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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十九章 おはように撃たれて眠れ!
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第千七百六十八話

 



 戻ってきたキラリが私を呼ぶから、ふたりで和室へ。

 襖を開けると、頭をすっぽり包むほど巨大なマスクを装着したマドカがいた。

 臆さず言うなら、ダースベイダーみたいだった。

 しゅこー。しゅー。しゅこー。音まで再現してる。

 そんなものを持ち運んでいるはずがないから、私の力を再現して作ってみせたのかもしれない。

 でも、なぜ。

 しかもマドカは寝そべっていた。心なしか、尻尾がしゅっと窄まっていて、弱々しい。


「……春灯」


 しゅこー。


「は、はあ」


 いや、あの。音がね? 気になるんですけど。

 どういう仕組みなの? どこかに酸素ボンベでもあって、それに繋がっているの?

 あと、カイロ・レン式じゃないんだね。


「だ、だいじょうぶ?」


 しゅこー。


「休んでる」


 しゅこー。


「「「 …… 」」」


 三人でいる和室に訪れる静寂。もとい。

 しゅこー音。


「おぉん!? くさいってか!?」

「くっせえくっせえ! この世の悪臭を凝縮してるレベルで、くっせえよ! は!? なんでわからないの!? 鼻毛でふさがってんじゃないの!?」

「そこまで伸び放題にしませんしぃ!? だっ、だいたい密封したし! コトネは無事だったし! だっ、だいたい、気分が悪くなったのは、欲の声を聞いたとかじゃなく!?」

「いいえちがいます。シンプルにくさいからです」

「くっ、くさいくさい連呼しないでよ! それにコトネは無事だったもん!」

「いいえー彼女も我慢してましたー。強いて言うなら? 私のセンサーに、びびっときすぎて酔いが回ったのもあるけど。それにしても、くさすぎましたー」

「ううっ」


 刺さるなあ!


「やっ、やめよ? くさいっていうの、一旦やめよう。じゃないと泣いちゃう」

「わかった。ただ念のためいうと、春灯がっていうんじゃないからね? あんな状態になったらって話であって」

「もちろん、そうでしょうとも」


 ただね? つい勢いを出しちゃった。

 マドカもそうだったのでは?

 ふたりして盛りあがっちゃった。時折はさまれるマドカの息継ぎしゅこー音が、いかにも間が抜けていて痺れる。なにやってんだか、情けなさが変で気が抜けて、おかげで笑える。

 むしろ気が緩められてよかった。

 マドカが無事でよかった。


「ちょっと酔いが落ちつくまで寝かせてもらいたいんだ。視覚的にも正直きつかった。あんなになっているのに、いま顕著な影響は出ていないってほんと?」

「ほんとほんと。くたびれてはいるけど。あくまで私のイメージだから」


 忙しさと、これまでのごたごたで心が参ってるけどね。

 それはとっくに話した。マドカはちゃんと承知している。


「で? 春灯を呼び出してしたい話はいいのか?」

「ああ、まあ、だいたいは。コトネが匂いを感じたかどうかについては確認したいかな。私が嗅いだ匂いに疑問の余地がある」

「ふうん……なんだかよくわからないけど。ジュースでも持ってくるか?」

「ぜひ。ちょっと寝てたい」

「おう。春灯、いこ」


 ええええ。

 キラリ、いきなり仕切るじゃん。

 寝転がって仰向けになって、それっきり動かないマドカを見る。手を挙げて、ひらひらっと雑に振ってきた。

 参っているのか、すぐに手を畳に下ろして「しゅこー」と繰り返し息をする。ただ、長くゆっくりとしたものに変わっていく。

 トイレに駆け込んで、何度もえづいていた。つらいのは間違いないのだ。

 マドカにとっては激臭だった。私もコトネも、匂いに即座にやられるわけじゃなし。マドカが劇的に反応して、即座に逃げたくらいの臭さだとしたら? 私もコトネも獣憑きなので、別種の獣だとしても、それなりに近しい反応をしそうなもの。

 なのになぜか、マドカだけ。

 では、私たちとマドカの違いはなにか。

 それを知るべく、マドカはあとでコトネと確認したいと言ったのだろう。


「春灯」


 キラリに催促されて、そそくさと和室を離れる。

 明らかにマドカはなにかに反応したんだ。それがなにか知るには、どうすればいいのか。

 わからん!


 ◆


 宝島に急いで行くよりも、ぷちたちと私を加えてしっかりと、みんなで居るための手段を。

 すぐに答えが出るはずもないから、ああでもないこうでもない、それいいしこれもいい、右往左往の話にみんなの経験談や価値観をならべていると、それだけで時間が過ぎ去る。

 気づけば夕暮れ時。

 みんなを見送って、ぷちたちが帰ってきて、私はみんなの冒険譚を聞きながら心を繋ぐ。

 愛着を結ぶ。そんな風に肩を怒らせると、自分の意識が邪魔するから遠ざけて、心の矢印さえも投げ捨てて、ただ開く。

 共に感じる。助言でも、指示でも、評価でもなく。

 言葉にすれば簡単で、思うようにいくいかないもどうでもよくて。

 気がついたら晩ご飯どきになって、ご飯が済んだらお風呂へ。

 さすがにずっとはいられないから、そこで宝島に帰るノノカたちを見送って、お別れ。

 すっかり仲良しさんになった子たちが騒ぐけど、また明日きてくれる約束をして、また明日。

 みんなの話は尽きない。

 けれど元気よりも眠気が勝つ。次々にうとうとして、とうとう最後のひとりが寝る頃には夜九時をすこし過ぎた頃。

 マドカたちが持ってきてくれたノートをざっと写して、軽くできるレポートを済ませて、高城さん経由でナチュさんたちのくれた音源や次のライブにまつわる連絡のチェックをして、返信をしたら、あっという間に深夜零時を過ぎている。

 ヒヨリはひとりで意地でも残ろうとしてくれたけど、また明日と送り出した。コトネはマドカと話があるみたい。マドカはずっと前から顔が広い。コトネはマドカにとっても貴重な人みたいだ。

 そっちは任せた。連絡に応える元気はもうなくて、ガス欠の私はカナタと通話で短く愛を語り合って、いまはひとりベランダで月を見ている。

 金色で作った泡の中で、なんちゃって防音室でギターの弦を適当に弾きながら妄想する。

 もしも。

 ああ、もしも士道誠心に入らなかったら。

 獣憑きになることもなく、二本の大事な刀を得ることもなく。

 そのとき私はどんな人になっていただろう。

 まるで見えない。想像できやしない。

 たとえばいま、尻尾と獣耳を見えないようにして、名前を変えて渋谷でだれかと出会えたら。

 余命わずかな女性が死ぬまでにやりたいリストを実行していった、そのひとつにあった「私のことを知らない、行きずりの男とSEXをする」のようなことを試したら?

 いまの私がすこしは見えたりするのかな。

 未練も、死を前にしなければ勇気を出せずにいたことも、あるいはいまの自分とはかけ離れた振る舞いも、ひとつずつ試したら、世界の色は変わるのかな。

 私が見つからないから、私が見つかるなにかをしたい。

 そう思うわりに、いつから私があったのかを見失ってる。

 こうするのが当たり前。

 そこから始まって、そこに押し込められて、飛び出たときには白い目で睨まれて、焦って戻ろうとしたときにはもう遅くて。

 強迫されること。求められること。慣性と指向性。

 背中を押されて、巨大な波に押し流されて、そういう流れのひとつひとつが私や世界だと錯覚して、なのによくわからない。

 仏作って魂入れず。言葉を知って、命に触れず。適当に使えれば、もうそれでいい。流れに乗れれば、もうそれだけでいいみたい。

 だから、たぶん、それだけじゃだめだと気づく。

 エネルギーをすこし足した。だからなのか、今日を過ごして補充分が減ったことを実感する。

 もっと。もっとほしい。そう求めるのと同時に、ふと思う。

 なにかを求めて、そのために動くとき、わりと疲れる。くたびれちゃう。

 動ける目標も、運動も、たぶん一度に抱えられることって、そんなに多くはない。抱え込めない。一度にひとつ。ね? あくまで一度にひとつまで。

 分けて、整理して、スイッチを切りかえる。

 私に思いつくのは、このくらい。

 すると「ああ! ほしい!」と願うことがあるほど「ああ! たりない!」と苛まれる。

 意識していることでも、無意識に抱えていることでも一緒。

 あの刀に執着するほど、必然的に私は苛まれる。

 ライブ前に「もうちょっと……その。衣装的に、ね?」と言われた絶望感が近い。

 むりだよ。

 もう絞れないよ……。

 食べるの我慢するとつらい。飲み物我慢するのもつらい。なのに、あれしてこれしてとタスク増やされるのもつらい。ただただとにかくつらさが増して、つらい。

 朝起きれてえらいって自分を褒める歌があるけど、あんなノリで自分を褒めていかないと、すぐに潰れちゃうくらいにつらい。

 それを正当化したり、しきれなくて、やっていない人たちをバッシングし始めたりするのも? もちろん当然、つらい。

 気分はね?

 赤点まみれで再提出か、そもそも手をつけていなくて「はよだせ」とせっつかれている、年齢かける夏休みの宿題のボリュームくらい?

 たまってるなー。

 やっばいわー。

 刀の一本一本が、一年分に相当するとしたら?

 かけることの、千本くらい?

 わーお。

 たとえば、ぷちたちのこれまでの感情ひとつひとつを刀に例えても、やっぱり?

 わーお。

 どうにもならん。いや、ほんとに。

 人は変えられない。よく私は思うようにしている。こどもが相手でもそう。いつか生む日がきたときも。育てていく過程でも、そう。年上の人たちが相手なら? ますますそう。そして自分が相手でも、まあきびしい!

 なので人は支配という果実に手を伸ばし、しくじるか、表向きに成功しているようで可燃性の怒り燃料がたまっていくのが関の山なのだとしてよ?

 どうにもならんぞ?

 これは。

 みんながあれこれ話してくれた。試そうとしていることも増えた。

 けれど、ひとまず落ち着けるラインに辿りつくまでに、ぶっちゃけ数日か、数週間か、あるいはもういっそ何ヶ月か何年かレベルでかかるかもしれない。

 どうどう。

 落ちついて考えよう。

 冷静にね? いちばんきっつい状況から想定するとして。

 対処できる数、抱えられる数、減らしていかないと? あっという間に感情が大爆発する。

 千本刀たち。なかったことにできねえか! なんとかずるするわけにはいかねえのか!

 無理だなあ。

 そう。サイコロの旅やってるようなものだ。終わりなし。期限なし。常にえぐい角度の座席しかない深夜バスのみ。それであちこち移動し続ける、そんな旅の仕方でいまに挑んでいる。安眠できない夜の数だけ、刀が増えていく。

 一気に話の規模がしょぼくなった!

 けど、実際そんな感じだ。

 安らかに眠れない夜のカウントは?

 ゼロにならない。

 兄貴は死んだ! もういない! みたいなノリ。

 なんだけど、私が思い浮かべる千本刀、あるいはしんどかった夜の数だけ道路に並べてみたら? 出口はひとつ、私自身が自分を許せると認めたものだけが抜け出せるボトルネック構造だとしたら?

 世紀末レベルの大渋滞になりそう。

 しかも一日いちにち、過ごすたびに増えていくの。

 パンクする。というか、してる。ずっとやばい状態。

 実はみんなと話したときにも出たんだ。現状認識、もっと限界から設定したほうがよくね? って。ミナトくんが提案してくれたの。私が言ったことを引用して。

 自分で言っておいてなんだけど、なるほどたしかに彼の言うとおり。

 でもって、みんなならどうかについても話した。

 結論は?

 わー!

 答えは出なかった。

 そもそもこれまで何度となく、えぐい状況に追いやられてきてなお、だれひとりとして名案が出なかった。そりゃあ、そう。こんな状況、想定して学んできたことひとつもないもの。その連続だったもの。

 いい加減、学習してもいいよね……っ!

 そう気づいて、みんなで頭を抱えちゃったくらいだ。

 そりゃあ、答えは出ないよ。

 でね? こういうときは焦らず落ちついて、繰り返し実験して試行錯誤できる環境を整えようという結論に至った。具体性は、これから詰めていく。となれば? やっぱりもちろん、私はみんなと一緒に宝島へは行けやしない。

 いままでなら? たぶん、行っちゃってた。それでもえいやとついていった。ぷちたちと合流して、あわてふためきながら、これまでのノリで過ごして、これまでのように刀をせっせと増やしていたにちがいない。

 あー。

 学んじまった。

 私で済むなら? 身軽なら、それでいいじゃんって?

 そういうわけにもいかないんだよなー。

 尻尾の中のお掃除については、みんなの協力を得られることになった。

 大掃除くらいわかりやすければ、わけないんだ。ほんとに。

 問題は答えがわからないこと。どうすんの? ねえ。

 発明するんだーって意気込んでも、そうそうできないから足踏みしちゃうか諦めるか、考えるのをやめるかしちゃう人がたくさんいるわけでしょ?

 もー。

 ばーか。

 千本刀の私の似姿を像にして、お祭りやるか。鎮魂祭だ、みたいな提案もあった。

 これまでのノリなら、たぶんやってた。

 でも、そういうことをしてきたうえでの千本刀。無駄だったとはいわない。癒やしになったし。元気をいっぱいもらってきた。けれど、今回問題にしているのは、そこじゃない。

 祭りは大歓迎。元気が出ることもうぇるかむ!

 それとは別にぃ!

 どうするのかっていう、お話だ。

 たとえば人生、こうするのがすっごく素敵! みたいな強迫性を想定すると?

 だめだめ。

 ラインがあがる。道が狭まる。

 ああしなきゃ、こうあるべきが増える。

 いまの私にそんなことしてる余裕、ねーから!

 歌のお仕事にしても、学校での過ごし方にしても、侍候補生の青澄春灯としても、天国修行のおたまとしても!

 ああしなきゃ、こうあるべきという欲求や強迫は増やしていられない。むしろゼロにしたいまである。

 そういう方向性が楽だと気づかせてくれて、提案してくれたのはギンだった。

 精度をあげるのも、日常のちっちゃな発見や発明に備えていくのも大事。だけど、それには集中できる環境がなきゃね? そして集中と抑圧は別物。私が意識的にも無意識的にも陥っているのは、抑圧。集中に舵を切りたい。これは、シロくんの提案。

 ボトルネック構造なら、ネックを増やしたり広げるにはどうするか。そもそもため込んでいるものって処理が必要なのか、保留にするのか、どういう選択肢があり得るのか。

 ぜんぶ、集中して考えたい。

 遊び心が入る余地があるくらい、意識にも無意識にも余白がある状況で取り組みたい。

 わーって抑圧されてパニック状態のときに考えるのは?

 むり!

 いまの私は?

 適さない!

 考え込んじゃうくらいなら、歌っておけば? とキラリに言われて、ギターをじゃんじゃかやっている。

 それでも再確認しちゃうくらい、頭は走り続けている。ランナーズハイとかじゃない。無意識の私が首輪をつけて、引っ張っているのだ。立ち止まると息苦しくなって、引きずられて死んじゃう。そんな気がして、走らずにいられない。

 それじゃあ休めるはずもない。

 なので、妄想してみる。


「――……」


 アダム・ラヴィーンのロスト・スターズ。

 映画はじまりのうたでお披露目された曲だ。劇中歌でもある。

 主演女優さん演じるシンガーソングライターの若手が作詞作曲した一曲。

 アダムは有名なバンドのボーカリストで、世界的に有名な歌手なんだけど、映画じゃ主人公と一緒に活動していて、音楽会社に見初められた若手歌手。売れていく過程で、どんどんイキり、もとい、変わっていく。

 ロスト・スターズも、どんどんずれたアレンジがなされていく。

 しかも彼ときたら、魅力的な彼女がいながら、ビジネスでの成功と華やかな空気にすっかり酔っちゃって、浮気はするわ、彼女はほったらかしにするわ! 似合わないヒゲ面にさえなるわで、もう散々だ。

 主人公は主人公で、いい出会いがあった。すっかり落ちぶれてみえるものの、実力は折り紙付きで、多くの人に愛され憎まれているプロデューサーに惚れ込まれて、場末のバーから、ユニークな収録と素敵なナンバーのアルバム制作に。いろんな人たちのサポートを受けて、彼女は彼女の道をいく。

 だから、やっと彼が目を覚ましてラブコール。素敵なアレンジで彼女の気を引こうと歌ったところで、ね?

 そんな場面で映えてる一曲が、妙に好き。

 仕事で成功。

 そういう瞬間は私にもたしかにあった。一瞬の煌めきのようなもの。

 それは波。はじめて乗れた。すぐに落ちて、高城さんや社長、トシさんたちに助けられながら、次の波に備えられている。波に乗れたのだって、みんながサポートしてくれたから。

 舞い上がって、それをぜんぶ自分の実力なんだと錯覚するか、これまでがんばってきた成果なのだと当然の顔をして、もっともっとと貪欲に求めてさ?

 学校でのこと、二本の刀、カナタや、それまでにあった素敵な縁もぜんぶ「終わったことだ」と見向きもせずに、仕事に没頭する。

 そんな道さえあってさ?

 そしたら私は、彼より小さな舞台、彼とは比べものにならないほどすくない人数を相手にして、なくした縁を想って歌っていたことだろう。

 星を失うのだ。

 求め願い、見失っていくほど。

 縁を失い、私は欠けていくのだ。

 映画じゃさ? 世界的シンガーの舞台。ライブハウスで、満員の観客を相手に歌う。すごくいいんだよなー。もし現場にいることができたのなら、私も最前列で、うっとりしながら彼を見あげていたはず。

 甘い声を聞き、飛び散るつばを浴びる。間近に彼の熱を感じて、手を伸ばし、身体を揺らして酔うのだ。たっぷりと。

 劇中での彼は、主人公を呼び、彼女に捧げると宣言して歌う。

 途中で彼女は出ていっちゃう。それに気づく彼の顔がまた、実にいい。

 ついつい「男はこうだよー」とか「女ってこうなの」とか言いたくなるくらい、ふたりの見ている先はずれていて、だけどそこにとびきりの味がある。

 ただ、彼よりさみしい場所で歌うことになる自分を思うと、途端に味が渋くなるよ?

 仕事でいえば、しっかり真面目にこつこつと。縁を大事に。つれない相手にはそれなりに。成功に酔っていたら、次の波に押し流されておしまいだ。酔っているひまなんかない。一緒に居ると選んでくれた人たちと、しっかり歩んでいくんだよ? 地道に。

 それは仕事に限らない。

 わかっているのに、探してしまうんだ。

 あるんだよなー。

 おなかぺこぺこで、お酒を呑むと、がっつり酔っちゃうのだそう。悪酔いする可能性も高いんだって! トシさん行きつけのお店の常連さんたち曰くね。

 成功もお酒。飢えてると、悪酔いしてトイレにこもって、はいさよならだ。

 しかもお腹がすいたら、元気がでないよね?

 元気がでないと遊べないし、気分が落ち込んじゃう。

 よくないんだよ。

 そう! まさにそこなんだよなー。

 お腹ぺこぺこなんだな。

 私はいま、飢えているのだ。

 彼は彼女の縁に気づいて、ああこれが大事だったんだって腹ぺこ状態に気づいて、全力で歌うし、気を引こうとする。

 けど彼女はわりとお腹が満たされてて、再び彼にごはんをあげる気分にはなれない。そもそも彼は彼女においしいご飯をくれる人じゃない。それに彼ときたら、彼女の目線で渡せるご飯のこと、全然イメージしてない。自分が歌い、キミがそばにいればもう十分。そんなノリ。

 それじゃあ届かない。引き留められないよ。素敵な歌だけど。歌声も最高なんだけど。彼女は観客で彼に見惚れる人じゃないもんね?

 冒頭の彼女は腹ぺこだった。

 私もそう。

 せっかくここまで思考の旅をしてきたのだ。

 お腹を満たせることがないか探してみよう。

 さしあたっては、もうすこし月夜に歌いたいから、曲探しといこう。




 つづく!

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