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開拓

 朝食を食べ終えるとセモリナさんが父親であるブランさんに問いただす。


「ソイルくんが来てからお父さんの口からサンドラさんていう女の人の名前をよく聞くけど、お父さんてその人が好きだったの?」


「そりゃもう、結婚したいぐらい大好きだったぞ。なにしろ俺のパーティーのヒロインだったしな」


 なぜか胸を張り得意気な素振りをみせるブランさん。


「じゃあ、そのサンドラさんとお母さんどっちが好きなの?」


「えっ?」


 その質問を聞き固まるブランさん。


 今まで妻のフラワーさんの前で元カノではないけど昔好きだった女のことを話しているのに気が付いた。


「それは……」


「もちろんお母さんよね? サンドラさんのことの方が好きで、お母さんと結婚しなかったらわたしは生まれてないし」


「そ、そうだな……」


 申し訳なさそうな顔全開のブランさん。


 飼い主に怒られている犬みたいな顔をしている。


「ところでお父さん? わたしのこと嫌い?」


「好きです、大好きです」


「じゃあ、もう二度とサンドラさんの名前を出さないでよね」


「はい、わかりました!」


 ブランさんは上官に説教される新兵みたいな顔をしている。


「それにロックさんとサンドラさんが結婚しなかったらわたしの愛するソイルくんも生まれなかったんだからね。ソイルくんにも失礼よ」


「申し訳ない」


 ブランさんは娘に滅茶苦茶弱いようだ。


 *


 ブランさんへの説教タイムが終わったので、セモリナさんの案内で村の様子を見に行く。


 このハーベスタ村は魔の森の中に存在する小さな集落でその戸数たったの5つだった。


 元々ブランさんの脳筋パーティーメンバーから始まった村でそこに後からシェーマスさんがやってきた感じだ。


 朝はみんな食材の採取や狩りに行ってるらしく、村には畑仕事をしているシェーマスさんしか残っていない。


「おはようございます」


「おはよう、坊ちゃん」


「シェーマスさん、この村のことを教えて貰えますか?」


 シェーマスさんは畑仕事を中断して話を聞いてくれた。


「どんなことを聞きたいんべ?」


「そうですね、まずはこの村の歴史と言うか生い立ちとか教えてください」


「そうさなー。この村は昔はもっと沢山人が住んでたんだべ。100人近くは住んでたと聞いてるべ」


「そんな感じは全然しないですけどね」


 なにしろ今は家が5軒の住民17人の村である。


 100人も住んでたとはとても思えない。


「正確に言うと魔の森の攻略をする為に砦を作る計画があって、そのための作業員が住む村が始まりだと聞いてるべ」


「砦なんてありました?」


 ソイルが村を見て回った感じではあるのは数件の民家だけで砦の類はなかった。


「もう朽ちちゃってるけど森の中に残骸が残ってるわ」


 セモリナさんが指さした遥か先の森にはツタに覆われた物見ものみやぐらの残骸らしきものがかろうじて見える。


「今はゴブリンの住処だけんどな。なんでも建設途中の砦を見て怒ったゴブリンの群れの襲撃を受けて潰れたそうだべ。その時に作業員も逃げてそれっきり、後釜として討伐隊の冒険者を募集したんだけんど魔獣ひしめく森に来るような物好きもいなくて、セモリナさんのお父さんのブラン様たちが住み込んでかろうじて領有権を主張してる状態だべ」


 なるほどねー。


 それで魔の森の中にセモリナさんたちは住みついてるんだ。


「移住者の募集も掛け続けてはいるけど、村の中にまで魔獣が出るから移住希望者がやって来てもすぐに逃げ帰ってしまうべな」


 なるほど、この村に住人が少ないのはそういう事情なのか。


 こりゃ住民を1000人に増やすのは大変そうだ。


「それにこの村に来る道中も魔獣がでて大変だべ。昔は半年に一度ぐらい来ていた行商人もここ10年ぐらい見たことないべ」


 行商人にも見捨てられたハーベスタ村。


 完全に陸の孤島だった。


「特産品とかも無いですよね?」


「木はふんだんにあるし、食料調達で魔獣を狩りまくってるから魔獣素材も余ってるので特産品を作ろうとすればいくらでも作れるんだけど、行商人が来ないから売れんべな」


 どうやらこの村を開発するのに最大のネックとなってるのは魔の森に接している危険すぎる立地条件のようだ。


 これをなんとかしないと始まらない。


 ソイルはセモリナさんと相談しつつ、なんとか解決策を見出そうと模索し始めた。

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