表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
1772/2984

第千七百七十二話

 



 ところで「いままでのはまずかった」から「こういう考えで落ちつこう」として「じゃないと危ないぞ」っていうんじゃあ、まだまだ強迫観念とのお付き合いは続きそうだ。

 そう考えるとむしろ、私の心に刺さる刀たちはいずれも強迫観念そのものといって差し支えない。

 で、強迫観念があるのなら?

 それは長年かけてできあがったもの。

 すっごい速度で走っている車みたいなもので、いきなり停止はできない。ぴたっと止まらせたがるほど、そう干渉するほど、比例して大きなダメージを残す。

 そもそも、そんなものがなかった状態に戻せるはず! あるいは、そうあるべき! と捉えると?

 やってしまいがちだ。いきなり減速。

 海外の制限速度なしの高速道路、アウトバーンでスピードメーターの限界を攻めてみた。そんな車のタイヤを突然びたっと止めたら? ハンドルの制御もゼロ。ブレーキとサイドブレーキだけ、限界まで入れて。

 まあ。

 事故るよね。

 あるいはさ? 車の制御はそのまま。だけど、巨大なコンクリの壁が突如として出現したら? 衝突する。中に乗っていたら死んじゃう。車は大破。取り返しのつかない状態になる。

 もちろん撤去も、中に乗っている自分も、ぜぇんぶ残る。

 それくらいのダメージは残り続ける。

 車は急には止まれない。

 それと一緒で、自分のしていることも急には止まらない。

 ときに頼もしくて、ときにとても厄介だ。

 アディクションとされるものは、特にそう。

 一見すると正しくて、答えに思える選択肢さえ、実態とはまるで異なる適当な内容だったり、詳しく調べることなく当事者と対話さえせずに行なわれる偏見まみれの行いだったりする。

 マニュアル。

 それはときに人をあまりにも愚かしく思えるほど、思考停止に陥らせる。

 精度をあげ、適切になるよう求め続けられる各種医療機関と、うまく合わず、成果も自分が思うほどでないとき、そこで生じる不信感や不安は臆病な心を一気に萎縮させる。

 そんな人たち相手にPVや購買数、実売数や成績をあげるべく囁きかける声がある。

 それだけじゃなくて、ただただ診断や対応が噛みあわないこともあれば? 人が大勢いれば、悪党だっているもので。ろくでもない出会いも、皆無とはいえず。

 そりゃあ、セカンドオピニオンって話になってくる。

 その間にね? 冷静に判断を。適切な窓口に相談を。諸々あるんだけど、その諸々を知らなかったら? その諸々の中で対応する人が、意地悪だったら? まともに対応しないことを是とする人だったら?

 貧困絡みの話で生活保護の受給申請を受けつける窓口で、冷徹に追い払うなんていうのが、そのいい例だ。もちろん、とても、問題が、ある。窓口で、その対応は誤りだ。

 もしもここに誤りとして止められない運動があるとき、暴走車両の対応はどのようにすればいい。日常に潜む強迫観念と、冷徹でむごい対応に潜む数多の暴走車両は。

 そんな風に捉え始めると?

 それはそれで強迫観念に苛まれるかも。

 シャアはそれで地球に隕石を落とそうとした。

 彼が忌むべき人々の先陣に立って、だれよりも忌むべき暴力をだれよりも大きく振るおうというのだから、問題しかない。それほど暴走する彼の前に出てきて正論をいうアムロは、クェスの言うとおり「あんたちょっとせこいよ!」って感じ。ずっとそばで関わればシャアがここまで暴走することなかったかもしれないじゃんね? なんて、画面越しに思う私も「せこいよ」ね。

 そんな風に捉えるから。

 とどのつまり。

 日常を、どう育てていくかに辿りつく。

 自分にできること、自分の手の届く場所で、作りあげようとする。

 アムロのイメージはそっちなんだろうし、シャアなら手の届く場所が幅広いと思える。

 けど、幅広く手が届くってことは、多くの人と顔を突き合わせるようなもので。

 カイジで空中鉄骨渡りをする人たちを眺めて、落ちる人たちを笑うお金持ち連中みたいな、もうどうしようもないレベルに落ちてる暴走車両に嬉々として乗っちゃう麻痺した人々を、たくさん見たら?

 目を醒ませ! と、きつめの一撃を与えたくなるくらい、彼は恐れ、怒りを抱えたのかも。

 タスクに答えを。自分に非が及ばない答えであれば、それがどういうたぐいのものでも構わない。そんなノリの官僚たちを相手にして。

 だれの心の中にもない。ネガティヴ・ケイパビリティ。

 タスクは解決を。問いには答えを。自分がよければ、それでよし!

 その行き着く先だよね。官僚たちも。シャアも。アムロも。行いの内訳がちがうだけでさ。

 仮にそんな風に捉えたとき。

 スマホに見る、常軌を逸した現場を作りあげる犯人は?

 それに対するニュースの記事は。見出しは? コメントは。

 イマジナリーシャアやイマジナリーアムロがあれこれ言いだし始める。

 人はうんぬんかんぬん。これだからうんぬんかんぬん。

 そんでもって、イマジナリーソウル・グッドマンは?

 ああいういかれた、いやいかれたっていうのはよくないか。ああでもいかれたヤツってのは、どの時代、どんな場所にもいるもんだ。だから警察がいる! 任せておけ! どんないかれたヤツがいようと、自分のするべきことをするってもんだ!

 みたいに私をさとす。なだめる。

 彼の名前、本名じゃない。

 ジミー・マッギル。それがソウルの本名だ。

 彼にはお兄さんがいる。ジミーが詐欺だのふらふらだのしてた頃から、ずっと弁護士として働いて大活躍していたものの、強迫観念に苛まれてしまったお兄さんが。

 お兄さんはジミーにこれでもかと罵声を浴びせる。浴びせ抜く。徹底的に。強迫観念のおびただしい数の手でジミーを絡め取り、引きずり込もうとする。

 ジミーはお兄さんがいた弁護士事務所で年を重ねてから入所し、下働きをしながら弁護士を目指す。アソシエイトから、第一線へ。お兄さんの生活の面倒を見て、罵声を浴びせられ、強迫観念に繋がることばを幾度となくかけられる。スティグマを植えつけ、責めてもくる。

 もちろんジミーには強烈なストレスだ。自分をひどく責めて、苛んでもいる。そんな自分を救うためのユーモアや発想力、強迫観念モンスターのなだめかた、落ちつかせ方を必死に編み出していく。

 ブレーキペダルを踏みこみ、サイドブレーキを引いた状態でアクセルを踏むようなもの。ものすごく負荷がかかるから、ろくでもないことがばんばん起きるし、そのたびに彼は傷つくし、恐れ怯える心が刺激されると暴力的になる。人間だれしも。肯定するという話じゃない。そういう性質があるという話。ジミーは必死に堪えようとするけれど、それだとアクセルさえ踏めなくて、ストレスがますますかかってしまう。

 それをはね除けようと無茶をする。過剰な手段に打って出る。

 不幸中の幸いという結果に落ちつくことがあっても、ダメージは大きい。

 泥臭くて、しんどいことの連続。

 窮地をなんとかくぐり抜けるも、そんなものハナからないのが一番なのはだれの目にも明らか。それでも「まあ、やっと、落ちついた」と思えたとき、そうできてしまえるジミーをお兄さんは責めるんだ。

 お兄さんはお兄さんで、どん底の中にいて、そこからなんとかして抜け出したい。なのにその方法がわからない。ジミーがお兄さんの立場でも、たいして変わらなかったろう。

 人生に答えはない。

 問いに答えはない。

 すくなくとも、いまはまだ、だれも見つけられていない。

 そういうたぐいの沼にはまったとき、強迫観念として心に刺さる刀たちは怪物に化けていく。

 心を貪り、破壊し尽くしていく。

 だから援助を。

 そう飛びつきたくなる。

 けれど、心が限界を超えていて、極端に怖がるとき、そうなるまでの間に極度の人間不信に陥るようなできごとを経験しているケースも少なくない。

 周囲はそこまでじゃない。ケアは必要だ、でいい。けど、受ける側にとっては、それさえも心を強く脅かす暴力になり得る。

 どん詰まりだ。

 答えは、ない。

 いまは、まだ。

 生きた地獄みたいな日々が延々と続く。発明なんて余裕もなければ、だれもが「専門家に頼ればよくな~い?」と、答えやマニュアルで思考停止していたら?

 ますます答えは、遠ざかる。

 いまは、永遠のように思える。それに実際、自分が、あるいは自分がそばにいざるを得ない地獄のただ中にいる人が、生きている間に見つかるとも限らない。

 ねえ。

 なにか済む案。あるいは答え。もしくはマニュアル。

 それってさ?

 なにも語らないのと大差ない。

 問題の先に連綿とつづく問いの流れなんか、欠片も見てない。

 けど同時に、素直に述べなければならない。

 わからないんだ。

 答えが。

 心は臆病で。怖がりで。だから、危うい状況だとして、それをいまの自分はどうすることもできないというスタート地点に立つのも、だれかにそう感じさせるのも、とても怖い。

 それは、絶対に、痛そうだ。ううん。事実、とても痛むことだ。

 転んで膝をすりむいて泣いている子がいたら、膝を強く叩いて「痛いよね! どれくらい痛い!?」と叩く大人がいたら? 全力で止める。なにやってんの!? ってなる。暴力だもの。

 それとあまり変わらない暴力にさえ思える。尋ねることも。答えを持たないのに関わることも。

 どうすればいいのかわからなくて、当たり障りのないことを言って、なんなら距離さえ取る。

 タスクは解決を。問いに答えを。

 それでうまくいかないなら? もう、離れるか、耐えて、終わるのを待つしかない。

 そのせいで起きた事件が、いったいどれほどあって、現在進行形で起きているのか。

 救いなどない。そういう状況、あり得る。厄介なことに、専門家や窓口で力になるよりも「お金になるから」や「それ、甘えですよね? 自己責任ですよね?」と突き放し、暴力に加担する人さえいる。

 人は人のまま、どこまでも惨くなり得る。

 なんて。

 あおくさい。

 ただなー。

 人が集まって集団に。集団が集まって、国に。どんどん発明し、手を改めて。助けの手段を増やす。依存の繋がり、線の増大を。しかも大勢いる。地球は広くて、人は数十億単位で。

 そんなにいればろくでもない状態で「これぞ利益! これぞ答え! がはは!」さんもいれば「いやそれあかんやろ」って態度さえばかばかしくて、学んだり、手を伸ばしたりする人もいれば、そんな人の皮を被って弱い立場の人を食い物にしている人もいて、そういう人を取り締まることに血道をあげている人もいる。

 むずかしいから、答えにはしない。ならない。届かない。

 私自身の状況でも、そう。

 だからね?

 意地でも言う。

 ううん。開き直って胸を張る!

 たよるぞー!? がんっがん! たよるぞー!?

 もうね。えげつないレベルでたよる! じゃんじゃん! 依存するぞ!

 負けじと頼られるぞー!?

 ばんっばん! 依存を引き受けるぞー!

 繋がりを増やす。めいっぱい。

 私にできる低減に気づく機会を増やす。

 私ができる発明を閃く機会さえ増やす。

 そのためにもぉ!?

 じゃんじゃんばりばり頼るし依存する! 頼られて依存される!

 まずはそっからじゃい!

 答えを急くことなくね? 付き合えるようにする手を増やしていこう。

 対話をするために。

 いいこと、いいときあった。

 それを増やすために。

 だいじょーぶ!

 くどいけどー!? 連呼しちゃーう!

 きっと、見つかるよ?

 やがて、過ぎるもの。

 だから、だいじょうぶ。

 きっと、うまくいくよ。

 さあ!

 次いってみよー!


 ◆


 ぷちたちを誘って、宝島へ。

 人見知りする子もいれば、楽しみにしてる子もいる。

 イチゴは特に人気が高い。宝島でみんなと遊ぶアイディアを昨夜のうちに伝えてくれていたみたいで、楽しみにしている子が多い。

 あっさり移動。あっさり再会。あっさり合流。あっさりお見送り。

 めっちゃテンポいい!

 わくわく強いなあ。最強か?

 それはそれとして、二年生の有志を集めて烏天狗の館へ。

 先日の要領で尻尾フィールドを展開する。

 蓮池。激臭。まんまるおたまで宙に浮かぶ私。その中に広がるお宿。

 みんなの反応は予想どおりだったよ?


「「「 くっさ! 」」」


 と、


「「「 きったね!? 」」」


 でした。

 傷ついてない!

 知ってたし! ぜんぜん平気だし!?

 うそ! 傷ついた! 改めて言われるとしんどい!


「私とトモカと結城くんでやる?」

「ま、そのほうが早いからね。いいんじゃない?」

「やるなら徹底的にやろう。その間にみんなは刀の準備を」


 シロくんがレオくんに振って、レオくんが自分の強迫観念をひとつ考えておいてと提案し、質疑応答を受けつける。

 その間に三人がびゅんと稲光を残して、猛烈な速度でおたまぬいぐるみな私ハウスに飛び込んでいった。

 けど私たちみんなで考えることとなったお題が、思っていたよりもずっと大きい。

 あれさ?

 多くを語らない系師匠っているじゃん。

 なんで私はこれができないんだ! どうして俺にはうまくやれない!? って悩んだ弟子に「心じゃよ。心が足りぬのじゃよ」みたいな、わかったようなこと言ってさ?

 具体的なことなんにも言わないし、なんにもやらないの。

 そういう師匠の百人にひとりか、よくて十人くらいは、実際にやってみせてくれる。しかも、これがまた自分よりもすごいいい出来なの。

 具体的に教えて!? 答えを! ってなるけど、師匠は決まって「心なのじゃよ」みたいなことを言うわけ。

 それってさ?

 確信であるかもしれない。けど同時に、すべてを包み込むような言葉って、なにも言ってないのと大差ない。カメラで捉える角度、距離感、光の具合、言葉にしたらきりがない設定を、どうしたらいいのかわからない。機材が違うのだとしても。いっそ絵筆にしたほうがいいのだとしても。やっぱりわからない。

 たとえば。

 私はよく休んだほうがいいこと、遊んだほうがいいことを訴える。

 けど、それが具体的にどういうことなのかは語っていない。

 この場合は私がたんに理解していないことのほうが多い。

 師匠の場合はどうだろう? 口下手なのかもしれない。本質的な答えが心みたいなふわっとしたことなのかもしれない。

 けれど、いま問題に差し迫っていて、負荷に心が参っていて、物理的に身体の負荷がえらいことになっているとき、なんの役にも立たない。

 低減を。そして、発生源を一時的にでもいいから止めるか、離れる術を。

 問題の先にある問いと付きあうために、まず被害を食い止めたい。

 そのための答えが喫緊で求められているときがある。

 それこそ江戸の長屋街の火事のように。燃え続けたら、家屋がなくなる。家財も失われる。のみならず、けが人や死亡者が出てしまう。そこまでいかないとしても、火事によって二次災害的に暴力が生じやすくなる土台ができあがるかも。

 こんなときにふわっとしたこと言われても、問題の先にある問いと付きあう余裕がない。

 火が差し迫っているときにはね。

 それくらい間に合わない状況下でさえ、エモさで乗りきろうとしてたんじゃあ? もちろん悲惨なことになる。

 たとえば、段階があってさ? ひとまずいますぐ止めなきゃいけないとき、道を指し示してほしいとき、ふわっとした回答しか得られない状況下では、そうでない状況下に比べて、事件も事故も発生しやすくなるのではないか。

 それほどの状況下で生じるストレス源は、想像を超えて過剰な状態になり得る。

 このとき「愛は地球を救う」とか「優しさが大事」とか、勘弁してくれってなるじゃない?

 自己責任でそうなったんだから諦めな、なんて。傷ついてうずくまる人の背中めがけてケンカキックを全力でぶちかますレベルの暴挙だ。

 求めるのは、低減。やがて求める軟着陸。

 その実現法。

 極意とか、奥義とかじゃなくてさ。

 なにかいってっけど、なにいってんのかわからねえエモさじゃなくてさ?

 火消しの手段。いま燃えてんの!

 それを食い止めて、被害を止める手段が知りたいぞ?

 エモさや、仮に本質だとしても具体的な手段に結びつかないことだと? 間に合わない。

 かといって答えに焦ると雑になる。

 あ。

 あのさ。

 めっちゃ下ネタなんだけど!

 江戸時代に行ったときに、いろいろ話したのさ。いろんな人たちと。

 でね? ほら。私が九尾の狐だとみるなり、聞かれたわけ。ぼーちゅーじゅつの話。

 将軍さまがもえもえしちゃう夜の技はないか、みたいな? そんな話をしたわけ!

 ない知恵を振り絞ったねー。

 昔は男色もわりとよくある話だった。となれば、出てくるわけですよ。

 入れるのか! それとも、入れられるのか! どっちが好きなのか問題が!

 はいここで私のバックに文字写植で、ドーン!

 でも男色の入れるほうを、女子ができるのかと! いうからぁ!?

 ――……コツとして、いろいろない知恵を振り絞って話したよね。

 いるよ? フェチが凝縮された、男の人をとことん責めるのが得意なお姉さんの漫画を描いてる人。えっちな漫画だけど。なんで知ってるのかはさておき!

 できるよ。

 結論からいうと?

 できるよ。

 ただ男女観が邪魔をするし、もしありだとして、ものすごい扉を開くことになりそうな気がして。下手したら打ち首レベルになるんじゃないかと危惧してさ?

 筆とか。使えるよねっていう話をしました。

 なにいってんだ、私。

 ずっとなにいってんだ、私。

 あー。

 中学時代、ほんともやもやしてたんですよ。

 だからずっとなにいってんだ、私。

 あの。ほら。

 気持ちよさでどっちか選ぶのは雑というか、早計というか?

 マッサージの延長として捉えてさ。相手によって生理的にありなしあるし、ありでもマッサージの技術下手っぴじゃ仕方ないし、マニュアルありきで自分のことなんか二の次どころか考えも尋ねもしないようじゃ論外だし、強迫観念やまほどありそうな状況だし?

 抑圧の中でスキンシップに過剰になる例もある。

 だから、すぐに筆とかいう明後日の飛び道具は引っ込めて、その気にするための夜の技の話題からもいったん離れて、精神的に気が楽になるのがまずは先決じゃないかって話にすぐに戻ったんですけども。なんだろ。雑談の範ちゅう? なので。

 話の温度差に風ひくレベルの路線変更具合だけど、あえてこのまま続けちゃうとして!

 私とカナタも去年はけっこう、右往左往した。

 夜の時間。

 精神的に満たされたいのか。それとも、マッサージ的な意味で満たされたいのか。

 後者はさ? 性的な興奮とか、気持ちよさとかが含まれるとして。

 レスの話題でいう「そういう対象として見れなくなった」とか「興奮しなくなった」とか。それを示す身体の反応がどうにもないとか?

 いや。マッサージの単語から先ぜんぶ、マッサージ的な話。

 このときも「お互いの愛情が」とか「上手だの下手だの相性だの」とか言える。

 精神的な部分は愛情が。マッサージ的な部分は、技術だの相性だのが?

 すべてを説明して、答えになっているような気がする。

 けど、それはいまある被害に対して、なんら具体的な低減策にはならない。

 こういうときに焦って答えを求めるときほど「これをすればだいじょうぶ!」というマニュアルを探すし、縋る。そのとおりに試して、うまくいかなかったら相手を責める人さえいる。自分が悪いという不安と付き合えたとしても、相手と対話しようと心懸けられるかどうかは別。自分が対話しようとしても、心が怖がって相手がろくに話してくれないなんてことも、ざらにある。

 すると?

 コミュニケーション、むずかしい。

 自分とのお付き合いさえ、たいへん。

 いくらでも、わーってなる。

 あーあ。

 お付き合いにしても、迫られる判断は多い。

 なまじ「これぞ答え!」で「こうじゃないとやなの!」となるものだと? かかる負担はすさまじい。

 相手とのお付き合いはよくても、相手のともだちや仲間たち、相手の家族や過ごしてきた環境のどれかで負担が生じたら? どうするの?

 いやいや、そこが強迫観念の種なんですよ! も。まあ気楽に付き合えるんならよくね? も。どれが合うかはわからない。自分の中にも、負担を感じる相手の中にも、怖がりな心が震えている可能性がある。怖がるほど暴力的になるし、怒りっぽくなったり、過剰に感情を抑えたりもする。

 氷山の一角をタスクにしたとき、問いは氷山の面積分、あるいは氷山が冷やすお水のぶん、あるいは生態系のぶんだけあるかも?

 その果てしなさを思うと?

 みんなして、黙り込んじゃう。

 なんなら、マドカたちのお掃除のほうが先に終わるくらいだ。

 進捗?

 ありません!

 だって問題の焦点を絞ってないもの! 探りようがないぞ?

 車のライトを浴びた鹿さんみたいだ。ヘッドライト、特にハイビームほど強い光を浴びると、夜でも光を感知して動く彼らには眩しすぎて、目がくらんでしまい、どうしたらいいのか、どこへ動けばいいのかわからなくなって、立ちつくしてしまうのだという。

 車であれば、鹿の運命は。

 漫画の銀の匙だと? さばかれてた。

 さすがにいまの私は鹿さんみたいな状況ではない。ないにせよぉ!

 頭がまっしろ!

 わー。

 どーしよー。

 問題の焦点を絞るどころでさえなかったぞ?

 慣れない刺激をやまほど浴びて、なにがなんだかわかってないレベルで混乱してたもの。

 それじゃあ、見つけていこうか。

 せっかちはよくないよ?

 今日やること! もっかい確認!

 お掃除! みんなと刀の勉強! そんでもって、カナタとあまあま!

 最後にご褒美が待っているのがいいよね!

 それで、私がいま悩んでいることは?

 待って!?

 なんだっけ?


『おい!』


 ああっ! タマちゃんからのツッコミ! ありがとうございます!

 でもいや、ほんとにさ!?

 仕事でしょー?

 学校でしょー?

 侍候補生でしょー?

 おまけに、ぷちたちのことでしょー?

 カナタのこともあればさ?

 理華ちゃんのこともあるし、事件のこともあるし?

 盛りだくさんなわけ!

 ひとまず掃除はなんとかなりそう。ぷちたちの過ごし方も、バリエーションが増えた。そもそも最初からアテにするのもちがうけど、すくなくともずっと私がっていうんじゃなくなった。

 改善が見込める。環境がゆっくりと、じょじょに変わっていく。

 おかげで余裕ができる。

 じゃあ、その次は?

 あれ!? いままでいっぱいカウントしてきたじゃん!?

 まさか、私まだテンパってる?

 自分で気づかないくらい、限界状態のまま?

 私がこれなら、シャルはもっと「わー」ってなってるんじゃないかな。

 車は急には止まれない。

 大変な状況で参っている状態も、急には戻らない。

 どうどうどう。ゆっくりいこうよ。

 低減策を取っている真っ最中なんだから。

 そこで納得したときだった。ぷちたちが暮らしていた生活空間の広がる巨大風船の中から、マドカが顔をにょきっと出して呼びかけてくる。


「春灯ーっ! 黒いのが置いてった書類の束ぁ!? 量が尋常じゃないんだけどぉ!」

「ああ……」


 いっけね。忘れてた。

 休みたいし休めっていわれてるし、それだけじゃ足りずに遊べとも言われてるというのに。

 彼女ときたら! すごい置き土産!

 マドカの横からシロくんが顔をにょきっと出す。


「どうやら秘宝のたぐいの資料もやまほどあるようだ! これ、使えるんじゃないかな!」


 なんですと?

 あれ? がちですごい置き土産になるのでは?




 つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ