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その刀を下ろして、帯刀男子さま!  作者: 月見七春
第九十六章 期待外れのメンバーシップ?
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第千二百一話

 



 仮に移動費がないと伝えたら、彼女はなんて言うだろう。

 じゃあしょうがないね? なら私が出すからタクシーで来て?

 芸能人。新人だろうとも、仕事の本数は多そうだ。歌手でセールスランキングに名前がある。となれば儲けているに違いない。相場がどの程度なのか。たとえば取り分はどうなっているのか? 自分はまったく知らないが。

 シビアなのだろうか。

 頂点は天井知らず。でも中堅層になると「思ったより儲からない」とかになる。一方でバズった人は「やっとバイトを辞められる」という。テレビに出ている人はそう。じゃあ歌手は? 消える人のほうがずっと多い。消えるイコール売れないで、売れないイコール実力がないで、実力がないイコールデビューするだけの実力しかなかった? あるいは事務所のごり押しで出てきただけで、事務所も売り出されてる人、あるいは人たちにも、可能性はなかった?

 知らない。どうでもいい。考えたこともない。

 いま考えてみるとして、バイトを辞められるだけの生活費は稼げるのだろう。アルバイト、大人が日数多めに入れたら十五万くらいはもらえるのだろうか? 芸人はよく月収が五百円だかなんだかって言っている。いや待て、もっと多かったか? あるいはもっと少なかった? 覚えがないが、とにかく安いことだけは記憶に残っている。

 東京は家賃が高いそうだ。他の県から出てきた人は概ね高い家賃のために働いているのかもしれない。二十三区から遠ざかるほど、家賃は下がるのだろう。だから東京の周辺にある県から東京まで通う人が多いのだろうとも思う。

 外れれば外れるほど交通費がかさむ。

 住居、プラス交通費。定期を買えば済むような安定した職場はなさそう。常にあちこちへ移動している印象がある。そこまで仕事がなかったら、余計に出費がきつそうだ。

 みな売れたいに違いなく、みな売り出して欲しいに違いなく、みなバズりたいに違いない。

 じゃあ受けるかどうかの分け目はなにか。

 本当に実力なのか。

 事務所もピンキリというが、大手になるほど抱えている層が厚そうだ。シビアにもなりそう。戦略込みで雇うか否かでジャッジしそう。大手じゃないほど、求めるものは大きそう。適当に稼げるか、若い人に手を出せればいいっていう仕事っけのないところじゃなければ、大手ほどの余裕がないのなら、余計に理想が高そうだ。

 となると、大手だろうとそうでなかろうと、求めるラインが緩いということはなさそう。

 じゃあ?

 売る手段が確立されてないか、市場の動向を決めるのは売り手じゃなくて、それこそひとりひとりの買い手か。

 タレントも歌も、そもそもコンテンツ自体、日々大量に生産されている。生産するのがなにかによって、大量の度合いはもちろん変化するものの、需要と供給の循環しやすいバランスを保つのは困難そうだ。

 飽和状態にあるものの中で、買い手が反応できるかどうかはファーストインプレッション次第で、認知と好感が結びつかないと、継続的な顧客にはなり得ない気がする。だからこそ販売戦略とか、プロモーターみたいな役職が存在するのだろうし? やり手のプロデューサーをありがたがるのではないか。

 どこまで買い手と売り手の間に橋を架けられるか次第になっている。なのにコンテンツ自体は大量生産の時代にとっくの昔になっているから、間に必要な橋を架ける技術自体が追いつかず、需要が発生しているのかもしれない。

 そこまで考えると、やはり彼女は恵まれすぎている。

 でも彼女の名前がそこそこに広がって調べてみると、無茶なことさえも能動的に挑戦し続けている。

 進む人に光が差す。ただし、誰もが同じ速度、同じ頻度で明かりの下に行けるわけではない。ただそれだけだと割りきって、進み続けられる人が強いのか?

 父と母は、ふたりなりに進んでいる。兄もそうだ。私さえも、そう。

 なのに差はどこにある?

 進む目標を間違っている? あるいは蓋をしているものが、私たちそれぞれの足かせになっているだけ?

 その可能性はありそうだ。

 わかっていても、彼女が仕事をしている現場に行って、彼女を妬まずにいられるだろうか。

 不安でたまらない。

 いまの自分に家族――……なによりも兄への恨み以外のネガティブな感情を抱える余裕は一切ない。

 それでも、だ。

 いずれにせよ、行くしかない。

 二日酔いの兄の世話を積極的に見る母に了承を得て、家を出る。

 交通費くらいはある。

 ただ気が進まないだけだ。

 彼女を許せるかどうかではない。

 彼女と比べて劣って見える自分自身を許せるかどうか。

 彼女は鏡。

 もし天国経由で会いに来たという昨夜の彼女の言葉が真実ならば、それこそ天国のお墨付きの鏡が私を映す。

 反射したときに私は自分になにを見るのだろう。

 常に鏡はありのままを映す。

 子供の頃は無邪気にそう信じていた。

 でもちがった。

 鏡は自分の感情を映し出す。

 ありのままを見れるかどうかは自分次第。

 自分の顔を受けとめて化粧ができる人を心からすごいと思う。いまどきメイクは男性も女性もする。内容はもちろん、ある程度の差はあるだろうけど。所詮、人と人の差だ。

 メイクのできる人と差があるとすれば、メイクの腕はもちろんだが、なにより私が私の姿を醜く思えてならなくなる瞬間が存在するということ。鏡の自分を見られない、逃げる私を私はとても卑怯に思える。これが私を縛るだけの呪いだとわかっているのにも関わらず。

 深い意図なく素直に明るく接しようとする彼女といると、惨めさを自分に見つけては凹み、それから目を逸らそうと彼女を憎むことで甘えてしまう。彼女を憎んでいられる内は、彼女を醜い存在に例えていられる内はいい。でもそれは、兄が私に自分の欲をぶつけて日々ゆるやかに壊れていく作業となんら変わりない。

 他のヤツがどうしようと、同じだとか、違うとか、一切興味はない。

 私にとってはつらいだけ。

 昨夜の彼女は小さくて、画面越しで見るよりもずっと丸顔で、ほっぺたがぷにぷにしていたから気にしなかった。気にならなかった。なんだ、こんなものかと思った。

 けど、今日はどうか。

 見られるだろうか。

 きりきりと働き、面白いことを言って笑いを取り、歌を歌えば賛美の嵐みたいな彼女を見たら?

 さすがに無理だ。ピアスの力さえ使ってしまうかもしれない。反射的に。

 それがたまらなく不安なのに、電車に乗って横浜を目指している。

 心にのしかかって思えるのは、不安か。それとも――……。


 ◆


 局じゃいま大変だっていうじゃない? っていうディレクターさんの酔っ払いぶりもさることながら、お店の人がご新規さんに笑いながら謝っちゃうくらい、客層がうるさい!

 ニンニクききまくりのパスタの匂いにつられてぷちたちが出てきちゃって、トシさんが予想外の面倒見のよさを発揮して昭和歌謡だのを押し込んでから迷走が始まったよね。

 なんだかんだ客層の平均年齢が高くてさ? しかも孫がいてもおかしくない常連さんが、ぷちたちをえらく気に入るわ、トシさんに遠慮なく曲をリクエストするわでひどい。

 もっとお洒落で、プロ客みたいなさ? 好みにうるさく、知識が豊富なおじさまたちがワインちびちび飲みながら静かに楽しむお店かと思いきや、そうじゃない。

 よく言えば活気があるし、悪く言えば盛りあがりすぎ!

 まだ日も暮れてない内から出来上がっている場所で、スタッフ陣だの橋本さんだのに絡まれては学校はどうなんだとか、そんな話はどうでもいいから卒業生で年上好きはいないのかとか、ほんとしょうもないフリをされては「紹介はしないし学校の話したら来るでしょうが!」と切り返す。

 そんな、はっきり言っちゃうよ? はっきりと断言しちゃうとね?

 無駄な時間でしたよ。もう。おじさんたちの悪ふざけにぷちたちが耳を真っ赤にするくらい、大興奮しながら歌ったり踊ったり、常連じっじたちにちやほやされたりする間に、私はさあ!


「この番組は春灯ちゃんあってのものなわけ! 最初はド新人の女子高生って思っていたけど、いまはちがうわけ! 本気でどかんと爆発するようなぁああ! 活躍をしてもらいたいわけだよ!」

「だから言って!? 春灯ちゃん! なんでも言って! むしろ甘えて!? おじさんたちがんばって推すから! 番組でめっちゃすんごい挑戦仕込むから! 正直に甘えてごらんなさいよ! なにがしたいんだい!?」


 おじさんたちの厄介でうっとうしい絡みに「いいって! 普通のバラエティで!」って返すの。それじゃあおじさんたちは止まらないわけ。


「「 いやいやいやいやいやいや! わかってない! 」」


 なあって振ると若いADさんさえも「わかってないですね!」って乗るから解せない。

 痛感するよね。

 絶対この数のスタッフいらないよ! もはや!

 だってやることがしょうもないんだもの! 九尾で漁船で釣りをするのはね!? スカイダイビングとかはね!? 欲しいよ? そりゃあ。

 でも今日のはいらないよ! ディレクター陣の厄介絡みに混ざるだけなんだもの!


「甘えてっていってるんだ!」

「まだ遠慮してるね」

「してるねえええ!」


 うっとうしいなあ! もう!

 なによりめんどくさいんだよ!

 深夜にホテルの部屋に突撃かまされて「腹を割って話そうじゃないか!」と詰め寄られるよりはマシかもしれないけれども! けれどもだよ!?


「してないって! ぷちでオーケストラ? いいじゃん! ハロウィンでぷちたちと楽しいことやろうと思っていたもの!」

「「 出たよ! そういうとこ! なんで言わないの! 」」


 ハモるおじさんが増える。

 総じて酒臭い。地味に歩いたから、ちょっと汗臭くもある。

 そして圧がやばい。圧がやばいのに、みんなしてニヤニヤしながら「さて、どうやって面白く調理してやるか」みたいな下心が透けて見えるところが腹がたつよ!


「やっ、それはほら。個人の遊びだし」

「仲間はずれしてるね!?」

「「「 してるねー! 」」」


 お店のお客さんさえ巻き込んで橋本さんが振って、店中が叫ぶレベル。

 ぜったい苦情くる。こなきゃおかしい!

 こういうことする場所じゃないもの!

 なんか一言いってやろうと思ってみたらさ?

 カメラ回ってるの! しっかりきっかり! いつの間にやら!

 あんまりもう馬鹿馬鹿しくって、笑えてきちゃった。

 右目を手で押さえて、うずき出すポーズしながらも肩で笑ってるとさ?

 ディレクターおじさんが言うわけだよ。


「諦めて一緒にやる気になったかい?」


 言質とりにきたね!?

 露骨だねえええ!


「――……なった。なりました」

「甘えが足りないなあ!」


 くううっ!

 成功例をモチーフにするにしても、もうちょっとさあ!

 工夫してもいいんじゃないかなあああ!

 両手で顔をごしごし拭うようなことできないよ? メイクしてあるもの!


「い、一緒にやりたいなあああああ!」


 ピキった。正直な話。

 でももう開き直った。いかにしてダメージを少なく終わらせるかを必死に考えるよ!

 そっちがその気なら、私だって身構えるよ!

 北海道の大スターみたいにはならないんだからね!


「や、もうね! それじゃ気が済まない!」

「俺たちは春灯ちゃんの全力の甘えに応える覚悟で集まってるからね!」

「もっと無茶ぶりしてよ!」


 いやあああああ!

 あのねええええ!?

 ほどほどでいいんだ! ほんと!

 レギュラーでやってるキラリのぶらり街ロケとかさ?

 あんなんでいいんだよ。私はもう! 正直な話!

 深夜の街を徘徊するのは、私が未成年でいる限りできないからさ?

 日中を、キラリみたいにふらふら歩いてはコメントしていく、ああいう街ロケでいいの。

 たまに商店街とかいってさ? お惣菜もらったりしてさ? で、年に二、三回くらいの頻度でドッキリ番組とコラボして、やばめの素人さんに絡まれたりしてさ? そこからドッキリ番組に呼ばれて体はるくらいの! それくらいのタレント路線がわりと楽しそうかなあって思っているんですけれども!

 甘かった!

 その席ねらってる人たくさんいるわけじゃない? しかもロケ向けの気遣いと、あとはなにより見せ場を作れる腕次第で今後に繋がるかどうかとかさ? 決まってくるわけじゃない?

 そういうのの積み重ねがさ!? 欲しいかな! 甘えていいならさ!? そういうのがいいなあって何度も言うんだよ?

 言ったんだよ!


「だから! 何度も言うけど! ほどほどの番組でいいんだよ! 私は!」

「「「 また! 優しいから! 無茶ぶりできないんだなあ! 優しいから! 」」」


 あああああああ!

 髪の毛をわしゃわしゃやりたいけども、カメラ回ってるし、メイクさんたち今日はいないし!? 絶対このあとも撮り続けるに違いないからやるせない!


「いいんだってば! 世界の果てまでいってみる?」

「それとも世界の壮絶なメシ現場を探ってみる? マフィアとか!」

「いっそ世界の秘境を探す旅番組っていうのは!?」

「いやいや、春灯ちゃんのポテンシャルなら、自転車で一歩も降りずに富士山登頂とかさ!」


 最後の特におかしいでしょ! アウトだよ! 富士山の管理組合てきなところからNG食らうよ! しかも一生レベルで!

 最初のなんかもうドストレートに番組名だし! 次のもやっぱり別であるし!? 秘境を探す旅番組って、いったいどれだけのスケジュールおさえる気なのかな!? ないからね!? 高校生活にそこまでするだけのスケジュールの空きは!

 やばい。

 なにか言わないと全部やらされかねない……ッ! 今年の夏休みがロケで潰される可能性すらあるよ!? カナタが高三だからさ? 高校生時代のふたりで過ごせる最後の夏だっていうのに!

 なんとかしなきゃ……ッ!


「あっ! そ、そうだよ! 不可能ならいいんでしょ!? だったらほら、東京ガールズなんとかーとか、パリのコレとかに出るみたいな! そういう挑戦とかどう!?」


 盛り上げ枠みたいなノリがあるとしてさ。生粋のモデルさんたちに比べたら身長的にどんなに背伸びしても届かないタッパがあって、私はそこにたどりつかないわけだから! こりゃあもう! 無理でしょ! それくらいの無茶ぶり甘えでしょ? これで怯めばいいよ!


「それはほら。できそうじゃん」

「春灯ちゃん可愛いから」

「スタイル抜群だし!」

「そういうのはちがうよね!」


 くっ……。

 ここぞとばかりに思ってもない顔して全員そろって適当な褒め言葉をいいやがって!

 嘘でもうれしいよ! ちくしょう!


「もっとこう……はしもっちゃん。言ってやってよ!」

「春灯ちゃんといえば狐! 狐といえば!? 化かしの技術でしょお!」

「ってことは……なんだい? 春灯ちゃんもしかして、化かしたい相手がいるのかい?」


 言ってない! 私なにも言ってない!


「いやいや。もしかしたら春灯ちゃんのことだから、化かすだけじゃなくて、化かされたいのかもしれない! 僕らに壮絶に化かされて、化け方を学びたいのかも!」

「つまりドッキリが足りないと!?」


 言ってないんだよなあ……なんにもなあ!


「どうなんだい!」

「「「 ドッキリが足りてないっていうなら、言ってくれないと! 」」」


 足りてるんだよなあ!

 ドッキリは初回からずううううっと! 足りてるんだよなあ!


「なんだろうなあ。新手のイジメなのかなあ」

「穏やかじゃないよ! 春灯ちゃん!」

「言ってくれれば直すから!」

「「「 あとドッキリもやり遂げるから! 」」」


 求めてないんだよなあ!?

 あれえ!?

 マドカもキラリもしないよ?

 カナタさんだってしてこない。

 小楠ちゃん先輩さえそう。

 トウヤも、うちの家族もみーんなそう!

 ここまでぐいぐい来ないんだよなあ!

 人生でいまだかつて、ここまでぐいぐいこられたことはないんだよなあ!?

 あれ? 求めてた?

 いやいやいやいや! 混乱してるよ!

 求めてないよ! 求めてないんだけどもね!? みんながあんまり言うとさ? だんだんなにがおかしいのかよくわからなくなってくるよね!?

 あれえ!?


「いままさに化かされてないかな?」

「「「 強いていえば撮影中かな 」」」

「こんなの! 狐の春灯ちゃんに比べたら!? もうね、アリンコみたいなもんですよ!」


 うううんんんん……。

 そうなのかなあ?


「で、どんなドッキリがいいんだいっ!」

「ええっ!?」


 言わなきゃ終わらない流れなんでしょ?

 あああああ。ううううん。ええ?

 スタッフ陣だけじゃなく、ぷちたちも、お店のご主人も、お客さんたちも。

 さらにはトシさんさえも、私をじーっと見つめてくる。

 プレッシャー!


「わかってる。わかってるよ? 言わなきゃ終わらないっていうのは」

「おおっ! そうだよ!?」

「悪びれもせずに言いやがって! ええええ……言うんでしょ? ドッキリ催促ってのも、でもよくあるよ?」

「つつつつつつ、つまり!? よくある催促じゃないほどのドッキリをお求めだね!?」

「――……まあ、そうなるよね。いままでの流れからして、そういう風にもってくよねえ」


 揃いも揃ってにやつきやがって!


「オーケストラ! ハロウィン! それとは別に、ドッキリ! 他にもあれば甘えて!?」

「こうなるともはや私が企画を提案させられているだけのような気がするけどね!?」

「上回るから! 初回のスカイダイビング、あれは予想してなかったでしょ?」

「まあ……ねえ?」

「任せて! やりきるから! じゃあ言ってみよう! 言わなきゃ終われないからね!」

「馬脚を現したね! おのれ!」


 歯ぎしりしそう。歯にダメージ出るだけだからやらないけど!

 太股を前後に擦りながら唸る。

 いますぐアイディアを出さないと。よりひどい目にあう! それだけは間違いない!

 どうしてやろう!

 ううん!? ううんんんんん!?

 四苦八苦する私の肩を、誰かが摘まんできたから思わず勢いよくふり返っちゃった。

 そしたらさ?

 清川さんが立ってたの。どうしていいのかわからない顔してさ?


「あの。いつまでも待たされそうだから」

「おっ! 友達かい!?」


 こいつぁ企画の幅が広がるぞっていう顔したおじさんたちを「ステイ! 待て待て!」と片手で制す。その時点でいやってほど理解した。

 楽に番組やりやがって! しかも楽しみやがって! なんだかんだ巻き込まれて、私も徐々に味がわかってきたところだけれども!

 彼女は別だから!


「ご、ごめんね? 取り込んでて」

「罰ゲーム中?」

「んんっ、言い得て妙なんだけど」

「「「 いやいやいやいやいや 」」」


 おじさんどもが騒ぎ出すから頭が痛い。

 ただね? 清川さんは引くんじゃなくて、はんっと鼻で笑った。楽しそうだねって。

 棘があるんだけれどもさ!

 私の肩まわりの服の布地を摘まんだままで、なんならちょっと震えてもいてさ?

 居たたまれないけどどこにも行けないわ、落ちつかないわで勇気を振り絞った結果がいまなのだとしたら、リアクション迷子な可能性を見たね!


「甘えてほしいわけ。新人だから言えない、番組でやりたいことを僕らで叶えようって言ってるわけ! なのに奥ゆかしいから!」

「そう! 春灯ちゃんってば、優しいうえに奥ゆかしいから!」

「なんでも言ってくれていいんだよ? って言ってたところなんだよね!」


 うそつけ!

 本音はここでの映像をフリにして、ドッキリというオチをつけたいだけでしょうが!


「私も考えていい?」

「「「 友達がこう言ってくれるなんて、いやああ! 甘えてってネット番組の神さまが言ってるねえ! 」」」


 たぶんその神さま、いたとしてもまだ赤ん坊じゃないかな!?

 頼りにならなそうだなあ! ねえ!?

 あと清川さん!?

 仕掛け側に回る必要はないよ!?

 ねえってば! ねえ!?




 つづく!

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