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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第十三章 表出する弾丸、切り裂く心 

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第百五十三話

 



 東京都、首相官邸。

 本来であればこの私、緋迎シュウが出会うことのない人物たちが一堂に会していた。

 内閣総理大臣を始めとする議員、警察関係者の重鎮、自衛隊関係者。

 そして……アメリカの人間。大統領の使者、とのことだが……若すぎる。カナタと同年齢の少年にしか見えないが、彼は一体なんなのか。


「それでは……八月に際した状況の伝達を開始します」


 音頭を取る人物に視線が集まるが、私は末席で目を伏せていた。


「去る四月。アメリカは秘密裏にある侍に接触、刀の性質を暴走させた。事実に相違ありませんか?」

「担当者クラスの話に興味はない。確認は後ほどしたまえ」


 総理の言葉に発言者が顎を引く。アメリカから来た少年は私を見て微笑んでいた。


「では先にアメリカの状況をモニターに出します」


 特別に設置されたディスプレイに映し出されるアメリカ大陸――……ニューヨーク、タイムズスクエア。

 昼間の光景には何ら異常は見受けられない。だが。


「これに現在、住良木グループが開発中の霊子モニタリング技術と同等の技術を使い、フィルタリングをかけます」


 ディスプレイを操作する住良木グループの関係者が端末を操作した途端、街中を歩く人がすべからくゾンビに姿を変えた。

 どよめく会議室の人々。


「Zombie。目にした時にはぞっとした。我が国もまた、Kakuriyoにまつわる技術開発を行っているが、先日目にしたこれは正直、常軌を逸している。世界の警察であることから一歩退こうとしている今、この映像はあまりにショッキングだ」


 アメリカの少年に視線が集まる。

 誰も何も言えない。彼が口にしていることは、いくら特使であろうと言い過ぎている。国として迎え入れる相手の言動がこれなら、相手の国は? 推して知るべしだ。


「どのような悪影響が出るかはまだ、わからない。だがどうだ、住良木の作ったフィルターで見るとアメリカ中が汚染されているではないか。さながらバイオハザードのように、感染は拡大し続けている」


 あまりにも、さらけ出しすぎだ。喋りすぎなのだ、この少年は。

 いくらなんでもおかしい。

 こちらへの信頼からか? いいや、違う。

 テレビで見るほど、気やすい関係ではない。

 だとしても……これではツイッターで暴れ回る子供と大して変わらない。

 やはり、おかしい。


「当然、アメリカは事態を憂慮している……日本のMitamaとやらがないからね。ネイティブアメリカンの信じる精霊信仰とやらに力を借りて、特殊な装備を開発しているが……まだ時間がかかる」

「まるでハリウッド映画のようじゃないか」


 総理、と誰かがたしなめた。


「日本の侍の力を借りたいところだが、そちらも大型連休を控えて常にマンパワーが不足していると聞く。だがこちらも国家存亡の危機でして、大統領から命じられている。超法規的処置も辞さないと。だから最初にお伺いしにきた」

「何をお求めなのかな」


 誰かの発言に少年は微笑んだ。


「軍備をお貸ししているのだから、そちらも力を貸して欲しい。ついては我らに戦い方をレクチャーしてもらいたい。さらにKakuriyoのデータをすべてもらいたい。即座に従えないのならば、我々も独自に動かざるを得ない」

「それは、恫喝ですかな?」

「ふふ」


 なるほど。

 笑う少年はイレギュラー。

 相応の事態に見舞われている、ということか。

 ならばここにいる私もまた、イレギュラーに違いない。警察庁長官がいるのに、警備部の一隊長がいる状況もまた、おかしいのだ。

 考え事をしていた時だった。


「担当者……副官房長官が呼んでいたな。緋迎、見解は」


 官房長官からの名指しに息を吐く。

 少年は私を見ていた。


「隔離世についてのデータは我が国の、警察の機密情報です」


 警察庁長官を横目に越権ではないかと確認する意味で、視線を送った。

 彼は果たして、口元を引き結ぶだけで喋ろうとはしなかった。


「どうなんだ」


 総理の呼びかけに、懐からハンカチを出して額を拭う。


「それは……ええ、まあ、その。容易に、ええ。持ち出すわけには……その、しかし」

「対岸の火事ですな」


 誰かの発言に視線が集まる。失言大臣と噂される男だった。

 先にも後にも進めそうにない沈黙に包まれる会議室で、決断を下せるのはただ一人。


「担当者と協議の上、明日には返事する」


 総理でしかなかった。

 重鎮たちが立ち上がり部屋を出て行く。

 官房長官が官房副長官に指示を出し、副長官が対策を協議するチームの編成に移るべく指示を出す。ただ立ち去るしかない場で、


「緋迎シュウさんですね」


 少年に呼び止められた。


「……どこかでお会いしましたか?」

「今日、京都で弟さんに会いました」


 笑顔の先制に口元を緩める。

 戦いの場に立った時こそ、余裕は自ら創り出す。

 腹の内を見せず、隙を見せないために。


「あなたの弟もいいが……その彼女が面白い」


 意図が見えない内には迂闊に口を開かない。


「あなたが五月に起こした騒動に関わる事態は――……すべて把握しています。ええ、発端さえもね」


 肩を叩かれる。その言葉の意味に、けれど眉一つさえ動かさない。

 やはり、この少年からは歪な何かを感じる。

 強いて言えば、禍津日神に恐れ呑まれて暴走する私のような……危うい何かを。


「アメリカはあなたと彼女に興味を持っています。では」

「お待ちを」


 気づけば呼び止めていた。


「何か?」

「……超法規的処置も辞さないのでは? 火急の危機に瀕しているのなら、明日まで待つ余裕がおありですか?」

「ですから、最初にお伺いしたのですよ。あとは……ハハ! それでは、また。近いうちに」


 立ち去る少年の背を見送る。


「どうかしたか、緋迎」


 父の後輩であり大学の先輩でもある副長官に頷く。


「来月がより一層、怖くなりました」

「困るな、お前は日本の侍の要だ」

「父がいます」

「刀を扱える時間が減ったと聞く――……ついてこい」


 歩き出す彼の後を追いかける。


「五月の一件、聞いている。発端はなんだ。記憶がおぼろげだ、などと言ってくれるなよ」

「部下に命じて目下調査中ですが、先ほどアメリカの関与をほのめかされました。そういえば議員推挙の件で料亭で話していた際に、アメリカ人がいたように思います」

「何かされたか。証拠は」

「あればとうに提出しています」

「待て」


 立ち止まった彼に厳しい視線を向けられた。


「お前ほどの男が、何かされたと気づかない攻撃を受けたとでもいうのか。刀に細工された可能性は」

「あるとしても、私の知らない手段によるものです」


 再び歩き出す彼に当然のようについていく。


「そんなことができるなら、なぜ俺たちに情報をよこせと言ってきている」

「状況と戦力が足りない事実の二点からかと。あとは――……」

「なんだ」


 忙しなく歩くくせに大事な場面では立ち止まれる切り替えの早さに驚くのも無駄だ。

 彼の耳元に口を寄せて囁く。


「隔離世にまつわる情報を軍事に利用する気かと」

「可能か?」


 問い掛けに頭を振る。


「今は、まだ」

「可能性含めて検討し尽くす。お前もチームに加われ。他には」

「彼は危険です」

「わかっている。だが確認が取れてしまった以上は対応せざるを得ない。ねじこまれた会見、お前を呼びつけたのには理由がある。対策を取れ。以上だ」


 目的の場所へ迷わず突き進む背中を見送り、私は官邸を出た。

 スマホで部下に連絡を取って指示を出した。


「……あとは、そうだな。父さんと……」


 思い浮かぶ二人に電話をかけながらその足で警視庁へ。

 待ち受けていたのは愛すべき隊員たちであり、右腕となる女性だ。

 頼もしき我が仲間たちへ告げる。


「調査結果を報告してくれ」


 一人が頷き、モニターを操作する。


「私的な話で料亭へいくとしながらも、隔離世に私たちを配備したのは正解でした。当日は気づきませんでしたが、さっきの連絡を受けてこれまでの間に録画していた映像を絞り込んだんです。コマ送りにして人海戦術で見つけたのが……これです」


 画面に映し出される映像。

 麻布の料亭、個室から出て議員とアメリカ人と別れた現実の私の映像と、隔離世で私の微かな霊子に寄り添い、霊子の禍津日神がくっきりと映りこんだ映像。

 現実には何の変化も無い。

 だが、隔離世においては違う。

 隊員が止めた映像には確かに、ほんのわずかな一瞬だけ火線が見えた。


「超々極小の霊子の弾丸による狙撃……とでもいったところでしょうか」

「どこに命中した?」


 私の問い掛けに隊員は頭を振った。


「解析しまくったんですが……強いて言えば、柄としか」


 すぐさま刀を抜いて柄を外す。

 すると、どうだ。


「……なんてこと」


 唸る女性隊員に返事さえできなかった。

 確かに柄の内、禍津日神の霊子の塊に傷がついていた。

 微か過ぎて、そうと気づかなければ見つけられないほどの傷が。


「禍津日神ほどの刀ともなれば、ささやかな傷が大きな事故になりかねませんよ」

「隊長の暴走の原因かもしれない……ただの傷じゃないってことね」

「写真を」


 私の呼びかけに何人かが慌ててカメラを取り出し撮影する。


「誰がこんなことを」

「……日本の御霊はすべからく刀として顕現する。私の知る限り、学校によりすべての刀は届け出がなされる。またどの学校とも警察は関わり深いゆえ、狙撃して刀を壊すような力を隠す手段はないと言っていい」


 机に手を置いて、思い浮かべる人物像はただ一つ。


「ふむ……」


 アメリカによるものだ。あの少年、ないしその味方か。

 隊員たちの前でそれを迂闊に話すようなことはしないが、しかし。


「とっ捕まえてやりましょうよ!」

「そうです! 隊長にこんなことをして、許されるわけない!」

「……それは無理ね」


 右腕でもある副隊長が首を振る。


「隔離世における法はなし。邪との対決で怪我をしたり命を落としたら手当ては出る。けれど……それだけ。だって、普通に生きている人は知覚できないオカルトなんですもの」

「で、でも! じゃあ俺らはなんのために毎日命はってんすか!」

「おかしいですよ!」


 怒る隊員たちの気持ちも、現実に悲嘆する副隊長の気持ちもわかる。


「侍の良心に任せるしかない現状には多くの問題がある。だから隊長はその現実を変えようと、あらゆる未来を模索しているの」

「そういうことだね。みんな、気を取り直していこう。そして……遠距離攻撃への対応も日々十二分に訓練し、実戦を経験しているはずだ。常日頃から現実班と隔離世班の二班体制で行動していたが、移動時とここの警護もそのように行動してもらいたい」

「了解! みんな、深夜の討伐では早速対策をとっていくわよ」


 手を叩く副隊長に隊員たちが頷く。

 その間に禍津日神を指で撫でて傷を治す。

 新たになったその刀身に傷はもう似合わない。

 だとして……私もまだまだ未熟だ。それゆえに、打てるべき手はすべて打つ。

 我々自身の強化、例年の四校の強化だけでは足りない。

 廊下に出た私はその足で外を目指そうとした。その時だった。


「隊長!」


 ふり返ると副隊長が私を見つめていた。


「どうかしたかな」

「大丈夫ですか?」

「……心配を掛けたな。だがもう大丈夫だ」

「そうですか……そ、その。よければ明日、そ、そのう、お、お、」

「お……何かな?」

「い、いえ! 明日もお疲れ様です! なんちゃって……」


 露骨にうちひしがれた顔をするのはなんなのか。


「と、ところでどちらへ?」

「官邸に戻る。やるべきことが見えてきたからね」

「あ……わかりました」


 さっと居住まいを正して敬礼をする彼女に敬礼を返して、私は外へ出た。

 いつもの車に乗り込んで足を組む。


「ふふ……」


 アメリカ、か。

 ささやかな遊び、ないしは調査のつもりでずいぶんなことをしてくれたものだ。

 もっとも、もし本当に彼らの狙撃だとして、それが誰なのかを突き止められなければ意味がない。それにもし仮に突き止めたとして、それを裁く法がない。法がないから……諦めることしかできない、などと弱気になるつもりも毛頭ないが。

 向こうにしても自分たちの力がどこまで活用できるのか判断するための行動だろうし、その相手に私を選んだのも随分とまた……意図的だ。

 とはいえ政治的な意図などは、今の私が預かる領分ではない。これより向かう官邸にて報告し、しかるべき人員に伝えて対処してもらうのみだ。

 故に、私がするべきことは簡潔だ。隔離世における脅威から、日本を守ること。

 認識してみれば、なるほど。明らかに彼らは暴走している。国の危機だからといって暴れるほどの国でもあるまい。

 特殊に編成したチームゆえに、それを取り締まる力がなく無法者と化している可能性も視野にいれてもいいかもしれない。逆に彼らがもし現実の肉体を人質に取られて無法を強いられているのだとしたら、それを踏まえた対処が必要だ。

 逆に彼らが理性的に傍若無人に振る舞っているのだとしたら、より注意が必要だとも言える。考えられるのはむしろ、これか。

 やはり“彼”を使うしかない。国の権力に縛られず、しかし私が安心して動かせる味方となれば……これしかない。躊躇いはあったが、電話を掛けておいてよかった。


「……」


 息を吐いて考える。

 刀を鍛え、振るう。誰かを守るために。

 それこそ父の背中を見て育った私が抱く侍のイメージだった。

 しかし今回の京都遠征では大きな収穫があった。

 私の刀は誰かの願いを聞き届けるためにある。それがわかったのだから……もう二度と、迷いなくこの刀を振れる。

 それを気づかせてくれた少女を思う。

 私の不安は恐らく、日本でただ一人にしか真実の意味では伝わっていないに違いない。

 青澄春灯。

 彼女を見ていると、不思議と心が揺れる。

 同じではない。決して同じではないが……しかし、父が愛した母の包容力と明るさを、彼女もまた持っているように思う。

 まあもっとも、感受性こそ彼女の魅力だと私は思うのだが、さて。思ったよりも危機的状況にあるようだが、年下の少女のことを考えるなど。


「私もまだまだだな」


 禍津日神に触れ、息を吐く。もうすぐそこに、目的地が迫っている。


『――ない、』


 何かが聞こえた気がして、ふと目を前に向けた。


『――ぶない、に――』


 小さな小窓越しにフロントミラーが見える。


『危ない! 逃げて!』


 刀から伝わる少女の声にはっとした。

 映っている人物が金の髪色だと認識した直後、身体が閃光に包まれた。


 ◆


 青澄春灯はふと、誰かに呼ばれた気がして顔をあげた。


「……あれ?」


 ホテルの一室で、そばにはカナタがいて私の尻尾を愛でている真っ最中。

 もっと、こう。キスとか。あんまりいうとコナちゃん先輩にはしたないって怒られるから言えないけど、でもこう……強いて言えば、その。

 いちゃつく感じになってもいいと思ったんだけど。


「なにかしないの?」

「毛繕いをしている」

「……キスとかは?」

「寝る前に」

「思春期男子が尻尾の手入れに夢中って」

「何か問題でもあるのか?」

「ぶううう」


 私の魅力って尻尾だけなのでしょうか、と思ったけど。

 それを言ったらカナタは否定するだろうし、だけど尻尾の毛繕い中だからカナタは気になっちゃうだろうし。

 もー。どうにかするにしても時間を置かないとだめかも。

 しょうがないからテレビをつけたの。


「――……あれ」


 おかしい。いくら地域が違うからってどの局も東京の路上を映しているのは、ちょっとどうかしてる。


『……えし、お伝えします』


 ぱっと表示された顔写真に血の気が引いた。


『霞ヶ関で車の爆発事故が起きました。車に乗っていたのは警視庁警備部侍隊隊長、緋迎シュウさんと見られており――』


 カナタの櫛が地面に落ちた。


『既に鎮火しており、運転手と緋迎さんは救急病院へ搬送中とのことです。繰り返しお伝えします。先ほど、午後二十い――……』


 ふり返って、見る。

 カナタが青ざめていた。すぐにスマホが鳴る。取り出して、それでもしっかりと掴めずに床に落としてしまうカナタを見ていられなくて、拾い上げて渡した。


「もしもし! 父さん!?」

『シュウが危ない。すぐに帰ってこい』

「――……嘘だ、嘘だと言ってくれ」

『事実だ。すぐに、帰ってこい』


 崩れ落ちるカナタの手からスマホが落ちた。そっと拾い上げる。


「あ、あの」


 切ります、すみませんと言おうと思ったんだけど。


『青澄さんだね、もしよければ一緒に帰ってきてくれないか?』

「え――……」

『頼む』

「あ……は、はい! 急いで行きます!」


 電話を切ってカナタに肩を貸してなんとかベッドに座ってもらう。

 すぐに扉が叩かれた。

 出れば真っ青になったコナちゃん先輩が、生徒会のメンバーを連れてきてたの。


「ハル、緋迎くんは?」

「あ、あの……ちょっと、ショックが強すぎて。シュウさん、危なくて」


 そっと抱き締められた。背中をそっと叩かれる。

 急がなきゃ、焦らなきゃいけない。

 そんな思いで頭がいっぱいで真っ白だったから、コナちゃん先輩の理性に引きずられて思考が戻る。


「ハル。深呼吸して、それから答えて」

「……あ、」


 言葉にならない。呼吸だってろくにできてない。そう自覚してよけいに理性が戻ってくる。


「ハル、あなたはどうするの?」

「お父さんから連絡あって、帰ってこいって。私も一緒にって」


 そう、と頷いたコナちゃん先輩に頬を包まれた。


「もう夜も遅い。帰る方法はわかる?」


 頭を振る私にコナちゃん先輩はシオリ先輩を見たの。


「シオリ、頼める?」

「あとはボタン一つで新幹線の終電の予約完了だよ。人数はどうする? 今いる人数分だけとれるけど」

「みんなで行っても――……できることは、」


 爪を噛もうとするコナちゃん先輩の肩を叩いたのはラビ先輩だった。


「みんなで行こう。生徒の引率は先生とメイがいればいい」

「ら、ラビ、でも大勢でいっても」

「彼女が必要だ。彼女の愛が必要だ。仲間が必要だ。僕らの結束だ今こそ必要だ。シオリ、手配を。みんなで行かなければ始まらない」

「了解」


 私の頭を軽く撫でると、ラビ先輩は決意の表情で言ったの。


「彼の危惧が現実のものになるなんてね……しかし彼らが強攻策に出るならこちらにも考えがある」

「ラビ先輩……?」

「ハルちゃん、カナタに伝えてくれるかな」


 ラビ先輩の瞳は、


「彼は絶対に助けるって」


 私には見えない何かを見ていた。




 つづく。

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