§『異世界初心者』のタブー的解説①(ネタバレ自作解説)
作者が自分の作品を詳しく説明するのはたぶんタブー。
それを楽しく愉快に犯してみようと思う。
あ、楽しくないかもしれない。感じ方は人それぞれだから。
余すことなくネタバレしていきますので、よろしくお願い致します。
ただ言っておくけど、恥ずかしいです。
自分で自分の小説の説明は恥ずかしいんですよほんと。
上手く書けているかどうかもわからない自分の小説に、「いかがかな?」みたいなドヤ顔のような感じで書いていると思われ、さらにおこがましいと思われるだろうと予想できる。
でもまあ需要が少なくとも一はあるみたいなので、期待に応えたい。
読んでくれた人が公開してほしいと言ってくれたので、頑張りたい。
だから小説の出来は一旦棚に置いておいて、やりたかったことやねらい的な部分を解説していく。
あれ? もしかして「後悔してほしい」って言ってたのかな?
まあいいや。解説します。
この『異世界初心者』にはいくつかの叙述トリックを使っている(上手く機能しているか、上手く書けているかは置いておく)。
①転移初日のリアと三日目のレスティの流れ、②汚染水問題のそれぞれの調査の日にち、③レスティの海水浴、④幸助の名前を他のキャラが知らない、この四つ。
最初に④のオチを思いつき、組み立てていった。そこから始めたので、主人公はサイコパスではなくてはいけなかったし、女性陣たちも命を落とすことは決まっていた。
①については手っ取り早くハーレムを形成したかったということと、幸助がクズで女たらしであると決定づけるために考えた。
②については幸助がサイコパスであるということを裏付けるために考えた。
③はお遊び。書いている途中で思いついた。当初は息子が一人だったけれど、思いついて書いているときに二人の方が都合がいいということで一人追加した。
ここからタブーを気にせず詳しく説明する。
①転移初日のリアと三日目のレスティの流れ
「異世界到着」から「追跡」までに人物と日時の誤認叙述トリックを使っている。
「異世界到着」は転移初日でリアを助けて泊めてもらう。「異世界の朝」は転移三日目でレスティと一夜を共にした翌朝のこと。
この間に二日経っているが、名前を出さないようにして時間が連続しているように書いたつもり。
そしてそれを合理的にするために、「勇者の転移が頻繁にある」「勇者の転移を察知できる」「勇者に選んでもらうと富と名声が得られる」という設定を作った。
それで“勇者が近くに転移しているはずなので、馬車に轢かれそうなところを助けてもらってお近づきになる”という行動を三人(正確には四人)がとったという根拠にした。
同じ行動を取らせ、幸助もクズらしく「行く当てがない」と嘘をつくことで、日にちが違うと思われないようにしたつもり。
相手の女の子に対して、「異世界到着」では“かわいらしい瞳の女の子”としているが、「異世界の朝」では“髪のきれいな美女”としている。この違いが伏線。
また「追跡」の“特に瞳がかわいらしいと思う”というレスティの発言がネタばらしてきな伏線。
②汚染水問題のそれぞれの調査の日にち
城内見学の日(招集命令の日)の次の日に水質調査と現地調査と資料調査を行い、その次の日に出発しているように書いているが、それぞれの調査で日にちが開いている、という日時誤認の叙述トリックを仕込んだつもり。
城内見学の日はリアの家に泊まる日と明記しているので、翌日に水が運ばれ調査をしていると思わせているが、「王との謁見」での“クラトゥ村とキュオブルク間は片道が四時間(往復八時間)”と「城内見学」での“夜間の外出禁止(二十二時から九時まで)”の二つと、「城内見学」の昼には遅い時間にリュジーアが城を発ったのを合わせると、翌日の朝リアの家に調査のための水が届いていないと判断できる。
よって「水質調査」の“リアの家に泊まり、そのまま調査をする流れだ”という文と照らし合わせて、城内見学の日から早くとも四日経っている(三日おきにリアの家に泊まるため)。
現地調査は「現地調査」の“リアの家にから直接トリストの家に来ていた”から、水質調査の後に来たように思わせているが、同日ならトリストが朝イチで現地に出発しているにもかかわらず“水質調査の後の勇者様はふらふらににゃって大変だったにゃ”という発言になるのは、午前中のことを知る由もないため不自然。よって別日となる。リアの家に泊った日の翌日がトリストの家に泊まるため、水質調査から少なくとも三日後となる。
資料調査は「現地調査」の“このあと夕方に予定があるから少しだけだぞ”と「資料調査」の“トリストのところに行くついでに、リアにも俺から伝えておく”の二つから同じ日と思わせているが、これはミスディレクション(何の予定なのか、なぜトリストのところに行くのか明記していないため)。「資料調査」の“明日には出発できるだろう”と「出発」の“幸助の隣でレスティがみんなを見渡して言った(幸助の隣に座れるのは泊めた人)”の二つから別日と判断できる。トリストの家に泊った日の翌日がレスティの家に泊るため、現地調査から少なくとも一日後となる。
泊まる日を基準にまとめると、
リア(城内見学)→トリスト→レスティ→リア(水質調査)→トリスト→レスティ→リア→トリスト(現地調査)→レスティ(資料調査)→リア(出発)
という流れになり、城内見学から出発までが九日間となる。
③レスティの海水浴
これは前述のとおりお遊びで、本編とは何も関係ない。なくても問題ない話。
一応解説すると、「事情聴取」の“それにレスティさん、その前の勇者様との間に二人の息子さんがいませんでした?”が伏線。
「招集命令」の“「勇者様、今度海に行きましょう」レスティが言う。”がミスディレクションで、幸助と一緒に行っていると思わせている。
「勇者とレスティの海水浴」の“今日は残してきた二人には悪いけど、勇者様との時間を大切に過ごそうと思う”がミスディレクションで、この二人をリアとトリストと思わせている。
解説はそれくらい。
④幸助の名前を他のキャラが知らない
これがやりたくてこの小説を書いたようなもの。読者は知っているけれど、キャラたちが知らないという逆叙述トリック。
これを達成するために小説全体で視点の切り替えに伴う表現の切り替えをしている。
各話の初めに“□◇■◆(〇〇)”と視点の提示をしているのはそのヒント。
ここが幸助の場合、「幸助は――」とか「――と幸助は言った」とかやたら“幸助”という言葉を入れている。
女性陣三人の視点のときは“幸助”という言葉は一切使用せず“勇者様”としている。名前を知らないため“幸助”という言葉は使用できないということ。
「異世界の朝」の“情が移るといけないから、名前はお互い言わないでおこう。君の名前も忘れる”が最大の伏線。こういった常套句を伏線とする小説にあこがれていて、やってみたかった。
他には「資料調査」の“あまりにも(ギルドカードを)見せるのを拒むので疑い始めたようだ”と「会議?」の“そっとギルドカードを鞄にしまう”が、幸助が名前を明かさないという伏線。
細かい伏線は「タブー的解説②」から、ひとつづつ拾っていく。