表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。  作者: 楠ノ木雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/46

◇29

晩餐会(ばんさんかい)を開きたい?」


「はい」



 ナイトクラブから数日後、就寝前に旦那様にそんな提案をさせてもらった。


 いきなりそんな事を言い出したからか、旦那様は少し驚いたような様子だ。ちょっと難しかったか。



「上位階級の方々を交えた、晩餐会(ばんさんかい)を開きたいのですが……ダメ、でしょうか?」



 私はお茶会やパーティーなど自分が主催したものは、この国に来てからやった事がない。それに、結婚して初めての事だから注目されてしまうため重要となってくるし、晩餐会(ばんさんかい)となると旦那様も参加しないといけない。


 だから、いきなり言い出しての主催というのは難しいのかも。


 旦那様の顔色を(うかが)うと……微笑んでくれた。



「いいよ」



 そう言いつつ、ソファーに座る彼の膝に私を乗せた。いきなりでびっくりするから、一言欲しかったのだが。でも、いいんだ……



「そもそも、俺に許可なんていらないんだよ。スイランがしたい事があればしていい。俺は、そんなスイランの助けになりたいから、報告してくれればそれでいい。無理もしてほしくないしね」


「……ありがとうございます」



 それだけで、いいんだ。ちょっと難しいかなと今日一日色々と考えていたんだけれど……いらなかったのか。



「うん。でも……」



 そう言いかけ、旦那様は私をぎゅっと抱きしめた。



「スイランの方からお願いだなんて、初めてで嬉しいなぁ……ずっと俺ばっかりだったから」



 ……そうだっけ? お願いは、した事があったような……あったような? あれ、なかった?


 でも、旦那様を見てみると、本当に嬉しそうに感じる。そこまで、嬉しかったんだ。



「……一人、知人を呼びたいんですけど、外国の人なんです。手伝っていただいても、いいですか?」



 ちょっと難しいお願いだっただろうか、と思い後悔はしたけれど……身体を離した旦那様の表情は、とても晴れやかだった。



「うん、いいよ。俺にお願いって事は、もしかしてシャレニアと交流のない国の方?」


「あ、はい。周辺国ではあるのですが……」



 さすが旦那様だ。それだけで分かっちゃうんだ。



「……男性?」


「はい、男性です。貴族の方なんですけど……」



 と、言いかけたものの、旦那様はまた私を抱きしめては肩に顔を埋める。あ、駄目だった?


 でも、男性って言ったから……というと、もしかして……



「ふぅん、知人なんだ。いつから?」


「10歳の頃です」


「……」



 黙っちゃった。そんな旦那様に、ついクスクスと笑ってしまった。そんな笑い声に、ぎゅっと抱きしめる手に力が入った。



「60代のダンディなおじさまですよ」


「……」



 ……あれ、まだ黙ったままだ。



「……スイランはダンディな男が好み?」


「違います」



 いや、年上好きではあるけれど、そこまで年上な方はさすがにない。それに、私はそもそもダンディな男性が好みじゃないし、今回お呼びする方は既婚者でお子さんまでいる。



「……じゃあ、嫉妬(しっと)深い旦那は嫌?」


嫉妬(しっと)してくれるんですか?」


「するに決まってる。だって、大事な俺の奥さんだもん。誰かに取られたくない」



 いや、取られる事はないと思いますけど。そもそも、国際結婚だし政略結婚でもあるから離婚なんてとんでもないわけで。そんな事があれば国際問題よ。


 ……とはいえ、旦那様のこの様子を見るに、彼にとってはそれは関係ないのかもしれない。だって、私の結婚相手を名乗り出たみたいだし。一目惚れをしてくれて、いつも自分の気持ちをちゃんと伝えてくれる。


 オーバーに伝えてくるから、旦那様のルックスも入れてだいぶ恥ずかしく「はいはい」と何とか流してしまうけれど……ちゃんと伝える、という事の難しさを最近は感じている。恥ずかしがり屋、と言ってくるけれど、本当にその通りなのかもしれない。



「……旦那様は、ずっと剣一筋だったんですか?」


「ん? そうだね、小さい頃からずっと剣を振ってたかな。俺の父親が同じ職業で、腕の立つ騎士だったからそれもあるかな?」



 旦那様に兄妹はいない。それに、父親は不慮(ふりょ)の事故で亡くなり、母親は出産の影響で身体を痛め早くに亡くなったと聞いた。だから、旦那様の家族は今は私一人。


 でも、家族であっても知らない事ばかりだ。嫁いで来て一年すら経っていない事もあるけれど……



「知りたくなった?」


「……旦那様の事と言ったら、ムニエルが好き、ぐらいしか知らないので……それだと、知人にちゃんと旦那様を紹介できないじゃないですか」


「ん~、でも、スイランが元気な様子を見せてあげればいいと俺は思うよ。俺の事を知ろうとしてくれる事は嬉しいけれど、そんなに急がなくてもいい気がするな」



 急がなくても、か。時間はいっぱいあるから、ゆっくりお互いを知っていこう、という事なのかな。



「俺としては、せっかくその知人の方とお会い出来るから、その機会に10歳の頃のスイランの事を聞きたいと思ってるけどね。可愛かっただろうな~、元気いっぱい?」



 ……それ、いつぞやの全力疾走を思って言ってます?


 その知人のおじさまには「姫様は子供の頃だいぶやんちゃでしたからな」と高笑いされるから、とりあえず余計な事は言わないよう(くぎ)を刺さないといけないか。



「そんなに可愛いもんじゃなかったですよ。可愛げがないって言われました」


「そう? 今のスイランがこんなに可愛いなら、絶対子供の頃も可愛いと思うけど」



 ほら、これだから……さらっとそんな事を言われると、何と答えた方がいいのか分からなくなる。そして、そのニコニコと向けてくる顔も、分かってて言ってるんだと書いてある。


 悔しい気もするけれど……素直、というものを出した方がいいのも分かってる。


 ちゃんと言えばいいのに。と自分に呆れてしまう。



「……オリバーも、剣を振ってる姿はかっこいいと思います」



 旦那様に顔を見られたくないという気持ちから抱きしめ、小さな声でぼそっと呟いた。クスクスと笑い声が聞こえてきたけれど……何も言えなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ