納得できない謎
ケイトさんが興味津々で聞いてくる。
「ソイルくん、鑑定結果はどうだったの?」
「魔道具が壊れてたみたいです。MPが3600万とかあり得ない数値を指し示していました」
「3600万て……、MP3万越えで測定器の想定の測定限界を超えちゃっておかしくなったのかな?」
「かもしれないですね」
セモリナさんも興味津々に聞いてきた。
「魔法の熟練度はどのぐらいだった?」
「そういえば覚えたはずの魔法は表示されてなかったですね」
「本格的に魔道具が壊れちゃったのかも?」
「今度会いに行った時に直してもらいます。直してくれるかはわからないけど」
「その鑑定の魔道具って……貰ったのはヘレンさんから?」
「はい」
「あー、それならなんとなくわかる。ヘレンさんてソイルくんのスキルを奪う魔道具を使った人なんでしょ?」
「そうなんですよ。マイケルから聞いたときはショックでした。セモリナさんには申し訳ないんですけど、ヘレンは僕の元婚約者ですからね」
ケイトさんが鑑定の魔道具を手に取る。
「この魔道具には罠が仕込まれてるかもしれないわね。知り合いに調べてもらうからしばらく貸して貰えないかな? 町に戻ったら調べてもらうよ」
と言うことで、魔道具の検査をお願いした。
「あ、魔法の熟練度ならわたしの簡易測定具で調べられるわよ」
と言うことでメーターの針のついた測定具を取り出す。
「これは?」
「魔力の強度を調べる測定具よ。これで大体の熟練度がわかるの。普通の魔導士なら30ぐらいで、一流の熟練魔導士なら100ぐらい。200もあったら大騒ぎよ。あっ、シェーマスさんがいるから調べてみよう」
ちょうど通りかかったシェーマスさんを捉まえて土魔法の『ソイル』の測定をする。
「おらのソイルの熟練度を調べたい? ええべよ。凄すぎてビックリすんなよ」
測定器の前でソイルを使うと……。
「810! すご!」
「すごいです」
「これは国定魔導士を超えてるわね」
「どうだい? ぼっちゃん」
ソイルに向かってにたりと笑い勝ち誇るシェーマスさん。
どうやらソイルは土魔法のライバルとして認識されているようだ。
「ぼっちゃんはどうだべ?」
「僕のソイルですか?」
「はよ測るべ。はよ」
で測定したら……。
「999?」
「いや、これは針が振り切れて測定オーバーのランプが点いてるからそれ以上よ」
「なっ! おらが土の魔法で負けるなんてことは……」
シェーマスはソイルに負けたことでかなり気落ちしたが、新たに切り開かれた土地に畑を作る時に土魔法『ソイル』を使いまくりソイル並の魔法熟練度になったのは後の話。
「他の魔法も測定してみようよ」
セモリナさんに促されて熟練度測定。
サンド、ソイルが熟練度カンストだったのにレンガの土魔法がなぜか熟練度300しかなかった。
「あれ? 熟練度300?」
「これってかなり低いわよね? あれだけ防壁作ってレンガの魔法を使ったのになんで熟練度300なの?」
測定値の低さに驚いたセモリナさんが声を上げている。
「みんなの熟練度の高さに麻痺しちゃってるけど、熟練度300って驚くぐらいに高いと思うわ」
ケイトさんはそう説明しつつも首を傾げる。
「でも、あれだけ大きな国家プロジェクト並の防壁を一人で作った割には低すぎると思う」
ソイルの熟練度が300だったという謎。
巨大な防壁を作った熟練度に対して納得しかねる謎が残った。




