表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

第11話 滅紫の光

 再び、目の前の戦士をターゲットに捉えた双頭のバーゲスト。だが、動き出した瞬間にボクの影がバーゲストに伸びると、歩みは止まる。


「グルルルッ」


 しかし、双頭のバーゲストからは唸り声が聞こえる。歩くことは出来ていないが、完全に動きを止めれた訳じゃない。良く見れば、左の頭だけは動き、威嚇しながらも、何が起こったのかを探っている。


 そして、再びボクを睨み付けてくる。


「気付かれた」


 クオンの影縛りは優秀で、チートに近い性能なのは間違いない。ただ残念なのは、ボクには双頭のバーゲストを仕止めるだけの力はない。身動きの出来ない上位種でさえ、やっと倒せるだけの力しかないのだから、絶対に異形種なんて無理だろう。


 出来ることは、可能な限り動きを止め続けること。短剣を真上に翳し続けると、バーゲストの唸り声も次第に大きくなる。



「ウオォォォォォーーーーーン」


 双頭のバーゲストの咆哮が響き、周囲の空気が震える。威嚇でも仲間を呼ぶための咆哮でもない。衝撃波を発生させるための咆哮が、ボクに襲いかかる。

 気付いた時には手遅れで、避けることも身を守る体勢をとることも出来ずに、ボクは衝撃波で後ろへと吹き飛ばされる。尻餅こそつかなかったが体勢は崩れ、影はバーゲストから離れてしまう。


 直ぐには影縛りの効果は消えないが、完全に動きを止められていないのだから、その効果も数秒ともたない。そして、バーゲストの視線は、また目の前の戦士へと移っている。あくまでも優先順位は目の前の戦士で、ボクの存在は双頭のバーゲストにとっては脅威にはならないみたいだ。


 双頭のバーゲストの姿勢が、草むらに隠れる程に低くなる。それは、一気に跳躍するための予備動作で、一気に勝負をつけにきている。


「逃げろーーーっ」


 ボクが出来るのは叫び、願うことだけ。ここまでバーゲストの群と戦ってきた戦士ならば、もう少しだけ力を振り絞ってくれと祈るしかない。

 だがボクの祈りも虚しく、戦士は微動だにしない。双頭のバーゲストは、戦士のがら空きとなっている脇腹に喰らいつくと、ガキンッという音が響く。


 確かにバーゲストの双頭は、戦士に喰らいついているが、戦士の金属鎧を噛み砕くまでには至っていない。それだけでなく、戦士は全く動かずに、同じ姿勢を保っている。


「大丈夫なのか?」


 何が起こっているのか分からず、目を疑うしかない。もしかして、双頭のバーゲストは大したことないのかとも考えてしまうが、ボクの胸騒ぎは変わらず危険だと警鐘を鳴らしている。

 しかし、そう思えたのも数瞬で、双頭のバーゲストが動く。戦士から離れると、今度は大きく距離を取る。離れた距離と反比例し、さらに胸騒ぎが大きくなる。


「ここはマズい……んだよな」


 双頭のバーゲストの大きく開かれた口からは、光が漏れ始めている。大きく開けた口は、噛みつき喰らうためではない。


「魔法?ブレス?どっちだ」


 それは、どっちであろうが関係ない。重要なのは、今まさにボクも巻き込まれようとしている。

 安全な場所を探せ。いや、そんな場所なんてないだろ! 少しでもマシな場所を見つけるんだ。


 そして、唯一マシだ感じられた場所は1つしかない。少し前に逃げろと言っておきながら、今は戦士の後方に回って盾にしようという都合のイイ考え方。いや、ボクの考えじゃない。胸騒ぎが、盾にしろと言っているんだ。


 仕方ないよと自分自身に言い聞かせながら、戦士の後ろに回り込み、なるべく距離を取る。戦士の位置は見なくても、胸騒ぎが教えてくれる。

 そして少しはマシな場所は辿りつくと、大きな炸裂音がする。戦士の居た場所には、滅紫の光が大きく渦を巻き、その光の中に居る戦士の姿は見えない。


 今度は胸騒ぎが、ここから一歩も動くなと言ってくる。無視しようと思っても、胸騒ぎに支配されたボクの足は動かずに、ここで滅紫の光を眺めるしかない。


 戦士を包み込んだ光の渦は、ゆっくりと成長し木々を超える高さにまで達する。込められた魔力は、まだまだ増し、次第に大きな球状へと変化してゆく。


「やっぱり……だよな」


 振り返りディードに声をかけるが、恍惚とした顔のディードにはボクの声は届いていない。光に触れた草木は、枯れて粉々に崩れ落ち、地面へと落ちる前に消滅してしまう。剥き出しになった地面でさえも、次第に凹み消滅してゆく。


 ディードに聞くまでもなく、これは滅びの光。


 物理的に破壊出来ないなら、魔法で消滅させる。単純な理由だし、理にも適っている。魔法となれば、ボクには到底対抗することの出来ない力で、それをまざまざと見せつけられる。分かっているけど、何も出来ないことに苛立ちはある。


「ここで、ボクにどうしろって?」


 今度はボクの胸騒ぎに問いかけるが、何も教えてくれる訳がない。ただ、じっと滅紫の光を見つめていると、滅紫の光の球から幾筋もの閃光が漏れ出し、次第に小さくなり始める。魔法としては不安定で、十分な制御は出来ていない。これが双頭のバーゲストの最大の攻撃でもあり限界なのだろう。


 ただ弱まっているとはいえ、閃光によって森の中に次々と穴が開けられる。その一筋の光でもボクに当たれば、間違いなく命はない。


「えっ、生きてる?」


 しかし、滅紫の光が小さくなると、中の戦士の影が見えてくる。かなり細くなった気はするが、中には戦士しかいないはず。それに、立っているだけでなく動いている。驚きはそれだけじゃない。明らかにボクの方へと向かってきている。本能は“来るな、迷惑だ”と言いたいが、理性が邪魔して声にならない。


 戦士が滅紫の光を抜け出した瞬間に、滅びの魔法は大きく爆ぜる。破滅の魔法から、物理的な力へと変換され、爆風が戦士を吹き飛ばす。

 滅紫の光でなくても、この戦士とぶつかっただけで、ボクは十分に死ねる。そう確信したが、胸騒ぎは急速に収まり、鼓動が高鳴り始める。


「なんで、三角ビキニなんだよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ