ガイド
大学生のころ、本屋で「ブリティッシュ・ハードロック」というシンコーミュージックから出ているディスクガイドをなんとなく買ってしまった。
当時聞いていたイエモン――吉井和哉がデビッドボウイのファンって事で、勉強しようと思っていて、手に取ったのがきっかけ。
レコードジャケットと収録曲、有識者による解説、そして時々コラムが書かれている。全部で五百八十二枚のディスクが紹介されている。
今出ているものは新装版となっていて、なぜか収録曲が書かれていないが、そのかわりオールカラー。
私のは古いもので、収録曲が明記されている。そっちの方が私としては好き。
学生時代にはサブスクがなかったので、ブックオフやディスクユニオンで中古のCDを買い漁って聴き漁った。
色々な曲を聴いていると、これはハードロックなのか? と思える曲にも出会った。
キングクリムゾンやカルメン、グリーンスレイドなんかがそうだ。
ハードロックって言ったらハードロックなんだけど……なんか違う? みたいな。
それで調べてみると、「プログレッシブ・ロック」なるジャンルを知った。
メロトロンを使っている楽曲はそれだけで、プログレッシブな感じがする。
当時の音楽はジャンルが重なっている部分が多い。
というより、ジャンル分けそのものは本当はナンセンスなものなのだろう。
ただジャンル分けする方が商業的にもメリットは大きいし、新しく聴き始める私のような人間にもとっつきやすくなるので、意味はあるのだろう。
それでシンコーミュージックの「UKプログレッシブ・ロック」という本を買った。
ベガーズオペラとかムーディーブルースとかピンクフロイドなんかをそれで知った。
とにかく難しいジャンルだ。プログレッシブとは言ったものだ。
新しい(時代的には古い)音楽を知れることに楽しみを感じ、じゃあヨーロッパのハードロックがあるのなら、アメリカにもあるはず、と思って探したら「アメリカン・ハードロック」があった。
「ブリティッシュ・ハードロック」の中でもブルージーな曲が多かったのでのそんなロックがあるのだろうと思ったら案の定「ブルース・ロック」があった。
じゃあ日本は? と探せば「日本のロック」というディスクガイドがある。
そんな感じで結局、シンコーミュージックのディスクガイドは十三冊持っている。他の出版社のものも合わせると、二十冊くらいだろうか。
これだけディスクガイドを買って解説を読みながら曲を聴いても敵わないものがある。
当時リアルタイムで聴いていた人の話が何よりも一番面白いのだ。
私は友達のお父さんとバンドを組んでいる。還暦を越えた人たちだ。
彼らが若かった時代の曲を聴いていると私が話すと、楽しそうに当時を思い出すようにおすすめの曲や、かっこいいギタリストを教えてくれる。
真のディスクガイドは当時の人だ。
たぶんこれは音楽に限らないだろう。
小説や映画、アニメやお笑い、エンタメ全体に言えると思う。
私も将来、何かのガイドになりたい。




