鶏口牛後
古典の授業が嫌いだった。
そもそも国語が大嫌いだった。
漢字が苦手だったし、読書もしないし、作文も書けない学生だったから。
理系だったし、数学と理科と公民が好きな教科だった。
だがしかし、つまらなくて眠たくて集中力も続かない古典の授業で習った「鶏口牛後」だけは忘れていない。
レ点も一二点も用法をよく覚えていないのに「鶏口牛後」は今でも自分の芯というか、好きな言葉として残っている。
これは「牛の後ろ(お尻)ではなくニワトリのくちばしになれ」という意味。
わかりやすく言うと「大きい組織の末端になるより、小さくてもトップに立て」的なこと。
この言葉の成り立ちや背景は忘れた。
でも私の中で腑に落ちたというか、納得したというか、とにかく「これだ!」って電気が身体中に走ったように心に入ってきた。
それから時が経ち、大学四年生の就活。
周りは大企業を中心に受けていたけれど、私は一切行わなかった。
国家資格の勉強もあって、就活をしなかったという意味合いもあるけれど、大企業に魅力を当時は一つも感じなかった。
大学卒業後、国家資格も無事取得でき、一ヶ月のフリーター生活を送ったけれど、さすがに嫌気が差したところで、ハローワークへ職を探しに出た。
小さな会社の求人を見つけ、入職した。
そこから色々あって、今はその職場の長になったわけだが、それもこれも「鶏口牛後」という言葉に出会ったからだと思う。
今は大企業の良さがわかる
安定、福利厚生、マニュアル化、教育システムなどなど、ノウハウが確立している。
小さいとフットワークが軽いという良い面があるけれど、企業の体力はやはり心細い。
だからこそ楽しかったり、やりがいがあるのだけれど。
ただ、ここまで話しておいてなんだけど、私の座右の銘は「鶏口牛後」ではない。
それについてはまた別の機会に話そうと思う。
だがとにかく「鶏口牛後」という言葉は私の人生観を変えたと言っても過言ではない。
つまらなくて眠たくて集中力も続かない古典の授業が、高校生活で一番の収穫だったのかもしれない。
どこで何があるか、わからないものだ。