第六話
「え、もう会えないの?」
お母さんの言葉を聞いて一番最初の一言はこれだった。
いきなりあのことはもう会えないと言われても、当時の僕にはそれが何故か理解することが出来なかった。
少女と会えなくなって早一年。
僕は突然母親に呼び出された。
『大事な話がある』と、そう一言だけ添えられて。
その時は僕が小学三年生になった時だったと思う。
こんな深刻な表情を浮かべている母を見るのはいつぶりだろうか。
そんな母親の様子を見て僕も覚悟を決めたとき、母親が口を開いて話し始めた。
『あの時の少女は交通事故でなくなった。』
その時初めて、彼女と会えなくなってしまった本当の理由を告げられた。
その時の僕の顔はきっと見たことの無いほどに絶望にひれ伏せていただろう。
彼女がいたから僕は今まで『生きていたい』そう思えていたのに。
彼女の笑顔が僕の生きがいだったと言うのに。
初めてできた仲良しなお友達だったのに。
そんな色々な感情が湧きでてくる。
感情の整理が追いつかない。
そのことを聞かされてから、僕は自分の部屋にこもるようになり、あの明るい性格は、いつしか心の闇に飲まれていった。
そして僕は彼女のことを聞かされてから間もないうちに、それなりに大きな土砂崩れに巻き込まれた。
その時は少女と初めてであった森の湖に訪れた日の帰りだった。
運悪く帰りの途中で雨が降り出す。
しかし雨は止むどころか強くなる一方だった。
家へと向かう足を速めるも、僕が家へとたどり着く前に近くの山が崩れ落ち、僕の体を飲み込んだ。
そして次に目を覚ました時には、記憶を失った状態で病室の角にあるベッドに横たわっていた。