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わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。  作者: 楠ノ木雫


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◇39 END

 布団の中に、暖かいぬくもりを感じる。


 自分の体温ではない。隣で寝息を立てている彼の体温だ。


 隣で寝ている旦那様を見るのは何日ぶりだろうか。昨日まではこの人は王宮の方に寝泊まりしていたから帰ってすらいなかった。


 でも、こんなに気の抜けた顔で寝ている旦那様を見るのはレアかもしれない。それだけ疲れ切っていたということだろう。だったら夜更かしせずそのまま早寝した方が良かったのでは? と抗議(こうぎ)したくなるが。昨日は何時に寝たのか覚えていないけれど、だいぶ遅かった。


 今日はいい天気なのかカーテンの隙間から陽が入ってくる。ぽかぽかなのかな。なら今日は外でお茶をしよう。ベッドから出してくれればの話だが。昨日の様子を見るに、駄々をこねそうだけど。


 とりあえずゆっくり寝かせてあげようと今のうちにベッドから脱出しようとしたけれど、引き戻された。抱きしめられている手で。さっきまで力が入ってなかったから取れると思ってたけれど、起きたらしい。



「おはようございます」


「……」


「旦那様」



 寝ぼけてる? ボーッと少し開いた目が私を見てる。



「……スイランだ……」


「はい、スイランですよ」



 やっぱり寝ぼけてるな。お疲れのようだから、もうちょっと寝かせてあげたいんだけど……



「はー、スイランがいる……」


「当たり前でしょ?」


「ここ数日毎朝起きてもスイランいなかったから全然疲れ取れなくて……マジでスイランに会いたかったんだから」



 そう言って反対を向いていた私をこちらに向くようくるっと回した旦那様。


 というか、私がいなくて疲れ取れないって、大袈裟(おおげさ)なのでは?



「スイランは? 俺がいなくて寂しかった?」


「……です」


「あ、素直。可愛い」



 そう言ってキスをしてくる。そういうこと言うから素直になりたくてもなれないんですけど。



「今日から一週間休み取れたんだ。だからさ、どっか行こうよ。前半は疲れてるようだから屋敷でゆっくりしてさ、その後3~4日くらいの旅行しようよ。どう?」


「お泊まり、ですか」


「うん。だって、スイランに会える隙間時間をことごとく潰されて会えなかったんだから。なら独り占めさせてくれてもよくない?」


「……お疲れ様でした」



 その潰してきた相手が誰なのか何となく分かるような、ないような。でも、そうなるとどうして旦那様の休憩時間を把握してるのだろうか。ストーカー?



「どこに行きます?」


「もう決めてあるんだ。ウチの別荘があるところなんだけど、結構景色がいいんだよ。だから期待してて」


「はい」



 旦那様との初めての旅行。うん、楽しみだ。どうなるかは分からないけれど。


 外で寝泊まりしたのはここに嫁ぐ道中のみ。シャレニア王国に入ってから何回か泊まったけれど、一人だった。まぁリーファや護衛の人達はいたけれど、食事も一人だった。旦那様がいての旅行だったら、楽しく過ごせそう。



「その次は里帰りしよっか。スイランに暁明(シァミン)案内してもらいたいな。スイランが生まれ育った場所をもっとよく知りたい」


「いい、ですけど……3週間くらい休み取らないと行けませんよ?」


「だいじょーぶ。1ヶ月の休みもう貰ってるから」


「えっ、い、1ヶ月!?」


「前々から、結婚祝いで長期の休みをくださいって陛下に直々に言ってあったんだよ。スイランと一緒に暁明に行きたいからって。で、陛下から今回の誕生祭後にしてくれって言ってくれてたんだよ。だから一緒に行こうね」


「な、るほど……」



 い、いいの? 一ヶ月なんて……王宮騎士団総括様……?


 あ、まぁ、でも以前から王宮での食事が改善されて騎士団の人達もだいぶ力がみなぎってるらしいから大丈夫だとは思うんだけど……いいのか?



「……漢服、似合いそうですね、旦那様」


「そう? じゃあスイランも漢服着てね」


「ご要望にはお答えします」



 何だか、こんな話をしているといつもの日常に戻ったような気がする。まぁ、一大イベントが終わったのだから当たり前か。


 色々あったけれど、最後はチョラン王国が危うくなる結果となった。とはいえ、これは自業自得。チョラン王国側も、王女殿下の教育を(おこた)り、そしてそんな王女を使節団の代表に選抜してしまったことが(あやま)りだったと気がつくことだろう。


 そして……私としても、旦那様がこんなに私を信用してくれていて、愛してくれていることが、だいぶ理解出来た。



「……旦那様、ありがとうございました」


「ん?」


「これからも、一緒にいてくださいね」


「それはこっちのセリフだよ。ずっといてね」


「はい」



 最後のパーティーでは『離婚』という言葉を出した。けれど、それでも旦那様から離れる、なんて選択肢は、今の私の中にはどこにもない。私の居場所はずっと、これからも旦那様の隣だ。



「……幸せって、こういう事を言うんだな」


「え?」


「俺のおかげで周りが幸せになれば、俺も幸せになるって思ってたんだけど……違ったな。俺の大切な人が、俺の事を見てくれて、好きでいてくれる事が幸せなんだって思ったよ」


「……そうですね。私も幸せですよ」


「本当? よかった」



 と、キスをされてしまった。いつもみたいな、腰を抜かしそうなものではなくて、とってもとっても甘いキス。愛がたくさんこもった……



「……でも、あの外交官とのトラブルの件はまだ許してないからね」


「……」


「スイランは危なっかしいんだよ。だから、一人で何とかしようとせず俺を呼んでね」


「……はい」


「よろしい」



 旦那様は本当に過保護だ。これくらいどうってことないのに。


 ……って、考えていると絶対バレるから忘れよう。



「あの国にはちゃんと(うった)えておいたから安心してね。俺の可愛いスイランに手を出したんだから、それ相応の請求を出しておいたから、スイランはもう忘れていいよ」


「……」



 一体どんなことを言ったのか、知りたいような、知りたくないような。


 でも、旦那様から愛されていると感じるのは、嬉しい事だ。


 だから、私も出来るだけこの大きすぎる愛に見合うだけの愛を返したいとは思ってる。どうしたらいいのかは分からないけど。


 けど、一緒にいるだけで幸せだと思ってくれてるみたいだし、ゆっくり考えよう。



 END.



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