バレオロゴスの罠 6
※残酷な描写があります
◆
私は宿の主人に頼み、水を張った桶を持ってきてもらった。
その中にパヤーニーを投入すると、最初はゆっくり、それから徐々に速度を増して、彼は大きくなってゆく。反比例して桶の水が減ってゆくのは、それを肉体に変換しているからだろう。
「なぜ、水なのだ?」
私は水がミイラを構築してゆく様を見て、思わず呟いてしまった。
「ふぅ――……人体の七割は、水で出来ておるからな」
ほぼ人間の大きさになったミイラが、桶の中でしゃがみながら言う。
私はポカンと口を開け、ただ頷くことしか出来ない。
「いやいや、お前はどう見ても、水の割合が一割を切っているだろう!」と思ったが、彼が水で再構築されていることは確かなのだから。
「よく戻ったな、パヤーニー」
やがて等身大のミイラと化したパヤーニーを見据え、陛下が仰った。その表情は憮然としたもので、隣のシーリーンは唖然としている。
「な、なんなのよ、この出鱈目な生き物は……途中、ちょっとドキドキしちゃったじゃない」
シーリーンはどうやら、中途半端に大きくなったパヤーニーに妙な気を起こしたらしい。淫乱な女だ。
しかし巨大化するにつれてパヤーニーは人化し、(といっても、骨に干からびた薄皮を纏わせただけだ)そして衣服を構築していったから、結局、卑猥な存在にはなっていない。
「出鱈目だとしても、生き物ではないぞ、女。――ミイラだけに、余は死に物であるっ!」
眼窩の奥を真紅に輝かせて立ち上がり、パヤーニーが言う。そしてほぼ骨の親指を立て、軋む頬を歪めて笑った。
……パヤーニーは妙に格好つけた動きをしているから、桶から抜け出すときに躓いたのは、見なかったことにしてやろう。
とはいえ、彼が纏う緋色のローブは金の刺繍が施され、手に持つ杖は黒曜石が先端にはめ込まれた見事なものだ。これも単なる水から生み出したのなら、まったく大したミイラではある。
「……それにしても、ち〇こになってるなんてな。今まで、どうしていたんだ?」
陛下が屈託のない笑顔を浮かべてパヤーニーを抱しめ、彼の背中をバンバンと叩いていておられる。
「今まで、ですか。それを話せば長くなりますが――」
「聞くさ」
陛下は、力強く頷かれた。
それにしても――旧臣が突如現われ、それが干からびたち〇こだったとしても、暖かく迎え入れる。まったく、陛下のご器量の深さ、広さは留まるところを知らぬようで、私は深く感動した。
――――
パヤーニの話は、実際に長がった。
私はすっかり湯冷めをしたし、シーリーンは部屋の隅で眠っている。深夜に仲間を奪還するため、体力を温存しているのだろう。
私も少し眠っておきたかったが、まさか陛下が起きていらっしゃるのに、臣下が眠るわけにはいかない。なので私まで、結局パヤーニーの話を聞くハメになってしまったのだ。
なんでもカルスの戦いで滅んだのが、パヤーニーの本体であったことは間違いないらしい。
滅びの理由は、“聖戦”を唱えた隙をつかれ、魔王エベールに自らの心臓を潰された為だそうだ。あくまでも、決してフィアナと戦って敗れたわけではない――と力説していた。
途中、照れながら「とはいえ、フィアナは未来の余の嫁」と言うのが、とても鬱陶しかった。
「葬式済みの男に結婚式が出来るのか? え?」と問い詰めたかったが、そんなことを言えば無駄に時間が掛かりそうだったので、私は黙っていた。
それはともかく、彼が復活した理由は――あの時に行なった“聖戦”が原因で本体は倒れたが、同時に、欠損して行方知れずとなっていた部位に新たな力が宿った為だという。
もちろん、その欠損した部位というのが、”ち〇こ”だった。
まったく最低の話だが、確かにサクルやマーキュリーの肉体を再生させ定着させる程の魔力を放出したなら、自身の一部に記憶や魂の複写が出来たとしても、おかしな話ではない。
だがそれにしても、だ。水で復活するのものを、水場にいながら数年も干からびていたとは、どういう了見であろうか。
いくら水から上がったらそこで力尽きたといっても、少し考えればどうにか出来そうなものであろうに。
いや、それどころか、つい先日ドゥバーンさまに見つかるまで、誰にも発見されなかったというのがどうにも怪しい。
「じゃあ今のパヤーニーは、あの時アズラク城の水場で失った――?」
おや、ちょうど会話が核心に迫りつつあるようだ。せっかくだから、機会をみて聞いてみよう。納得出来なければ、私がパヤーニーを疑うことになってしまうからな。
「そう! これこそかつて失われし、我が息子なのである! 故に陛下よ! 以後、余のことは“ビン・パヤーニー”と呼ぶがよろしかろうぞっ!」
なにやら妙な宣言をしたパヤーニーが、私の淹れた茶を飲んだ。というか――飲めていない。
なにしろ彼の皮膚は、カスカスでカピカピでボロボロの穴だらけ。だから茶が下顎の部分からボタボタと垂れているし、辛うじて喉を通ったものも、穴だらけの胃袋から零れて衣服を濡らし、椅子の下へと零れ落ちていた。
せっかくパヤーニーは豪奢な緋色のローブを纏っているというのに、いきなり染みだらけだ。これは酷い。
酷いが――茶を飲む為に陛下との会話が途切れたから、私はすかさず質問をぶつけてみた。
「ところで不思議に思っていたのですが、何故ビン・パヤーニーどのは水場におられながら、干からび、動けなくなっておいでだったのですか?」
「うぐっ……! これには深い訳が!」
ようやく聞けた私の問いに、パヤーニーは激しく動揺をしている。なんだか怪しい。陛下も「そうだよな」と頷いておられる。
「実は鼠に齧られそうになり、逃げ出した先で挟まってしまいましてな。薄暗いし、来る者といえば番兵だけだしで、結局、そのまま発見されず、先日まで――」
「でも、声は出たんだろ?」
「いや、それが余りに窮屈で、声もでなくて。それでも一応、鼠対策の結界を張ったのですが、そこで魔力も尽き果てましてなぁ……」
「では、ドゥバーンさまはどうやってパヤーニーどのを見つけたのです?」
「ああ、それはな。あの女、こっそり水場で泳ぎおってな――それで素っ裸になるものだから、ほれ、余もまだまだ若いゆえ、いかに魔力が尽きておるといっても、ついな――隆起してしまったのだ! それでようやく見つかったという次第! いやあ、良い乳であったわ! ぬはははは!」
“ボカンッ”
あ、陛下がパヤーニーどのを殴った。
「パヤーニー! ドゥバーンは俺の妻だ、裸を見るなんてっ! 大体お前はなぁ――」
いやいや、陛下、怒るのはそこではないです。水場で泳ぐドゥバーンさまを叱らねば。あれは飲料水なのですから!
――っと。まあいい。そういうことなら、私の疑惑は解けた。そろそろ本題に移ってもらうとしよう。
「お怒りのところ、申し訳ございません、陛下。実はこの度パヤーニーどのが此方におりますのも、全てはドゥバーンさまの思し召し。まずは、この手紙をご覧下さい」
陛下のパヤーニへ対するお説教が途切れた機会を見計らって、私は肝心の手紙を差し出した。
当然これでドゥバーンさまの「ざまぁ作戦」の概要も知れることになるが、それでお怒りにになる陛下ではあるまい。
それはこのパヤーニーどのに対する怒りようを見れば、自明のこと。陛下は間違いなくドゥバーンさまを愛してらっしゃるのだから。
「あ、ドゥバーンにもバレてた……」
あれ、陛下、むしろ怯えてません? そんなに忙しなく目を瞬かせて……
「ドゥバーンが知ってるってことは、ジャムカにもきっと伝わっていて……ネフェルカーラにばれてるから、シェヘラザードにも……お、お……俺、帰れないじゃないか……! こ、これ、何とかファルナーズやドニアザードに助けてもらえないかな……あ、でも……」
ん? あ、でもって何です、陛下? まさか彼女達とも……くう、だとしたら何故、私も愛人の列に加えてくれませぬのかっ!
と……今、重要なところは、そこではない。私まで陛下の思考に、引き摺られるところであった。
「陛下、ドゥバーンさまに対しては、私が取り成してみます。ですから、そうお気になされますな。
それよりもドゥバーンさまは此度の件に“神”が関与していることを、お疑いの御様子。それゆえ陛下とパヤーニーどのを此方へ、彼等に気付かれぬよう送った――という次第にございましょう」
「ああ、そうだな。でも言ってくれれば、自分でコッソリ来たのに……」
だから陛下の場合は、浮気の罰もあるのです――とは、流石の私も言えない。ただ、時は刻々と流れ、いよいよ囚われた者達を解放する時間が迫っている。
宮殿近くの森で待つハリム達を放置する訳にはいかないから、私は陛下に今の時刻を告げることにした。
◆◆
私と陛下、それからシーリーンとパヤーニー、全員が消失を使えたのは僥倖だ。部屋を暗くし、抜け出してもレオ五世の間者に気付かれる事はなかった。
念のため“闇隊”を三人呼び、私達の代わりに部屋で番をさせているが――彼等には万が一正体がバレそうになったら、躊躇わずバレオロゴスの間者を始末するよう命じている。
私達はレオ五世の宮殿に程近い森で、ハリムが率いる百名の兵と合流した。
兵といっても、彼等の武器は木の棒に包丁を括りつけたものや伐採用の斧で、防具は鍋を加工したものが主だ。まともな装備を身に着けているのは、ハリムを含めても二十名に満たないだろう。
要するに戦士と呼べるのは少数で、後の者は勇気を振り絞っただけの一般人に過ぎない、ということだ。
辛うじて弓矢が人数分揃っている点だけが、この集団の救いだろう。
「潜入は私達に任せてほしい。皆は解放した囚人が宮殿から逃げてきたら、彼等を助けて共に逃げるのだ。
場合によっては、怪我をしている者がいるかもしれない。そんな時にこそ、この人数はありがたいからな」
私は百余名の前に立ち、静かに説明をした。
「巡検士さま。だけど敵が出てきたら、戦って退けないと……」
斧を持った男が、おずおずと言った。すると私が口を開く前に、陛下が笑って彼の肩を叩く。
「問題ない。兵なら、こちらで準備をしている。だからお前達は心配しなくていい。囚人達を助け、ここから逃げることだけを考えてくれ」
「そいつぁ、兵隊がどこかにいるってことですか?」
男が、ポカンとして陛下を見上げている。確かに、兵など見当たらない。男を安心させる為に、陛下が嘘をついているのだろうか?
「パヤーニー。ちょっと不本意だけど、不死隊を頼む」
――不死隊? 陛下は何を仰っているのだ、不可解な。現在は隊長のサクル以下、全員が帝都マディーナにいるはずだが。
ビン・パヤーニーが「クックック」と笑っている。
「陛下、今や不死隊は全てが受肉しておりますれば、この地にて、新たなる兵を補充いたしましょう」
「ん、そうか。そうなるのか――わかった。皆の護衛の為にも、頼む」
「イエス、ユアマジェスティ――生きとし生けるもの全て、崩壊の時は訪れるものなり――崩壊してなお、未練あらば――以下、略! ――召喚、不死骸骨! ついでに召喚、骸骨騎士団! ん、腐乱死体は、体裁が悪いのでやめておこう。余、空気読めるから」
なんということだ。パヤーニーの全身から凄まじい闇の波動を感じる。
そして大地から、魂さえも凍えさせるような妖気と邪気が溢れ出した。
この場に居る誰もが、今、まさに悪寒を覚えているだろう。シーリーンも、自らの両腕を抱え込むようにしている。
パヤーニーを中心にして渦巻く白い靄、その中で時折、青白い稲光が弾けていた。
森の木々が揺れ、風が“ビュウ”と唸る。
今この時、まるで世界の慟哭を全てこの地に集めたかのような、重苦しい空気が夜の森を覆った。
そして土を掻き分け、カタカタ、カタカタ、と不気味な音を響かせながら、青白く輝く髑髏が地面から姿を現す。
一体、また一体とその数を増やす骸骨達は数百にも達し、やがて整然とした闇の軍団を作り上げていた。
「陛下、こんなものでよろしいですかな?」
「あ、ああ、充分だ。というか、数も多すぎるし、何より一体だけ、やたらとでかい骸骨騎士がいるんだけど……」
陛下が少しだけ頬をひくつかせて、パヤーニーに言った。
「ふむ、ちょっと気合を入れすぎましたかな? まあ、お気にめさるなっ!」
なんとも……これが初代不死王の力だったのか。
――――
こうして森に闇の軍勢と百余名の子羊を残し、私達は再び消失の呪文を唱えた。そして異界を通り宮殿の地下二階まで潜ると、ようやくそれを解除して辺りを見回す。
この時、全員が黒い覆面を被った。脱出時に顔を見られない為だ。後日、巡検士として宮殿へ参内するつもりなので、少なくとも私と陛下にとって、これは当然のことである。
地下二階――シーリーンの情報によれば、この階層に囚人がいるという。
魔法によって張り巡らされた罠を、私は一つ一つ丁寧に解除した。別に全てを無視して突っ切っても、陛下はきっと無傷であろう。
だが、ここにある罠を作動させたまま囚人を解放した場合、彼等がその犠牲になることを考慮したのだ。
罠の解除中に廊下をうろついていた数名の牢番は、シーリーンが音もなく始末した。流石に、良い腕をしている。
――そういえば私達が突入する直前、ハリムが足をガクガクさせながら、「俺も連れて行ってくれ!」と懇願していたが、ヤツはどっちの任務が危険なのかを理解していないのだろうか?
ヤツの腕では精々、牢番二人を同時に相手取って、何とか勝てる程度だというのに。
もっとも、やたらと大きな骸骨騎士の迫力は、確かに凄まじいものだった。
髑髏の頭部に真紅の眼光を滾らせ、銀灰色の鎧をその巨躯に纏った、骸骨の巨馬を駆る騎士。しかも黒いマントを靡かせ、長大な剣を手にしている。
盾に描かれた剣と薔薇の紋章を見るに、かつてはきっと高名な騎士だったのであろうが……。
ちなみにハリムは髑髏の騎士に、ジロリと一度、睨まれたのだ。それであんな風に怯えたのかもしれない。
「パヤーニーどの。あの髑髏の騎士は生前、名のある者だったのか?」
私は薄暗い廊下を歩みながら、そっとパヤーニーに問うた。恐らく私でも、あれには敵うまい。だが、ただの人外に敗北感を覚えるなど、冗談ではないのだ。
「さあな、この辺りを彷徨っていた魂だ。いずれバレオロゴスの関係者であろうが、余に味方をしたとろを見るに、今の大公を面白く思わん人物なのであろうよ。
ま、パヤーニーの桃の一つも食わせれば、何事か喋るやもしれんが……所詮は死者のこと、詮索するだけ無駄であろう。あ、余も死者であった! こりゃ失敬!」
なんというか、説明が丁寧なのは良いとして、全体的にパヤーニーはうざい。なんだか自分が死者であることを、どうにか面白く出来ないかと狙っている節がある。絶対に笑ってやるものか。
私達は慎重に長い廊下を進み、ようやく地下の最深部へ到達した。
廊下に置かれた篝火にくべられた薪が、パチパチと爆ぜる音が聞こえる。
ここから先の廊下、その両側面に牢が五つずつ並んでいた。一つの牢に十人が入れられているとして、ならば合計で百人か。
囚われた者達の呻き声も聞こえた。といっても、それは数名程度のものだ。百という数からすれば、少ない。恐らく奴隷として輸出する商品だから、余程抵抗した者以外は手荒に扱っていないのだろう。
だがそれは、決して優しさではない。あくまでも、下衆な商人の打算によるものだ。
シーリーンが“ギリッ”と奥歯を鳴らし、今にも飛び出さんばかりのギラついた目をしていた。
「この先ね……」
声も、怒気を孕んでいる。シーリーンとは、もっと冷静な女だと思っていたがな。
だが――慌ててはいけない。だから私は、後ろにいる彼女を制した。
「静かに。慌てるな」
私は幻影の呪文を唱え、姿を消して廊下へ進み出た。幸いにして、この魔法を見破れる者はいないようだ。
「あれ、シュラ? どこ? どこ?」
陛下の声が聞こえる。――って、あんたもかっ! 私は思わず、こけそうになった。
それでも私は、ゆっくりと先へ進む。
牢へ至る手前の壁、廊下の途中に窪みがあった。凹型のそれは扉の無い部屋のようで、そこに四人の牢番がいる。
さらに二人が廊下を監視するように歩き、あと二人が牢にいる囚人達をからかっていた。
再び陛下達の待つ廊下の角へ戻ると、魔法を解除する。そしてここから私は、手だけで全員に合図をした。
今、廊下の先にある光景を見たのは、私だけ。この角を曲がれば牢があり、囚人達がいる。
私は左手を上げた。そのまま親指以外の四本を立て、それから二本にした指を二度、軽く振った。
これで四人の敵と、二人の敵が二組――ということが伝わったはずだ。
それから私は三本の指を立てた左手を上下に揺らし、皆へ待機してもらうよう伝えた。そして足を一歩、踏み出す。
敵が八人なら、全員で掛かるまでもない。私だけで、充分なのだ。
まずは、窪みにいる四人からいこう。彼等はだらしなく椅子に座り、賽を振って賭け事に興じている。
「こんばんわ」
私はニッコリ微笑み、全員の注目を集めた。そのまま曲刀を抜き放ち、一刀で四人の首を刎ね飛ばす。
造作も無い。彼等は悲鳴すら上げることも出来ず、絶命した。
ただ――賽を持っていた男の体が頭を失っても尚、それを投げたのは愉快だった。
それから二人一組で巡回する牢番の一人を、背後から短剣で一突き。心臓を抉り、絶命させる。
「ぐあっ!」
おや、失敗だ。悲鳴を上げさせてしまった。
もう一人の牢番が振り返り、抜剣しようとする。
しかし私は間髪入れず、曲刀を翻してもう一人の首を刎ねた。“ヒュー”という、肺から空気が抜ける間抜けな音が響く。
流石にこうなれば、囚人をからかっている牢番達も気が付いた。
だが――遅い。
慌てて抜剣した一人に私は近づき、足を払って転ばせる。そして顔面を蹴りぬき、床へ後頭部を激突させた。
床とかかとに挟まれた顔からグチャリと音が鳴り、「うっ」と唸って男が絶命する。
まったく、この程度で頭蓋が粉砕されるのだから、人間とは、なんと脆いのか。
最後の一人は戦意を喪失したのか、「助けてくれぇー」と弱々しく言い、膝をつく。
私は頷いた。
当然、私はそのまま首を刎ね、男が苦しまぬよう殺してやる。
うん、ちゃんと助けてやったぞ。苦痛を与えず殺してやるなど、私はなんと慈悲深いのだろう。
男の刎ね飛ばされた首も、安堵の表情を浮かべているではないか。
陛下もきっと私の優しさを見て、感動しているに違いない……ふふ……うふふふふ……。
「うわ、スプラッター……」
陛下が此方を見て、片手で顔を覆っておられる。
ん? 「すぷらったー」とは何であろう。ああ、そうか。私に対する賛辞だろうな。うん、きっとそうに違いない。うふふふふ……。
シュラ無双でした。
魔法解説
消失……次元転移して移動する。あらゆる現界にある物質を無視して、移動可能。
幻影……迷彩のようなもの。