾していた秘宝絡みなのだとしたら、黒いのと重なる私の霊子をピンポイントで探していたかも、と。なので鳥居云々じゃなく、私の霊子が見つかると? またしても捕まるのでは、という推測を立てていた。

 というのも橋本さんの部下である時雨さんと、星蘭に派遣されている忍びの子が調査したところによると、遊園地を訪れた人数は地味に多いかもしれないそう。なのに騒動になっていないのは、現実に起きたこととして認識されていないのではーってさ。夢でも見たんじゃないかと思われているのかもしれないみたい。

 そうだとしたら、かなりの謎。あり得るのかどうかも気になるし、あり得たのだとしたら、どうやって実現しているのかがわからない。

 私の情報は橋本さんにとっては寝耳に水だったようで「鳥居はこっちも繰り返し調べているけど異変はないはずだ」とのこと。おまけに、もしも私が連れ込まれた空間が時雨さんたちの潜入した遊園地と同じ場所なのだとしたら、私への敵意が異様に高すぎるって。


『執着が見られる。うちやよそが動く前に、次が来るかもしれない。そのときはキミが時を止めた鍵を使うんだ』

「姫ちゃんの鍵、ですか」

『どれくらい利用できるのかがわからないけどね。あちらさんに学習能力があるのなら、対策を取ってくるかもしれないし』

「お、脅かさないでくださいよ!」

『備えるんでしょ? なら、最初に最悪を想定するんだ』


 それから短いやりとりを経て、通話を切った。

 橋本さんは仕事があったし、私は私でぷちたちに呼ばれるし?

 マドカたちからの返信はまだないのだし。

 おもちゃならまだしも、ゲーム機レベルの複雑なものとなると、さすがに化かして作ることはできない。通信ってどうやんの? 仮にそれっぽいものでっちあげても、アカウントどうすんの? きょうび、ネットワーク通信ってアカウントありきでしょ? 通信でやりとりする情報って、ばっちし揃ってないといけないんじゃないの?

 わからん!

 なので、うちのお父さんとお母さんが持ってるゲーム機を借りるとして、それじゃ人数が間に合わない。コントローラーをたくさんつければいいならね? まだしもさ。ゲーム機依存だと、人数すくなくしてねーなんて、むりむり。ぷちたちがそれで納得するわけない。

 テレビが何台もリビングにあれば、一緒にゲーム、一緒にアニメってできるけど、さすがにねー! こればっかりは無理。

 なのでアニメ見る子たちと一緒にソファに寝そべっているんだけど、たまにオモチャ組やゲーム組から呼ばれる。はいはいと行ったり来たりを繰り返していると、お母さんに「アニメ見てる子たちは集中してるんだし、あんたは一緒に遊べばいいじゃないの」と言われちゃう。

 ちゃうねん。

 見たいねん……っ!

 賭け事に猛烈に昂ぶるえっちなお姉さんとか、AXZとか、ゲーム会社のお仕事っぷりとか、魔方陣とか? プリンセスのやつとか。あとは、洞穴の底を目指して旅するふたりのこどもの冒険譚とか! お父さんが集めてる円盤だと? モバイル端末時代から続くスマホのRPGのアニメとか、マンガの狂戦士の新規アニメ化のやつとか?

 いろいろあるねん!

 ご長寿シリーズでアイドルものとか、ニチアサのキュアなやつは、うちのぷちたちにも大好評なんだけど、全員で見ないと揉めることがわかっているので、今日みたいなタイミングだと、わりと趣味に走り気味。

 去年放送された、パワードスーツを着て犯罪を止める警察モノはお父さんがドハマリして、私も見た。警察モノっていいよね……。

 それから、カバネリがけっこう好きだ。近代戦に寄っていて面食らったけど、カバネリみたいな化け物たちが刀片手にわーって大挙して挑んできていたら? それはそれで危うかった。

 昭和元禄落語心中でしょ? ダイヤモンドでしょ? テイルズのアニメもすごくよかったなー! 歌と一緒に長尺で流れるシーンがね? あったんだけど。もーね。たまらないの!

 ただぷちたちと見るとなると、ね?

 ハイフリなんかはありかな。地域と組んでやるぞーっていう作品、ちょいちょい出てきたよね。ハイフリも横須賀と組んでるみたい。

 ユーフォはどうかな。高校生の部活ってぴんとくるのかな? 謎だ。

 ユーリは激推しだけど、これはこれまでも何度も見てるし。スクールアイドルの女の子たちのもけっこう見たっけ。サンシャインは静岡だよね?

 足を運んで見られるって、でかい。スポーツモノにも、そういうとこある。

 興味や好奇心次第。

 わりと、どんなときでもね?

 いわゆるキッズカテゴリの作品を一緒に観る機会がぐっと増えたんだけど、地味に楽しんじゃってる。そしておまけで「ゲームかって! ねえええええ!」と言われることが増えてきている……。

 いやいや。きみたち。何人おんねん。なあ。どえらいことになるやん! なあ!

 残高がごそーっと減るねんぞ!? なあ!

 おまけに新機種がうんたらかんたら、廉価版がうんたらかんたらと、お父さんに聞いてもいつどれをどれくらい買えばいいのかがさっぱりわからん!

 ヒモを緩めていいのかどうかがわからない。

 この子たちを幼稚園に? やがては小学校へ? 中高、さらにその先へ?

 血の気が引くし「はたらかなきゃ……っ!」となるし、果てしない。

 ソファに寝てたくて仕方ないまである。

 なので本音を言うと、化け術でカバーできる範囲の販促作品までに留めたい。

 そういう欲は届くはずもなく、見ちゃう。

 いまはね? 大きな声でアローラ! って挨拶するんじゃなくて、マサラタウンを旅立った頃から見直してる。こういうのの宣伝に、パジャマが発売! とか、シューズが発売! とか、あったら困る……っ! ニチアサもそう。オンタイムじゃなくて、宣伝カットのお父さんが録画してあるやつを見る。配信サービスに放送回があるものなら、サービスを利用する。

 宣伝め! やつら、おっかねえ!

 一撃でぷちたちの興味と好奇心を虜にしやがる!

 クールが変わると商品がごそっと切りかわるのは切なくて、もっとこう、息の長いキャラクターはないものかと企んじゃう。そう考えると、いまアローラってノリのやつは助かるかも。

 まあ。

 私がどう思おうと、ぷちたちの思いとは別物なのでね?

 どうにもならないんですけどね!

 どうにかするとこでもないですし!

 どうにもならないといえば、私を捕まえたと引きずり込んだやつも謎。

 ソファに戻って、寝転がったらアニメ鑑賞組のぷちたちが集まってきて、ほどよくあったかくなる。おかげで、気がついたら欠伸が出ちゃう。

 眠気がやばい。図太いのかな? どうだろ。緊張しまくったぶん、緩んで疲れが出たのかも。

 アクション映画なら?

 ついに寝てしまって、飛び起きたら違う場所で――……。


 ◆


 夢うつつに歩いていた。

 前後に人がいる。揺れる光源をたどると、直径で十センチはありそうな木の棒で作った松明の炎が揺れていた。遠くからうめき声ともすすり泣きともつかない声が至るところから聞こえる。男女入り交じるが、男は切迫し、女は感極まったような響きが主。

 砂利の敷かれた土の道。左右に林。その先に、影絵が揺れる。重なりあう人と人。彼らもまた揺れる炎に照らされているのか。

 肌に生ぬるい風を感じた。見おろすと裸に布一枚を羽織るだけの薄着。前を行く男も女も、みな似た服装。足裏に砂利の粒を踏みしめる。そのわりに、それほど痛くない。

 ただ、なんでこんなところにいるんだろうと立ち止まろうとして、息苦しさを感じた。首裏になにかが当たる。なんだろうと手を伸ばそうとして、不自由に気づく。前に伸ばした手は分厚い木枠で枷を嵌められていて、恐らくは首も。なにか、輪っかのついた棒で捕まえて、後ろの人が押してきている。

 けれど足は自由だ。走れそうなものなのに、私の足は前後の人々と合わせたペースで動き続ける。さっき立ち止まろうとしたことが奇跡だったのか。

 ああ、そうか。夢だ。夢に違いない。さっきまでうちにいたじゃないか。またしても連れ出されたなんてことはないでしょ。さすがに。なんにも感じなかったし。そうだよね?

 だんだん不安になってきた。そのわりに切迫感がない。我ながらどうかしてると思うくらい。

 なにか匂ってきた。夢なのに。

 前を歩く人たちが次々に立ち止まる。

 砂利を踏む小さな足音がふたりぶん、近づいてくる。

 歩いて、立ち止まり、歩いて、立ち止まり。その繰り返し。

 訝しんでいる間にも足音の主がふたりそろって近づいてくる。とうとう、何人か前の人のそばにきたのは、薄く透けた大きな布をかぶった裸の少年と少女だった。木の皮で編み込まれたカゴを持ち、カゴの中に積まれた赤黒く焦げた骨付き肉をひとつ渡して、近づいてくる。ひとりにひとつ。受けとった人は誰も彼もが恭しくお辞儀をするけれど、声は発さない。

 静かで奇妙な儀式のように思えたけれど、お辞儀を終えるやいなや、だれもかれもががつがつと貪るように肉を食らう。

 前も後ろも、二列。私だけ、ひとり。ぼうっとしていて、感覚も鈍っていて気づかなかっただけで、首だけではなく腰にも刺股をあてがわれていた。

 そんな私に対して、ふたりのこどもは目も合わさずに通りすぎていく。

 私へのお肉はないみたい。

 カゴの中を覗いたけれど、みっちりこんもり、おんなじような肉が積まれている。

 鶏かな? だとしたら、何羽分だろう。わからない。

 ピザ屋にある、調理されたお肉みたいに見えた。匂いの元は間違いなく、あの骨付き肉だ。

 香草と脂の香り。正直かなりおいしそう。

 やがて再び足音が近づいてくる。これまた同じような格好のこどもが、カゴを持って歩いてくる。人々は肉が綺麗にこそげ取られた骨をカゴの中へと投じる。

 立って歩いて、配られて食べて、骨を捨てて。

 なんだこりゃ。

 あと、私の立場はなんだ。

 供物かなにかなんだろうか。

 だったら同じ格好をする意味はなんだ。私だけ拘束されているのはなぜなんだ。

 回収する子たちが私の横を通りすぎると、首裏と腰裏が押される。号令とかないのかよと思いながら、ゆっくりと歩きだす。

 ゆるやかな上り坂だった。二列に並ぶ人々の持つ松明の炎が道筋を教えてくれる、というようなこともなく。比較的、背が高くない私に対して、ずっと背の高い人たちが前にずらりと並んでいるせいで、前がよく見えない。

 だから行脚の終点はいきなり訪れた。

 人々が左右に分かれていく。開けた場所に辿りついたみたいだ。

 前のふたりがとうとう道を空けて、ようやく湖に辿りついたのだと気づいた。

 口が開く。なにかを言ったのかもしれない。音がよく聞こえない。

 ただ、前を歩いていたふたりが私の纏う布地を掴んで、そっと下ろした。

 そして首裏と腰裏が押される。水に入れと言わんばかりに。

 抵抗できずに足を進める。

 樹の柱が立てられていて、松明がくくりつけられていた。

 湖の中にも砂利が敷き詰めてあって、道を作っている。

 あまり深くない。水がとても澄んでいる。波も穏やかだ。

 盛り土かなにかで人工的に作られたであろう浮島に続いていて、その先が暗くて見えない巨大な場所。少なくともカナタとの箱根デートで調べた河口湖よりは大きそう。わからない。錯覚しているだけかもしれない。

 それに問題は湖よりも浮島にある。

 樹の太い幹を組んで、火をつけて燃やされていた。ごうごうと。

 キャンプファイヤーのようだった。そのそばに裸身の女性たちがいて、裸身の男性たちに、足元にあるものを渡していた。肉だ。それは肉だった。木の板を並べ、そこに解体された鶏の肉が積まれていた。山盛りだ。血の匂いがするし、虫が飛び回る音もする。強烈なハーブの香りも。肉が焼ける匂いだって。それもそのはず、大火のそばに大きな石を積んで、炭を集めた場所があって、そこに男たちがせっせと渡された肉を置いている。焼いているのだ。熱して石と炭火と燃えている枝を集めて。

 肉の調理場というだけじゃない。

 浮島と岸の間の水辺に土器が並べて浮かんでいて、そこからぷんと甘酸っぱいお酒の香りがした。冷やされている。実は土器は火の調理場のそばにあって、男たちがたまに火から枝で取りだした肉を突っ込んでいた。そして、湖の中にあるものと同じデザインの土器をひとつ持ってきて、中身をちょろちょろと注ぐ。酒煮かなにか、作っているのだろうか。

 鶏の数に反して卵は見当たらない。若い鶏はいないのかもしれない。

 それにしても大がかりだ。

 湖の上の調理場。女たちの手には石の包丁。羽のむしられた鶏がまだ、数羽みえる。

 私もさばかれるみたいな流れ?

 けど、水は冷たくない。ちっとも。

 進む。温度を感じない。真夜中の湖ときたら、とびきり冷たそうな水にも関わらず。

 首裏と腰裏への圧迫がなくなる。私を連れてきた人々が、私を見ている。先へいけ、湖へいけとばかりに。

 足元を見おろした。水面に私の姿が映っている。

 まぎれもなく私自身だ。他のだれでもない。

 浮島を見た。

 調理に勤しむ人たちとは別に、木造の台が設置されていて、そこには稲穂がひと束かざられていた。おまけに仮面をつけた裸の男女が向かい合って、座っている。その先に、天狗の面をしたごつめのおじさんが立っていて、砂利道はおじさんへと向かっていた。

 わーお。

 え。まじ?

 ここでもう一度、ふり返って気づいた。林の隙間。集まった人々が次々に松明の炎を消していく。聞こえてくる声の生々しさの正体と、この場の意味合い。

 私を照らして、浮島の人たちが待っている。

 これは儀式だ。

 ただ、いわゆる西洋的なたぐいのじゃなく。

 日本の奇祭よりも、もうちょいずれて、へんてこで、そのわりに目的は明らかな祭り。

 かっこ隠語かっことじ、みたいなノリの、やべえやつだ。

 あれ?

 起きるべきじゃない?

 逃げるべきときじゃない?

 というかこれ、私に起きてること? 夢じゃね?

 もう一度、水面を見る。風が吹いて、波に揺れてよく見えない。

 本当に私なのか。

 調理を担う人々は仮面がない。仮面をつけているのは「今夜、いざ!」みたいに身構えちゃってる男女たちとごつめのおじさんくらい。

 ふり返ってお尻を確かめる。尻尾が――……ない。

 いや、なきゃないで困る。私じゃないとしても、これがたとえ夢なのだとしても、この先の展開が読めている! ぜったいに、年齢制限的なやつ!

 待って!?

 私の想像力で見る夢にしちゃ無理しかなくない!? タマちゃんの記憶を見たときくらいの突拍子もなさなんだけど、タマちゃんじゃないよね!?

 ってことは、なんだ。

 あれか?

 秘宝絡み? 秘宝は結局、御珠のように人から生まれるもの。

 ならば、これは、じゃあ件の遊園地の主の記憶かなにか?

 だとしても困るぅ!

 情報はほしいけど困るぅ!

 足が前に進む。震えている。見おろす身体は自分とは微妙に異なる。たとえばお乳サイズ的にも違う。待って。待て待て。のうのう! むりむりむりむり!

 神主か、あるいはお偉いポジション的なおじさんのかぶる天狗のお面がいちばんご立派。なにがとはいわないけどもぉ! だからこそ、待って!? 待とう!?

 もしも私が見ているだれかの記憶なのだとして、その人は私と同じでビビっているはず! だったらと一縷の希望を抱くのだけど、歩みは止まらない。鈍いけど、止まらない。

 調理を終えたのか、土器に肉と酒を入れていた男が器を持ちあげて、こちらに来た。水には入らず、しかし土器を私に向けて。

 途端、歩みが徐々に早くなっていく。大股になって、とうとう走りだした。

 駆けつけて、土器をがっと掴み、傾ける。

 口の中に入ってくるんだ。ぷんと香る強烈なお酒の香りと一緒に、鶏の脂の甘みと、ぷりっぷりのお肉と、とろとろの脂身が。塩気も足されていて、こってりしたスープだった。

 その味だけは鮮明に記憶しているのか、それとも夢の大事な意味かなにかなのか、はっきりと感じとることができた。お酒の成分以外に臭みはない。頭の中枢にがつんとくる。

 それでも夢の主は夢中になってごくごくと飲み続ける。がりがりと噛んで。よだれが溢れてきて、スープと混ざりあう。お腹にがつんとくるし、酩酊感が頭の中を満たしていく。

 強烈な多幸感。

 もしかしたら、食べていなかったのかもしれない。ろくに。

 見渡せる範囲にいる人々の中には中肉中背という体型もいる。けど見おろしてみた肉体はがりっがりだった。

 土器の中のスープに夢中になっていたら、あっという間に完食した。

 けど、待ってましたとばかりに別の男が次の土器を持ってくる。

 迷わず掴んで飲む。食べる。酒の強さが増して、塩気も脂身も増して、思わず身体が無理ってなりそうなのに、それでも必死なくらいに貪る。

 当然、すぐに立っていられなくなる。

 崩れ落ちて、土器を落とし、中のスープを浴びる。肉がこぼれて、それを手で何とか掴もうとするけれど、先にだれかに手首を掴まれた。

 調理をしていた女たちだ。倒れ伏した身体に手を伸ばし、みんなでせえのと抱き上げて、がっちりボディのおじさんの元へと運んでいく。

 男女の間に寝かされた。

 やはり、木の板が敷かれていた。

 まな板のうえに置かれた具材か、はたまたこれが寝所の代わりなのか。

 いずれにせよ、どちらもろくでもないのは確か。

 身動きが取れない。目が回る。

 天狗面のおじさんが近づいてきた。頭はおじさんに向けられていた。体勢的に妙だと思ったのもつかの間、おじさんはなにかを持ちあげて、掲げた。

 大きな石をツルで棒になんとかくくりつけた、それはハンマーのようだった。

 あ、と思ったときには振り下ろされて――……飛び起きた。


「ふおわ!?」


 全身から汗が噴き出る。

 リビングだ。ソファにいた。たしかに、あれは夢だった。

 けど人の頭に重なる大きさの石が、顔に振り下ろされたのは間違いなかった。

 夢だ。あれは。夢に違いなかったけど、でも、妙な部分が妙にリアルに感じられた夢だった。

 悪夢だと笑い飛ばしたいけど、無理だ。


「はあ、はあ――……」


 呼吸が荒いまま、部屋を見渡す。

 ぷちたちはいない。けど、和室から賑やかな声が聞こえる。

 けっきょくみんなで集まって、ゲームの真っ最中のようだ。

 顔を両手で拭い、起き上がって、背中を背もたれに委ねる。


「ふ、ふう、やべ」


 ふふふ。

 だれもいなくてよかったぜ。

 どや顔で私は天井を見上げた。

 まさか一日に二度もちびってしまうとはな!

 やっちまったなぁ!




 つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ