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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千七百八十四話

 



 成れば成るとき成らねば成らぬ。

 なんて、よくわからないことを考えても変わらない。

 焦れば焦るほどむずかしくなる。だいたい、茜原アイが濡れ女になれる率は決して高くない。

 御霊別授業で自分が目立たない理由のひとつだ。


「無理そう?」

「そんなこと聞かれたら余計むりだから!」

「じゃあ、いったん終わり。休憩して」

「で、できるから!」

「確実じゃないなら無理するのはやめて」

「――……くそ」


 有無を言わさない彼女の言葉にうなだれる。

 たしかに、確実じゃない。だから余計に情けない。


「通路からここまで糸を張ってきた。現世でもね。けど、いま私の糸はこの暗闇の中のものだけみたい」

「え」

「丈とふたりで糸そのものの力をあげようと話してたけど、もっと急げばよかった。閉じ込められたね、これは」

「いやいやいや。は!?」


 なにあっさりきつい宣言をしているんだ。こいつは。


「丈がいまごろ探してるかも。学校のみんなに連絡して」

「じゃ、じゃあ、すぐだれかが来てくれる」

「……なんで?」

「なんでって! だって、無茶苦茶な奴らばかりだし? くるだろ、こういうときは!」

「じゃあキミはそれをアテにして、ここにいる?」

「――……」

「私は移動する。すくなくとも、明るい場所に行きたい」


 じゃあねと言って、彼女が離れる。

 暗くてよく見えないけれど、あまりに暗すぎるから置いていかれることが怖くて手を伸ばした。空を切る。


「ついてきたいなら、キミの胸の糸を持って」

「……えええ」

「ここで待つとしても、糸を持って待っていれば、私が助かるとき、キミを呼びにくる」


 足音が聞こえる。遠ざかろうとする。

 瞬間的に恐怖がせり上がってきて、逃れるように急いで糸を引いた。


「ちょっと。力加減」


 彼女がすぐに呆れた声をだす。たしなめられてとっさに謝った。

 言葉が出ない。彼女は進んでいく。糸を引いて、感触を頼りについていく。

 暗闇の道。足元を確認しているからだいじょうぶだと彼女が教えてくれる。

 先導者は糸を出しては張りめぐらせて、自分の領域を広げる。

 最初は羨ましくて恨めしかった。自分よりよほど頼りがいのある力の持ち主である彼女に嫉妬せずにはいられなかった。怖さのぶんだけ、その感情は激しさを増す。

 けど彼女は時折、気鬱に息を吐く。

 おかげでこちらは無性に落ちつかない。

 ちゃんとしてくれ、糸が弱まったらどうすると喉元まででかかった。

 さすがにそれを言ったらおしまいだ。そうは言っても、彼女をフォローできる余裕なんてなかった。

 時間を確かめる余裕もなく、恐ろしさのあまり感覚がマヒしたまま、暗闇を進む。

 どんなに目が慣れたと思っても、まだ、なにも見えない。

 糸を持つ手を入れ替えては伸ばして、壁を探したが、空を切るばかり。

 なんなら糸の先にいるはずの彼女が消えてしまっても、気づけないにちがいない。別のだれかが彼女を消して、彼女と自分をつなぐ糸を引いて、自分を不幸に落とそうとしていたとしても。

 いや。妄想力豊かか。そんなことは起きない。

 待て。断言できない。そもそもなにが起きてる?

 役に立たない。自分はお荷物だ。彼女から見れば。捨てられる可能性さえある。

 なにを考えてる。だめだ。なにを考えても、なんにもならない。ろくなことがない。

 これは罰か。

 自分が内心でばかにしていた少女の出した糸を頼りに、暗闇を進んでいる。これが罰なら、罪はなんだ。わかるはずがないじゃないか。自分はちゃんとやってきた。そのはずだ。そうじゃなかったのか?

 わからない。なにかをばかにして、それで無事でいられたらいいのに。じゃなきゃ、だって、めんどくさいことばかりが待ってる。いまくらいだ。高校二年。そこがピークじゃないか? 先延ばしして、面倒なことだけが待っているいつかが近づく。そんなのいやだ。ずっとガキでいたい。なにもできないままでいい。

 ろくなことがないんだよ。ずっと。長いこと。


「泣いてないよね?」

「は?」

「なんか、いやな空気かんじたから」

「俺はそんなのだしてない」

「そ? ならいい」


 彼女の面倒そうな問いかけにさえ、縋りたい気持ちがあふれてきた。

 そっちのほうが、よっぽど泣けた。


「なんか話す?」

「気を遣うなよ。変な空気なんか出してないから」

「じゃなくて。お互い、そっちのほうが気が紛れるでしょ? キミだけのためじゃない。私も落ちつく」

「……話題がないだろ」

「明日の天気、どんなかな」

「よりにもよって天気かよ。陰キャですか?」

「なるほど。振られるわけだ」

「はあ!?」

「他に理由があると思うなら、その話をするか。じゃなければ、キミの思うマシな話題を出して。言われなきゃわからない? 和やかな会話の仕方」

「――……」


 何度も腹が立った。何度かライン越えのことを言われた。


「キミって、どんなヤツなの」


 じゃあ、俺はどうなんだ。

 糸の感触だけが頼り。この状況の、自分の頼りなさときたら。気が変になりそうだ。

 もしもここが奇妙な暗闇じゃなく、現世にあるそこそこの遊園地の迷路だったら? いくらでも罵っていた。それだけの弾はある。特に甘原麗が相手なら。

 で?

 それにどれほどの価値がある?

 暗闇の生命線を断ち切るほどの価値はない。

 じゃあ、暗闇でなければ? 生命線でなければ、自分はどれほど彼女を悪し様に言うのだろう。そういうんじゃない。自分は、そんな、傲慢で、むかつく野郎じゃないはずだ。

 そんな自己弁護が空しく思えるくらい、暗闇にあぶり出されている。


「――……まあ、いいヤツじゃないよ」

「そ」


 返事は簡潔にも程があった。

 もうすこしなにかリアクションしてくれてもいいはずだ。フォローしろよ。

 させる気かよ。お荷物の俺を相手に。構えと俺はねだるのかよ。

 鼻で息を吸う。深呼吸を繰り返す。なるべく、深く。

 結局、彼女の行動に縋って、ついていっているだけだ。場当たり的だといくらでも非難できる。罵倒だって。で? その先は?

 自分にはなにもできないのに? 置いていかれたら、ふたりでいるよりも状況が悪くなるだけなのが目に見えているのに?

 なにしてんだよ。くそ。

 そのまま、歩く。黙って、進む。再び訪れる気まずい沈黙の埋め合わせに値する話題がひとつもない。


「甘原はどんなヤツなんだ?」

「泉たちとつるんでるキミなら、私の噂くらい知ってるでしょ」

「――……まあ」

「まだ聞く?」


 責めるようでも、面倒がるようでもなく、ただ気のない声。

 ずっと地雷ばかり踏んでいる。


「その。趣味とか」

「ああ、趣味デッキね?」


 彼女の返事に身構える。仕返しにばかにされるかと思って。

 けどちがった。


「最近は丈とふたりで別々のアイス買って食べることかな」


 当たり前のように、彼氏との習慣がでてくるのか。


「カップのやつなら、溶ける寸前くらいがちょうど好み」

「コンビニでもらうやっすいスプーンでかき混ぜられるくらいの?」

「そう。冷えすぎて固いときより、液体になるまであとちょっとくらいがいい。バニラ系じゃなくて、フルーツ系なら冷たくて濃いジュースみたいになるから、液体になるのもあり」

「フルーツ系って、レモンの輪切りが入っているやつみたいな?」

「そ。丈に教えてもらったんだけど、砂糖の入っていないソーダ水と混ぜて飲むのもいい」

「……たしかに、おいしそうだ」


 やっぱり、彼氏の名前が出てくると。

 いかにも幸せそうだ。もしもヒヨリとうまくいっていたら、彼女もこんな風にだれかにしゃべってくれたのだろうか。

 うわ。

 きも。

 自分がきもい。

 振られてなお、こんなこと考えちゃってる未練がましさがきつい。

 わかっているのに、捨てられない。

 だから未練だ。止められるものじゃない。うんざりだ。


「アイス、食べる?」

「氷菓子系の。がりっとするやつを、泉たちとよくしゃりしゃりに削って食べてる」

「かき氷にするの?」

「そんな感じ。飽きてバニラのっけたり、カットしてサイダーやラムネに入れたりしてる」

「へえ、いいね?」

「甘すぎるけどな。それでミナトのやつが岡島に相談して、いったん溶かしたアイスの甘さを調節して、もっかい凍らせたのを、さらにかき氷にして、練乳を垂らしてみたりして」

「楽しそう」

「――……適当に相づち打ってない?」

「わりと。でもおいしそうだし、楽しそう」


 おい。

 やっと会話が成立してきたと思ったら、これかよ。

 なにかを非難せずにはいられない。望んでない現状の不満をだれかにぶつけそう。

 なのに自分をなだめられない。ちっとも。

 怖すぎるせいだ。どんなに進んでも、なにも変わらない。

 そもそもずっと、糸を頼りにしながらも、まっすぐ進み続けている。

 目を閉じて長い距離を歩くほど、まっすぐからずれていくという。だとしても、いい加減、壁かなにかに触れてもいい頃じゃないか。それに、これが道なら突き当たりはないのか。


「なあ」

「不安なこと言うのはなし。壁が見つからないっていう話なら、飲みこんで」

「自分で言うのはありかよ」

「具体的に言わないと伝わらないから。平坦で、さえぎるものがない。壁も、突き当たりもない。果てがない。思ったよりもずっと広い空間なのかもしれない」

「しかも出口がないと。どうするんだよ!」

「キミ、モテないでしょ」


 余計なお世話だよ! モテないけれども!


「糸をなるべく拡散させる形で展開していってるけど、引っかからない。一度、止まろう」

「あ、ああ」

「ここまで干渉されてきていないから、一度、思いきり長く糸を飛ばしてみる。いまいる場所を基点に、時計の時刻分の方角に」

「わ、わかった」


 さっさとやれ、とか。歩きだす前にやっとけ、とか。

 彼女が泉たち男子のともだちなら、気兼ねなく言っていた。

 それって、どうなんだ。


「お、俺はどうしたらいい?」

「そのまま待ってて。キミを避けて飛ばすから。動かれると困る」

「おとなしくしてます」

「よろしく」


 とことん情けない。情けないまま、変われない。

 すこし立ったまま待っていると、自分の胸に糸を飛ばされたときと同じ音が立て続けに聞こえた。ごくごく短い間隔で十二回。遅れて、


「構えて」

「は、え!?」


 ずっと暗かった視界に光を感じる。右手から火がついた。糸を燃やして近づいてくる。


「甘原!」

「――……っ」


 思わず彼女を見た。炎に浮かびあがった彼女の怯えきった顔ときたら。

 糸が伸びる彼女の手元にまで、炎は瞬く間に迫る。が、あと僅かというところで不自然に引火が止まった。そして、


「ごめんごめーん! 驚かせちゃった!?」

「糸の人ーっ、待っててー! こっちも突然つれてこられて、迷っててさー!」


 炎のついた糸を辿って、ふたりの女の子が駆けてきた。

 パッと見て、同い年くらい。ひとりは星蘭の、もうひとりは渋谷でたまに見かける制服姿だ。

 ずっと気を張っている甘原に対して、ふたりの少女が驚かせてしまったことを侘びる。

 聞けばふたりともいつの間にかチケットを持たされ、甘原と自分のように、この空間に押し込まれてしまったとか。お互いに自己紹介をしようとするが、星蘭の子が待ったをかける。


「ふたりとも士道誠心の子なんでしょ? だったら、ここをでてから話したほうがいい。奇妙な霊子が漂ってる」

「たしかに? あと、お互いにこんな場所で信用しあうのも無理ってもんでしょ」


 彼女たちは青澄春灯や岡島、茨がやるように炎を周囲に浮かべていた。

 やっと得られた光源が頼もしいし、ふたりと離れるのは恐ろしい。

 周囲を見られる。ただそれだけで、だいぶ気持ちがマシになる。最初はそう思ったのだが、彼女たちが歩いてきたときも、いま一緒にいるときも、炎が照らすのは自分たち四人の姿と床くらい。壁は、見えない。

 ここがどういう空間なのかがさっぱりわからない。

 それに糸が燃えたときに見えた。障害物がなかった。彼女たちはまっすぐ自分たちの元へと歩いてきた。三、四キロは離れていたように思う。

 けっこう大きな声で会話したのに、他に反応する人はいない。

 ここにいるのは、俺たち四人だけなのか。


「糸の先、燃やしてみてくれない? 周囲を確認したい」

「気持ちはわかるけど、やめたほうがいい」


 甘原は確かめたいようだ。しかし、星蘭の制服の子が肩を竦める。


「私たちふたりで合流して、火をいくつも飛ばしてみせたけど、あなたたちは見えなかった」

「糸が突然あらわれたって感じだったね。なんて言ってもわからないだろうから、論より証拠といこう」

「うっし、やるか」


 ふたりで会話を進めて、星蘭の子が宙を浮かぶ火を掴んだ。

 熱くないのか。なにをする気だ。甘原も自分もとっさに身構えるが、お構いなしに星蘭の子が火に向かって息を吹きつける。

 鷲頭が見せてきたプロレスの火炎攻撃を連想した。あるいは火炎放射器か。いずれも引火性のあるものを勢いよく火に吹きつけて燃やしていた。

 火が伸びていくように見えるかと思ったが、ちがった。次々と燃える火でできたヘビたちが躍り出て、四方八方へと散っていく。

 ささやかで小さな火のヘビたちが周囲を照らしながら離れていく。

 遮るものはない。穴も、坂も、扉もない。

 甘原と一緒に歩いてきた方向へもヘビたちが這っていくが、甘原の糸を燃やすことはなかった。ただ、どこまでも続いていそうな床だけを照らして、五、六キロメートルほど離れたところで弾けて消えた。


「ざっとこんな感じでね? 通ってきたはずの門も見つからなくて困ってたわけ」

「そっちは?」


 甘原と顔を見あわせる。

 ふたりが指摘したとおりだ。いきなりの出会いに戸惑っている。

 ただでさえ尋常じゃない状況だ。どれほど信用できるか微妙だ。

 服なんてごまかせる。お互いに。

 なにを言っても、確認のしようのない情報を提供しあっても先がない。

 それでも自己紹介くらいいいだろうと思うのだが、ふたりは余裕があって、おまけにどこかこうした状況に慣れているように見えた。あわてていない。

 落ち着き払っているふたりが、俺や甘原をここへ連れてきた可能性は?

 疑心暗鬼に陥りそうだ。陥ったほうがよさそうな気さえした。

 ただ、縋りたい気持ちのほうが強い。


「なにも」


 黙り込む俺の代わりに甘原が答えた。


「糸をいくつも飛ばして進んできたけど、帰り道の手がかりは見つけられていない」

「他に人と会ったりは?」

「彼だけ」


 渋谷で見かける学校の制服の子、便宜上、渋谷さんと呼ぶことにして。

 彼女は腕を組んで、周囲を見渡す。


「床の破壊、天井の確認、どちらも達成ならず。霊子を調べてみたけど手がかりなし。いったん撤退しない?」

「だね。チケットの性質上、また引きずり込まれる可能性もゼロじゃないけど、こうした場だとわかった時点で、備えが足りないことはわかったし」


 星蘭の子が渋谷さん(仮)の提案にうなずく。

 なにか事情を知っていそうだ。いかにも、そういう感じの会話じゃないか。


「ふたりとも、ここについて――……うお!?」


 尋ねようとした口元に火が近づいてきて、思わず飛び退く。


「質問はなし。こういう場に呼ばれたくないなら、知らないままのほうがいい。ふたりとも現世に送るから」


 渋谷さん(仮)は有無を言わさず、はっきりと「現世に送る」とまで言った。言い切った。


「先に言っておくけど、もしもチケットがまた手元にきたときは、そうだな。炎をだせる御霊の子に燃やしてもらうといい。たぶんそれで、しばらくはしのげる」

「ここについては星蘭の仲間や京都の侍隊と調べるから。東京のキミたちは大人しくしてて? かなり危険なんだわ」

「「 は? 」」


 甘原と思わずハモってしまった。

 実力不足だから引っ込んでいろと、星蘭の子は告げているのだ。

 矢継ぎ早に情報を与えると、ふたりは懐から札を出した。

 宙に放ると、札はひとりでに浮き上がり、突如として燃える。

 紙切れにしか見えない札は、しかし燃え尽きることなく、鳥居の形を取る。うちの学校の敷地にある鳥居とさほど変わらない大きさだ。燃えている炎が両腕でやっと抱えられるかどうかという太さの柱になるのだから、けっこう熱そうなのに、熱を感じない。


「さあさ、通った通った」

「あまり長持ちしない通り道だから。行くよ」


 渋谷さん(仮)も星蘭の子も、ふたりしてこちらの肘を掴んで引っ張る。

 甘原とふたりして抵抗できずに、彼女たちに続いて鳥居を抜けると、奇妙な酩酊感に続いて、うちの学校の鳥居の前にいた。

 見慣れた顔が何人かいて、突然出てきた俺たちを見て呆気にとられている。


「がっこの先生に報告しといてねー」

「それじゃまた」


 渋谷さん(仮)も星蘭の子も、俺と甘原の肘を離して、踵を返す。

 ちょっと待ったと呼びかけるのだが、ふたりともふり返らずに、ふたたび鳥居を通った。青白い輝きに包まれて、すぐに消えてしまった。宝島に行くときとはちがう消え方だった。

 何者かを尋ねる時間も余裕もなかった。

 泉をはじめ、見慣れた顔が急いで集まってきて、なにごとかと尋ねてくる。甘原の元には彼氏が。安堵のあまりにほっとして、和らいだ彼女の顔に心が痛む。

 顔には出さずに泉たちにすぐさま視線を戻して、今夜起きたことを説明した。

 すくなくとも、そう努めた。

 どうだろう。どこまで話せたかわからない。

 ただ、無力感だけがひどく自分を苛んだ。

 泉の話だと、満月日和もまた、あの場所に呼び寄せられていたという。

 気づかなかった。

 そんな事実に縁のなさを思い知らされた気さえして、うんざりした。

 もうなにもかもがいやだ。きついし、つらいんだ。ほっといてくれよ。

 気を抜くと怒鳴り散らかしそうだ。自分たちを助けようと、なんの情報もないなりに探してくれていた泉たちを相手に。それは、だめだろ。

 我慢したら今度は胸がむかむかして、気が狂いそうだ。

 なんで、こうなんだよ。

 俺は、悪くない。

 悪くないだけじゃ、だめなのかよ。

 片思いの相手の存在に気づけず、きっと不安でたまらないなりに堪えて気を遣ってくれた子を相手にクソみたいな態度を取って、しかもなにもできなかった。

 だめじゃん、俺。

 だれかのせいにしたい。なにかのせいにして、しばらく現実逃避したい。

 そんなことしか浮かばない。

 どん詰まりだと、あの場所に行く前の自分なら思っていた。

 けどちがう。

 女の子たちに助けられ、フォローされて、戻ってこれた。

 情けなくて死にそうだ。

 しかも、ろくでもないことにな?

 心はずっと、あの暗闇の中に囚われている。




 つづく!

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