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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第十四章 訪れた八月の休暇

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第百七十三話

 



 突撃! 私の回りのカップル!

 テーマは……恋人とどこまでいちゃいちゃしたいですか?

 直球で聞くのは難しそう! 正直、どんなテンションで聞けばいいのかわかりません!

 なのでインタビュアーのわたくし青澄春灯は心理テストを仕掛けてみようと思います!

 質問はですね。

 相手と勝負して、勝ったあなたは罰ゲームで相手にスミを塗ることに! さあ、どこに塗りますか? です。

 質問はぶっちゃけインターネットより引用であります!

 ちなみに選択肢は六つだよ。

 あご、おでこ、目、鼻、ほほ、口。

 あごから順に高くなるの。なので口がマックスです。

 ちなみに私は口でした。おーぅ……。

 で、では気を取り直していきましょう!

 仲間トモさんに聞いてみました。


「心理テストか、初めてだ。んー。そうだなあ……目?」


 それはなぜですか?


「やっぱりスミって言ったら目の周りかなって。可愛いじゃん、パンダみたいで」


 なるほど……ちなみにいちゃいちゃへの関心度でいくと半々ですね。

 ちなみにシロくんにスミを塗るならどこですか?


「鼻か……口かな。赤いスミで塗りたい。ちょっと見てみたくない? 女形、シロ」


 いいかも! 確かに見てみたい!

 っていうか、あがった! あがりましたよ!

 ちなみに鼻を選ぶ人は意外と押しに弱いとの診断結果です。

 シロくんに押されるとトモは弱いんですね……!

 それはなんだかほんほんしますね!


「で、これはなあに? 聞きたいことがあるなら正直に教えてよ。ハルはあたしの何が気になるのかな~?」


 うっ。さすがのトモ。にやけた声で私の心を引っ張ってくるね……!


「し、シロくんとどれくらい……いちゃいちゃします?」

「はっはぁ……なるほどね。そういうことが聞きたいのね?」


 得心がいった声に思わず身が引き締まるね……!


「アメリカに行ってきたの。あっちで邪が大量に出てるっていうから、選抜されてさ」

「う、うん」

「アメリカ旅行だよ? ハル、もしあんたが彼氏と行くなら……期待する? しない?」

「そりゃあ……」


 カナタとアメリカ行けるんなら、もちろん答えは一つだ。


「すっごく期待するかも」

「ね。正直、シロはそういうの興味あるけど、あんまりガツガツ進めるタイプじゃないし、あたしも急ぐタイプじゃないから……強いて言えば」

「強いて言えば?」


 含みを持たせる言葉にどきどきしながら聞いたらね。


「担当エリアの駆除が終わってひと息ついた夜に呼び出されて、帰り間際にキス……されたくらい?」


 ふううう! ふううう!


「す、すごいね!」


 やっぱりいちゃいちゃしてたんだ!


「まあね。でもそういうのは頻度も何もかもゆっくりペースかな。なのでとっておきはこれくらいです」


 意外といえば意外かも。

 トモの必殺技といえば雷の早さで迫るものだ。

 瞬速で経験していそうだと思ってました!


「人によるしカップルによるでしょ。それに関してはあんたの方が進んでると思うよ」


 さばさばしてる……! っていうか、え? なんで私の話? なんで気づかれてるの?


「あんた一度、彼氏の首にすっごい痕つけたでしょ」

「おぅっ」


 なんてこった。覚えしかない!

 一度、カナタの首筋に何度も噛み付いたことがあります。

 我ながら朝方見て「やっちまった。えらいことやっちまった」と青ざめたものです。

 カナタは笑って許してくれたけども。それ以来、首筋を噛むのは我慢してます。


「ま、そういうわけで。その手の話については進展なし」

「そ、そっか。ありがと!」

「いいよ。じゃあ、またね」

「またね! おやすみー!」


 通話が切れたので、次の連絡先に掛けてみます。

 てれれてれれてれれ、てれれてれれてれれ……。


「はい?」

「もしもし、ノンちゃん?」

「……嫌な予感がします」

「はやっ」


 野生の嗅覚がノンちゃんの彼氏のギン並みに鋭くなっている……!


「それで、なんですか?」


 最初から呆れた声なんですけど……!

 私そんなにしょうもない用件でばっかり連絡してるのかなあ。ううん。反省。

 それはさておき。


「ノンちゃん、彼氏とどれくらいいちゃいちゃしたいです?」

「頭だいじょうぶですか?」


 切り返しが鋭い……!


「……まあ。二人でいるとくっついてますし。ギンも私も離れない方なので、ちょっと困ってます」

「というと?」

「んー。逆に質問です。二人でいたら、いちゃいちゃしなきゃだめですか?」


 えっ。えっ。まさかの逆インタビュー!

 考えてないよ! まいった! どうしよう! えー……ええ?


「いちゃいちゃすればいいんじゃないの? だめってわけじゃないけど、でも……くっついてたくない?」

「くっついてたいですよ? くっついてたいですけど……それに依存するのも怖いなあ、と」


 依存ですと!

 ま、また難しい話をするなあ。どういうことだろう。


「一緒にいたらくっついて。そばにいたらキスをして。キスをしてたら盛り上がって……外に出ないで、いっつもそればかりになっちゃって」


 なんと……!


「嬉しいし、喜んじゃうんですけど。でも……外に行って遊んだりできるはずだし。なんとかしたいなあって思うんですけど、方法がわかりません」

「ほ、ほう……」


 どうしよう。恋人がいる点では同じ状況なはずなのに、ノンちゃんの進み具合が私よりも遥かに早くて追いつけないよ……!


「なんだかギンは私が他の男の人といると、その後すっごく情熱的になるんです」


 わお! わあお!

 だいじょうぶ? ノンちゃん、それ言ってだいじょうぶ?

 思わず顔が真っ赤になりますよ!


「部活の特訓でしこたま怒られた日に怒られたって言うと、傷つかずに済むように檻に入れたいとかって、いわゆるヤンデレに近い呟きをこぼしてました」

「ほ、ほう」

「まあ絶対そんなことしないので、冗談なんですけどね」

「そ、そうだよね。冗談だよね」


 ヤンデレって。檻って。

 どこかの乙女ゲームの幼なじみのお兄ちゃんじゃあるまいし!

 ああでもカナタも冗談で言ってたっけ。鳥かごに入れておきたいって。

 不安になったら、あるいは守りたくなったら男の子は彼女をしまいたくなるのでしょうか。

 それは一部だけのような気もしますけども! もっと平和なカップルだらけだと思いますけれども。


「勉強もついついさぼっちゃいます。どうしたらいいんでしょうか……」


 おっとそうだった。

 ノンちゃんから思わぬお悩み相談を受けていたんでした。


「それは……その。む、難しい話だね」


 私にはたいした声援を送れそうにもありませんけども!


「た、たぶん、それくらいギンにとってノンちゃんは愛しくて可愛くてしょうがない存在なだけなんじゃないかなあ」

「そうなんでしょうか……」

「そうだよ。別にギンはノンちゃんに当たったり、怒ったりなじったり……ましてや閉じ込めたりなんてしないでしょ?」

「それだけは絶対にないです」


 ううん。聞けば聞くほどあつあつです。


「じゃあノンちゃんが落ち着く手段とか、ギン自身が落ち着く手段が見つからなくて手探りなだけなんじゃないかなあ。それでつい、いちゃいちゃしちゃうというか」


 きっと。


「んっとねえ……」


 高校デビューを考えた時に、黒の聖書の最後の方に未来予測日記をつけたんだよね。

 調べたんですよ。彼氏ができた時のあれこれを。

 結局妄想でしかないよねって思って、たいして重要視してなかったけど。最近の復習で思い出したの。

 えっとー、たしか。

 黒の聖書四十八章、これこれ。これに……。


「彼氏が不安なとき。あなたの行動と、彼氏の心理ケアが大事です……なんだけど、質問」

「は、はいです」


 電話越しにノンちゃんが息を潜めた。


「ギンって自分の感情や行動の責任をノンちゃんに求める?」

「それはないです」

「だよね。ノンちゃんに怒ったりしてないもんね」


 課題をさぼってコマくんに追い掛けられてたこともあったけど、ノンちゃんに迷惑がかかるかもってなったらすぐに課題をやりに戻ってたもんね。

 自由奔放だし無茶苦茶するところもあるけれど、実は軸がしっかりしてる男の子だと思う。

 その軸は……ぜったいノンちゃんを傷つけない。私から見たらそうだ。

 それにしても想像を超えた肉食っぷりです。さすが!


「ならノンちゃんが一人でいたがったり、離れようとしたがってばかりいない?」

「それは――……あるかもしれません。そっか。それで不安にさせちゃったんでしょうか……」


 スマホ越しに落ち込むような、深いため息が聞こえた。


「霊子刀剣部の活動とか、刀鍛冶の先輩から特訓だって連れ出されることがありますし。二人でいるとついつい勉強忘れちゃうので、図書室いったりしてます」


 じゃああれだ。

 ノンちゃんがそばにいるときはせめて、いちゃいちゃしてたいのか。怒ったりせずに、ただいちゃいちゃしたいのか。

 かわいすぎか。


「一緒に勉強したり、巻き込んじゃえば? 付き合ってくれなきゃキスしてあげないとか」


 そういうノンちゃんもきっと、かわいすぎだと思うんですけど。


「そ、それは確かに効果ありそうですけど……ちょっと、あざとすぎませんか?」

「彼氏にくらいあざとくてもいいんじゃない?」


 カナタと付き合って、カナタのお母さんノートを見てると私おもうんだ。


「男子って意外とあざといの好きでは?」

「んー。人による気がします」


 確かにそうかも。


「じゃあじゃあ、言い方を変えると……自分が好きな女子に素直に甘えられるの、好きでは?」

「それは……そうかもしれないです」

「ね。ギンもノンちゃんに甘えられるの、悪い気しないと思うよ?」


 っていうかちょっと見てみたい。

 ノンちゃんに攻められたギンがどう返すのか。


「……やってみます。ありがとうございます」


 またねと言って通話を切った。

 期せずして思ったよりもたくさんの情報を教えてもらっちゃった。

 そっかー。ギンは求めるタイプか。でもそれは別に意外でもないかも。

 めいっぱいノンちゃんを大事にしてるのってなんかいい。

 求めるばかりじゃない。ギンは山ほどのことをノンちゃんに与えているとも思うので。二人の願いを与えあい求めあう関係って、実はちょっと……ううん、かなり憧れです。

 二人がめいっぱい幸せになってくれたら嬉しいなあと思うし。


「ふう……ん?」


 ひと息ついた時だった。ノックの音が控えめに聞こえたの。

 入ってきたのはカナタだった。


「どうしたの?」

「いや……ちょっと話したかったんだけどな。話し声が聞こえたから、その……うろうろしてた」


 居たたまれないような、恥ずかしそうな顔をするから思わず吹き出しちゃった。


「いいのに。入ってきてくれたら」

「いや……電話って、すごくプライベートなものだから」

「いいのに! カナタなら気にしないよ。カナタはとっくに私のプライベートの中にいるもん」


 気を遣ってくれたんだなあと思って、ますますにやけちゃった。

 立ち上がって近づこうとして、それからふと気づくの。


「ねえカナタ。もし私と勝負して、カナタが勝ってさ? それで罰ゲームとして私の顔にスミを濡れるとしたら、どこに塗りますか?」


 続けて選択肢を言おうと思ったんだけど。


「唇」


 そう囁かれた。


「いや、すまない。何を言ってるんだろうな、父さんから話をされたばかりなのに……だめだ。もやもやして、今日はずっと……お前のことばかり考えてた」


 緋迎カナタが! 私の彼氏が! なんかかわいいこと言ってる……!

 カナタに属性を一つ追加するなら、私への特別効果ありってところかも。


「扉、しめて」


 そのおねだりが意味するところを察したカナタがそっと後ろ手に扉を閉めた。

 閉じて、見つめ合う。

 お互いに考えることは一つだ。


「……くっついて寝ます?」

「ぜひ、お願いしたい」


 こういう時に「予備がないから」とか言わないあたりがカナタらしいところかも。


「ふふー!」


 額を重ねて笑い合う。

 誰にも迷惑を掛けない範囲で、私たちなりの速度で。

 思うとおりにいちゃいちゃするのです。




 つづく。

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