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太郎が眠る夜には

作者: JC
掲載日:2010/05/25


この前、じーちゃんが死んだ。78歳だった。

糖尿病と診断されたのに、実は癌だったらしい。

最後は苦しむ事なく、安らかに眠った。


じーちゃんは、二つの形見を残していった。

「太郎」と「カセットテープ」だ。


ばーちゃんを早くに亡くし、一人きりになってしまったじーちゃん。

そんなじーちゃんを心配して、私たち家族は犬を買ってあげた。

それが「太郎」だ。


じーちゃんはいわゆる、典型的なヘンクツなガンコじじい。

『ワシにはそんな獣いらん』と言うのを無視して、半ば強制的に「太郎」を置いて来た。

ただ困った事に、「太郎」もよく吠える懐かない犬だった。


頑固者同士の共同生活は、じーちゃんが「太郎」に叫ぶと、「太郎」が吠える。

「太郎」が吠えると、じーちゃんが叩く、といった具合に最悪だったらしい。

じーちゃんは、散歩に行くときも、『おい、ただ飯喰らい。散歩に行きたいならさっさとしろ』なんて言って、唸る「太郎」を無理矢理引っ張ってた。

入院してからは、まるで自分の事を呼ぶように、死に損ないとも呼んでた。


そんなじーちゃんが死んだ。

唯一の同居人がこの世からいなくなり、今度は「太郎」が一人きりになってしまった。


私たちは、かわいそうに思い我が家で飼う事にした。

でも、じーちゃんの家にいた時以上に懐かない。

昼夜関係なく一日中吠えていたかと思うと、時折、窓の外を見ながら誰かを探すように鳴くのだ。

そんな「太郎」に困った私たちは、じーちゃんがもう一つ残していった「カセットテープ」を思い出した。


そうか、じーちゃん。二つで一つだったんだね。

「太郎」は、じーちゃんにまた会いたかっただけなんだね。


じーちゃんが残していった「太郎」は、夜になるとカセットデッキの前で静かに眠る。

「カセットテープ」の声を聴きながら。


『おい、起きろ』

『ただ飯ぐらいは勝手に食え』

『散歩だと言ってるだろうが』

『その臭い体を洗うぞ』

『ちょっと、こっちこい』

『暖かいのだけが取り得だな』

『太郎、おやすみ』


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― 新着の感想 ―
[一言] 喧嘩するほど仲がいいって言いますもんね。 カセットテープを聞きながら眠る太郎の面影が浮かんできそうでした。 これからもがんばってください。
[良い点] 拝読させていただきました(^-^) カセットテープと太郎などの使い方、うまいな、と感じました。 お話の全体的なまとまり、良かったと思います。 [気になる点] 句読点で改行されるのは意図…
[良い点] ありきたりだけど、好きです [気になる点] もっと的をしぼって、じいちゃんなのか、犬なのか、じいちゃんの事なのか、犬のことなのか飼い主と犬のことなのかはっきりしたほうが絵や動画ではないので…
2010/05/26 09:00 退会済み
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