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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千七百六十九話

 



 指先が痛くなって、ギブアップ。

 ケースにギターをしまって、じんじん疼く指先を耳たぶに当てる。

 指先。触れるときの象徴めいてる。

 触れるって、不思議だ。

 さすがにいまどき「手を繋いだら、こ、こどもできちゃう!」はフィクションでも聞かなくなったけど、キスやハグになると「うわ、ちゃらっ」となる人もいる。

 それが粘膜になるのか、それとも皮膚になるのかで変わるのか。触れる面積が広がればってこと?

 それについてあれこれ語っているページも、アカウントも、いーっぱいありそう。

 元も子もないことをいうと「手を繋いだら~」さえ含めて人によるし、学名でいう「Ciconia ciconia boyciana」、コウノトリが赤ん坊を運んでくるなんて話もある。その起源も、流布される背景もいろいろあるのだろうけど、それはいったん置いておくとして、実際には精子と卵子についての筋でいく。

 じゃあお互いに避妊を心懸けてするセックスは?

 このあたりも含めると、さらに話がややこしくなる。

 カジュアルなセックスは、ありか、なしか。それを手を繋いだり、ハグしたりするコミュニケーションの一環として捉える人もいれば「そそそそそ、そんな、バリやらしかぁ!」と拒否反応を示す人もいる。それとは別に、過去に悲惨な体験をしているケースもあるし? あるいは、それとは別にマウント話題に選ばれることもあって、ひどくややこしい。

 七色の糸が絡み合って、毛玉になって、ぎちぎちに固まってしまっているような感じ。

 それでも話すんなら、丁寧に毛玉をほどきながら話す? いや、たぶんほどけない。それくらい複雑な状態。釣りだと、ほかの釣り人の糸と絡まったら、いっそハサミで切っちゃうこともあるみたいだけど、なかなかできないよね。話でやるとなると。

 定義も思索もたいへん。対話はもっとたいへん。

 そんな具合に拒否反応さえ出かかっていたけれど、今夜はすこしだけ気が楽。

 明日はみんなで大掃除。烏天狗の館で、尻尾フィールドを再現してね。

 余裕ができたら? みんなの刀を出してみる。そこまでいけるかなー? どうじゃろね?

 それは明日を待つとして。

 寝転がって、スマホのホーム画面を眺める。

 通知がめっちゃたまってる。急ぎの用事は通話で。高城さんたちからの通話はなし。今夜は眠るだけ。なので、呟きアカウントを見る。別名義のアカウントに切りかえて、だらだらと好きな人たちの呟きを眺める。

 こういっちゃあなんだけどさ。

 最近の私の、なんとか意識たかく、みたいなムーブ、呟きにしたら相当きついよね。

 なんだろな。

 いるじゃん?

 こういう価値観が「イイね!」をやまほどアピールしてるアカウント。

 よせよせよせよせって思っちゃう話題だ。けど続けちゃう!

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 みたいな。

 そういうのあるじゃん。

 あんなノリだったね!

 必死か。

 売り込みに必死か。

 ゆるくあれ……っ!

 そういうタイプじゃん……っ!

 って、いまなら思うんだけどね。

 必死だ。

 欲が全面に出てた。

 数字は嘘をつきません、とか言いかねないレベルだった。そうならないように気をつけてきたけど、危うさはあったよ?

 これまでの言葉に嘘はない。ないけどね。

 ほっといたら、そこまでやりかねない勢いだ。

 数字があるから。証拠があるから。それでよし! じゃあ、ないんだよ? それはどれだけの精度で運用されているのか、ちゃんとみなきゃだめ。

 どうどう。

 落ちついていこう。

 せっかくだからふり返るくらいがいい。

 欲から私が必死に並べたことば、思いは、なにから生まれたものか。

 小学校時代に先生やクラスと全然あわなかったし。親の若さもいじられた。トウヤのことだって。このあたりに起源がある。よくもわるくも、ありふれた話。

 ありふれてるからどうでもいいとかじゃあない。我慢しろっていうことでもない。

 発明がほしいぞーっていう思いも変わらない。

 でも、あんまり必死になるとね? 無茶なことをし始める。

 あぶないあぶない!

 一本調子だ。どんだけ続いた? いや。続けたくないし、さっさとばさっと切りたいのに、頭がいっぱいで「わー」ってなってた。溺れながら求めたものだけ必死に吸ってる感じ?

 あぶないあぶない!

 おびただしい数の刀に貫かれた自分を思えば? たやすく吸いたくなる。

 吸いたくなるっていう語感のやばさよ!

 でもなー。どうにもならんぞ? そう、確認したからには、開き直っていこう。

 零点で。焦らず、着実に。

 まあ。

 こういうのが、すでに必死なんだけどもぉ!

 おとがいに指を当てて、壁を眺める。

 日常って、むずかしいな?

 改めて思うんだけどさ。

 カナタを例にする私に「あんた人のこといえないでしょー? 勉強してないんだから!」って、お母さんが私にお叱りの言葉をかけてきた。

 まさにそれ。

 どうやればいいのか、まるっきりわからない!

 達成目標が明らかな、これまでの動乱のほうが、まだわかりやすかった。

 生存を。勝利を。

 食事をするなら、おいしくね。遊ぶんなら、たのしくね?

 やっぱりどっちもわかりやすい。

 だけど、居るのにどうするか、生きるならどうするか、私ってなんだ? なんて。

 もーね。

 わけわからん。むずかしいどころの騒ぎじゃない。

 ピカソ展で壁に記されていたピカソの言葉に、こどもたちのように描くのに彼は数十年かかってるみたいなやつがあったけどさ? 美術に宗教や学問はつきものなイメージがある。風刺もね。そういう諸々をふくめたうえでの、ピカソの言葉ってさ。

 もーね。

 なにぃ!?

 わけわからん!

 いろんな経験、成功と失敗、自分なりに組み立ててきたフィーリングも価値観も、彼の思い描く「こどものように」を邪魔する。かといって野放図にやるのもちがう、の? で? そこから「こどものように」を実現するには、みたいなこと?

 わからん。

 それくらい、謎だ。

 そんなレベルで刀を捉えようとしたら、一本を掴むだけで一生かかりそうだ。

 やば。

 アンドレにも手伝ってもらおうかな?

 タマちゃんはいつだったか、昔なじみの頼りになる人を呼び出していた。ユウジンくんが星蘭のみんなを召喚していたように。

 私は二の足を踏み続けている。試そうともしてない。

 だって、ほら。

 しかし、だれもこなかった! が、怖いから。

 え。怖くない? つらすぎるじゃない?

 ユウジンくんは強制的な召喚だったけど、星蘭のみんなはすぐに乗ってくれていた。タマちゃんだってそうだ。けど、私は? ううん。私が願う、みんなは?

 不安!

 恐怖ですらある!

 なにぃ!? ガチの陽キャじゃなきゃできなくない!? ねえ!

 むりむりむりむり! 

 冷静に思い返すと、私から誘ってみんなで遊びに行った記憶がね?

 ひとつもないの。

 なんてこった――……うわ。私、いまだにこじらせすぎているのでは?

 なんていう自問自答も延々とやってきているわけだけどもぉ!

 それでいいっちゃあ、それでいい。

 事件が起きるよりは、ずっといい。けど日常がしんどいのも困るから、済ませるわけにいかないだけ。Up&Upは、あっぷあっぷとしちゃうよね。くそださダジャレ……っ! でも実際、そうだ。私はいまも溺れてる。

 力むのをやめて、もがくのも足掻くのもやめて、力を抜いて水面に浮かぶ。

 その方針もだした。

 うわ。ここだ。ここで落ち着けないし、納得して止まれないのが溺れてる感じ出てる。

 なんだ。私はいったい、なにがほしい。

 事件か。結局やっぱり、ド派手な事件が起きてほしいのか。

 欲しいのかもなあ。

 楽しいのがいい。成長できるのがいい。えぐいのもぐろいのも、だれかが深く傷ついているのもなし。そんな都合のいいことは起きない。私の刀にそういうものもない。

 なら逆に、そういう方向性に持っていけないか。

 緊張と緩和。こわばってゆるんで、溺れて力んで必死になっている私が、思わずツボにはまるくらい笑える緩和の一撃を探すんだ。

 問題がある。一発ですっきりできて、頼れて安心できる答えを出す! じゃあ、やってることも、求めてることとしても、詐欺と変わらない。

 そうじゃなくてさ。

 零点の私で集中できるくらい、元気がでるように、緊張を緩和させる、そういう一撃を探すんだ。

 それってなんだろな。

 ぷちたちのほうが、よっぽど上手。

 楽しいことがあったら迷わず夢中になっていく。みんながみんな、まったくおんなじ上手さ加減じゃないけどね? さすがにそりゃあそうなんだけど、でも私よりうまい。

 よし。事件か。

 それこそアディクションじゃないのか。

 おおおお。


「寝るか」


 だめだ。

 映画でもドラマでもみるし、現実にだってやまほどいるよね。

 人生か家庭が破綻してる人ほど、仕事か、なにかに依存を越えて囚われてんの。

 ボッシュもデクスターも、ブルもそう。

 ホワイトカラーやスーツ、グレイズ・アナトミーとかだと、もうちょっと気が楽。クリミナル・マインドやNCISになってくると?

 むしろすべて安定して、落ちついて過ごしていくなんて不可能だなんてセリフさえ聞く。

 無意識に妄想して、求めちゃう当たり前の生活は思ったよりもずっとハードルが高い。しかもゼロから自分が作りあげたものじゃなくて、なんか、気づくとそういうのが当たり前に思えて?

 必死にアピールしはじめちゃう。

 あるいは、必死に求めている人むけに商売はじめちゃう。

 の。かも。しれない? のでは。どうだろ。わかんないけど! わかんないなりに後者はアウトだと記憶しておきたいけど!

 デクスターなら殺人を。ボッシュなら、そういう奴らの犯した罪を調べ、逮捕を。ブルなら依頼人の裁判で勝訴を。スーツでも弁護士だから、もちろん訴訟に勝つことを。ホワイトカラーだとFBI捜査官と凄腕詐欺師のコンビが事件の解決を。グレイズ・アナトミーなら、研修医、そして医師として診察を。ときに手術を。

 私なら?

 ぷちたちのお世話。仕事。侍候補生としてやること。

 既に答えは出てるじゃん。

 このうえ、なにを?

 事件?

 ドラマでやまほど見てきた。家庭の問題はすぐには解決できず、現状維持が多い。なのに、仕事でいろいろ起きるから、そちらの解決を。その過程で得た知見や経験を、家庭で活かすか、傷を癒やすか。

 ユーリみたいに練習か競技か、みたいなのもいい。

 すべてが解決できるような事件が起きてと願ってる? 私に都合のいい事件が。実際にはそううまくいくわけもないから、悲惨な傷を負う人が何人もいる、ないし、傷で済まない人がいた、そういう事件に出くわすことになる。それが、関の山。

 それを、求めてる?

 ハンニバルか、あるいは彼の狂気に唆されたウィルか。私はなにを見て、なにに迷走してる?

 そうしていつものように、九尾を噛みつこうと私はぐるぐる回ってしまうんだ。

 タマちゃんや十兵衞が最近あまり絡んでくれないのは、いい加減うんざりしてるからかも。

 私なら、すでに飽きてる。

 なのにやめられずにいる。

 悪夢から抜け出せない。まるでマフィアかなにかのセリフだ! ベターコウルソウルに出てくるソウル・グッドマンなら茶化して笑ってくれそう。彼もいいキャラしてるんだよなー! ブリーフ化学教師が薬物製造で大金を稼ぎ最期はド派手に散るドラマ、ブレイキングバッドに出てきた弁護士さん。スピンアウトで描かれる彼の味が、私はすごく好き。

 悲惨なときでも、ユーモアを。

 そしてどん詰まりに思えるときでも、抜け出しちゃう。

 機転が利くし、彼には彼の必死さがやまほどあるし? 私みたいに尻尾を追いかけてぐるぐる回っていても、わりとすぐに「なら次はこの手だ!」と行動に切りかわる。

 けっこう孤独な人なんだけどね。

 イマジナリーソウルは私になんて言うだろう。

 いつかはどん詰まりになって、いままでよりも惨い目に遭うのがオチだ! 事件なんて求めるな! やめておけ! だれも得をしないぞぉ!? いいか。あんたには仕事があって、こどもが大勢できて、愛する人がいて、頼れる仲間たちがいる! これ以上、なにを望む!? ああ、いい。答えるな。顔を見ればわかる。結局、自分の力を振るえる場所を求めてる青二才なんだ。もういい。だがな、忠告するが、いまやれることで挑戦するほうがいいぞ? 俺ならそうするね。はっ! どうせ聞きゃあしないだろうが! 聞くんなら――……がんばれよ。もういい。行け。あと、俺に電話してくるなよ? 厄介事はごめんだ!

 みたいな? そんな感じかも。

 あー、でもたしかにそうかも。

 イマジナリーソウルを勝手に思い浮かべて考えると?

 いまの枠組みで、じゅうぶんいろいろやれる。考えるどころじゃなかっただけで、もっと求めていい。デクスターはそのへん殺人単押しで全然だけど、ボッシュはむしろしっかりしてた。やることやってたよ? いかにもいぶし銀の刑事って感じで、人を寄せ付けないところもあるけどね。

 いまはまだ、くたびれすぎて、とても手が回らない。

 だけどなにかを獲得したら即べつのなにかへっていうサイクルは、いい加減、卒業してもいい頃だ。次の事件を探せ、ないなら起こせ! くらい過剰になる前に、ちゃんと立ち止まろう。

 そう思ったところで、どうせ起きてるんだ。どこかで。

 そして、シュウさんやユラナスさんたちをはじめ、いろんな人が対処している。そういう依存も、社会には備わってる。なのに彼らを揺さぶるなにかを私がやらかすなんて。どうかしてる。

 どうどうどう、だ。

 尻尾を追いかけるのは、そろそろやめて寝よう。

 明日は掃除!

 高城さんへ連絡!

 ライオン先生にも連絡して、勉強の相談!

 この三本柱でいくぞ?

 決めたら寝る! スマホを充電器につなげて、目を閉じるだけ!

 あ。どうせ事件は起きてるなんて投げるのよくないな。諦めて、投げやりになって、そういうものだと済ませてしまうのはね。こわいこわい。

 待って。寝るんだってば。


「……」


 目が冴えてきた。

 それでなんだか無性に思い浮かべちゃう人がいて、充電器を外してスマホを手に、静かに一階のリビングへ。

 メッセージを送ってすぐに連絡あり。

 さっそく通話する。


「カナタ、起きてた?」


 いや、起きてるから気づいたんだろうけど。

 たわいない話をふたりでしながら、ふり返る。

 日本のドラマって不思議でさ。たまに浮気や不倫をする枠みたいなの、できない?

 昼顔なんかがそれ。お母さんがぼけーっと見てたんだ。当時は、春灯には刺激が強い! って言われたけど、いやいや。地上波で流れてますやんって思ったっけ。

 横恋慕。不思議となくならないもの。神話にも、昔話にもある。

 目の前のことよりも。

 身近で大事な縁よりも。

 安易に思えるくらい、離れたなにかに求める。

 それって、なんなのかなー。

 私は次の事件、次の騒動に浮気したくてたまらなかったのかな。

 納得したい。いまある不安定さをこえてでも、いまの縁がいいのだと。味のちがうなにかを食べて。そういうこと?

 それだけじゃないか。

 それだけじゃないな。

 なんとか突破口を見つけようと足掻いてきたけど、そろそろ浮気な危うい領域に足を踏みいれかけてる。

 大好きな人の声を聞いて、心底安心しながら再確認。


「私さー。いま弱ってる」


 会いたいなあって弱音をめいっぱい、正直に伝えておく。

 いますぐ行く。うちの即席鳥居を抜けて会いに行くなんていうから、明日ねと言った。止めても来ちゃいそうだと思いながら。来ちゃったら、盛りあがっちゃうにちがいないと思いながら。繰り返し、明日と伝えた。

 会いたくてたまらないし、めいっぱいあまあましたいから、明日と願う。

 ふたをはずして、言いたいこと、伝えたかったこと、だれかに聞いてほしかったことを言うし、聞きたいし伝えてほしいし、カナタが聞いてほしかったことを尋ねる。

 その繰り返しには、いつだって果てがなくて、声を聞いているだけなのに心がどんどん盛りあがっていく。近くに感じるのに香りも感触も得られないから、さみしいんだって気づく。

 なんだ。

 私、こんなにさみしいことに気づかないくらい、いっぱいいっぱいじゃん。

 いまさら気づくなんて。

 ほんと、ばかだ。

 こういうときには素直すぎるくらいの歌がいい。

 お母さんや美希さんの世代、それか、ちょっとうえくらいの人たちにドストレートな歌姫さんがいてさ。世界の果てまでいく冒険バラエティ番組で芸人さんが熱く愛を叫ぶ人の曲にあるんだ。

 Baby Don't Cry.

 お母さんが好きなんだよね。この歌。

 これまでに刺さって、成就できなかった私にいつか歌えるだろうか。

 これからの心配はもういらないから、だいじょうぶだからね? って。もう泣かなくていいからねって。

 いまは無理だ。とてもじゃないけど。

 すがるようにふたりでしゃべりつづける夜にできることじゃない。

 光の歌詞に完成させないで、もっとよくしてってあるし? この曲の歌詞には「良くなる方に捉えたら?」ってある。荒ぶり必死になって、視野が狭くなって肩を怒らせて訴え始めるとき、そっとハグしてなだめる緩和もある。笑うだけじゃなくって。聖歌ちゃんが教えてくれたように、ハグでなだめられることもある。

 話がややこしくなるから、だれにでも、どこでもとはいかず。

 カナタに求める。ぷちが私に求めるように。カナタも私に求めているし?

 ふたりして筒抜けだと気恥ずかしいやら、明日が楽しみすぎるやらで笑えちゃうくらい、伝わっちゃうのがね?

 わー!

 って、感じ。

 明日、やることが増えた。

 ぜんぶ、楽しみだ。いま増えたことは特に。




 つづく!

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