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呪鎖の勇者と修繕師の眼  作者: ソルト
第1章 呪鎖編1
43/47

43話 レギウス

 夜風が止まり、光が祠を包み込んだ。

 青い光がゆっくりと収束していく中、

 そこに立っていたのは――一人の男。


 赤い髪が月明かりに照らされ、金色の瞳が静かに開く。

 その目には狂気も怒りもなく、ただ深い眠りから覚めた者の静寂が宿っていた。


 アリシアがわずかに身構えた。

「……あなたは、誰ですか?」


 男はその声に反応し、わずかに首を傾ける。

「……ん? そこの……お前。」

 鋭い金の視線が、アリシアを真っ直ぐに射抜いた。


「俺のスキルがビンビンに反応している。」

「お前……勇者だな?」


 その言葉に、空気が凍りつく。

 エルシオが息を呑んだ。

「ゆ、勇者……?」


 アリシアの表情がわずかに揺れたが、すぐに落ち着きを取り戻す。

「……どうして、それを?」


「ひとつ聞くが、今は“魔暦”何年だ?」

 男の声は落ち着いていたが、どこか懐かしさのような響きがあった。

 エルシオが戸惑いながらも答える。


「えっと……確か、魔暦一七〇一年です。」


「なるほどな……」

 男は小さく息をつく。

「じゃあ、俺は……五百年くらい封印されてたってわけか。」


 アリシアが眉をひそめる。

「……あなたは、なぜ封印されていたのですか?」


「分からねぇ。」

 男は短く言い放った。

「いきなり”勇者様”が襲ってきたんだよ。」


 その口調はどこか飄々としているが、嘘を吐いているようには聞こえなかった。

 ゆっくりと右手を上げ、肩を回す。

 長い封印のせいか、わずかに動きがぎこちない。


「……“レギウス”だ。」

 短く名を告げると、空気がわずかに震えた。


 エルシオは思わず一歩退いた。

 アリシアは構えを崩さず、静かに息を整える。


「あなたは……魔族なのですか?」

「そうだな……魔族だ。」

 レギウスは淡々と答えた。

「けど、俺にとっちゃそんなのはどうでもいい。

 気づけば眠らされて、今ここだ。」


 沈黙が落ちた。

 月明かりが三人の間を照らし、夜気の冷たさがゆっくりと戻っていく。


 アリシアは剣をわずかに下ろした。

「……あなたに敵意はないようですね。」


「今のところはな。」

 レギウスはわずかに笑う。

「けど、俺の封印を解いたのはお前らか?」


 エルシオが少しだけ手を上げた。

「……たぶん、僕です。封印の弱点に触れてしまって……」


 その言葉に、レギウスは一瞬だけ目を細めたが、すぐに肩をすくめた。

「そうか。ま、助かったよ。」


 それだけ言うと、夜の静けさが再び戻る。

 アリシアとエルシオは顔を見合わせ、

 目の前の男が“敵”なのか“味方”なのか、まだ判断できずにいた。

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