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その後はデパートをいろいろ見て回り、彼女は服とかアクセサリーとかいくつか買っていた。俺はただ見ているだけ。こんな高級デパートで何かを買えるほどの金があるわけがない。
それでも、夕食までにはまだ時間があった。
「誤算ですわ……どこか時間つぶしできる場所、知りませんか?」
「もう一回映画観るか?」
「そこまでの時間は余っていませんし」
「んじゃあ……」
俺が知ってる時間つぶしの場所は、一つしかなかった。
少し暗めの店内は、賑やかな雑音で満たされていた。あたり一面、ぴかぴかと光が舞っている。
「ゲーセンなんて来たことねえだろ」
「ええ、でも楽しそうですわ」
「順応早えな」
「私の取り柄の一つです」
何をして遊ぶか少し迷ったが、結局カーレースゲームに落ち着いた。二人同時に遊べるところが良かった。初心者でもやることがわかりやすいし。
「テレビゲーム自体、初めて遊びますわ」
「マジか。どんだけお嬢様なんだよ」
「本当はエロゲーとか遊びたいのですけれど、親に止められていて」
「常識的なご両親で良かったわ」
「早く十八歳になりたいものですわ」
レースは彼女の完勝だった。……下手なんだよ、俺。
豪勢な夕食を済ませ(割り勘だったぞ、さすがに)、電車で地元に戻ってきた。時計を見たら午後八時。きっかり十二時間。確かに半日だ。うまいことできている。
「今日は楽しかったですわ」
「そりゃ良かった」
「心がこもってませんわね」
「そんなこと……あるかもしれねえが」
「もう!」
そんな他愛のない会話をしてから俺たちは別れた(彼女は車で迎えが来ていた)。帰路、俺はこの一日を反芻する。映画見て、買い物して、食事して……。
何だか、デートみてえだな。
そう思った途端に恥ずかしくなって、俺は感情を殺して走り出した。






