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第二話
夜空が澄み渡り、月が特に明るく輝く。
手を伸ばせば届きそうなこの月を見つめながら、僕は夜の森を歩いて回った。
もう今日は次の夜が来るまで布団に包まれることは無いだろう。
特に何も考えることも無く、僕は道のない森を歩いて進み続けた。
足に疲れが見え始めた頃、僕の視界の端に何やら光を反射するものがうつりこんだ。
その何かが気になった僕は、光が見える方へと方向を変えて足を動かす。
どこからか強い匂いが漂ってきた頃、僕の視界に光を反射していたものの正体の全体が写った。
それは湖だった。
湖の水面に月明かりが反射されていたらしい。
湖のほとりには小さな野原があるのが見える。
けれども僕の視線はそのどちらでもなく、この湖の先客に釘付けにされていた。
白く風になびく髪。
ペリドットのように透き通った色の輝きを放つあの瞳。
そんな美貌を兼ね備えた、誰が見ても美人と言えるような人がそこにいたのだ。
僕はここに来た理由なんて忘れて、その女性に話しかけた。