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ユメロマ  作者: 白菜
傘盗難事件編
9/32

二章3

大分、遅くなってすみません。

今日から白菜復活でございます。

「うーむ、どうにも女子の制服はややこしくなっているな。これでいいのか小波よ?」


「えっと、それでもいいんですが、これをこうした方が……ほら、可愛く見えますっ!」


「おおっ、なるほど。そういう事だったか……髪はどうする?」


「髪がつやつやで綺麗ですからね。何でも似合うと思いますけど……ポニーテールなんてどうでしょう?」


「よし。なら、髪を束ねて……」


「後はそれを──」



「…………」



 ようこそ。来てはいけない世界へ。

 そしてさようなら。俺のいつもの世界──。



 あの後、他でもない小波に俺は捕獲され、女子更衣室きてはならないせかいに連行させられた。

 味方だと思っていた小波に裏切られた俺はショックでなすがままに──。


 そうして、魂が抜けたようにがっくりとうなだれる俺はどこへ出しても恥ずかしくない立派な女装男子へと二人の手によって変えられていた。


 鏡を見てみると、自分の姿が可愛いと思ってしまう俺がいて、本当に死にたくなった。

 似合わないのならまだしも、似合う方が余計にダメージが大きいのだった。


 これも先輩の薬で女の子になった事と何故か妙にやる気を出して俺をいじくり回している小波のせいである。

 ……もう死にたい。死のう。



「か、可愛いです桐原君っ」


「う、うむ。よく似合っているぞ」


「全然ッ、全くッ、嬉しくないッ!!」


 女にとっては褒め言葉かもしれないが、俺は男なんだよ!

 逆に女装が似合うなんて言われてかなりショックだよ!

 あっ、こら! 携帯で写真を撮るんじゃない!

 止めろ! 本当に!

 これ以上は俺の精神メンタルの限界だから!


「つか、どうしてここまでクオリティが高くなるんだよ!

 完全に女の子になってるじゃん!

 このサラサラの長い髪とか、声の高さとか──胸とか!」


 本当に先輩は厄介だ。

 基本はアホのくせして、性変換薬こんなものを簡単に作ってしまうのだから……!


 蛇足。

 国代、織里香よりは大きい。

 美乳で実に俺好みである。

 (自身で確認済み)


「ま、負けてませんっ!」


「いや、別に張り合ってないからな小波!?」


 胸を凝視していたら、何故か小波が胸を逸らし始めた。


 更に蛇足。

 小波よりは小さい。

 (目測。言わずとも)


「まぁ、何にしてもだ桐──更河ちゃんよ」


「何で今、呼び方変えたんですか? 合ってますよ? 合ってますよ?」


 わざとだろうか。

 正直、その呼び方は寒気がするので止めてほしい。


「これで気兼ねなく藤原と会話する事が可能になっただろう。

 早速、行ってみるといい」


「……何かもう、色々と諦めましたよ」


 かなり不安だが、ここまで来たらもう、いく所までいってやるしかない。


「大丈夫です! 更河ちゃんは可愛いですから!」


「それのどこに安心出来る要素があるっていうんだ!」


 あと、小波までその名前で呼ぶのか!?

 何か今日小波、テンションがおかしくないか!?


「うむ。我もそう思うぞ」


「止めて下さいッ! 何だか俺が自身の容姿に思い悩んでいたように感じるから!」


 この状況での慰めとか、鞭で叩くより酷いからな!?


「ああ、もう! さっさと用を済ませて早く男に戻ってやる! 行くぞ、小波!」


「ま、待って下さい。まだ、小輿ちゃんに写メを送ってなくて……」


「ドゥーノットセンドアフォトおぉぉぉぉっ!!」



 結局。

 俺の努力虚しく、写メは学園中に広がる事になるのだが、それは後の話。



 ※※



 周囲の目線を気にしつつ、教室に入る俺と小波。

 どうかバレませんように──そう思いながら藤原さんの元へと足を運び、他の女の子と談笑している所に声をかけた。


「藤原さん、だよな?」


「なぁに? ──あなたは?」


「二年生のき──桐原だ」


 一瞬、名前を名乗っていいのか迷ったが、名字だけなら大丈夫だろうとそのまま名乗った。


「桐原さん? ふーん……」


 藤原さんが観察するようにじろじろと俺を眺めている。

 ま、マズい。バレたか?


 今更だが、女装がバレたら大変どころの話ではなくなる。

 クラスで孤立するのは勿論、もしかしたら、学校に顔を出す事が出来なくなるなんて事も──。


 冷や汗を流していた俺だったが、予想外の言葉が藤原さんの口から出た。



「あなた──凄く可愛いのねっ!」


「へっ?」



 藤原さんは今何と言ったのか?


 内容を理解するのに数秒かかった。

 が、それでもどうしていいのか分からなかった。


「え? ちょっと、あの?」


「ちょっと触らしてーっ!」


 戸惑う俺に藤原さんが飛びかかってきた──って本気かよ!?


「きゃあ! この肌、すべすべできめ細やか! 髪はサラサラで綺麗だし、そのポニーテールもよく似合っているわ! お目々もぱっちりしていて、桜色の唇がたまらないわねっ! ああっ! このすらりとした手足もいいわ! 抱き心地が良くてふかふかー! お人形にしたーい!」


「な、何を──むぐぅっ!?」


 興奮する藤原さんにぎゅっと強く抱きしめられ、全身をわちゃわちゃされ、頭を胸で押さえつけられる。


 な、何なんだこの人は!?

 と、とにかくまずはこの拘束から逃げ出さないと!


「やっ! 止めろ──」


「ああん、その可愛い声もいいわねー! ちょっと乱暴な言葉使いがギャップで更に萌えね!」


 駄目だ。聞いていない。

 というか力強いなこの人!? 拘束からまったく抜け出せないんだが!?


「な、何をやってるんですか藤原さん!?」


 そうやって俺がされるがままにされていると、小波が顔を真っ赤にして藤原さんから俺を引き剥がそうとする。


 が、男(今は女の子だが)でも力負けしているのだから、小波の力ではどうしようもなく、制服が伸びるだけだった。


「ふふっ、こんなに可愛い子、初めて見たわー。

 どう? 私と付き合わない?」


「はぁ!? つ、付き合う!?」


「ええ! あなたとならきっと温かな家庭を築けると思うの!」


「既に結婚を前提!? そもそも藤原さんは女の子だろ!?」


「愛にそんなの関係ないわ! まずは一度デートをしてみてから決めるのはどう!?」


 もの凄い勢いで迫ってくる藤原さん。


 聞いてない。

 男嫌いとは聞いていたが、俺は藤原さんが可愛い女の子が好きなレズとは聞いていない!


 そもそも、俺は本来は男であって、女の子とは付き合えない──いや、付き合えるよな!? 寧ろ、それが普通だよな!?


 やばい! 何か俺、おかしくなってる!


「そ、そんなの駄目です! 不健全ですっ!」


「小波!」


「き、桐原君の処女は私が守りますっ!」


「それは色々な意味で間違ってるぞ、小波!?」


 その間違いが混乱状態にあるためのものだと思いたい。


「あら、小波さんも参戦するつもり?いいけど、私は譲るつもりはないわよ?」


「わ、わたしもですっ!」


「分かった! まず二人共、落ち着いてくれ!

 話を進めるのはそれからだ!」


 俺に選択権が与えられてないという事実に驚きつつも、視線を交わし合う二人を宥める。


 何かもう俺、貧乏くじばっか引いてる気がするな……。

 胃が痛くなってきたので、後で胃薬でも用意しておこうか。


「それで藤原さん。聞きたい事があるんだが、いいか?」


「ええ、どうぞ。私のスリーサイズを知りたいのかしら?」


「藤原さんは最近、傘の盗難が頻繁に起きている事を知ってるか?」


 ボケはスルーし、話を進める事にした。

 関わらない方が吉だ。


「もちろん知ってるわ。有名だもの」


 それがどうしたの、と言わんばかりの藤原さん。


「俺達はその事件について調べてるんだが……」


「調べてる? どうしてなの?」


「それは……俺達は生徒会だからな。学校で困ってる事があったら解決するのが俺達の義務だ」


 先程、後輩に使ったでまかせをそのまま言い、何とか誤魔化す。

 『社会福祉部』と言うより、生徒会を名乗った方が疑われずに済むというのだから、ウチの世間の評価が伺えるものだ。


「真面目ね。別に義務って程でもないでしょう? そんなんじゃ、学校生活を楽しく過ごせないわよ?」


「いや、そんなものはとっくに諦めてるんだが……」


 主にこの部に入ると決めた時には既に。

 社会福祉部は楽しい学校生活を送るには核が五、六発くらい落ちるくらいにぶっ飛び過ぎてるからな……。


「そんな桐原さんに、学校生活を楽しく送るために私という彼女はどう!?」


「割と本気で話が進まないから止めてもらえるか?」


「だ、だから駄目ですって!」


「うん。小波も真面目に返さなくてもいいからな? というか、もう口を閉じててくれるとありがたい」


「彼女に黙秘プレイを要求するなんて……なんてポテンシャルが高い人なの」


「藤原さん、俺をそんな尊敬の眼差しで見ないでくれ。凄く不名誉だ」


 ……何か頭が痛くなってきた。

 胃薬と一緒に頭痛薬も用意するべきか。

 ところで、胃薬と頭痛薬って併用しても大丈夫なんだろうか。


「それで桐原さん達はその事件について手がかりがないか聞き込みしているわけなの?」


「そういう事だ。何か知ってるならさっさと話してくれ。

 ……もう疲れた」


「苦労してるのね……」


「そう思うなら、その原因を作るような真似をしないで欲しい」


「無理ね♪」


 笑顔で言わないで欲しかった。


「そうね……その事件の事なら私なんかよりも詳しく知ってそうな人なら分かるわよ?」


「唯斗か?」


「いいえ。新聞部の坂木さかきさんよ」


「坂木?何年生でどんな奴なんだ?」


「一年生で腐女子」


「ああ、却下」


「ちょっと桐原君!? どうして却下なんてするんですか!?」


 小波が慌てて俺の肩を揺さぶる。


 何を言ってるんだ小波は。

 一年生で腐女子。

 そこまで聞いたら話を聞かない以外の選択肢がないだろうに。


「あの、桐原君……そんなに嫌なんですか?」


「…………!!」


「血の涙を流す程に!? どれだけ嫌なんですか!?」


 もう……二度と会いたくないんだ……!


「じゃ、じゃあ、聞かれた事には答えたし、私はこれで失礼するわ」


 そう言って、藤原さんが少し引いた様子でその場を去ろうとする。


「ああ、サンキューな」


「御協力ありがとうございましたっ」


「ふふっ、桐原さんも気が向いたら私に会いに来てね。デートならいつでもOKだから」


 藤原さんの後ろ姿を見送りながら、最後の一言は謹んで遠慮する事にした。

 部員身体能力表


 桐原 < 小波 ≦ 黒鳴先輩 < 枝々咲 < 国代


 ちなみに小波の身体能力は女子平均より高いくらいです。

 黒鳴先輩は薬の有無で身体能力が変わったりします。(大抵は男子平均より少し低いくらい)


 感想・批評・評価など、お待ちしております。


 次回もお楽しみに!

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