バックパック
ハーベスタに戻ったソイルは早速ゴーレムで運搬を行えるようにゴーレム用の背負子のアタッチメントの制作に取り掛かる。
ケイトさんは部屋で魔法陣を必死に描いているので、代わりにセモリナさんがソイルのサポートに付いていた。
ソイルは屋外に設置した机に広げたゴーレムのスケッチを見ながらバックパックの形状を考えている。
「バックパックはどんな感じで作ればいいんでしょうか?」
「ボア肉を運ぶんだよね?」
ソイルがセモリナさんに聞いてみると少し考え込む。
「そうですね。ボアを運べるのが最低条件です」
「実物が無いと考えにくいのでちょっとボアを持ってくる」
セモリナさんはそういうと、5分ほどで首を落として血抜きの済んだボアを持って来た。
「これが普通のサイズのボアだから、これより少し大きく作ればいいわ」
ソイルはボアを採寸するとそれよりも少し大きめの箱をレンガで組む。
防御壁でレンガ細工を散々したので箱を作るのは慣れたものだ。
すぐに箱は完成した。
「箱は出来たけど、これをどうやってゴーレムに背負わせればいいんだろ?」
「やっぱり人間が背負うみたいにロープで縛りつけるんじゃないかな?」
でやってみた。
ゴーレムの1号のゴンちゃんを呼んでロープを何重かにして箱を括り付けたらいい感じで背負わせることが出来た。
試しに箱の中にボアをいれて少し歩かせてみたんだけど……。
ぶちっ!
物凄い音がしてロープが切れた。
「マジか?」
「箱がレンガでゴーレムが岩だから、ロープが擦れてすぐに切れちゃうみたいね」
「ロープじゃウッドストック迄の長旅には耐えられないか」
「もっと太いロープを使う?」
「多分無理だろうな」
相手が岩なのでロープがいくら太くても結局は擦れて切れてしまうだろう。
時間の問題だ。
「じゃあ、どうするのよ?」
「そうですね……人間が2人で重い荷物を運ぶみたいに、ゴーレム2体で持たせて運ばせてみるのはどうでしょうか?」
「それはいいアイデアだね。ソイルくん冴えてる!」
ゴーレムの1号と2号で横歩きのアイデアを試してみたんだけど……。
「遅いわ」
「遅いですね」
ゴーレムは横歩きと言うかカニ歩きを考えて作られていなかったので歩くのがとにかく遅かった。
これではウッドストックに着くまでに三日どころか一週間ぐらい掛かってしまいボア肉が腐る。
むー。
大見栄切って三日で解決するって言ったけど、これはまずいかもしれない。
このままじゃウッドストックの住人は飢えることになるし、ブランさんをぬか喜びさせて怒らせた挙句殴られる。
本気で怒ったブランさんに殴られたら命の危機だ。
なんとかしないとマジヤバい。
「ゴーレムの運送に耐えられるロープの代わりになるものを考えないと……」
どうする?
何か考えないと。
岩よりも固いロープを今すぐに!
「岩やレンガより硬い物なんてないわよ」
セモリナさんが言うように岩やレンガよりも固い物は無い。
ん?
んん!
その時、ソイルの頭の中で閃いた。
岩やレンガより硬い物が無いのならば硬いレンガで背負い紐を作ればいいじゃないか!
で、レンガで背負い紐を作ってみた。
箱から2本の取っ手の様な背負い紐が生えた感じでいい感じに出来上がった。
「出来たよ」
「いい感じに出来たわね。これなら擦れて切れることもないわ」
早速ゴーレムに背負わしてみた。
ぼきん!
またまた激しい音がした。
レンガで作った紐は曲がらないので背負う時に折れてしまった。
「ぐはー! マジかよ?」
今日何度目のマジかよ!だよ!
セモリナさんも大混乱中だ。
「どうする? どうすればいい?」
そこにケイトさんがやって来た。
「魔法陣1枚仕上がったけど、使う?」
「今はそれどころじゃなくて……」
ケイトさんに事情を話すと笑い出す。
「そんな背負い紐なんて要らないわよ。ゴンちゃん箱持ってきて」
「ゴレ!」
「もしかして、手に持たせるとか?」
「それでもいいんだけど、手が空いてた方が色々便利よね。ゴーちゃんここに座って」
ケイトさんは1号に、2号のゴーちゃんの背中に箱を押し付けるように指示を出す。
「さあ、ソイルくんの出番よ。接着の魔法を使って」
あー!
ジョイントかよ……。
「その手があったわね」
無事にゴーレムの背中に箱が取り付けられた。
ゴーレムは人間じゃ無いんだから背中に直接箱を取り付けてしまえばいいんだ。
失敗しだすと視野が狭くなって簡単な解決策も見えなくなる。
ソイルは失敗してる時こそ視野を大きく、そして広く取らないといけないことを痛感した。




