≪俺は、ホントに魔王さま?≫[第2話]
マールに拉致られて数日が経つ。しかしここが元の世界と違うといわれても…、
魔界に来たものの一歩も外に行ってはいないし、露骨にそれらしい違いも見当たらない、
特に詮索もしてないため外国の古城に連れて来れれたのだといわれても納得しかねない状況だ。
「マール、あんたとても面白い物引いてきたねー。この魔王様攻撃魔法一切使えないよ
もうな〜んも、というより戦力ゼロ」
血まみれの白衣、白衣といってもナースの方じゃなく羽織る感じの研究員タイプを着た
美人女性がカルテを持って言った。
「えーでも、ちゃんとセンサー反応してたし〜」
「ちゃんと最後まで話聞きなさい、その代わりすごい能力があるみたいよー」
「なによジンジャー、もったいぶってないで言いなさい」
ジンジャーと言われた血まみれ白衣を着た金髪ショートでメガネの女性がニヤッと笑う。
「驚かないでよー?光一の能力は強力な束縛と行使」
マールは喜ぶよりもガッカリした顔をした。
「そんなの私達でもできるでしょ?簡単な使い魔くらい」
「フッ、これだから素人は…その「使い魔」が魔神クラスだろうが魔王クラス
だろうが関係なし!しかも複数束縛し続けれる、さらに好きな形に束縛できる、
そして束縛した悪魔を思いのまま行使できるのよ、どこかの魔王もこれほどじゃないわ。
卑怯的な大天使どころか神でも使えるかどうかの力なんだからっ…ハァハァ…わかった?」
ジンジャーが息が切れるまでノンストップでしゃべりきった。
「簡単にまとめるとポケ○ンといっしょでしょ?今のを聞く限りオレは凄いのか」
ベットから起き上がり服をはおる。魔界に連れて来られて以来実験だの身体調査だので
拘束三昧とても疲れた。
ここは魔界の城で、この城はマールの仕えていた魔王の城。
マールが仕えていた頃は城下は賑い、兵士の数は3千万くらいいたそうだが、
今では城は寂れ閑散としていた、兵士は一万分の一もいないらしい。
いつ壊されてもおかしくない程のぼろい城だ。
魔王が倒れるとともにマールの同僚の大半は消えた。
残ったのは役三千の兵士と古びた城、マールとジンジャー、
その他二人を含んだ四人の重臣だけだった。
所詮悪魔は義理なんて有りはしない、このまま付いていても利益が無いと分かると
即離れて行ったらしい。
「ふふふふふっで、そのポ○モンの捕まえ方はどうやるんだ?」
自信タップリで非常に情けない事を聞く。
「そんなことあんたが決めるのよ、リスクが高ければ高いだけ効果が強い」
ジンジャーがため息交じりで言う。
「しょうがない、リスト作ってあげるから自分で選びなさい」
一旦部屋を出て行ったが、すぐに戻ってきてリスクと成功率の表を作ってくれた。
「リスクの高い方が良いモンスター○ールで捕まえやすいって事か」
マールが暇そうな顔をして頬っぺたを抓ってきた。
「さっきから何訳の分からないこと言ってんのよ」
「ん?ジンジャーが分かり難い説明するから、とっても分かり易く理解しただけ。
ん〜じゃあ捕まえた悪魔で倒した悪魔を仲魔にするなんかどう?」
「ちゃんと読みなさい簡単すぎるわよ。強い悪魔を捕まえるにも、多勢に無勢で簡単に
条件クリア。前例としてコレクターという魔王がいるんだけど、彼は殺した悪魔を
捕まえるという条件を捕まえた悪魔の強さが半分となるリスクで補ったりしてるわ」
ジンジャーがめがねを上げながら言う。
「だったら敵を倒して生きてる間に左手で触る、出せる仲魔は一匹づつ。
それと仲魔は30人まふぇって!!何すんじゃい大事な話の時に」
またしてもマールが頬っぺたをつねってきた、今度は話の途中で。
「だって訳分かんなくてつまんないんだもーん、ぷいっ」
ホッペを膨らましてそっぽを向く。
「あー悪かった。悪かったからもう少し待ってろ、ジンジャーさっきのはどう?」
ジンジャーは首を傾げながら悩む。
「ああ、良いんじゃない?リスク的にはまあまあよ、
生きてる間に左手で触るで40%、貴方じゃまず近づくだけでひき肉、
仲間は一匹づつで34%、多勢に無勢をなくして、
中魔は30人までで25%、これはオマケで…ばっちりよ。
99%成功するだろうね、倒せれば、ね」
ジンジャーが説明をしている間、マールはずっと頬っぺたを引っ張っていた。
これがなかなか間抜けヅラだったらしく、ジンジャーは喋ってる間笑を堪えるのが
やっとのようだった、今は口に手を添えてクスクス笑っている。
「そうだこの後、光一会議室に来て。マールもあの二人を会議室まで連れてきて」
ジンジャーは言いながら医務室から出て行く。
「ハーイ、光一ー、早速私は犬っコロとリンスを連れてくるから、先に会議室行ってて
会議室はココから右右左右左左左右右左右右左左右左右左左右右左左右の部屋だから〜」
ダダダダーと風の如く走り消えて行く。
「え?右右左?えぇどこだー?」
この城の作りはそこまで大きくないくせに意味無く入組んでいて迷路のようだ。
敵の進入を考慮してこの構造になっている、他国の城も似たり寄ったりなのは言うまでもない、
魔界の国取りの仕組みを聞けば納得行くことであろう。
しかし今の光一にとっては…
無意味だ、確実にさっきだってトイレに行くのに迷う始末。もっと簡素にした方がいい。
ゼッタイいい。
「光一まだそんな所にいたの〜?もうみんな集まったよー」
マールがダダダダダーと戻ってきた。マールはあの二人とやらを召集かけた後、
まだ会議室に来ていないオレを探しに来てくれたようだ。
「さっきので分かるか!!」
テクテクとマールの後ろを歩いていく。いくら曲がっても目印らしい目印が無く、
たまにある扉も皆同じで自分の位置がさっぱり分からない。
「じゃあしょうがないなー。私の使い魔を貸してあげる、璃恩来て」
ポン!、マールの手のひらに小さい女子の悪魔が乗っている。
「ふ〜。久しぶりねマール、こいつがおまえの探していた新しい魔王?
魔力が一切感じられないわね」
手のひらにいた璃恩が跳んでマールの肩の上に移り鎮座する。
「うふふ、相変わらず鋭いわね、私もよく分からないんだけど束縛が○ケモンで
リスクが99%だから神より強いって」
今のを聞く限り一切分かってないようだ、無理もないが。
「まあいい。とにかくなんか強いって事ね…で?なんか用?」
「ああそうだった、光一…新しい魔王様がこっちの生活に慣れるまで手助けを
して欲しいの」
不意にマールを見失いかけて急ぎ足になる。
「ようするに何も分からない赤ちゃんのお守りをしろと?ガラガラ持って、オムツは?
替えなくていいのか?」
璃恩がひにくたっぷりで言う。傷つくよ?
「たぶん平気?。でもトイレの場所とか教えてあげてね」
疑問形か疑問形なのかそこで。しかしながら何も反論できない自分が悲しい…
ポン!また璃恩が跳ね今度はオレの肩に乗ってきた。
「まヨロシクたのむ。一応魔王らしいからな…面倒見てやる」
「こ、こちらこそ」
そんな事をしているうちに、会議室に着いた。
「遅い!!何やってたの?とっくに皆集まってるわよ」
ジンジャーが少し切れ気味みたいだ。見るとあの二人とやらも隣にいるようだ。
椅子に座っていた人影が一つ消え、目の前に現れた。その人影が跪き言った。
「私は左将軍疾風、魔王殿、今は弱小国ですが頑張っていきましょう」
い、犬?黒装束に忍者刀見るからに忍者ルック…犬?が将軍…忍者で?
「ああ、まだ魔界に慣れていないが何とかやっていこう…光一でいいよ」
璃恩がオレの肩から疾風の頭に乗って犬っころと言いながら耳をつまむ。
もう一つの人影が立ち上がる。ピンク色の長い髪をなびかせ、とがった耳が目に付く
うつむき顔を真っ赤にさせてやっとしゃべり始めた。
「リンス…右将軍で…ダークエルフ……よ、よろしく」
言い切るなり即座に椅子に座る。とても恥ずかしかったのか耳まで真っ赤にしている。
ま〜オレはそこそこゲームとかやっているがダークエルフといえば残忍かつ冷酷で
雑魚なのに意外と強いことが多いキャラだが、キャラちがうだろ。
「こちらからもよろしく」
「うん上出来、リンスがはじめて会う人のここまでしゃべるとは、少し驚き。
さて自己紹介はこれくらいにして、本題これからのことを話しましょう」
ジンジャーがグダグダと今の状況やら隣の国がどうとやらあまり関係のなさそうな
話が二時間弱。
軽くカットって所で、やっとまとまったらしい。
「じゃあ疾風が魔界ニンジン収穫調査」
疾風が軽く頷く。
「次、リンスは壊れた壁の修理」
「わかった…」
「マールは城内警護」
「了解でも滅多お客来ないからな〜」
「で、私は隣国調査」
話し合いが終わったらしい。話の内容は右から左でさっぱりわからなかった。
疾風とリンスの二人と挨拶ができただけでいいだろう。
「あの〜結局オレはなにをすればいいんだ?」
「う〜んそうね…」
ジンジャーの右頬がニヤリとつりあがる。
これは意地悪をする顔だ。短い付き合いでも分る邪悪な顔だ。
「便所掃除でもしてもらおうかしら♪では決定、文句批判等、一切受け付けません」
ジンジャーがおーほほほほほと笑っていやがる。
一応オレ魔王じゃなかったんですか?
「この悪魔めっ」
「あら、お褒めに与り光栄デス、まおうさま」
魔界に来て初めての仕事が便所掃除……
はい
読んでいただきありがとうございます、阿山利泰です。
これからも精進していきます〜〜