四章4
※※
同時刻。
百人中、九十人くらいが理想の女の子の部屋だと答えるであろう、そんな、ぬいぐるみいっぱいの可愛らしい部屋。
その部屋の中で、いつもの笑顔と違って悲しい顔をしながらベッドに顔を埋めている少女がいた。
少女の名前は小波 穂菜。
小波は今、今日の帰りにあった出来事について悔やんでいた。
(……わたしはどうしてこう、役に立たないんだろう)
いや、役に立たないだけならどんなに心が軽かった事だろうか。
そうではなく、自分は皆に迷惑しかかけていない。
自分勝手に怒って、叫いて……。
挙げ句の果てには、教頭先生を叩くなんて、本当に自分は何をやっているんだろうか。
「今も桐原君がわたしのために頑張っているかもしれないのに……」
なんとかしてやる。
小波の前に守るように立ち、そう言ってくれた桐原は小波には本当に頼もしく感じたし、かっこいいとも思った。
(でも、それじゃ駄目です。いつまでもわたしは桐原君に迷惑をかけられない。……ううん、かけちゃいけないんです)
せめて自分で起こした事くらいは自分で解決したい。
こんな他人任せのような事はしてはいけない。
「でも、一体どうすればいいんでしょう?」
したいことは思い浮かぶのに、具体的にどうすればいいか分からない。
自分の退学を取り消すなんて何をすればいいんだろうか?
教頭先生に謝る?
今更謝ったくらいで許してくれるだろうか。
生徒会に頼んでみる?
生徒会に入ることを引き合いに出されて、水掛け論になりそうだ。
「……駄目です」
いくら考えても碌に思いつかなかった。
自分は自分を守ることさえ出来ないのか。
そんな自分が嫌になり、また小波は自己嫌悪に陥る。
嫌い。
こんなに弱く、ウジウジしている自分が嫌いだ。
嫌い、嫌いだ。
強くなりたい。
思えば、子供の頃からそうだったと、小波は過去を振り返る。
……いや。
一度だけ、そうじゃなかった時があった。
その時の事はぼんやりとして、小波はあまり覚えていなかった。
だが、親から何回もその時のことを聞かされてきたので、自分が何をしたかというのは記憶に残っている。
それはもう、7年も前の事。
「あの時わたしは……」
その時。
机の上に置いてあった小波の携帯が震え、慌てて小波は携帯を手に取ることになった。
どうやらメールが届いたらしく、小波は中を開いた。
多分、依頼が届いたのだろうと、小波は推測しながらもメールの中身を確認する。
そして、メールを見た小波はしばらく、言葉を失うことになった。
「これって……!」
こんなことって。
「大変です……! すぐにでも皆さんに伝えないと……!」
現在の夢力【1422】