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ただの中年オヤジが異世界転移したら  作者: 同調犀
2章 マキエルの村 編
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37話 旅支度(2)

「あ! キーファが久々に肉料理を作るって張り切ってたから、時間的にそろそろ帰った方がいいかもね♪」


 ルーミーが突然思い出したかのように俺にそう教えてくれたため、慌てて話を切り上げてルーミーに別れを告げた俺は、昨日泊った家へと急いで戻った。




 一本の大木の前に立つ――昨日泊った家だ。

 この村のエルフたちは、人を顔で見分けるように一本一本樹の区別ができるから迷わないとルーミーが言っていたが、俺には一生無理だと思う。

 ダブロスに搭載されている探知機能でキーファさんの反応を示す地点を探し、そこに一本の大木があったから迷わずに済んだだけだ。


 俺は懐から魔石付のアイテムを取り出した。

 このアイテムは家の鍵で、目の前の樹に翳すと入口が表れた。



「シンイチさん、お帰りなさい」


 中に入ると、俺の帰宅を事前に察知していたかのように、キーファさんが玄関で出迎えてくれた。


「な! 何で俺の帰宅が分かったんですか?」


 玄関にキーファさんがいたことに驚いてしまった俺は、「ただいま」と言うのも忘れて彼女にそう訊いてしまったのだが、俺の不躾な質問にも優しく丁寧に答えてくれた。


 簡単に言うと、俺の帰宅は精霊が教えてくれたとのこと。

 実にエルフらしい理由である。


 この村のエルフたちは、この森に棲む精霊たちと良好な関係を築いているそうだ。

 精霊たちにとってこの森はとても棲み易く、その環境を守り維持してくれるエルフたちに感謝しているのだとか。

 そのため、本来なら精霊の力を行使するには精霊と契約を結ぶ必要があるのだが、この村のエルフ限定だが、この森の中であれば必要無いんだって。


 ただ今回は、キーファさんが自身と契約している風の精霊に、俺が帰ってきたら報告するように頼んでいただけなんだけどね。




 玄関からリビングを通ってダイニングに向かうと、キーファさんが作ってくれた豪華なディナーが既に用意されていた。

 ステーキにシチュー、パンとスープ、サラダの五品――「何処が豪華なディナーだ?」と突っ込む人がいそうだが、独り身のアラフォーオヤジには豪華なんだよ!


 キーファさん曰く、今回使用したお肉は「ウマシカ」という鹿の肉だという。

 一瞬、「馬鹿」という単語が頭を過ったが、「馬」ではなく「旨」だとサリーさんが教えてくれた。

 今は亡き人間族(ヒューマン)の誰かが名付け親らしい。


 因みにキーファさんの分は、見た目は同じだが、材料がウマシカではなく肉茸という肉厚のキノコを代用したものらしい。

 そちらも美味しそうだ。



 料理は本当に美味しかった!


 普通に町の洋食屋で提供されるような、美味しい赤身のステーキとビーフシチューだった。

 またまた「鹿肉なのにビーフ?」と突っ込む人がいそうだが、毎日ファストフードやカップ麺といったジャンクフードばかり食べていた俺の馬鹿舌に判別は無理な話だ。

 一瞬、ダブロスも馬鹿舌なのかと思ったが、日本にいる本体の影響が大きいのでダブロスは関係ないとサリーさんに全力で否定された。



 食事後、ルーミーと同様にキーファさんにも、十日後に依頼で村を離れる事と帰りがいつ頃になるか判らない事、そして、可能ならばキーファさんも一緒に来て欲しいと伝えたところ、父でもある村長のスノーバルさんの許可が必要とのこと。

 あと、冒険者ギルドに登録した方が良いとアドバイスをもらった。

 身分証としても使用可能なギルドカードを発行してもらうためだ。



 俺たちは明日、朝一で村長の家へ向かうことにした。

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