トケルマデノユメ
お忍び貴族御用達の食事処の娘ととある貴族の四男坊
羨ましい、羨ましい、羨ましい
羨ましい、羨ましい、羨ましい
羨ましい、羨ましい、恨めしい
私だって、学園にいって、素敵な人と出会って、恋愛してみたかった。
なんで私は、生まれた時から許嫁がいて、
実家を継がなければならないせいで学園に行けない。
全部全部、凍って、凍って、砕けてしまえ。
冷たい感覚が全身を包む。
目が覚めると、自分の部屋が冷たい氷に覆われた。
「また、やってしまった。」
部屋の惨状を見て、ため息をついてしまう。
薄暗い夜明け前の外の明かりが、窓から差し込む。
家の誰かが起きる前の時間でよかった。
私は氷に手を触れる。
そして、目をつぶり、深呼吸する。
仕方ないよ。
生まれた時から貴族の婚約者がいても。
実家を継ぐのは、私の家はお忍び貴族御用達の食事処、幼い頃からその腕をしっかりと磨き、貴族、平民問わずお客様が満足させる食べ物を提供することが家の目標であり、私の目標だから。
そう思いながら、
目を開けると氷が消えていく。
冷たい空気が、引いていくのを肌で感じる。
それと同時に、夏の熱気が部屋に戻ってきた。
お昼時、私は沢山の注文行き交う戦場状態の調理場で料理を作っていた。
「スイア、そろそろ、実演販売の時間だよ。今作りかけのスープは私が引き継ぐから、やっておいで」
母にスープを引き継いだ後、私は大きめの鍋、果実水、砂糖などを持って、食堂の入り口の前に立つ。
「さあ、さあ、汗だくだくのみなさん、
少し変わった果実水はいかがですか?
一つ、140ラリだよ。」
私は果実水と砂糖を鍋に入れてかき混ぜる。
すると、滑らかな食感に凍っていく。
鍋から流れる冷気に寄せられて、お客さんがよってくる。
「その果実水、一つくださいじゃ。入れる容器はどこにあるのじゃ。」
紺色のローブを被った女の人だ。
見たことない、新しいお客さんだから、
私の果実水の渡し方を知らないようだ。
「はじめてのお客さんね。
まずお金をわたして、
手を水を掬うような形にして、
そんなに冷たくないからね」
そうして、お客さんの手の中に氷の器をつくる。
そして、その中に果実水を入れた後、氷の匙を作り、差し込む。
「どうぞ、氷の器は1レン持つからね。
食べ終わったら、近くの水路に捨てておいてくださいね。」
驚いた表情をしながら、お客さんはのいて、
また次のお客さんがくる。
そうして、私のお昼時は過ぎてゆく、時折、近くの学園の生徒でカップルの人々も混ざっていて、その時はサービスを兼ねた嫌がらせをおこなう。
「お二人さん、彼氏くんは右手を、彼女ちゃんは左手を出してね。」
目の前の二人ははじめてのお客さんだが、
私の嫌がらせを知っているようで素直に出してくる。
そして、二人の手の中に氷の器を作り、果実水を入れる。
けどそこに刺すスプーンはひとつだけ、
そして、二人の手は1レン離れない。
「二人で分け合って、食べるんだよ」
羨ましい。
あっという間に、果実水は売り切れ、食堂の中に戻ろうとした時。
「あ、スイアだ。お仕事おつかれ。果実水まだある?」
学園に進学してる幼馴染アミルが彼氏連れで声をかけてきた。
「ありがとう、悪いけど、果実水は売り切れたよ。けど、店の中で冷製スープがあるからそれでどう?」
「そうする」
羨ましい、貴方達のつながっている手を凍らしたい。
私は、彼と手すら繋いだことがないのに。
月に一回会えるかどうかなのに。
営業時間が終わりに、店を閉めていると、彼からの郵便がきた。
本一冊分ほどの厚さだ。
内容は、彼がここ一ヶ月の間に学園で学んだことの内容がが書かれた紙だった。
どうせ、教科書をコピー魔法で写したものだろう。
そう思いながら、私はそれを読んで、学園の知識を学ぶ。
婚約者なのに、彼からは恋文や贈り物はもらったことがない。
上っ面だけの恋文でも、贈り物でも良いから、欲しかった。
婚約者や恋人からそれらをもらったという子たちが羨ましかった。
羨ましい、羨ましい、羨ましい
羨ましい、羨ましい、羨ましい
羨ましい、羨ましい、恨めしい
私だって、学園にいって、素敵な人と出会って、恋愛してみたかった。
なんで私は、生まれた時から許嫁がいて、
実家を継がなければならないせいで学園に行けない。
全部全部、凍って、凍って、砕けてしまえ。
気がつくと、食堂が凍っていた。
触って、消そうとしても、戻らない。
それどころか、私を中心に氷が広がっていってる。
なんでだ。
魔法がコントロールできない。
誰か、助けて。
思いながら、私は自分の作った氷に飲み込まれる。
暖かい空気とコーヒーの香りで私は目が覚めた。
体を起こすと、石造りの部屋にいて、高そうな長椅子に毛布をかけられ、横にされていたことがわかった。
「目が覚めたようじゃな。よかった。 間に合って。」
本日、最初に果実水を買った紺色ローブの女の人が目の前にいた。
「誰?」
「わしはタフィ・バーターという少し変わった城勤の魔術師じゃよ。
突然こんなとこにいて驚くじゃろ。
今から説明するから。」
そう言って、私前の足の短いテーブルに1つコーヒーが入ったカップを置く。
「コーヒーどうぞ。さっきまで凍っていたから、まだ冷えているじゃろ。」
そう言われて、私はコーヒーに口をつける。
苦い味が口に広がり、体が温まっていく。
それと同時に氷の中ではないという安堵感が生まれる。
「バーターさん、私あの後どうなったの?誰も傷つけてない?」
「大丈夫じゃよ。誰も傷ついてない。
わしが急いで気がついて、氷が広がるのを止めたから大丈夫。」
「よかった。母さんや父さん、店はどうなっているんですか?」
「お主の母上や父上には、しばらくお主を預かることを伝えておる。
店の氷はわしの魔法で片付けた」
「なんで、私はバーターさんが預かることになっているんですか?」
バーターさんは少し間をおいた後、質問で返してきた。
「お主、長年不満に思っていることとかないか?
大丈夫、ワシは他に絶対に言わないように、自分に誓約魔法をかけるし、この部屋は防音だから。」
私は自分の考えをまとて説明しようと思ってたのに、口が勝手に動いた。
「羨ましい、羨ましい、羨ましい
羨ましい、羨ましい、羨ましい
羨ましい、羨ましい、恨めしい
私だって、学園にいって、素敵な人と出会って、恋愛してみたかった。
なんで私は、生まれた時から許嫁がいて、
実家を継がなければならないせいで学園に行けない。
全部全部、凍って、凍って、砕けてしまえ。」
私を中心にまた氷始める。
「わかった。落ち着いて」
バーターさんが、手をかざすと氷はきえてた。
「お主は、長年貯まった嫉妬という感情によって、自分が持っている生来魔法が暴走しかかっているのじゃ。」
「暴走?」
「お主は目標、夢、欲望を持っているじゃろ。
人というものはそれらを持つことによって、それを成し遂げる方向に進もうとする。
しかしながら、相反する目標、夢、欲望を持つようになると、生来魔法が欲望を叶えようと無意識のうちに動き出すことがあるんじゃよ。」
「信じられない。どうすれば治るんですか?」
「治る方法は、欲望を叶えること。
たくさん食べたいとか、遊びたいとかだったら、それを実行すればいいのだが、
お主の欲望はちと難易度がたかいのう。」
「ですよね。」
「諦めるな。叶ったように見せかける事で満足させて、暴走を止める事ができる」
「方法はどんなことをすればいいんですか?
治療費はいくらかかるんですか?」
城勤の魔術師の魔法を受けるなんて、めったになくて、とても高いことだ。
「ワシが魔法で夢を見せるから、お主はそこで横になっておけばいい。
治療費は、お主が作った果実水を一生無料ということでお願いじゃ」
そう言って、バーターさんは私に手をかざす。
すると突然、目の前が暗くなって、眠くなって、意識が切れた。
《これは夢、夢だから》
小さい子供の声で、自分の部屋で、私は目を覚ます。
今日から、私は学園に通う。
試験勉強や入学準備忙しかったな。
「スイア、早く降りてこないと学校遅刻しちゃうわよ。」
「はーい、母さん、今行くよ」
私は制服に着替えて、カバンを持って部屋を出た。
入学式、長い校長の挨拶がはじまる。
「新入生の諸君、入学おめでとう!
本学では...」
入学式が終わって、クラス分け表に従って自分の教室に入り、自己紹介を行う。
「私の名前はスイア・フェア、この一年間よろしくお願いします。
得意なことは、氷魔法で、それでお菓子を作ることです。」
授業は楽しかったけど、テストが大変難しい。
うわー、魔導粒子学の点数が下から数えた方が早い。
そう思い、なまえが成績順に張り出された紙を睨んでいる。
すると、後ろから声をかけられた。
「随分、ひどい点数を取っているみたいだけど、教えてあげようか?」
振り向くと、前に見た事があるような顔の男子生徒、ファイに声をかけられた。
それから、ファイに教えてもらうようになって、魔導粒子学の点数や他の教科の点数も上がった。
教えてもらっているうちに、ファイのことが好きになっていったから、思い切って、付き合って欲しいと告白してみた。
「俺もそう思ってた。先越されちゃったな」
そう言って、私を抱きしめてくれた。
そのあと、学校の中で一緒に勉強したり、外でピクニックしたり、街にきたサーカスを見にいったりした。
手を繋いだり、素敵なプレゼントをもらったり、あげたりした。
そして、結婚の約束をして、お互いの両親とも挨拶をした。
そうやっているうちに、学校生活があっという間にすぎ、とうとう卒業式となった。
「スイア、卒業おめでとう」
「ファイ、卒業おめでとう」
そう言った直後、周りは真っ暗になり、そして、コーヒーの香りがまた鼻をくすぐった。
バーターさんはコーヒーを飲みながら、私に話しかける。
「お主、いい夢を見られたかい?」
「はい、とてもいいを見れました。
バーターさん、ありがとうございます。
これからは受け入れて、前に進んでいこうと思います。」
「そりゃ、よかった。
そういえば、お主にお迎えが来ているよ」
そう言って、ドアを隙間ほど開けて、私が外を覗けるようにしてくれた。
外は廊下で、ベンチが置かれていた。
そこには、婚約者である彼が、ファイが船をこきながら、座っていた。
私は思わず、ドアを開けて彼に駆け寄る。
「ファイ、いつからここにいたのよ。」
「スイア、起きたんだね。十二時間くらい前かな。
食器洗浄機が完成して、君に報告しにいこうと思ったら、君の生来魔法が暴走したって聞いて急いで、食堂に向かった。
そしたら、君はバーター先生が保護のためにお城の研究棟に連れて行かれたと聞かされた。
そして、君に会おうとしたら、バーター先生から、門前払いとお説教を食らった。
ごめんね。ちゃんと構ってあげられなくて、君は俺のことを待っていたのに、今からでも、二人の時間を作ることができるか?」
「いいわよ。
食器洗浄機、完成したんでしょ。
あれで、結構手間が省けて、自由な時間が増えると思うから、
これからもよろしくね。
ファイ」
私は婚約者を力いっぱい抱きしめた。
そのあと、なぜ恋文やプレゼントがなかったのとか聞けば、恋文は俺はセンスがないから、直接会って仲良くなった方がいいと周りからアドバイスを受けていたこと。
プレゼントはなんとあの手紙の内容だった。
私が学園に行きたかったにも関わらず、実家を継がなければいけないということを彼は知っていたので、せめて自分と同じ知識を持たせてあげようと、一般人の私でもわかるようにまとめて、書いた結果があの手紙だった。
本当はわたしがアクセサリーを送ったように、ファイも私にアクセサリーを送ろうとしたようだけど、センスが良くないって、周りから全力で止められたんだと。
周りの人も彼もアホだな。
結婚したら、そのセンスがバレるのに、
だったら、いっそ早く、それを説明すればよかったのに。
わたしは知らない、ファイは、彼の髪と目の色のアクセサリー、服をわたしに着せようとする癖があることを。
そりゃ止めるは、ファイは髪と目は炎のように真っ赤だから、そんなものを青目青髪の私が全身につけていたら、ビビットでめっちゃ目立って私は恥ずかしい。
そのことを伝えたら、ちゃんと理解して、赤系統で落ち着いた色のものを渡してくるようになりましたとさ。
めでたし、めでたし、おしまい。
彼のセンスの悪さ
長男談
四歳文字覚えたての頃
長く机に向かっているから珍しいと思ったら、スイアさん宛に50枚以上の恋文作ってた。
待って、スイアさんまだ言葉わからないから。
けど、もうこんなに字が書けるのか。
将来何か凄いことをしそうだなと思ってた。
次男談
三歳で、スイアさんがお母さんのお腹の中にいた頃から、お腹の中に僕のお嫁さんがいるって言ってた。
サービスでエコー魔法使う前でビビった。ちなみに弟はその時のことを覚えていない。
四歳でスイアさんが生まれた時、スイアのお母さんに冬だったから、自分の魔法付与して赤くなった布をひざまづいてささげたよな。
どんだけ付与したんだよ。
お前はいい魔法技術者になりそうだと思ってた。
三男談
六歳で自分の加護付きの宝石作ってあげようとしてた。
待って君は六歳児、なんで加護魔法、高等なのできるの。
まだ2人とも小さいから、体に負担かかるから危ないって。
虫除けの加護作っていた僕の真似をしたのか上手いね。
けど、火力抑えたの作れるようになるまでは加護付きの宝石を送るのは我慢させた。
君はいい魔術師になりそうだと思いました。
結局四男坊がしたことは、
好きな子が楽をできるように乾燥機能付き食器洗濯機の開発したこと。
まあまあ、当たってた。
長男とは7年、次男とは6年、三男とは5年が離れてます。
長男
「大きくなっても、その熱い思いは熱いままだった。さらにヒートアップして、抑えるこっちは大変でした。スイアさん、彼の熱すぎる愛を、暖かく受け入れてくれてありがとうございます。
以上で家族のスピーチを終わります。」




