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呪鎖の勇者と修繕師の眼  作者: ソルト
第1章 呪鎖編1
47/47

47話 それぞれの理由

 村を出てしばらく、三人は並んで歩いていた。

 朝の空気は澄んでいて、足元の草を踏む音だけが静かに響く。


 先頭を歩くアリシアが、ふと歩調を緩めた。


「……改めて、自己紹介をしておきましょうか」


 そう言って、隣を歩く赤髪の男へ視線を向ける。


「私はアリシアです。……事情があって、旅をしています」


「知ってるよ。勇者様、だろ」


 レギウスは軽く肩をすくめた。


「もっとも、今のお前が“あの時の勇者”と同じ存在かどうかは、正直どうでもいい」


 アリシアは少しだけ眉をひそめたが、否定はしなかった。


「では、あなたは?」


「レギウスだ。それ以上でも以下でもない」


 それだけ言って、前を向く。

 あまり詳しく話すつもりはなさそうだった。


 エルシオは一瞬迷ったあと、口を開いた。


「……僕はエルシオです。修繕屋をしていました」


「“していた”?」


「はい。今は……旅の途中です」


 それ以上は語らず、歩き続ける。


 しばらく沈黙が続いたあと、レギウスがふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、さっき言ってたな。お前、弱点が見えるとか」


 エルシオは少し驚いたが、頷いた。


「はい。僕のスキルは《弱点看破》です。物や生き物の……弱っている部分が分かります」


「へぇ」


 レギウスは興味深そうに横目で見る。


「生き物も、か」


「……正直、あまり見たくない時もあります」


 エルシオのその言葉に、レギウスは小さく笑った。


「便利だが、厄介な力だな」


 アリシアが歩きながら言った。


「あなたは、なぜ私たちについて来るのですか?」


 レギウスは少しだけ考え、素直に答える。


「暇つぶしだ」


「……それだけですか?」


「それと、五百年前の勇者について、少し調べたい」


 淡々とした口調だった。


「別に復讐がしたいわけでもない。ただ……知りたいだけだ。あいつが何を考えて、何を見ていたのか」


 アリシアは一瞬だけ視線を伏せ、やがて静かに頷いた。


「……そうですか」


 エルシオは二人の会話を聞きながら、少し遅れて口を挟む。


「僕たちは、呪いを解くために旅をしています」


 アリシアが小さく頷き、補足する。


「私にかけられた呪いの手がかりを探しています。エルシオさんのスキルで、その“向き”が分かるかもしれないと」


 エルシオは少し考えてから言った。


「前に見たとき……四方に伸びている中で、一本だけ、ほんのわずかに撓んでいるように見えました。他の三つより、少しだけ近いのかもしれません」


「方向は?」


「はっきりとは……ですが、北東の方角だと思います」


 レギウスは前を見たまま、ふう、と小さく息を吐いた。


「なるほど。面白そうだ」


「……本当に、暇つぶしなのですね」


「そう言っただろ」


 軽い調子だが、その声には嘘は感じられなかった。


 三人は再び歩き出す。

 それぞれ違う理由を胸に抱えながら、同じ道を進んでいく。


 旅は、まだ始まったばかりだった。

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