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無言
無言が嫌いだった。
いつだかコンビニでレジの列に並んでいるとき、後ろにいた女子大生と思われる二人が、話していた。
「どんな人がタイプ?」
「うーん。無言を共有できる人かな?」
「わかるー」
いや、わからん。無言は埋めたい。
などと当時は心で反応していた。
精神、心理について勉強していく中で、カウンセリングについて学ぶことがあった。
言葉だけでなく、相手の反応も大事な判断材料になる。
そこで私が得たのは無言だった。
もちろん他に学びはあったけれど、無言という言語の面白さを知った。
それからというもの、友達との会話の中で無言が訪れると、その無言を楽しむようになってきた。
人を試すようなことをしているわけではない。
無言だなって思うだけ。
たぶんこれがあの時の女子大生と思われる二人の話していたことだろう。
今は私も無言を共有できる人が好き。
あの女子大生と思われる二人はだいぶ達観していたのか、私がまだまだ未熟だったのか。
とにかくあの時の二人は、もう二度と合わないし顔も覚えていないけれど、無言師匠と呼んでいる。