電車の遅延理由
あなたは、電車の遅延に遭遇したことはありますか?
私が普段使用している路線は、上り下りともによく遅延しているのを見かけます。遅延が多い理由は、きっと線路が長いからなのかなあと勝手に思っていますが、詳しくは知りません。
さて、今日お話しさせていただくのは、私が以前遭遇した遅延の話です。
ところで、遅延に遭遇したことがある方に質問です。どんな理由の遅延に遭遇したことがありますか?
人身事故
お客様との接触
動物との接触
橋桁への車の接触
信号トラブル
踏切のトラブル
線路の異常
車両の異常
緊急停止ボタンが押された
体調不良のお客様の対応
急病人の対応
線路内への侵入
強風の影響
積雪の影響
混雑による影響
線路上の倒木
これは、私が駅構内で耳にしたことがある電車の遅延理由です。意味が重複しているものもありますが、書き出してみると色々と種類がありますね。
まあ、きっと私が忘れているものもあるでしょうし、まだ遭遇していないものもたくさんあることでしょう。たくさんの人や物を遠くまで運ぶ鉄道は、毎日様々な事象に巻き込まれ、対応を余儀なくされている。そんなことを考えるととってもありがたく、そして大変な存在だなあと思います。
話が逸れましたね。今からするのは、そうですね、5年ほど前の夏の話です。
仕事帰りに電車が遅延していました。たしか15分ほどの遅れで、理由は『動物との接触』だったと思います。
駅に着いた時にアナウンスを聞いて、帰るのが遅くなるなあと落ち込んだ私はゆっくりとホームに向かいました。すると、たまたま遅れてやってきた電車に乗ることができ、特にストレスを感じることなく家の最寄り駅まで帰ることができました。
「あんなの、あんなのおれが知ってる動物じゃなかった!」
降車後、改札に向かってホームを歩いていると、進行方向に二人の駅員さんがいました。二人とも若い男性でしたが、一人が青白い顔で唇を振るわせながら、もう一人の駅員さんに縋るように服を掴んで訴えかけていました。
服を掴まれた駅員さんが心配そうな顔で、「わかった、わかったから一旦落ち着けって」となだめようとしていました。でも、怯え切った顔の駅員さんは、そんな言葉は耳に入っておらず、どんどん声が大きくなっていきます。
「動く物だから、動物だって? そんな安直な理由あるかよ! あれが動物のくくりに当てはまる訳がないだろ!」
周りの人の目を気にすることもなく、今にも泣き出しそうな顔で喚き散らす駅員さん。帰宅ラッシュの時間ということもあり、彼は少なくない人の目を集めていました。最初は私も気になりましたが、あまりにも痛々しい光景に私は目を逸らさずにはいられませんでした。
立ち止まる人々を避け、何も気にしていないふりをしながら、私は彼らから距離をとりつつ歩き続けました。
駅員さん達から電車一両分ほど離れた時、彼らの元へ向かおうとしているのか、前から年配の駅員さんが小走りでやってきました。深刻そうな表情を見て、さっきの若い駅員さんの上司なのかな? この人も大変だなあ、なんて考えながら歩いていました。
そんな時です。すれ違いざまに、年配の駅員さんが小さな声で独り言のように言ったんです。
「ああ、あいつも見ちゃったのか……」
咄嗟に振り向きましたが、年配の駅員さんは私に気づくことなくそのまま若い駅員さんの元へ歩いていきました。
あれ以来、電車の遅延には何度も遭遇していますが、私は動物との接触が理由の遅延には遭遇していません。でも、ずっと気になっているんですよね。今まで遭遇した『動物との接触』の電車の遅延。あれ、一体何と接触していたのかなって。